『それでは、大変長らくお待たせいたしました。
キング・オブ・ヒーロー バーナビー・ブルックスJrさんのサイン&握手会を始めたいと思います!』






司会の人が喋りだし、ようやくイベントが始まった。
しかし、始まった途端黄色い声援が聞こえてきたよ。ホントに人気だなと改めて感じた。








『ではまず、ご本人にご登場していただきましょう。どうぞ!』








すると、客席から見て右側からバニーがマイク片手に舞台上へとやってきた。
出てきた途端、始まったときの声援とは比べ物にならないほどの声が会場から湧き上がる。

どこかのアイドルか?と思うけど、目の前の舞台上に居るのはヒーロー。






「すごいよ、!本物のバーナビーだね!!」



「そ、そうだね!カ、カッコイイねやっぱり!!」






隣に居た友達が興奮しながら私に話しかけてくる。
私も此処は少しテンションをあげて答えなければと思い、わざとテンションをあげて返事をした。









『では、サインと握手会をする前に少しだけバーナビーさんにお話をお伺いしましょう。
どうですか?今回の写真集の出来栄えは?』



『そうですね。かなり良いものに仕上がってるんじゃないかと思います。カメラマンや他のスタッフさんの
力があってこそ、この写真集は出来たんで。それを買ってくださった皆さんに僕は感謝しないといけないですね』











舞台上に居るバニーは、司会の人の質問に優しく丁寧に答えていた。

普段もあんな風に物腰が柔らかではある。
だけど、ヒーローしているときの彼とテレビに映っている彼と違うのは纏っている空気のような気がした。


真面目なんだけど、どこか爽やかで凛々しい。
それでいて柔らかい。

受け答えもはっきりしていて、焦ることすらない。





これがヒーローなの?・・・これがヒーローをしている彼なのかな?





そう思ったら、胸が少し軋んだ。




近くに居るようで、側に居るようで、でも手が届かなくてどこか遠くに居る人。





それがヒーロー・・・私の愛してやまない人、バーナビー。






『そうですか。では、あんまりトークにお時間を割けませんので早速サイン会に移ろうと思います。
ではお手持ちの整理券番号の早い順番の方から、前のほうへお越しください』







司会の人の声に整理券の早い番号から順々に人が並んでいく。
すでに早い番号の人たちがバニーの近くに集まり、順番を待っていた。












「ん?どうしたの?」





すると、友達が整理券のチケットを持って私に話しかける。
しかしのその声は何だかおどおどとしていた。

さっきまで興奮していたのに、この変わりようは一体何なのだろうと思う。









「整理番号ね・・・、後ろのほうでも大丈夫?」


「え?」


「友達と一緒に買ったのに、番号が連番じゃなくて。・・・・だから、その、ね」











チケットを見ると、確かに番号が連番ではなく少し離れている。

要するに早くバニーに会いたいから
私に後ろに並んで欲しいと、彼女は言いたいのだろう。



私は笑みを浮かべ、番号が遅いほうのチケットを友達の手から取った。







「いいよ、私は後ろで」


「え?ホントにいいの?!」


「うん。サインもらえて握手できることには変わりないからね」


「ありがとー〜。じゃあ私、前だからもう並ぶね。あ、これ友達の写真集だからよろしく!」






私がそう言うと友達は嬉々とした表情をして、写真集を渡し前のほうへと行った。


まぁ私は別に後ろのほうでも全然構わない。
むしろ毎日あの顔見てますから、と思いながら整理券を持ち後ろのほうへと並ぶ。








「(違う・・・あの顔は、初めてなんだ)」









列に並んだとき、ふとそう思った。





確かにバニーの顔は毎日見ている。
ヒーローをしている姿やインタビューを受けている姿は、テレビで見ている。



だけど、こうやってファンとのふれあいをしている彼の表情を見たのは初めてだった。




営業スマイル、って分かっているんだけど
テレビとは違う受け答えをしていて、眼前で仕事をしている彼を見たのは・・・初めてだった。
しかもこんなに多くの人から、好かれている。



胸の中が、モヤモヤして・・・・少し痛い。







「(変だなぁ・・・私)」






フッとそんなことを心の中で呟いた。









「あの〜」



「え?あ、は・・・・」






声を掛けられ我に返る。

返事をしようとした瞬間、目が合ったのは司会の人。
つまり、いつの間にか自分の番になっていた。

少し目線を横に向けると、バニーが・・・驚いている表情が視界に入った。

「ヤバイ、バレた!?」と思いながら私は「他人のフリ他人のフリ」と言い聞かせ
苦笑いをしつつ彼の目の前に立ち、写真集を出した。


しかし、目の前のバニーは何事も無かったかのように写真集にサインをする。





「(あれ、普通だ)」




驚いている表情をしていたのでバレたかと思っていたが
目の前の彼はいたって普通に、サインをしていく。

そしてサインを終え写真集を閉じたので
次は握手だ。と思いながら手を出すと、彼も私の手を握る。






「これからも頑張ってください」



「えぇありがとうございます」





私の手を握り、答えてくれたバニー。

「あ、大丈夫だ」と思い安心をしていた。




瞬間、勢いよく握られた手を引っ張られ目の前の彼が少し体を浮かせ
私の顔の横にバニーの顔が来た。

途端耳元で囁かれ、私の顔が赤くなる。
そして耳の近くに彼の手が触れて、バニーは平然とした顔で手を離し椅子に座りなおす。








「バ、バーナビーさん?!」



「彼女の耳にゴミが付いていたので、取ってあげたんです」



「あ、そ、そうでしたか」








司会の人が慌てて聞くと、バニーは爽やかな笑顔と声で返した。


「はい、どうぞ」と写真集を笑顔で渡され、私はというとそれをすぐさま受け取り
一礼をしてそそくさとその場を立ち去った。




有り得ない・・・有り得ないあの兎!!!




心の中で私は恥ずかしくて仕方がなかった。


バレていないと思っていたが、どうやらバレていた。
多分私の順番が回ってきた数人前くらいから気づいてたに違いない。

そして確実に視界に入ったとき、彼が驚いた表情をしていたのは
「まさか本当に!?」という意味だったのだろう。


私は写真集を強く抱きしめ、その場に立ち尽くす。




耳が熱い。

心臓が張り裂けそうなくらい苦しい。





頭の中を言葉が駆け巡る。

手を引っ張った彼は私の耳元でこう言ったのだ。




















『今日の服、とてもキュートですよ。メガネも掛けて僕とお揃いですね』











「バニーのバカ」





呟かれた言葉に、顔が赤くなる。
首を少し動かしまだサインをしている彼を見ると、目線がバッチリ合う。


そして微笑まれた。


あの顔は・・・・上機嫌。間違いない・・・バレてる。





夜、なんだか彼と食事するのがすごく恥ずかしいことになりそうな予感だと
私はそう思ったのだった。




Surprise-attack
(不意打ちをしたのは私じゃなく、彼だった)
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