「えーっと次は・・・」

「テレビのインタビューですね」

「せめて雑誌が良いんだよなぁ〜」







とある日の、事。

僕と虎徹さんは歩きながら喋っていた。


相変わらず仕事のことで虎徹さんは駄々をこねている。
前よりかは文句は言わなくなったけれど・・・やはり、いい大人なのだから
聞き分けくらいはしてほしいものだ。










「虎徹さん。いい大人なんですから駄々こねるのは」








「あ〜ん!バーナビー様じゃないですかぁ〜!」








「え?」

「ん?何だ?」





すると、前方数百メートル先から凄まじい速さでこちらに向かってくる影があった。
途端何だか背筋に寒いものが走る。








「バーナビー様ぁぁああ!!!」




「どわっ!?」




「やっぱりバーナビー様ですわ!!こんなトコロで会えるなんて偶然ですわね」



「え・・・えぇ、そう・・ですね」







やってきた人物は虎徹さんを払いのけ、僕の目の前に現れた。





エイリィ・マシュー。




シュテルンビルドでは人気歌姫としてその名を知らない者は居ない。







「今からどちらに行かれますの?」


「テレビのインタビューで・・・3階の部屋に」


「やだ。私、今日3階のスタジオで歌番組の撮影があるんですの。本当、偶然ですわ!」


「そ・・・そうですね」


「お時間があれば見にいらしてください。では、失礼します」









まるで嵐のように彼女は此処を去っていった。




偶然、という言葉で果たして片付けられるのだろうか?
正直・・・僕の中では「偶然」というよりも、むしろ「偶然を装った」としか思えない。

僕は深い溜息を零した。








「あの子、相当バニーに気があるな」


「勘弁して下さい」







虎徹さんは立ち上がりながら僕に言う。


正直勘弁して欲しいのは本音だ。







「偶然にしては出来過ぎてると思いませんか?」



「ほぼ毎日、バニーが居る所にあの子現れてるからな。完全に図ってるとしか思えん」



「確実に僕のスケジュールを把握して、同じように自分のスケジュールを僕の日と合わせているんでしょう。
ああいう人のやることってよく分かりません」










彼女を助けた次の日からこれは始まった。


最初は本当に「偶然」という言葉で片付けられるモノだった。
しかし、それが段々と・・・ほぼ毎日のように続けば、誰だって怪しむに決まっている。


僕の行く先々に、彼女が現れる。


あたかも偶然を装ったかのように・・・。



おかげで心身共に疲れている。







「いっそ朝が来なければいいって、最近思うようになりました」



「大分お疲れだなバニー」



「正直苦手です、ああいうタイプの人」



とは180度違うからなぁ」



「彼女とを一緒にしないでください」



「例えてる話だろうが」









虎徹さんの話を聞いて、確かにとは似ても似つかなければ
180度まったく違いすぎている。


同じ女性なのに、どうしてこうも違うのか分からない所だ。







「ホント・・・僕がこんなんだから、に心配かけっぱなしです」


「何で?」


「マンションに戻っても、の相手すら出来ないなんて。
せっかくアニエスさんにも僕らの関係を認めてもらったというのに」


「あ・・・そ、そうか。そらぁ、大変だな」






やっと、周りの人達には認めてもらった関係。


あのアニエスさんもようやく僕らの関係を認めてもらったばかりだというのに
エイリィ・マシューのおかげで(というかせいで)、との時間が疎かになっていた。


帰ってからも、を抱きしめるどころかキスすら出来ていない。


別にが嫌いになったわけでもないし、避けているつもりもない。




ただ、心身共に疲れているのだ・・・毎日、遭遇する厄介な人間に。








に変な誤解とかされていないのか、心配で」


「大丈夫だって。がんな事でいちいち悩んだりしてねぇって」


「でもあの子は彼女と違って繊細なんですよ。あぁ、の事を考えたらこんなところで
仕事なんかしてる場合じゃないですよ」


「お前・・・俺に駄々こねるなって言っておきながら、その発言どうかと思うぞ」








とにかく、との距離が広がってしまう前に手を打たなければ。


そう思うけれど・・・どうやって、あの「偶然」と仕組まれた魔の手から逃げるのかが
僕には謎でたまらなかった。



というか、何処で僕のスケジュールはバレているのだろうか?







