が退院して数日後。
アポロンメディアのロイズさんの部屋に
僕と虎徹さん、そしてが招かれ
彼女のマネージャー業の修了式を執り行っていた。
「至らない点ばかりでしたが、ありがとうございました」
「いいんだよ。君、結構動いてくれて私としても十分に助かったくらいだ」
「そういっていただけると嬉しいです」
ロイズさんがを褒めちぎっている傍ら
僕と虎徹さんも微笑ましくその光景を見ていた。
無理を言ったこととはいえ、彼女はよく働いてくれたという。
勿論指示をしていたロイズさんだけではなく
側で見ていた僕や虎徹さんもそう思っている。
「もし忙しくなったら、またお願いしてもいいかね?」
「え?」
「ロイズさん。今回の件でもう結構です。の怪我とかを見て分かりませんか?」
思いがけない言葉に僕は彼女の前に出て
直属の上司であるロイズさんに一言申し立てる。
僕のワガママでマネージャー業をしてくれたとはいえ
危険な目に遭わせてしまったのだから、二度とこんな事は僕自身頼まない事だし
相棒の虎徹さんにも釘を差していた。
「冗談だって。ホント、バーナビー冗談通じないね」
「冗談でもそういうのはやめてください」
「じゃあ雑務で寄越してはもらえないかね?」
「それもやめてください」
「バ、バニー・・・ロイズさんに失礼だよ」
僕の服の袖を掴んでが止めに入る。
彼女に言われ小声で「すいません」とロイズさんに謝罪の言葉を零した。
するとロイズさんはやれやれ、と言わんばかりのため息をつき
を見た後、僕を見る。
「それにしても盲目だね」
「は?」
「彼女に対しての君だよ。まぁ今回の一件は
そんな恋に盲目の二人が起こした事件と思えば安いもんだね」
ロイズさんの言葉に誰もが言葉を失った。
的を射ている言葉だからだ。
言い返せないし、言い返すことが出来ない。
僕も、エイリィも「恋」という病にかかり
盲目的になったばかりに、大切な人を巻き込む事件にと発展していたのだ。
お手柄だったとはいえ、傷つけた代償は少しばかり大きい。
「ま。くんをマネージャーに据えたいのなら私はいつでも大歓迎だよ」
「いえ、今回の一件で懲りてますので結構です。じゃあ行きましょう」
「うん。失礼しました」
「失礼しましたー」
そう言ってロイズさんの部屋を後にし、を連れて社内を歩く。
勿論手は繋がず、自分と彼女の間に虎徹さんを挟んで。
誰にも気付かれること無くエントランスホールにと抜けると
ホールのテレビに映し出てきたエイリィの姿。
「そういえば、あれ以降歌姫のアタックはねぇな」
「彼女の今回の一件懲りたんでしょう。何せ自分の目の前で怪我人が出てしまったんですから」
「でも、私がもっと頑張れたら早くに犯人を捕まえられたのに・・・・ごめんなさい」
ホールのテレビに映り、意気揚々と歌うエイリィの姿に
は自分の力の未熟さを悔いていた。
そんな彼女を見て手を差し伸べようとしたが―――――。
「いいんだよ。お前がそんなに頑張らなくても」
「タイガーさん」
虎徹さんがの頭を優しく叩いていた。
「お前が頑張りすぎる必要はないんだよ」
「ですけど」
「今回は腕の怪我だけで済んだけど、頑張り過ぎると腕の怪我だけじゃすまないぞ?
お前がそうやって頑張るのは俺もバニーも頼もしいって思う。だけどな。
頑張り過ぎは良くねぇ。何も無理して犯人とっ捕まえなくたっていいんだよ。
お前はお前の出来る力で大事な人を守ってやれたんだから。でも、次からは出来る範囲でやるんだぞ。
次こんな怪我されたら俺がアニエスにこってり絞られるんだからな」
「タイガーさん・・・はい!」
「おー良い返事だ」
そう言って虎徹さんがの頭を撫でていた。
完全に僕の言う言葉を言われてしまい
僕の言葉は宙にと舞って消えていった。
「うわぁ〜なんか久々って感じ」
「そうですね。しばらく色々あったりして戻って来れてなかったですからね」
虎徹さんと別れて、をマンションへと連れて帰ってきた。
久々に見る光景なのかは嬉しそうにはしゃいでいる。
そんな彼女を見て僕も思わず嬉しくてたまらない。
はしゃぐを見て―――――。
「」
「ん?」
「おかえりなさい」
当たり前の生活にかかせない言葉を放つと彼女は満面の笑みを浮かべ。
「ただいまバニー」
帰宅の言葉を言って僕にと抱きついてきた。
抱きつく彼女をいとも簡単に受け止め腕の中にと収める。
「短い間でしたけど、よく頑張ってくれましたね。ありがとうございます」
「うぅん。私足引っ張ってばっかりだったけど」
「そんな事ありません。君はよく頑張って、そして頑張りすぎでした」
僕の言葉にが体を離し、見上げる。
「腕の怪我のこと、まだ気にしてる?」
「気にしてない、と言えば嘘になります。君が頑張り過ぎることはないんです。
いやむしろ、僕がワガママを言ったばかりにを危険な目にも遭わせてしまったんですから。
僕も反省してます」
「いいんだよバニー。ちょっとくらいバニーだって頑張らなくていい日が欲しかったんだよね」
「え?」
「毎日頑張ってるし、むしろ頑張りすぎてるのはバニーの方だよ。
私が少しでも助けてあげれればって思って引き受けた事だから」
「」
「ね、お互い様。持ちつ持たれつってよく言うでしょ?」
「フフ・・・そうですね」
そんなの頭を撫でた後見つめ合い
おでこにと口付ける。
それを皮切りに、いろんな場所へと口付ける。
「ウフフ・・・バニー、くすぐったい」
「気持ちいいの間違いじゃないんですか?」
「違うよ・・・フフ、くすぐったいってば」
「これからはもう誰にも邪魔されること無く
僕と君の時間が出来たんですから何したって構わないですよね」
「もう・・・バニーったら」
「君を前にして、盲目的にならないのは無理な話ですよ」
これからはまた、僕ととの”いつもどおりの“生活が
戻ってきたのだから彼女に夢中になるなというのが無理な話だ。
恋は盲目。
どうやら僕のそれは何したって治りそうにない。
を心から愛し続ける限り。
Love is blind.
(”恋は盲目“だけど程々に。でも恋の病にかかったらそうも言ってられない)