「此処が事件現場か・・・」








僕は単独でさんの事を調べ始めた。

とりあえず周囲の聞き込みからのほうが重要だと思い
花束を持ってシルバーステージにあるさんの家、つまり事件現場にやってきた。

立ち入り禁止のテープも何もなく、家の焼け跡の前に
花束が置いてあった。
近隣の人が置いたか、なんてそんなの分かるはずもない。

僕も持ってきた花束を置いてすぐさま周囲を見渡す。
閑静な住宅街、といった町並みだった。



僕は再び家の焼け跡を見る。



此処であの日何があって、どうして彼女と虎徹さんが出逢ったのか。
いや、虎徹さんがさんを助けたのは分かる。


ただ納得行かないのはその後だ。


どうしてあの「ヒーローは絶対に顔を見せてはいけない」と自分の理想論に呈した虎徹さんが
一般人であるさんに顔を見せているのか。

それにさんの事になると、アニエスさんもやけに協力的だ。



確実に何かあるとしか思えない。



僕は、ふと自分の手を見つめた。







「何で、僕の手は握らなかったんだ」





ブルーローズさんから聞いた話。

母親同士の仲が良い幼馴染同然な関係。だから学校も一緒だ、と言っていた。
その他は特に何もなく、ただ普通の友達同士。

友達だから何か秘密めいたこと知っていたらを隠すのは当然だ。
だからその秘密を調べるために学校まで訪れた。


そしたら泣いているさんがいきなり出てきて
僕は手を差し伸べようとした、けど・・・―――――。










『ごめんなさい・・・っ』








僕の手は握らず、泣きながら走り去って行った。

泣いている彼女をなぜか放ってはおけず、追いかけると虎徹さんが偶然居て
さんはあの人の前で大声を出して泣いていた。

虎徹さんは少し困った表情をしていたけど、ただ優しく頭を撫でて何かを言っていた。




きっとさんが唯一心を許しているのは虎徹さん。


そして、何か彼女に秘密があるから隠している虎徹さんとアニエスさん。





繋がりもない一般人、ヒーロー、報道人。


どこに関連性が?







「アンタ・・・・バーナビーじゃない?」



「え?」




1人考え込んでいると、見知らぬ人に声をかけられた。
その人も花束を抱えている。








「うわ、やっぱり本物だわ!私の息子がファンなんですよー!あ、握手してください!!」



「あ、ありがとうございます」





多分近隣住民であろう女の人が僕に握手を求めてきた。
僕はすぐさま営業スマイルに切り替え、握手をした。







「紙とペンがあったらサイン貰ってるんだけど」



「あの・・・花束をお持ちのようですけど、こちらのお宅に?」



「え?・・・えぇ」






すると、女性は花束を僕の置いた花束の隣に供えた。







「此処の旦那さんが亡くなったでしょ?だから、お供え一応ね」



「一応?・・・どういう意味ですか」







僕は気になったので、問いかけた。








「此処の旦那さん、ちゃんの本当のお父さんじゃないんですよ。母親が連れてきた恋人、だったかしら?
本当のお父さんはあの子が小さい頃に亡くなっているんですよ事故で」



「そう、だったんですか」



ちゃん、あんまり今のお父さん好きじゃなかったって言う噂があるんですよ」



「え?」








まぁ確かに好きになれとは、言い難いだろう。

母親がいきなり恋人を連れてきて「今日からこの人がお父さんになるから」とか言われたら
誰だって戸惑うだろうし、好くには時間を要する。

だけど、この人の話を聞いてると・・・そうじゃないように聞こえる。





「あんまり大きな声で話せないけど、なーんか・・・あの義理の父親は、目つきが気持ち悪かったっていうか。
ちゃんのこと・・・変な目で見てたっていうか」



「変な目で見てた?」



「えぇ。だから、ちゃん・・・義理の父親と一緒に生活するのが嫌だったから、此処最近家に帰ってないことが
多かったらしいのよ。何でも、友達の家を転々としてたとか。あんな優しい子が」






女性は深いため息を零しながら、また喋りだす。





ちゃん、昔からとっても優しい子だったんのよ?ウチの息子がまだ小さい頃、よく面倒見てくれてね。
嫌な顔1つもしないで、何でもお手伝いしてくれる子だったわ。母親が出張で度々家を開けてるときも
寂しい表情も見せないで笑顔で見送ってたところ見ると、本当は寂しかったのかな・・・って思うのよ。
事故が遭った日、たまたま家に戻ってたみたいで・・・・それでこんなんでしょ?」



「えぇ、まぁ」



「でもちゃんには気の毒だけどやっと解放されたと思うのよ。
あの義理の父親、ホント・・・毎日執拗にちゃんのこと探し回ってたから」



「それは、父親だからじゃないですか・・・血の繋がりがなくても」



「いいや、あれはそんなんじゃないわ。父親でも、あんな目の色しない・・・あれはもう気持ち悪くて」



「気持ち悪い?」






目の色で気持ち悪い?