「僕のスケジュールって、管理してるのは」


「そらぁ、ロイズさんだろ?俺らのスケジュール管理はぜーんぶあの人がしてんだから」







まさか、ロイズさんが情報を横流ししている?


あのアニエスさんの次に仕事の鬼とも思うロイズさんに限って
僕の情報を他人に教えるとは到底思えない。


しかし、他に考えられるのは・・・あの人しか居ない。





























「あぁ、教えているよ。エイリィのマネージャーにね」


「(原因はこの人か・・・っ!!)」

「え?!い、良いんスかそれ?!」





インタビューを終えて、僕と虎徹さんはアポロンメディアに戻り
ロイズさんに敢えて尋ねてみた。

大丈夫だと思っていた人が、まさかの行動に僕は肩を落とした。






「別に構わないだろ?ヒーローが所属していない事務所だし、シュテルンビルドの歌姫ともなれば
バーナビーともお似合いとも思えるしね」


「あの・・・ロイズさん、僕には恋人が居ることはご存知ですよね?」


「知ってるよ、君だろ?君が彼女を溺愛するのは分かる。私は、それを隠すための人物が欲しかったんだよ。
一般人と付き合っててしかも同棲、ともなれば・・・一大スキャンダルだ。
それに君は、未成年である君と肉体関係まで持っているそうじゃないか・・・アニエスから聞いたよ」







ロイズさんは呆れながら僕に言う。

アニエスさん・・・相変わらず根回しが早いことだ。







「君と君の関係をカムフラージュする相手が欲しかったんだよ。
だから、向こうに君のスケジュールの情報を流したんだ。悪く思わないでくれよ、これもビジネス。
君のプライベートを隠す手段でもあるんだから」



「だとしてもです。正直毎日それこそストーカーの如く付け回されるのはどうかと思います」



「おや?変だね・・・向こうには、バーナビーの負担にならないようにとは釘を刺しておいたんだが」



「完全に忠告ガン無視だな。此処んとこ毎日っスよ、あのエイリィとかいう歌手。
バニーの居るところに現れては『偶然ですね』なんて事言って近付いてくるんスから」


「正直疲労困憊です」


「おいおい話が違うじゃないか。バーナビーに負担にならんように、と向こうに言い聞かせた。
弱ったなぁ・・・もう此処2週間分くらいのスケジュールを向こうには渡しているんだぞ。
今からスケジュールを動かそうにも、何処も動いてはくれんだろう」



「えっ!?」

「勘弁して下さい」






嵌められた、というか。

策略にハマった、というか。



本気であの歌姫からの魔の手から逃れたい。



唯一の癒しであるにも、心配をかけているだろうし
何か策を打たなければ僕が本気で倒れそうなレベルに達してしまいそうだ。















「まさか、ロイズさんだったとはなぁ」


「2週間分も、向こうに流しているんじゃ逃げようがないですよ」





アポロンメディアの廊下を歩きながら僕らは話をしていた。







「ロイズさんが近くに居たら、まぁ何とかなるかもな」


「どうしてそうなるんです?意味が分かりません」







ロイズさんが近くに居たら何が変わるというのだろうか?







「いや、だって・・・俺らのマネージャーってロイズさんだろ?マネージャーって言えば
大体芸能人とかの身近にいるからさ。でも、あの人もあの人で忙しいから四六時中居るっていうのは」








身近に居て、四六時中側に居るマネージャー。








「・・・そうか、それだ」


「は?何が?」


「虎徹さん、ちょっと手伝ってもらえませんか?」


「え?何を?」


「いいですから。僕の言うとおりにしてください」










ある事を閃いた僕。




この方法ならきっと、上手くいくはず。



この方法ならきっと、魔の手から逃れられるのかもしれない。





少しでも自分がやりやすい環境にするにはまず自分から動くこと。




そう考えて僕は閃いた「ある事」を虎徹さんに話すのだった。






キング・オブ・ヒーローの悩みの種
(逃げれないなら、考えて立ち向かうまで) inserted by FC2 system

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル