「荷物はコレで全部なの?」


「いえ、まだあります」

「後はバニーが宅急便に手続きをして送ってもらいますから、大丈夫です」


「そう」




1週間以内、と言われたので
に色々と準備をさせ、アニエスさんに連絡を入れた。

そしてある程度の荷物をトレーニングルームの休憩室に持ってきて
アニエスさんに説明をする。






「おい、本当にいいのかよ?」


「うっさいわね!私に黙ってたあんた達が口出さないで。ホラ、荷物運ぶの手伝いなさい。
外に車待たせてるんだから」


「へぇへぇ」







虎徹さんの言葉にいつもより怒気を強めて言うアニエスさん。
彼女の態度に虎徹さんはおろか、他のメンバーも口を挟むことをしなかった。

まぁ今は彼女の逆鱗に触れてしまえば、自分達もただじゃすまないと思っているのだろう。









「じゃあ先に車に行くわ。さぁ、行きましょう


「はい、アニエスさん」






に話しかけるアニエスさんは上機嫌で、車に行くよう促す。
それにも明るく返事をして、自分が持てる荷物を持ってアニエスさんと車に向かう。

ふと、が僕と視線を合わせ笑顔で小さく手を振り去って行った。
僕も彼女が見えなくなるまで笑顔で見送り、姿が無くなると手を収めた。







「なぁバニー、・・・大丈夫なのか、お前と離れて?」



「大丈夫ですよ。さっきのの顔見てませんでしたか?笑って手を振って行ったじゃないですか」



「いや、そうだけどさぁ〜・・・」







虎徹さんは心配な面持ちで頭を掻き、僕は小さく笑みを浮かべた。






「すっかりの父親みたいですね、虎徹さん。そんなに彼女が心配なら
アニエスさんを説得したらどうです?父親代わりでもできるはずでしょう、それくらい」



「いや、俺だってしたよ?だけどさぁ・・・」



「いいんですよ、今はこれで」



「お前・・・やたら自信満々だな。そんなにと離れてよかったのか?」







そう言われ、僕は目を見開かせ驚き・・・虎徹さんを睨みつける。








「あ、悪ぃ」


「良くはないです、本来なら僕は離れることには反対です。でも今はそうするしか方法が無いんですよ。
他にどんな方法があったというんですか?あるなら教えてほしいくらいです」



