「ふぅーん・・・そんな事がねぇ」


「元に戻ったのに、これじゃあ離れてるのと同じだよ」






次の日。

私はカリーナに此処数日の事を話した。
本当は話さないつもりだったのだが、どうすることも出来ないもどかしさに
結局、私はカリーナに助けを求めたのだ。





「いいんじゃない。兎に禁欲させるチャンスだと思えば」


「き、禁欲って・・・。別にそんなんじゃ・・・」


「どーせ、あんた達・・・パーティ会場抜け出した後どこそこホテル潜りこんで
身を隠すがてら、あ〜んなことやこ〜んなことに耽ってたんでしょう?」


「そ・・・それは・・・っ」





カリーナの言葉に何も言えなくなる。

確かにパーティ会場を抜け出した後、バニーとホテルで一夜を共にした。
もちろん「何もなかった」なんて嘘でも言えない。

私も彼も、お互い離れていた期間があり
少しでも触れ合ってしまっただけで歯止めが利かなくなっていたのだから。





が側に居ると大体惚気てんだから、いいのよ。あの兎にはコレくらい丁度いいわ」


「カリーナ酷いよぉ〜」


「私に助けを求めにきてる時点で間違いよ」



「なになに?何の話?」
「面白そうな話してるじゃない二人とも」


「エミリー、ジェーン」





私とカリーナが話していると
彼女の友達である、エミリーとジェーンが話に加わってきた。





「私なんかより、二人に聞いたら?」


「何?どうしたの?」


「うーん・・・あのね・・・」





半ば私を見捨てた?カリーナ。

私は今自分の置かれている状況を、ある程度二人に話すのだった。










「ふぅーん・・・成る程ね」


「今までバニーさんと離れてたんだけど、いざ彼との生活に戻ったら
親戚のオバサンが邪魔してるって訳か」


「何ていうか、そんな感じ」



アニエスさんはとりあえず親戚のオバサンって設定。
実際のところ母親代わりなのだが、そういうのは私が言う事ではなく
あの人が色々と私の事で動いてくれる際に出しているようなもので実の所何のつながりも無い赤の他人だ。

タイガーさんもコレと同じである。




「しかし、親戚のオバサン・・・恐るべしよね。センサーでも付いてるの?」


センサーなら、兎ヤローにも付いてるわよ」


「あ、確かに。からバニーさんの話を聞く限り、そんな感じする」


「カ、カリーナ!そういう言い方やめてってば!ジェーン、そんなんじゃないって!」






センサー云々の話題は置いといて。

本当に現実問題、困っているのだ。
これでは本当に離れているようでツライ。

同じ空間、同じ部屋にいるはずなのに・・・遠くに感じる。


バニーは「大丈夫です・・・多分」とぼやいていたが
正直なところ大丈夫でも何でもないように見える。


ずっと離れていた期間もあって、ようやく触れ合ったのがあのホテルの日だけ。
それ以降彼から抱きしめられたり、キスしてもらったりもしていない。


全てそれはアニエスさんからの妨害があるから。



ちょっと触れただけで、痛々しい機械音が鳴って
私とバニーの間を引き裂く。






「少しでもいいんだ・・・せめて、バニーに抱きしめてもらいたい」







キス以上の事をして欲しい、なんて今は望まない。


ただ、抱きしめて欲しい。


バニーに、今は・・・抱きしめてもらいたい。








「バニーさんが触れてダメならさぁ」


「逆はどうなの?」


「え?」





エミリーとジェーンの話に、私はハッとなった。






















「え?から・・・ですか?」


「うーん、モノは試しって思うんだけど」





夜。
バニーも取材等を終えてマンションに戻ってきたが
相変わらず・・・私と彼との間は微妙な隙間というか距離が出来ていた。


そして椅子に腰掛け食事を終えた彼に、ある話を持ちかけてみた。





「試し・・・ですか」



「私からバニーに触れるのは、やってないし。いつもはバニーから私に触れるから
逆ならアニエスさんからの電話とか来ないんじゃないかなって、友達の提案」



「んー・・・そうですねぇ」





エミリーとジェーンの提案。


それは「私からバニーに触れる(抱きつく)」というものだった。


普段は、バニーから私に抱きついたり触れたりとすることが多い。
多いと言うよりも、それが日常茶飯事だ。
だから、私から抱きついたりするのが滅多にない。それを逆手に取ったのだ。





