「コレって、ネイサン?」


「んー?」






ヘリオスエナジーにやって来たお嬢。

特に暇してたアタシはお嬢を呼び出して、応接室でお茶を飲んでいる時だった。


お嬢が棚に置いてあった写真立てをアタシに見せてくる。







「ああ。それね・・・アタシの若い時のよ」


「そうなんだぁ。ネイサン綺麗だね」


「ウフ、ありがとう」







お嬢が見せてきたのは、私の若い時の写真。


そう、自分の存在に酷く悩んでいた昔のアタシ。






男という性で生まれながら
女として生きたいという不安定な存在に思い悩んでいたあの頃。








「でも、綺麗なのに何でこんなに悲しそうなの?」



「あの当時はね、苦しんでたのよアタシ」



「え?」








お嬢からアタシはそっと、写真立てを取った。


写真に映る、昔の自分。


暗く淀んだ表情で今では考えられないほど、死人のような顔つきだった。









「男として生まれたのに、心が女の子で・・・どっちにもなりきれなくてね。
どうしてアタシ・・・こんな風に生まれちゃったんだろうって、悩んでたの。
この写真はねそんな半端な時期に撮ったモノよ。ホント、今見るとひっどい顔ね」








あの当時は自分が生まれたことすら恨んだ。



周囲からは気持ち悪がられ、実の親でさえも蔑んだ。

どっちにもなれないアタシがとった手段は「女になろう」という事だった。
だけど結局失敗で、更に周りのアタシを見る目は酷いものだった。



「気持ち悪い」とか「あっちにいけ」とか・・・罵詈雑言の嵐。


いっそ死んでやろうか・・・なんて考えまで頭を過るほど、自分が嫌いだった。








「辛かった?」



「そうねぇ。死のうとまで考えたくらい辛かったわ。生きてちゃいけないって、そう思ってたから」



「でも、ネイサンは生きててよかったんだよ」



「え?」






お嬢の言葉に、アタシは目を見開かせ驚いた。






「私も、自分が怖かった。NEXTとしての能力に目覚めて、おとうさんを殺してしまった事。
能力が中途半端で使いこなせない私はまた誰かを傷つけてしまう。だったら、死んだほうがマシだって・・・思ってた」



「お嬢」



「でもね、それも自分なんだって・・・好きになってあげなきゃって、気付いたの。
どんな姿になっても、自分であることは変わらない。受け入れて、好きになってあげないと。
だって誰とも取り替えられない、自分っていう1人の人間なんだから」








アタシの、今、目の前に居る女の子は激変してしまった自分の生活の中で
「NEXTとして生まれた自分」を受け入れて「好きになる」という選択肢を作り上げていった。


昔のアタシには「半端な自分を好きになる」なんて選択肢はなかったのに。



彼女の言葉で、随分と救われた気がした。









「それに。ネイサンは男の強さと、女の愛嬌を兼ね備えているんだよ!それってすっごく強いってことじゃん!
1人の人から両方が備わっているって、私は凄いと思うよ!」



「アラ、何?それって最強って言いたいのぉ?」



「うん!ネイサンは最強なんだよ!」



「オカマは最強・・・いいわね。ブルーローズみたいに決めゼリフにしちゃおうかしら」



「ウフフ、いいかも」






アタシの目の前で笑うお嬢。


もう少し早く、この子と出逢っていたらアタシの「何か」が変わっていたのかもしれない。

半端なアタシを「恐れず好きになっていい」と言ってくれる子を
きっと長く待っていたのかもしれない。








「ホント・・・ハンサムがお嬢を溺愛する気持ち、分かる気がするわ」



「え?」










ハンサムが、どうしてこの子を酷いまでに愛しているのか・・・少し分かる気がしてきた。









「お嬢は欲しい言葉を、ちゃんと言ってくれる。今更ながらハンサムが羨ましいわね」



「ネイサン?」








きっと、自分自身が求めていた言葉をこの子は言ってくれる。



お嬢自身無自覚での事なんだろうけれど
欲している側の人間としては、この上なく嬉しい限りだ。



だから・・・あの男は、彼女を愛してやまない。



あの男自身の欲していた「愛情」を受け取っているから。








「でーも、受け取りすぎよねそれって。ズルいわねぇ」



「ネイサン・・・さっきから何言ってるの?」



「ん〜?ディナーはお嬢とご飯食べたいなぁ〜って思ってて。そうね、それよ!」



「え?」





アタシは自分の携帯を取り出し、いそいそと電話をする。








『はい』


「あ、ハンサムぅ?アタシ、ファイアーエンブレムだけど?」


『ああ、どうも』








電話の相手は、ハンサム。








「今日、お嬢と夕食食べる予定とかしてる?」



『その予定にはしてますけど。にはまだ伝えてません』



「ねぇ、今日の夕食の予定・・・アタシに譲ってくれない?」



『は?・・・ダメに決まってるじゃないですか。何言ってるんです。
一応僕が先にと食事をする予定をしているんです。だから答えはノーです』






多分返ってくる答えは分かっていたけれど、今日のアタシは簡単に引き下がらなくてよ。





「言っとくけど、アタシだけじゃなくてブルーローズやドラゴンキッドも呼んでの女子会。
ナニナニ?もしかして、アタシとお嬢が二人っきりで食事するとか思ってイジワル言ったんでしょおー?」



『なっ!?ち、違います!!』






ハンサムからすれば、アタシの性別は「男」。
人一倍お嬢を溺愛しているハンサムならアタシをそう見て警戒して当然。






「残念でしたー。お生憎と、アタシはいい男といい男の尻にしか興味が無いのよ。
というわけで、今日は乙女クラブの女子会にお嬢を参加させるからよろしくぅ〜」



『あ、ちょっとファイアーエンブレムさん!?まだ話は終っ』







通話を強制的に切断して、ついでに携帯の電源もしばらくの間落とすことにした。







「さて・・・邪魔者への連絡は終ったことだし」



「カリーナとパオリンも呼んで皆で食べに行くんだよね」



「ん?アレはね嘘・・・今日はアタシとお嬢の2人でご飯食べに行きましょ」



「え?」







我ながらハンサムには卑怯な嘘を付いた。

でも、ああでも言わない限り、あの男は引き下がろうとしない。
それほどまでにお嬢を独占していたいのだ。

だけど、たまにはそういうの・・・アタシだって欲しいくらいだわ。









「あら?アタシとの食事は嫌?」




「うぅん!すっごく楽しみ!」







嫌?と問いかけたら、目の前の少女は嬉しそうに太陽のような笑顔で答えてくれた。


本当に・・・もう少し早く、出会いたかった。
後悔しても遅いけれど今出会えた事に多分、アタシは神様に感謝しないと。








「今日はご飯を食べながらこのネイサン・シーモア、お嬢に女子力講座をしてあげるわ。
男がイチコロになっちゃうコツとか、ソレに見合うようにするとか」



「よろしくお願いします!でもなんかそれも楽しみ。やっぱりネイサンは最強だね」



「ウフ。オカマはね最強なのよ。死んでも敵に回しちゃダメよ?」




男は度胸、女は愛嬌、オカマは最強!
(それを全部兼ね備えたのが、そうアタシ・・・ネイサン・シーモアよ) inserted by FC2 system

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