「す、すいません」








本当なら不服だ。

だが、今は離れて暮らすことしかできないし
アニエスさんの怒りを鎮めるには、僕がを手放すしかなかった。

僕が誠意を見せれば、きっとアニエスさんも思い直してくれる。
だからと離れることを決めた。



少しの間だけ、我慢をすればいい・・・。






「それに、にはこう言ったんです」



「あ?」




























『いいですか、。僕と離れ暮らすと考えるのではなく、アニエスさんの家に
泊まりに行くという感覚で考えればいいんですよ』



『アニエスさんのお家に泊まりに?』



『そうです。そうすれば、僕と離れて暮らすじゃなくて、今自分はアニエスさんの家に泊まりに来ていると
考えてあげればラクなんじゃないんでしょうか?』


『・・・・・・・・・』



『どうですか?できますか?』



『・・・うん、そう考えたらラクかも。私、アニエスさんのお家にお泊りに行くって考えればいいのね!』



『はい。ですから、アニエスさんにご迷惑ならないようにしてくださいね



『うん!分かったよバニー』


























「考え方を変えてあげれば、離れて暮らすというツライ気持ちにはさせたりはしないですから」


「お前も考えたなぁバニー」


のためなら何でも考えます」





こうしてあげれば、には「僕と離れて暮らす」というツライ気持ちにはさせまい。
しかし、彼女にはそう考えればいいと言った・・・僕本人は、正直ツライ。


普段以上に、が何をしているのかどうかが分からない。


学校に行って、友達と話して、帰ってきて、僕を待っている・・・の姿が
これからしばらくなくなるのかと思うと・・・今すぐにでもナーバスになりそうだ。






「はぁ〜・・・僕がやる気なくなりそうです」



「挫折が早ぇぞバニー」





「や、やぁ!ふ、2人とも!!」




「スカイハイさん」

「どうした?」






すると、突然スカイハイさんに声をかけられた。
いつもなら爽やかな表情でこちらに交わってくるのだが、なにやら今日は
どこか焦ったようにも思えた。








「じ、実はだな・・・バ、バーナビー君・・・き、君に言いたいことが、あるんだよ」



「僕ですか?何でしょう?」



「その、つまり・・・だね・・・」







普段、文句とか愚痴とか言う人じゃない。
しかし何か言いたそうな感じではあるが・・・スカイハイさん本人が
焦っているようで中々喋りださず、言葉が詰まっている。

頭の中で整理が出来ていないのか?







「あの・・・言いたいことがあるならはっきりとおっしゃってください」



「そ、そうだな・・・よし!じゃあ言おう!!」



「それで何ですか?」








言いたい事が定まったのか、スカイハイさんはやる気を取り戻した。









「バーナビー君」



「はい」



「だ、誰も見ていないからと言って・・・ああいった場所での、その・・・男女の、交わりはど、どうかと思うよ」



「はい?」







突然すぎる言葉に何が何だか分からない。


しかし、言われた言葉を理解していないわけじゃない。
ある程度なら分かる。

特に「男女の交わり」という部分・・・・・・多分、との行為のことだろう。

誰も見ていない・・・ああいった場所?


ふと、思い出し・・・僕は笑みを浮かべた。








「もしかして、見えてました?スカイハイさん」



「い、いやっ・・・見えてたというか、べ、別に君達の関係の事に首を突っ込むつもりはないよ!
た、ただ・・・誰も見ていないと思っちゃ困るわけで、だね・・・」



「見えてたなら見えてたって、はっきり言っていいんですよ。僕怒ったりしませんから」



「おい、お前ら何の話してんだ??」








虎徹さんの知らない話を、今現在僕とスカイハイさんは空中で広げている。

何の話かというと・・・数日前の、との行為。
そう・・・窓に手を付かせ、後ろから攻めあげていたあの日。

僕の目からはスカイハイさんが飛び回っているのが見えていた。
しかし、彼の目には多分見えないだろう・・・むしろ見えるはずもないだろうと思っていたが
どうやらヘルメットのレンズを拡大させて、見てしまったんだろう。

そうか・・・道理でこの人最初から、焦っていたのか。

僕はゆっくりとスカイハイさんに近づいて、肩に手を置いて――――――。




















「この事、誰にも言わないでくださいね。のああいう顔、僕以外の人に見せるつもりは無かったんで。
今回は特別です。しかし貴方のレンズに見えていたのは驚きでしたけど・・・・覗き見は、れっきとした犯罪ですからね」


「!!・・・・・・わ、分かった・・・た、他言無用だ。約束しよう」






この人のことだ、口は堅いはず。
むしろこういったことには、多分無知だ・・・口外はしないだろう。











「貴方が物分りのある人でよかったです。でも・・・・・・あの日の、可愛かったでしょ?」


「・・・あ、あぁ」


「秘密は守ってくださいね。のああいう顔、特別に見せてあげたんですから」


「わ、分かったよバーナビー君」









そう言ってスカイハイさんは凄まじい速さでどこかへと走って行った。







「お、おい・・・スカイハイ何処行ったんだ?」



「さぁ。・・・・・・・・・・・・トイレかもしれませんね」



「そ、そうか」









トイレに向かったのはあながち間違いじゃないだろう。
あの日のを思い出してしまったか。









「さぁ、を見送りに行きましょう虎徹さん」



「お、おお」








そう言って、休憩室から外へと歩みを進める。


しばらく・・・そう、しばらくの間我慢すればいい。
僕が誠意を見せれば、早くが僕の元に帰ってくる。


それに離れていても、電話やメールはしていいし・・・逢うことだって可能だ。





許される範囲で、許されていることをすればいい。



だけど―――――――。











「やっぱり、離れるのは嫌ですね」




「それアニエスに言ってみろ?お前、ゼッテェ殺される」







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