『そうでしたか。貴方のお知り合いで』
『すいません、お騒がせして。とりあえず、彼女と話をさせてください』
『構いませんよ。子供たちには私からよく言って聞かせておきますから』
『ありがとうございます』
扉の外でバニーとシスターの声が聞こえる。
一方の私はというと、ソファーに座って反省中。
本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
なんて言えばいいのだろうか?
むしろ、なんて言って謝れば彼の気が済むのだろうか?
浮気疑惑云々を排除しても、彼に怒られてしまうのは必須のような気がしてならない。
疑って、最終的には此処まで尾行してきたのだから。
どうしよう、どうしよう・・・と焦っていると。
「」
「はひぃ!!」
心の準備もままならず素っ頓狂な声が出てきてしまった。
背後からバニーから話しかけられたが、あまりに申し訳ないことをしてしまって
彼の顔を見て話ができない。
私はソファーに座ったまま硬直して動けずに居た。
「僕が浮気をしてるとでも思ったんですか?」
「・・・・・・」
「まぁの事ですからね。それくらいの早とちりしてもおかしくないか」
「・・・うっ!?」
後ろに立っているであろうバニーはクスクスと笑いながらそんな事を言う。
あまりに的を射た言葉に私は反論のしようもない。
すると、後ろからバニーに抱きしめられ緊張している心臓が
酷く鼓動を始め、体中が熱くなっていくのが手に取るように分かる。
「あっ、あ、バ、バニー・・・ッ」
「だから昨日、泣いたりしたんですか?僕が浮気をしていると思って不安だったから」
「・・・・・・」
「どうなんですか、?」
「だ、だって」
「ん?」
私はようやく口を開き、言葉を零し始める。
「だって、二部に降りて時間が出来たはずなのに何かコソコソしてるし。
夕飯も作って待ってるのに、食べて帰ってくることが多いから・・・浮気してるんじゃないかって思うよ」
「」
言葉を零すと同時に、目からも今までの思いが涙に変わって溢れ出てきた。
抱きしめているバニーの腕に雫が落ちて、服にシミを付ける。
「不安だった・・・毎日毎日。私、嫌われたんじゃないかって。
でも、言ったらバニーの機嫌を悪くしちゃうし、今の関係だって悪くなっちゃうと思ったから。
それに変に疑うのも良くないし・・・だからって、こんな事する私・・・最低だよね。
バニー・・・良い事してたのに、私・・・ごめんなさい」
此処がどういう場所なのか私には分からないけど
でも「どういった理由で此処が存在している」のかは痛いほど分かる。
それを知った瞬間、自分を酷く責めた。
彼は「良い事」をしているのに、私は彼の思いすら踏みにじるような真似をしたのだと。
「君が謝るのなら、僕も謝らなければいけませんね」
「え?」
バニーの言葉に、私は顔を横に向けた。
彼は私がようやく視線を合わせてくれたのか一瞬驚くも優しい微笑みを見せる。
「誤解を招くような振る舞いをしたことです。
疑わせるつもりはなかったんですが、僕の行動も君にそんな不安をさせてしまった原因でもあります。
夕食も此処最近子供たちに引き止められてしまって、食べて帰ってたんです。
だからね・・・僕は決して君を見捨ててたわけではありません。ちゃんと話すべきでした。
孤児院に寄付していることも、子供たちと夕食を食べていることも」
「バニーッ・・・ごめんなさい、ごめんなさい」
「泣かないでください。僕もすいませんでした。君を不安な気持ちにさせてしまって」
泣く私をバニーは優しく抱きしめて、頭を撫でてくれていた。
「。僕はきっと世界一幸せ者です。君にこんなにも大切に想われているのですから」
「バニーッ」
それは違うと言いたかった。
私だって貴方にこんなにも大切に想われていたのが嬉しかった。
段々と優しさを帯びていく貴方に大切にされて、愛されて、コレほど幸せなことなど無い。
疑ってごめんなさい。
迷ったりしてごめんなさい。
だけど、もう違うって分かったから。
次からは私も、貴方と同じように―――――――。
「ー・・・今日、ご飯食べに行くんだけど」
「ゴメンカリーナ。今日行くところあるの、バニーとも待ち合わせしてるし」
「は?バーナビーと仲直りしたの?ていうか、アイツの浮気は?」
「昔と変わらず浮気ゼロですから。急いでるからじゃあね!」
「ちょ、ちょっと!?」
幼なじみの止める声を振り切り、私は駆け出した。
走っているとクラクション。
見覚えのある赤いスポーツカー。
私はそれに駆け寄り、中へと入る。
「おまたせバニー」
「学校お疲れ様でした。おもちゃはトランクに積んでありますから。
あと、言われた通りの食材も買ってきましたけど・・・どうするんですかコレ?」
「うん。今日は私が皆に夕食を作ってあげようと思って」
「それはいいですね。の料理は本当に美味しいですから、皆もきっと喜びますよ」
あれから、私もバニーと一緒に孤児院への慈善活動をするようになった。
バニーが行けない日は私が行って、皆のお世話をして。
彼と一緒の日はおもちゃを買って、皆にプレゼントをする。
最初は私も子供たちからは怖がられていたけれど、バニーが言ってくれた。
「で、でも・・・今でも、恥ずかしいよ」
「何がですか?」
「子供たちへの私の説明。何で『このお姉さんは僕にたくさんの愛情をくれる人です』って。
あからさまに恋人ですって言ってるようなもんじゃない。もう少し何か良い説明なかったの?」
「最初は天使って表現も良かったし、女神って表現も良かったんですが。子供の想像力というのは
計り知れないものなので、あの言い方で収まったんです。いいじゃないですか、にピッタリですよ」
バニーはニコニコと笑いながら運転を続ける。
バニーがそういう風に説明してくれたお陰で子供たちの警戒心が解け
今となっては子供たちの「良いお姉さん」になっていた。
「」
「ん?」
「ありがとうございます。僕個人の事なのに、手伝ってくれて・・・感謝してます」
「うぅん、いいの。それにこういうのも楽しいし。何よりバニーと一緒にできるって思うと私、凄く嬉しいの」
「」
貴方と一緒に何か出来る喜び、これかもずっと分かち合っていきたい。
「やっぱり今からを天使とか女神とかの表現に変えましょうか」
「や、やめて!!恥ずかしいから!!」
共有したいこれからの日々も
(この先もずっと分かち合いたい)