バニーの部屋に戻り、私と彼はひとまず着替えを済ませ
リビングに待たせていたアニエスさんの下に戻ってきた。
かの人はいつものように腕組みをしながら待っていた。
「2人とも揃ったわね」
「アニエスさん・・・あの、私・・・っ」
ひとまず昨日約束を破ったことを謝らなければと思った私は
言葉を発しアニエスさんに謝罪をしようとしていた。
「約束を破ったこと・・・今更謝るって言うの?」
「・・・・・ごめん、なさい」
「あれほど守りなさいって言ったのに。貴女が約束を破るなんて、信じられないわ」
「・・・・・・・」
アニエスさんの言葉に私は何も言えなくなった。
反論しようとは思わない、だってあの人の言いつけを破ったのは私だから。
この人との約束を破ったことが罪悪感として私のナカに残っていた。
「待ってくださいアニエスさん。ばかり、責めないでください」
「バニー」
するとバニーが私の前に来てアニエスさんを見る。
「ばかりが悪いわけじゃない、僕がいけないんです。貴女との言いつけがあったを
自分の判断で連れ去ってしまったこと。全ての原因は僕にあります、だから」
「待って。違うよバニー・・・悪いのはバニーじゃないよ、私が、私が悪いの」
「いいえ、そんなことありません。元はといえば僕がいけないんです・・・全て僕が」
「違うよ。だから私が」
「いつまでそれを続けるつもりなのアンタたちは?」
目の前のアニエスさんはため息を零しながら私とバニーを見ていた。
その声にお互いの事を庇いあっていた私達は黙り込む。
リビングに沈黙が走るとアニエスさんはため息を零した。
「私から言わせてみれば、2人とも悪いに決まってるじゃない。それくらい理解してよね?」
アニエスさんの言葉に私とバニーは黙る。
確かに、私もバニーも両方・・・悪いことは明白だ。
「もういいわ」
「アニエスさん・・・私、わたし、やっぱり・・・バニーと・・・・・・離ればなれは、嫌です」
呆れたアニエスさんに私は最後の訴えをする。
「私、やっぱりバニーの側に居たい。彼と、その・・・愛し合ってること、言わなかったことは謝ります。
でも、でも!・・・私、バニーのこと大好きだから、バニーの側に・・・居てあげたいから」
「」
バニーの側に居て、熱を感じたい。
バニーの側に居て、彼を包んであげたい。
彼とこれからもずっと、過ごしていきたい。
皆に迷惑ばかりかけて何も出来ない私だけど
大好きな人の側に、せめてバニーの側にいてあげたい。
「だからアニエスさん、私・・・っ」
「もういいわ」
「でもっ」
「聞き飽きたの」
「アニエスさん、僕からお願いします!は必ず僕が・・・っ」
「もういい加減にして!そんなに離れたくなければ好きにすればいいでしょ」
「へ?」
「あ、あの」
アニエスさんの言葉に私もバニーの驚きの表情が隠せなかった。
お互い顔を見合わせ、再びアニエスさんを見る。
アニエスさんはと言うと、呆れたようなため息を零していた。
「勝手にしなさい。今までの事は全部チャラにしてあげるから」
「あ、あの・・・アニエスさん?」
「ど、どういう事ですか?昨日まであんなに反対していた貴女が、どうしてそんな急に?」
「気が変わったのよ。の荷物は今度まとめて送り返すわ、それでいいでしょ?」
すると、突然アニエスさんの携帯が鳴り始めかの人は電話にすぐに出て
しばらく会話をして携帯を閉じて、玄関のほうへと歩いていく。
「私は仕事に戻るから。バーナビー・・・コールには遅れて出るんじゃないわよ?」
「あ・・・は、はい」
「」
「は、はい」
「あんまりバーナビーの手を煩わせないで。貴女がしっかりその男、サポートしてあげるのよ」
「は、い」
「じゃあ」と言いながらアニエスさんは部屋を出ていった。
あまりに嵐のような時間が過ぎて、何が何だか。
「ア、アニエスさん・・・どうしちゃったんだろう?」
「僕にもよく。とりあえず、理解できるのは・・・元の生活に戻っていいということですよね」
「だよ、ね」
そう言いながらお互いの顔を見合わせる。
目が合った途端、口元が緩み顔が綻ぶ。
「バニーッ」
「」
互いの名前を呼び合い、抱きしめあう。
「嬉しい・・・私、バニーの所に戻ってこれた」
「僕も嬉しいです。が、僕の側に戻ってきてくれたことがすごく嬉しいです」
バニーが私を抱きしめて頭を優しく撫でてくれる。
また、この人のぬくもりを側で感じれる、この人の側に居ていいんだと思った。
「それにしてもアニエスさん、一体どうしたんでしょうかね?」
「うん。昨日の今日で心変わりしたの、ビックリしちゃった」
体を離し、再びアニエスさんの話に戻る。
昨日まであんなに反対していたのに、今日になって突然「戻っていい」なんて。
私とバニーが近づくことも反対していたのに
どうして突然そんなことを言い出したのか分からなかった。
「きっと、昨日僕らが会場を去った後何かあったんですかね?」
「でも、バニーのPDAは鳴ってないよ」
「えぇ。携帯にも着信はありましたが、どうせ戻って来いという言葉しか出ないと思っていたので
電源は切ったままでしたし」
「私も。カリーナから着信入ってた」
「アニエスさんの心が動くほどのなにかあったんですよねきっと」
「そう、だね」
あの人の頑固な心が動くほどの何かあった、なんてある意味驚きではある。
明日・・・聞いてみようかな?
「」
「ん?」
名前を呼ばれバニーの顔を見ると、軽く唇が触れてきた。
思いがけない行動で私の顔が赤くなる。
「フフ・・・そういう顔」
「ぇ、え?」
「そういう、顔を真っ赤にした表情がまた僕の近くで見れると思うととても嬉しいです」
「やっ・・・う、うぅ・・・」
「またを独り占めできるんですから、喜んでくださいよ」
「う、嬉しいし喜んでるよ」
すぐこうやって甘えてじゃれてくるバニー。
側に居ていつもされていたことなのに、何だろう・・・久々すぎて恥ずかしい。
昨日は昨日でずっと甘い言葉を囁かれ愛を体中で感じていたから
それとは別にスキンシップでこういうことをされると、久々で恥ずかしくてたまらない。
「」
「な、なに?」
「おかえりなさい」
優しく、私だけに見せる甘くて眩しい笑顔。
彼の腕の中で感じる、幸福。
そして、投げかけられた・・・「おかえり」という言葉。
「バニー。・・・・・・ただいま!」
私は満面の笑顔で、彼の元に、彼の腕の中に、戻ってきた。
Im’Home
(「おかえり」「ただいま」と言える場所に戻ってきた)