「ロックバイソンさん、折紙先輩。見つけたのは、女の子だけですか?」
無事犯人であるバベルを確保して、虎徹さんの娘さんを救い出した。
バベルを警察に引き渡し、事件は一件落着。
だが、しかし人質は虎徹さんの娘さん・・・だけではない。
仕事を終えた僕たちは引き上げる。
そんな中、人質の救出に向かった2人に僕は尋ねた。
見つけたのは、彼女1人だけか・・・と。
「え?・・・ああ、はい。見つけたのはあの女の子1人だけです」
「一応も探したんだがな。見つからなかったから、此処じゃねぇんじゃねぇの?
リズミカだって別の場所で見つかったわけだし」
「そうですか」
事件が解決したのであれば、人質は全員解放されるはず。
しかし、それは僕の思いすごしのようだ。
見つかると思っていたのだが、やはり警察に差し出す前に
バベルから彼女の居場所を尋ねておくべきだったか、と今更ながら後悔した。
「だ、大丈夫ですよバーナビーさん!犯人は無事に捕まったことですし」
「そうだぜ。もコレで無事だろ」
「何だったら今から警察署行って、バベルに全部吐かせればいいじゃない。そのほうが手っ取り早いと思うけど」
「やっぱりそうなりますか」
ブルーローズさんの言葉に「やはり」という言葉が漏れた。
しかし、自分たちで闇雲に探しまわるより捕まえた張本人から聞き出すほうが
効率的には申し分ないだろう。
僕はため息を零し、足をトランスポーターへと進ませる。
すると、事件の現場から少し離れた使われていない廃屋で建物の崩れる音が聞こえてきた。
音にドラゴンキッドが身軽に積み上げられたコンテナの上から辺りを見渡す。
「どう?ドラゴンキッド、何か見えた?」
「うん。あっちの方で建物が崩れてるよ」
「大分俺達も派手に暴れ回ったからなぁ。まぁ廃屋一つくらい崩れた所で中はもぬけの殻だろうから
心配する必要もねぇだろ」
「たかが廃屋だからね。ねぇ、それより今から皆で警察署に行ってバベルにお嬢の居場所吐かせない?
アタシ達のお嬢を連れ去ったんだから、目にもの見せてやりましょうよ」
「いいわね・・・乗った!」
「あー僕も行くー!」
「そうだとも!皆でバベルに聞き出そうじゃないか!」
「うっし!そうと決まれば早速行くか」
ファイアーエンブレムさんの提案で、結局全員でバベルの居る警察署へと足を運ぶことになった。
探しまわる手間は省けたけれど、また1日に会える日が減ったと思うと
それだけで少し億劫になっていた。
『誰かー!!誰か助けて!!!』
「!!・・・この声ッ」
「バーナビー?」
「どうしたの?」
まだ能力が切れていないのか、聴覚が研ぎ澄まされており
僕の耳に聞き覚えのある声が聞こえてきた。
振り返り、辺りを見渡す。
「ハンサム、何か」
「静かに。黙ってください」
下手に喋られるとかえって、聞こえてきた声が聞こえづらいと思い
ファイアーエンブレムさんの声をすぐさま黙らせる。
残り少ない時間。
全神経が耳にと集中する。
『喉が枯れようが、潰れようが・・・アンタばっかりに良い格好なんてさせないわ!!』
『エイリィ』
「!!」
僕の耳に、エイリィとの声を捕らえた。
しかし明らかに2人が無事とはいえない状況下に置かれていることが声を聞いて伺える。
声が拾える辺り、近くにいることは明白。
じゃあ2人は何処に?と辺りを見る。
声が聞こえているけれど、今の僕に聞こえるだけ。
2人の姿は何処かにあると分かっているけど、見えない。
声を出して助けを求めるも、誰も気づいてくれない。
「まさか・・・ッ」
僕はすぐさま足を、崩れ落ちた建物へと向かう。
誰もが僕の突然の行動に声をかけるも、今の僕にはそんな声に答える余裕は微塵もない。
ものの数秒で目的の場所へと辿り着く。
だが、辺り一面瓦礫だらけ。
でも確実に此処から声が聞こえてきていた。
「ちょっ、ちょっと何なのよいきなり走りだして」
「説明しなさいよハンサム」