どういう意味なのかよく分からず女性を見ていると
僕の表情に気づいてくれた。






「あれ?分からない?」



「どういうモノなのかよく」



「何ていうのかしら、親としてじゃなくて・・・こう、獣みたいな目つきかしら。
まるで、そうね・・・男が女を見るような目よ。獲物を狙っているような目だったわ」



「つまり・・・義理の父親は、そのさんを”娘“としてじゃなくて”女性“として見てた、ということですか?」



「まぁそんなトコロ。だからちゃんが家を飛び出して行ったのよ、自分の身の危険を感じてね」







そして、たまたま帰ってきた日に事件に遭遇した。








「あの、事件の日のこと・・・覚えてますか?」






僕は色々聞きだして(というか勝手に喋ってくれて)から
事件の日の事を女性に聞きだした。







「事件の日?・・・・大分日にち経ってるからねぇ」



「すいません」



「覚えていることといえば、義理の父親の悲鳴が聴こえてきたこととその後に、いきなりこの家が燃え始めたことだけ」



「悲鳴が聞こえて、家が燃え始めた?・・・確か強盗殺人ですよね?銃声とか、犯人が逃げていったとか
そういうのは無かったんですか?」





何かおかしい。

悲鳴が聞こえてきたけど、そのほかの音がまったく聞こえず・・・いきなり家が燃え始めた。
それに、燃え始めているんだったら犯人と思われるやつ等の影があるはず。






「それがおかしいのよ。音も何も聞こえず、父親の悲鳴だけ上がって・・・それで急に家が燃えてるじゃない。
むしろ、家が燃える前・・・この家の近くには誰も逃げた後が無かったのよ。近所のおばさんが犬の散歩してて
そう言ってたから間違いないわ」







勝手に・・・父親が殺されて、家が燃える?






「じゃあ、どうやってこの状態が?」



「さぁ?犯人はNEXTの仕業かも、って警察の人たちは言ってたわ・・・父親の殺され方が尋常じゃなかったから」



「どういう?」



「何かの衝撃波みたいなもので、もう見るも無残だったとか?臓器は出てるわ、骨も凄まじいくらいまでに
曲がってたり、粉砕されてたりで。あー・・・想像しただけでゾッとしてきた」



「じゃあ、その後に能力で火が?」



「じゃないかって警察は言ってる。まぁ後は警察に任せていいのよヒーロー、貴方の気にするようなことじゃないからね」






そう言って肩を叩かれ、女性は去っていった。




僕はふと、足元で風に揺れる花束を見た。





優しかった少女の突然の連続的な家出。


自宅に戻ってきて早々の事件発生。



不可解な強盗殺人事件。



父親の悲鳴だけが上がり、突然家から燃え上がる火。
犯人の逃走した形跡もなく、家に一人助かった・・・・さん。

しかしさんは軽い火傷程度で済んでいる。

もし家の中に居たとしたら、強盗はさんの存在にも気づいて殺しているはず。
助かったとしても、そんな軽い火傷程度ではすまない。

奇跡的に助かっても、重傷は間違いないはず。












「やっぱりおかしい。この事件も、さんもおかしな点が多い」









近所の人は、さんが優しい子と言う。


確かにそうかもしれない。
あんな子が心変わりをそう簡単にするだろうか?多分しない。


どう点を置けば、線として繋がる?


考えろ・・・考えるんだ。








「こうなれば、もう直接行くしかない」







考えた結果。

点を線で繋ぐには、さん本人に聞くしかない。
僕はとりあえず車に乗り込み、トレーニングルームへと向かった。

あそこの休憩室はさんの一番の居所。
多分学校が終わった後、アニエスさんとの待ち合わせでそこに居るに違いない。







「必ず、暴いてみせる」






もし彼女に重大な何かが隠されていたとしたら、虎徹さんが危ない。
いやそれだけじゃない・・・アニエスさんも、皆。


僕が・・・僕がやらなければ、いけないんだ。



































「あら、ちゃん」


「こんにちは。あれ?・・・あの誰が花束を?」


「あぁ、多分3件先のブリッグさんよ。それとバーナビーだわきっと」


「え?バーナビーさん?」


「そうなのよ!多分事件に心打たれてバーナビーが来たのよ、花束を持ってきたなんてやっぱりヒーローね」


「・・・事件に、心打たれて・・・」


ちゃん?顔色が悪いわよ、大丈夫?」


「あ、えーっと・・・だ、大丈夫です。じゃ、お花置いておきますね・・・失礼します!」


「あ!ちゃん!?」






どうしよう。

もし、全部バレたら・・・お父さんを殺したのが私だと気づかれたら。
私がNEXTだと・・・気づかれたら・・・どうしよう、どうしよう。




私は誰に助けを求めたらいいの?




Seeing is believing.
(”百聞は一見にしかず“話を聞くより、もう自分で確かめるしかない)
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