「バニー・・・私からのはイヤ?」


「イヤというわけじゃないですけど・・・むしろ、嬉しいですよ。から抱きつかれるとか」


「じゃあやってみる?」


「モノは試し・・・ですからね。やってみましょうか」





バニーは椅子から降りて床に座りながら私に言う。

多分、私も彼も触れ合えば確実に機械音が邪魔をするだろうと結論付いている。
しかしモノは試し。

もしアニエスさんからの着信があっても私の方から謝ればいい。
何にせよ私からバニーの触れたのだから、其処はバニーは悪くはない。


そう思いながら私はバニーに抱きつく。



抱きついて、ものの数秒で私の携帯かバニーのPDAが鳴り響く・・・それがいつもの事。



しかし、今は・・・・・・。










「・・・鳴りませんね」


「鳴らないね」









私の携帯は鳴らない。

もちろん、バニーのPDAも鳴らない。



私が抱きつき、バニーがゆっくりと私を包み込むように抱き返す。

それでも機械音が部屋に響くことは無い。



つまり、これは・・・・・・。






「成功、ですね」


「うん!」





成功という事になる。


機械音が響かない、この瞬間を待ちに待った。
私はめいいっぱいバニーに抱きつく、もちろん彼も強く私を抱き返してくれた。





「エヘヘ、バニー」


・・・あぁ、やっとをこの腕で感じれる事が出来た。
こんなに待ち望んだ日はありません」


「私もだよバニー」





顔をあげるとバニーの顔が近い。

ジッと私を見つめるエメラルドグリーンの瞳が突き刺さり
それだけで体中が熱くなり、心臓が止まりそうになる。

そっと彼の手が私の頬に触れ、唇をなぞる。








「・・・・・・









バニーの顔がゆっくりと近付き、唇が触れそうになる。
しかし、そこで思わず私はハッとなり思わず彼の唇に自分の手を当て、動きを止めた。






「え?・・・な、何故?」



「ちょ、ちょっと待って」



「こんな良いムードなのに、今更待てだなんてやめてください」



「バニーから触れたらアニエスさんからの着信入っちゃう」



「じゃあどうしろと言うんですか?」



「だから」





そう言って私は膝立ちをして、少しバニーより目線を上にと持ってきて
顔をゆっくり近づけ、軽く唇を触れさせた。





「私が、貴方にキスをするの」



「へぇ・・・からのキス、ですか」



「こういうのも、イヤ?」



「いいえ。・・・・・・じゃあもっと僕に触れてください



「・・・ぅ、ぅん」




そう言って彼に何度もなんども、唇を触れさせた。


それだけで体中の血液が沸騰するほど熱い。





「んっ・・・バニィ・・・」



・・・もっと、もっと触れてください。僕に君を感じさせて」



「ぅん」




バニーに強請られ、私は彼の首に自分の腕を回し
軽く触れ合っていた唇を、深いものへと変えていった。




舌を絡めて。

唾液を交えて。

吐息を合わせて。




何度も、なんども・・・お互いを求めるように。





でも、私から触れる・・・というのは別に目的があった。
























「我慢、させる?」


「そう!昔、雑誌か何かで見たんだけど・・・女性が主導権を握るの。
もし、彼が触れそうになったら”待った“をかけて、彼を焦らすに焦らすのよ」


「そうすることで相手の欲求が高まって、待ったと解いた途端ガオーッ!・・・ってワケ」


「普段とは違うのが味わえるって話よ。どう?から触れるんだったら、こういうのやってみてよ〜」

「バニーさんがいつも主導権握ってるなら、逆になってみるのもいいんじゃないの?」

「奉仕活動!奉仕活動!」


「奉仕活動、か」



エミリーとジェーンの話に何だか無駄に納得してしまった。

確かに、いつも主導権はバニーが握っている。
だったらコレを気に私が主導権を握ると言うのも悪くは無いのかもしれない。



「ちょっと、二人とも・・・・・にヘンな入れ知恵しないで」


「いいじゃんカリーナ」

「入れ知恵じゃなくて、悩める乙女にアドバイス。で、・・・やってみてよ?」

「カリーナの言葉は無視して。やってみる価値はあるよ」


「うーん・・・やって、みよう・・・かなぁ」



「ちょっと!?」




私が挑戦してみよう、という声を上げると
カリーナが凄い勢いで私に寄ってきた。

その表情は凄まじく、恐ろしいもの。






「何考えてんのよアンタは」


「だ、だって」


「唯でさえセーブされてる日常に、アンタがタブー犯したら次の日どーなるか分かってんの?
アンタ溺愛のバーナビーの事よ、絶対足腰立たなくなるわよ!?」






カリーナの言葉に、確かに・・・とはなった。

セーブ(というか妨害?)された日常を
今現在送っていることになる。しかし、それを私からではあるが触れてしまえば
次の日、無事だとは言い難い・・・むしろベッドから動けず、学校欠席は免れない可能性も。





「でも」


「何よ」


「側に居ても、何も出来ないのは・・・嫌だよ私」





好きなのに、どうして触れてはダメなの?


好きなのに、どうして許してもらえないの?



側に居ても何も出来ないのは、本当に苦しくてたまらない。



次の日、自分がどうなってるかなんて
想像ができないわけじゃないけれど・・・それでも・・・―――――。








「やるの、私だから・・・ぜーんぶ、私のせいだよ。バニーは悪くないもん」



「はぁ・・・アンタの兎バカにはホント呆れた。もう勝手にすれば。その代わり・・・どーなっても知らないからね」



「いいよ。でも、ありがとうカリーナ」



「何よ?」


「心配してくれて」




私が笑って言うと
彼女は「べ、別にそんなんじゃないわよ」と頬を膨らませて言うのだった。


そして、今に至る。
















「んっ・・・・・・はぁ・・・もう、離れてください。これ以上してしまえば・・・っ」



キスを何度も繰り返していたら、バニーから体を離された。
彼は私から顔を逸らし、眼鏡を上げる。

その顔から抑えきれない表情。
きっと彼の中に眠る獣を少しずつ呼び覚ましているようにも伺えた。

私は彼のおでこにキスを落とし、もう一度視線を合わせる。






?」


「大丈夫・・・今日はバニー、触れなくていいから」


「え?」


「私から、バニーに触れる。だからバニーは私に触れちゃダメだよ、アニエスさんから電話掛かってきちゃう」


・・・まさかっ」






貴方が触れてイケナイ、というのなら

私が触れてイケナイ、というのは何処にもないはず。




貴方だけ咎められて、私だけ咎められないのは・・・おかしい。



私だって、罪は犯す。

そう・・・『貴方に触れてしまった』という、大罪を。


貴方と共に、背負わせてください。




罪作りな少女−Eve−
(罪を背負うのは貴方だけ、とは限らない)

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