「ホントに、俺でいいのか?」
「たまにはタイガーさんと寝ようかなぁと思って。バニーには悪いですけど」
「明日俺相当イビられ覚悟だな」
「すいません」
が珍しく俺と寝たい、と言い出してきた。
あまりの展開にバニーは目を見開かせ驚いていたが、すぐさま笑みを浮かべ了承してくれた。
だが、あの笑顔は本気で後が怖い証拠だ。
多分、明日飛行機の中で相当グチグチと言われるのを覚悟しておかなければならない。
「つーか、何で急に俺と寝たいとか言ったんだ?」
「え?」
「いや、だってそうだろ?いつもならバニーと寝るはずだし、むしろそっちの方が慣れてるだろ」
いつものなら、バニーを選択する。
しかし今回ばかりは何故か俺を選んだアイツに驚いた。
(俺も驚いたし、から拒まれたように思えたバニーが多分一番驚いてショックを受けたに違いない)
それが何故だろう、と俺に疑問の種を植えつけた。
「え?ダメ、でしたか?」
「いや、ダメってわけじゃねぇよ?何でかなぁ〜?ってオジサン思ってるわけ。
がバニーを選ぶところなのに、俺選んじゃったのかが気になってるの」
「うーん・・・・なんて言うか、パパと寝てみたいって思ったからでしょうか」
「パパと寝てみたい?」
の発言に目が点になる。
「小さい頃、よくこうやってパパが隣に寝てくれてたんですよ」
「あー・・・添い寝ってやつね」
「でも、その期間があまりにも短かったし・・・。だけど大きくなって、パパと思える人が出来たから・・・だからだと思います。
アニエスさんの所に住まわせて頂いたときも、時々アニエスさんが隣に寝てくれてた事もあったんですよ」
「あのアニエスが、珍しいことしてやってたんだなぁ〜に対して」
「アニエスさんは私のママみたいな人で、タイガーさんは私のパパみたいな人です」
昔を懐かしむかのように、は俺の体に自分の体を密着させてきていた。
俺はその背にそっと手を伸ばし、背中を優しく叩く。
そう、まるで親が子供を寝かしつけるときにするかのように。
「パパもよく、私の背中を優しく叩いてくれてました」
「ブルーローズから聞いた話だが、お前の父親と俺って似てるらしいな」
「性格がですよ。パパも正義感が強くて、真っ直ぐな人でした」
「生きてたら、きっとの父親と俺っていい酒飲み友達になっただろうよ」
「ウフフ、そうかもしれませんね」
暗い部屋、広いベッドの上で少女が他愛もない話をして小さな微笑みを零す。
娘みたいな子、だなんて思っているのに
コイツは俺の娘ではないし、赤の他人の娘。
父親代わりだから、父親としてを娘として意識しておかなければいけないのに
時々それが出来なくなる時がある。不意にが見せる「女の子としての表情」が俺を鈍らせる。
「だから、こうやってタイガーさんと一緒のベッドに寝れるのが嬉しいんです」
「」
頬をほのかに染める表情が、娘という子にはない表情。
なんとなく・・・バニーが毎日ほだされてる理由が分かる気がしてきた。
「」
「はい」
「今日だけ内緒な」
「え?」
内緒、と言葉を紡いで唇を軽く重ねた。
軽くふれあい離れると、は顔を真っ赤にして手で唇を押さえていた。
そして顔を近付けそっと囁く。
「バニーには内緒な。あとアニエスにも。2人に知られたら俺、大目玉食らいかねねぇからな」
「・・・はぃ。2人だけの、秘密です」
「ああ、秘密な」
そう言うとは柔らかく笑っていた。
些細な日に出来た、2人だけの秘密。
後はそうだな。
コイツと同じ夢でも見れたら、多分俺は幸せなんだろうよ。
2人だけの秘密の夜
(ある日の夜。俺とお前は2人だけの秘密を作った)