「さっきテレビ見てたよ」
「そうですか、ありがとうございます」
出動を終え、僕はマンションへと戻ってきた。
玄関の扉を開け、リビングに進むとが丁度お茶の準備を終えた頃だった。
は床に、僕は椅子に座り、カップに注がれたコーヒーを飲む。
そして話は先程の救出劇の話になる。
「凄いねバニー。あのエイリィ・マシューを助けるんだから」
「そんなに有名な方なんですか?」
「有名も有名、凄い人気の歌手なんだよ!ホラ、前私がモデルのバイトした時のCMソング歌ってたのがこの人なんだよ」
「あぁ・・・」
の話にようやく彼女がどういう人物なのかを理解し始めた。
というか、あの時はしか目に入っておらずCMソングも右から左に流れている状態だった。
ていうか未だに覚えているかも曖昧だ。
「どんな人だった?綺麗だった?」
「うーん・・・・」
コレは率直な感想を述べたほうがいいのだろうか?
多分は「テレビに映ったエイリィ・マシュー」の姿しか知らない。
だが実際の彼女は何だかとても口が悪く、ワガママに見えた。
いや、その後のスタッフへの発言からしてかなりワガママだろう。
バイクに乗ってその場を去ったが、彼女の声がヒーロースーツを介して僕の耳に入ってきていた。
僕の率直な感想を述べてしまえば、彼女の中でのイメージが崩れてしまう恐れがある。
此処は当たり障りなく答えるべきか。
「綺麗な人ではありました」
「そうなんだぁ。テレビに映る人だもんね綺麗で当たり前だよね」
は僕の答えににっこりと微笑んでくれた。
どうやらこの答え方で間違いはなかったらしい。
しかしあのエイリィとかいう歌手・・・・綺麗だけれど、ワガママ放題の高飛車なお嬢様・・・と言ったところだろう。
「綺麗なら・・・・バニー・・・・・見惚れたりしなかった?」
「え?」
の発言に僕自身驚いた。
見惚れる?彼女の一体どこに見惚れるというのだろうか?
確かに綺麗な人ではあったことに間違いはない。
だけどそんなのは外見だけの問題で、実際の中身はというとなかなかに酷いものだった。
世の中の男はああいった女性が好きなのかと思うと、案外見る目がないものだなと思ってしまう。
「・・・どこでどうすればそうなるんですか?」
「だ、だってエイリィ・・・・有名人で、美人だし、バニーとお似合いみたいに見えて」
は目線を僕から外し、カップの中のコーヒーを見ていた。
目線は外しているものの、頬はほのかに赤みを帯びていた。
僕は手に持っていたカップをテーブルに置き、床に座り込んでいるを後ろから抱きしめた。
「っ・・・・バ、バニー!?」
「ヤキモチ、ですか・・・?」
「ち、違うもん」
「違うんですか?」
耳元に近づき、息を吹きかけながら喋りかける。
「やっ・・・バニーッ」
「顔や耳をこんなに真っ赤にして・・・僕から視線を外すなんて、嫉妬以外の何があるって言うんです?」
「違っ・・・だから、これは・・・っ」
「何なんですか?嫉妬以外の何があるんですか、教えてください」
恥ずかしがるをからかうのが楽しくなり
僕は耳に息を吹きかけながら、また手を彼女の体中へと這わせていく。
その手を止めたいのかは僕の手に自分の手を重ねた。
「もっ・・・・バニーッ、ダメってば」
「何がダメなんですか?僕は何もしてませんよ?が可愛いから悪戯してるだけです」
「それがダメだって言ってるの。やっ・・・・離してってばぁ」
「いいじゃないですか。ちょっとくらい僕の相手してください」
「貴方って人は・・・・もっ、やぁ・・・」
の耳を甘く噛み、舌で優しく舐め上げる。
時々息を吹きかけて楽しんでいた。
恥ずかしく身を捩じらせるの姿にさらに悪戯心がくすぐられ、手が止められなくなる。
『エイリィさん。先程はとても怖いされたようですが大丈夫でしたか?』
『はい、もう大丈夫です。怪我も大してしていなかったので大事には至りませんでした』
するとつけっ放しにされていたテレビから先程僕が救出したエイリィ・マシューがにこやかな笑みを浮かべ
取材陣の問いかけに答えていた。
「あ、エイリィだ」
「そうですね。ていうか、よそ見してる暇があったら僕の相手をしてください」
「な、何でそうな・・・・もうだからやめてってばぁ!」
テレビに映る人物よりも、僕の興味はただただ目の前にいる愛すべきただ一人だけ。
以外の誰かに惹かれるなんて天地がひっくり返ろうが有り得ない。以上の人なんてこの世には存在しないのだから。
『これもすべて助けてくださったバーナビー様のおかげです』
「ふぇ?」
「え?」
聞き捨てならない言葉にはおろか僕までも動きが止まり、テレビを見る。
『あの御方に助けていただき、今こうやって皆さんの前に現れることができました。バーナビー様には感謝したりない程のご恩を作ってしまいました』
『そうですか』
『バーナビー様には本当に感謝しています』
『なるほど。それほどバーナビーさんに感謝しているんですね』
『感謝を通り越して、もうあの御方に助けていただくのは運命だったのかと思っています』
レポーターの問いに、テレビに映る歌手は嬉々として僕のことを答えていた。
手の動きが止まれば、開いた口が塞がらない。
「バニー・・・バーナビー様って・・・」
「人命救助はいつもの事です。僕を様付けする人なんてファンだったらいくらでも居ます」
「だけど」
「フフ・・・やっぱりヤキモチだ」
「え?・・・きゃっ!?」
僕はついにを床へと押し倒す。
テレビを見ていた視線も、わざと外した視線もようやく僕のほうへと向いた。
「さぁ、観念してください」
「な、何を?」
「決まってるじゃないですか。認めてください、自分が嫉妬している事を」
「だから、違っ」
もういい、聞き飽きた。
僕は自分の指をの唇に押し付け出てくる言葉を塞いだ。
そして指をゆっくりと離し、顔を近づける。
認めたくない赤く染まった顔が間近にあり、それを目に焼き付けるだけで僕の心臓は鼓動を繰り返す。
「強情な子だ。どうやって吐かせてやろうか」
「うっ」
「君を素直にする方法はいくらでもあるんで・・・・まぁ、じっくりと時間をかけて・・・ね、」
「バニー・・・ッ」
噛み付くようなキスをし、君の嫉妬に焦がれた体を
僕の熱で嫉妬も出来ないくらいその中に打ち込んであげよう。
僕が見ているのは君という、たった一人の存在だということをその体に今一度・・・・教え込んでやる。
「はぁ〜・・・・愛しのバーナビー様・・・・今度はいつ会えるのでしょうか。エイリィは胸が張り裂けそうで死にそうです」
歌姫ヨリモ夢中ナモノ
(どんなに美しく着飾っても愛する君の魅力に勝るものはいない)