、こっちこっち!!」



お昼。

友達と待ち合わせた場所に行くと、彼女が既に待っていて
私は慌てて彼女の元へと駆けた。









「ごめん、待った?」


「大丈夫。・・・それより、目が悪かったの?眼鏡なんか掛けちゃって」


「え!?・・・あ、これはね伊達だよ。此処に来る途中可愛かったから買っちゃったの」


「そうなんだ。服とよく似合ってるよ」


「あ、ありがとう」







私は掛けている伊達メガネをあげながら言う。



実は、もしかしたらバニーに真っ先にバレてしまうかもしれないと思い
待ち合わせ場所に向かう途中、急いで伊達メガネを買ったのだった。

これなら分かりにくいだろうと、思ってはいるけれど多分すぐに分かってしまうのは明白かもしれない。







「(まぁ、ないよりはマシかも)」






そう心の中で呟きながら、友達と一緒にサイン会が行われる会場へと向かうのだった。
















「うわぁ〜・・・超、人いっぱいじゃん」


「ここにいる人、みんなバーナビーのサイン会に参加する人たちだよね」


「じゃなきゃこんなに集まんないって」


「ですよね〜」





会場に到着すると、そこにはたくさんの人が居た。



この人たち・・・皆、バニーのサイン会&握手会に参加するんだなぁと思いつつ
やはり彼は人気なんだと実感していた(特に女性)。







「見てみて!アレ【HERO TV】の車じゃんか!!」


「え?・・・あ、ホントだ」







人ごみの中に、一際目立つアンテナの付いたワゴン車。


ドアの所には【HERO TV】のロゴが貼ってあり、車の周辺に
見覚えのある顔ぶれがあった。






「ちょっと、此処にいてね」


「あ、!?」




私は友達から離れ、人ごみを掻き分け車のほうに向かう。

やっと人ごみを抜けて、車のところに到着。
車の後部座席の扉の前に腕を組んで集まる人たちを笑みを浮かべてみている女性が立っていた。







「アニエスさん!」



「ん?・・・あら、じゃない」



「こんにちは」





立っていたのは、アニエス・ジュベールさん。

【HERO TV】のプロデューサーで、私にとっては母親的存在な人。
仕事にはすごく厳しい人だけど
時々会ってご飯をご馳走になったりと、バニーのマンションに住んでからも私のことは気に掛けてくれる人。




「今日は取材ですか?」


「取材っていうか、今度テレビでサイン会の模様を流そうと思ってね。ところで何でこんな所に居るの?
まさか・・・バーナビーのサイン会に参加するとか言わないでしょうね?」


「そのまさかです」


「アイツだけが貴女に惚れこんでるのかと思ったけど、まさか貴女まで」


「え?・・・あ、違うんです。私は友達の付き添いでサイン会に来ただけなんです。参加はしますけど
友達の友達の代理として一緒に来ただけなんで。四六時中、バニーと顔を会わせてるんですから
サインはいらないんですよ。本人に頼めばいくらでも書いてくれるし」






まぁ、写真集は欲しいところだけど。



と、心の中で本音言って敢えて口には出さずにした。







「成る程ね。がサイン会に来ることをバーナビーは知ってるの?」


「言ったらそれこそ、バニーが私に狙い定めて何するか分かりませんから言ってないです。
多分終始私のほうにばっかり視線を寄越すかと」


「有り得るわねあの男なら。だからメガネなの?」


「変装、にもなってませんが」






私がそう言うとアニエスさんは「確かにね」と笑いながら言う。


メガネを掛けて、一応私の中では変装のつもりだ。


別にバニーを意識してメガネを掛けているわけではない。
あくまで、彼の目に止まらないための予防線。
まぁサインを貰って握手するとなると、確実に私が来ているとバレてしまうが
それまでの間、何とか凌げるだろう。





「あ、友達と一緒だからもう行きます」


「そう。サイン会、楽しみなさいね。トークも間に入れるみたいだから」


「はい。じゃあお仕事頑張ってくださいね」






そう言って私はアニエスさんの側を離れ、友達のところに戻った。


戻ると、何やら先ほどより人の数が増えているような気がする。
いや気がするじゃない、確実に増えている。






「もう、何処行ってたのよ?」


「ごめん。知り合いがいたから話し込んじゃった」


「そっか。それよりも早く行こう、もうみんな並んでるからさ」


「う、うん」







彼女に手を引かれ、会場へと入っていく。


神様、どうかバニーにバレませんように・・・と心の中で願うのだった。






























「ボンジュール、ヒーロー」


「アニエスさん」



控え室で、サイン会の開始時間を待っていると
アニエスさんがやってきた。




「凄い人ね。写真集の発売記念のサイン会でこれだけの人が来るなんて」


「そうですね。これが午後からだからまだいいほうです。午前中にあったらさすがの僕でも疲れますから」



笑みを浮かべアニエスさんに答える。






「やけに嬉しそうねバーナビー」


「え?・・・あ、分かります?実は、夜を食事をする約束を朝してきて」


「惚気が始まった。頼むからそんな顔のまま、お客の前で出ないでよ」


「分かってます」





多分、午後・・・これさえ乗り切れば夜はと食事に行ける(出動要請がない限り)。

朝はほんの数分くらいしか会話をしていないけど
夜、食事をしながら出来なかった分の会話を補うことが出来る。


だから、夜の事を考えたら・・・これくらいの事、いくらでもこなせる。







「そう。夜が楽しみね」



「えぇ。・・・というか、アニエスさん・・・何か面白がってませんか?僕の顔に何か付いてます?」







アニエスさんの言葉と表情がやけに面白がっているような感じだった。






「顔には何も付いてないけど・・・・・・どう反応するかしらね、と思って」



「は?」






どう、反応するか?


意味が分からない。





「あの、どういう意味ですか?」



「さぁ、どういう意味かしらね?」



「質問を質問で返すのはやめてください。言いたいことがあるならはっきりと」








「バーナビーさん、そろそろお願いしまーす」






すると、スタッフの人が僕を呼びに控え室にやってきた。






「ホラ、お呼びよスーパールーキー」


「上手いことはぐらかしましたねアニエスさん」


「何のことかしら?」





椅子から立ち上がり、アニエスさんの横を通り過ぎ
廊下を歩いてステージに向かう。



これさえ乗り切れば、後は大丈夫。

思わず鼻歌が出そうだけどバレないように。





今はヒーローという仮面を被ろう。

本当の”バーナビー“として、ありのままの僕でいれるのはの前だけにしよう。
彼女に逢うまでは、皆のヒーローで。


でも、に逢ったら僕はあの子だけの王子様に。







「(でも、このサイン会にが来てくれてたら、いいのになぁ)」







なんて、ワガママなことを思いながら・・・廊下を歩き、ステージに向かうのだった。





Come-On
(彼のサイン会に来た彼女と、来た彼女を知らない彼。どうなるこの後?)

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