『お届けモノです!』




小包が届いた。

小包と言っても、綺麗な袋に入った小さな箱。
宛名は私で、差出人が―――――。






「あ」






【差出人:バーナビー・ブルックスJr】



差出人の名前のところにバニーの名前が書いてあり
私は急いで袋から、箱を取り出し開けた。


其処には綺麗な花の髪留め。

どうして今になって髪留めなんか?と思っていたが。









「もしかして、バニー・・・あの時」








2人で電話をしながらデートしたことを思い出した。


あの時、バニーは私に「何か欲しいモノはありますか?」と尋ね
私は「髪留めが欲しいかなぁ」と答えた。

そのあと少し間があったが、何だろうと思っていた。


思っていた矢先の、このプレゼント。






「バニー・・・ッ」









私は髪留めをぎゅっと抱きしめて、彼の名前を呼んだ。


大切にしなきゃ。


この髪留めはなくしちゃいけない・・・大切にしておかなければ。

バニーが私のために、私のためだけに買ってくれた
世界でたった一つの髪留め。

大袈裟かもしれないけれど、凄く嬉しい。













「バニーにお礼のメールしよう」










とにかく、まずはお礼。

私は携帯を出して、メールを打ち込む。

声を聞いてしまえばこの前の事が鮮明に思い出され
何を言って良いのか分からなくなる。

とにかく嬉しい気持ちを伝えたいから
メールにいっぱいの嬉しい気持ちを詰め込ませながら文字を打ち込んだのだった。




それからしばらくの間。

私とバニーは電話することなく、ただメールだけの会話を続けた。
声が聞けない寂しさとか辛さはあったけど、それよりも
やっぱりあの日の電話でのことを思い出してなのかなかなかお互いの声を聞けずに居た。



聴きたいけど、恥ずかしくて、聴けない。


私の中ではそんな気持ちが駆け巡っていた。












「ただいま」



「あら、おかえり」



「アニエスさん」





ある日、私が戻ってくると
アニエスさんがドレスを身に纏いパタパタと動き回っていた。

そんなに動いたら皺になるのに、埃が付いちゃうのに・・・と、思っていた。







「どこかでパーティでも?ま、まさか・・・アニエスさん婚活パー・・・っいたぁ〜」


「違うわよおバカ」






私が言ってはならない単語を放とうとした途端
アニエスさんの拳骨が私の頭を直撃。

私に制裁を加えた後、かの人はやはり家の中をパタパタと走り回っていた。
拳骨の直撃した頭を私はさすりながら、アニエスさんの行動を見ていた。





「婚活とかバカなこと言わないで。結婚なんかしてる暇ないってーの」



「じゃあなんでまたそんな格好を?」



「今日、ヒーロー達の所属会社やスポンサーを含めたパーティがあるのよ。もちろんヒーローも参加のね」



「へぇ〜」





だからアニエスさんはドレスか。

ていうことは、バニーはあのお気に入りの赤のスーツかな?
などとアニエスさんの行動を見ながら、バニーの服装をちょっと気にしていた。

一応スーツのブラウスはアイロンをかけてあるし大丈夫。
スーツもこの前クリーニングに出したし、分かりやすいところにかけておいたから問題はない。

分からなくても、バニーが分かるような場所に置いてるし。
むしろ、バニーが元々置いていた場所に戻しただけだから多分見つからないということはないだろう。







「・・・・・・・・・」




「どうしたの?黙り込んだりなんかして」




「え!?・・・あ、い、いえっ」




アニエスさんの言葉に我に返った。


私・・・思いっきりバニーの心配してるし。
むしろ彼は今まで1人で暮してきていたんだから心配しなくても大丈夫だ。

心配しすぎだ・・・バニーは大人なんだから。








---------------PRRRRR・・・!!