「探してください。2人が此処に居ます」
「2人って・・・まさか・・・ッ」
僕の言葉に駆けつけた皆が瓦礫の至る所を掘り始める。
声がどこから聞こえてくるのか分からない。
『ぉ、重ぃ』
『ちょっ・・・!?あと少し頑張って・・・!!』
の苦しそうな声に、僕は首を動かす。
もしかすると彼女たちの真上に重いものが乗っているのでは、と推測して探し始めると
一際瓦礫や鉄骨やらが積み上げられている場所を見つけた。
僕は一目散にそちらに向かう。
手で軽い土砂を払いのけ、掘り下げていく。
「・・・・・・ッ」
手で土砂を掻き分けると、巨大な瓦礫にぶつかる。
此処まで来て瓦礫が邪魔をする。
『・・・ぉ、お、お願い・・・き、気づいて・・・バニー』
「邪魔だ・・・退けっ!!!」
邪魔だと思うなら、自分で薙ぎ払うまで。
僕は能力切れ残り1秒という間際で、巨大な瓦礫を蹴りで砕いた。
瓦礫は粉々に砕かれ、其処に居たのは―――――――。
「バ、ニー」
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・・・・ッ」
と、彼女を支えているエイリィだった。
やっと会えたけれど、の右腕が血まみれになっているのに気付き
マスクを上げてすぐさま彼女に近づく。
「・・・ッ・・・この腕は一体。まさか・・・能力の」
「ちょっと、使いすぎた・・・みたい。血、いっぱい出ちゃった。で、でも・・・エイリィはね、無事だよ」
「だからってこんなになるまで・・・っ。とにかく一刻も早く病院に行きましょう。
このままでは君の命に関わります」
僕はを抱きかかえ、其処から出る。
「バーナビー!あっ、!!」
「さん!!うわっ、酷い怪我!」
「まさかお嬢、能力を?」
「使いすぎたせいかもしれません。僕はとにかくを病院に運びます。皆さんはエイリィを保護してください」
横目で2人居たとされる場所からエイリィが
スカイハイさんに抱き上げられながら地に足をおろした。
そしてその足ですぐさま、僕の所へとやってくる。
「バーナビー様、あの・・・っ」
「反省すべきだと思います」
「え?」
「自分の身勝手な振る舞いでどれだけの人に迷惑をかけたのか、反省すべきだと思います。
でもそれは貴女に限ったことじゃない、僕だって同じですから」
「バーナビー、様」
「急いでますので、これで」
その言葉だけを残し、僕はトランスポーターへと向かう。
中に入り斉藤さんに病院へと急ぐよう伝え
をミーティングルームのソファーにと寝かせた。
ヒーロースーツを脱いで、すぐさま其処に戻りの前に
腰を下ろし、彼女の手を握る。
手のぬくもりに気づいたのか、がゆっくりと目を開けた。
「」
「バ、バニー」
「もうすぐ病院ですからね。もう大丈夫ですよ」
「エイリィ、は?」
「君のおかげで大した怪我はしてないようです。でも、僕は君が心配です。
こんな血まみれになるまで能力を使うなんて」
「エイリィ、は・・・死なせちゃいけないって、そう、思ったからちょっと、頑張っちゃった」
「君の場合はこれじゃあ頑張りすぎです。僕の寿命を縮ませるつもりですか?」
本当にの腕の状態を初めて見た瞬間、寿命が縮みそうになった。
の能力は時として死と隣り合わせの能力にも値する。
だからこそ、彼女が能力を使う際は恐れている。
その身が滅んでしまうのではないか、と。
「もうに無茶なお願いは二度としません。君がこんな風になるくらいなら、僕は」
「バニー」
「本当にごめんなさい。君を巻き込んでしまったこと、本当に今回のことで身にしみました」
「いいの。それにね、ちゃんとバニーが助けに来てくれるって、信じてたから」
「」
本当はもっと謝らければならないのに、の言葉に結局僕は何も言えず
ただ、ただ、彼女の手を握りしめ離れていた温度を噛みしめることしかできなかった。
見つけたぬくもり
(ようやく、君を見つけた)