すると突然、私・・・ではなく、アニエスさんの携帯が部屋中に鳴り響いた。
アニエスさんは「こんな急いでるときに」と言って電話を取る。






「もしもし?・・・えぇ、そうよ・・・・・・なんですって!?」







電話に出て数秒。

驚いた声を上げ私までもびっくりした。








「そう・・・そうなの。えぇ、えぇ分かったわ。じゃああとはこっちで何とかするわ・・・えぇいいのよ、じゃあね」









電話を終えたのか、アニエスさんは凄い力で携帯を閉じた。
もうその音は「パチン」じゃなく「バチン!!」と何やら怒っているような音にも聞こえた。

しかも電話を閉じて、重いため息と同時に髪の毛を掻きあげる。


こ、この状態は結構深刻な感じがアニエスさんの背後から漂うオーラで分かる。








「ど、どうかしたんですか?」




「どうもこうも。今日私と一緒に行く新人の子が、高熱を出して来れないとか言ってきたの」




「は、はぁ」




「まぁヒーロー達に移しちゃ悪いと思ってのことだけど。ちょっと、どうするのよ・・・時間ないって言うのに」








そう言いながらアニエスさんはドレス姿で
ウロウロと動き回る。

コレは本当に深刻な問題らしい。


どれくらい深刻な問題なのか私には分からないけれど、アニエスさんの焦りようでは相当なのだろう。



私が助けてあげたいけど、一般人の私が出来るようなことじゃないし。







「わ、私がお手伝いできたらいいんですけどね」



「え?」







でも何かしてあげたいと思った私は思った言葉を零した。


するとアニエスさんはそれをすかさず拾う。
そして、立ち止まり私をジロジロと、上から下・・・ちょっと舐め回すように見ていた。

な、何かこの人の視線が凄い痛い・・・なんて思ったりもしていた。







「・・・・決めた」



「は、はい?」



、アンタ代理して。むしろしてちょうだい!」



「へ?・・・えっ??」







アニエスさんの口から零れた言葉に私は目が点になった。

だ、代理って・・・その高熱で休む人の代理ってことだよね?

つまり・・・・それって、つまり・・・・・・。







「え!?私、そんなドレスとか持ってないですよ!!むしろ、そんな会場に素人が入って良いと思うんですか?
アニエスさん、偉い人なんですから。素人入れたりしたらアニエスさんが怒られます!!」



「大丈夫よ。こっちで色々と手は打つつもり。お願いよ・・・私の一生のお願い!こういう頼みごとは
これっきりにするつもりだから!!」





そう言ってアニエスさんは手を合わせて私に懇願する。

滅多に人に頼みごとをしないあのアニエスさんが私に懇願している。



目の前のアニエスさんは困っているわけだし、私も困っているなら手伝ってあげたい。





「わ、私・・・何も出来ませんよ。無茶振りされても対応できませんからね」



「え?じゃ、じゃあ・・・」



「アニエスさん、困ってるみたいですし・・・私でよければ」



「ありがと〜。ホント貴女が物覚えの良い子に育ってくれてよかったわ」





困ってるなら助けてあげたい。


この人には色々と助けてもらったことが多い。
だからなるべくその分だけの恩返しがしたい。



きっと何年掛かるか分からないけれど・・・少しずつでいい、アニエスさんに感謝したいから。



でも、初っ端の感謝したいことで・・・まさか代理でパーティに出るなんて。

私はおろか多分、アニエスさんも予想はしてなかっただろ。







「とにかく時間ないの!服とかメイクとか、お店でやってもらうから!!」


「あ、は・・・はい。あー、ちょっと待ってください」


「早くしなさい」






急ぐアニエスさんの動きを止め、私はバニーから貰った髪留めを箱から取り出した。



バニーも会場に来るなら、気づいてくれるかな。

ドレスも着て、メイクもしている私にきっと誰も気づかない。
でもこの髪留めをしてたら・・・バニーは、気づいてくれるかな・・・?

そうでなくても、私は・・・彼の姿が見れればいいのだけど。







「(気づいてもらえるなんて、わがままだよね)」



!早くして、行くわよ!!」



「はい、今行きます!」






そう呼ばれて私は髪留めを大切に持ち、アニエスさんの元に行った。




























「バニー、準備できたか?」


「え?・・・あぁ、はい」


「携帯見て、何ニヤけてんだよお前。しゃきっとしろよ、キング・オブ・ヒーローさん。
俺は先に行ってるぜ」


「すいません虎徹さん。僕もメール打ち終えたら行きます」


「早くしろよ〜」


「はい」








From
Title ありがとう
Time ××/××/××
----------------------------

バニー、髪留めありがとう。
アレってデートの時に買ってくれたものかな?
それだったら凄く嬉しいよ。
大切に使うね。今度会えたとき
この髪留めしていくから。そしたらきっとすぐに
バニーに私がココに居るって気づいてくれるよね。
その時は気づいて、声・・・かけてほしいな。
貴方が、私には必要だから。

------------END--------------




「・・・・・・・・・・」







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