「さん」
「はい?」
「ちょっと話があるんですけど、時間大丈夫ですか?」
「え?」
トレーニングルームの休憩室。
彼女の家に花を置きに行った帰りに此処に寄ったが
あの日は彼女は行くところがあるというので、来なかったらしい。
しかし、今日は
ブルーローズさんと2人で其処に居て、談笑をしてるそんな中・・・僕は彼女に話があると行って話しを中断させた。
「何よバーナビー。今、私がと話をしてるの、今度にして」
「いいじゃないですか。貴女はさんと同じ学校なんですから明日にでも話せばいいはずですよ。
僕はさんとあまり話す時間がないからお願いしてるんです」
「何よ、いちゃもんつける気?」
「カリーナ。・・・いいですよ、バーナビーさん」
「ちょっと!?」
僕とブルーローズさんが話していると、さんは自ら僕の誘いに乗ってきた。
「あの、それでお話って?」
「此処じゃなんですから、外に行きませんか?」
「え?・・・あ、はい。じゃカリーナ行ってくるね」
「ぅん、すぐ戻ってきなさいよ」
彼女の言葉にさんは笑顔で答え、僕の後ろを歩いた。
あんな場所で話したら、誰かに聞かれる恐れもあるし
最悪、虎徹さんやアニエスさんがやってきて中断される可能性もある。それだけは避けなければ。
これ以上、誰かを犠牲にするくらいなら・・・・僕1人でこの事件の真相を暴いてみせる。
さん・・・・君のことも。
「はい、オレンジジュースでよかったですか?」
「ありがとうございます」
近くの公園のベンチに座らせ、僕はジュースを買ってさんに渡した。
それを受け取った彼女は笑顔でお礼を告げた。
僕はさんの隣に座り、彼女を見る。
「学校は、楽しいですか?」
「え?・・・えぇ、楽しいですよ。カリーナも居ますし」
「それはよかったです。事件のことは・・・残念でしたね、お父さんを亡くされたようで」
ふと、事件のことを零した。
途端さんの顔色が変わり、ジュースを飲む仕草を途中だがやめた。
「義理の父ですけど・・・父親には、変わりはないです」
「そうですよね。あの日、さんはご自宅にいたんですよね?何か覚えていることはないんですか?」
「え?」
「警察から事情聴取はなかったですか?」
「タイガーさんや、アニエスさんが・・・代わりに、してくれたので・・・そういうのは」
此処でもこの2人が出てくるか。
やはり、あの2人はさんのことで何か重大なことを隠している。
だから彼女に代わって警察の事情聴取を受けたんだ。
「でも、何か覚えてますよね?事件の日、自宅に居たんですから」
「・・・・・・・」
「あの日は家に帰ってたはずですよ、君は」
「!!・・・ど、どうしてそれを」
「近所の方から伺ったんです。最近、あんまり家に帰っていなかったとかで・・・事件の日は久しぶりに帰ってきてたと」
僕はこの前聞いた話を、少しずつ並べ始める。
するとさんは目を見開かせながら、驚いている。
無理もないだろう・・・多分、これは虎徹さんも知りえない話だと思うから。
彼女の表情を見ればすぐに分かる。
「あの日、君は家に居た。じゃあどうして答えないんですか?」
「そ・・・・それは」
「家にいたはずなら、事件の一部始終くらい目撃しているはずです。どうして答えようとしないんですか?」
「・・・・・・・」
「答えてくださいさん」
「・・・・・・・・・」
僕の言葉にさんは黙り込んだままだった。
黙り込む彼女に僕は更に問いかける。
「君が突然現れて・・・・他の人は、気づいてないかもしれません。けど・・・僕は気づいた。
虎徹さんの行動といい、アニエスさんの行動といい・・・君に関しての行動で2人があまりにもおかしすぎる。
さん・・・・僕は君に何かあるとしか思えないんです。お2人は一体、君の”何“を隠しているんです?
それはあの日の事件に関わっていることなんですか?・・・・・・・さん、答えてください」
「・・・・あの・・・・ゎ、私・・・」
「答えれないんですね」
「・・・・・・・・・」
「そうですか・・・分かりました」
黙り込んで、答えるつもりはないらしい。
僕はため息を零し、ポケットの中から携帯を取り出す。
「貴女が答えるつもりがないのなら、僕は警察に直接聞きます」
「ぇ?」
「警察も調べているはずです。君の事を情報提供すれば何か教えてくれるはずでしょうし」
「や、やめてください!!」
「じゃあ話してください。僕はこれ以上、大切な人を失うつもりはないんです!!貴女が虎徹さんを想うように
僕には虎徹さんは相棒であり仲間なんです!!君が居るだけで虎徹さんに危害が加わるというのなら、僕は手段を選びません。
例え貴女が・・・事件の被害者であろうが、なんだろうが・・・」
そんな言葉を浴びせると、彼女の動きが止まった。
僕はボタンを押して、警察に電話を掛けようとした。
「やめて・・・」
「もう遅いです」
「やめて・・・」
何度言っても、もう遅い。
これで皆救われる・・・大丈夫だ。
「やめて!!!」
さんの声が響いた瞬間、公園の木が突然燃え出した。
木だけじゃなく、地面に生えていた草からも炎が上がる。
火の勢いは強く、公園で遊んでいた大人や子供は逃げ惑う。
僕はあまりに突然のことで呆然としていた。
『はい、シュテルンビルド警察です。・・・・・・もしもし、もしもし?』
「あっ、すすいません。今すぐパトカー、それと消防車を1台お願いします。
公園に突然火が放たれて、大人や子供達が逃げ惑っているんです」
『分かりました。で、場所のほうは?』
「はい、此処は・・・」
丁度繋がった警察署に出動要請を頼み、公園の場所を急いで教える。
ふと、横に居たさんが泣きながら後ずさりをしている。
「ぃや・・・こんな・・・・・どうして、どうしてなの・・・っ」
「さん!!」
後ずさりをして、何かに怯えるように彼女はどこかへと走り去って行った。
声を出して呼び止めても、止まることはなかった。
『分かりました。それで貴方のお名前は?』
さんを追いかけようとしたら、耳元でまだ警察官が話している。
「バーナビー、バーナビー・ブルックスJrです。もういいでしょう、早く言ったとおりにしてください!!」
僕は電話元で大声を上げて、携帯を閉じた。
逃げたさんを追いかけようとしたら、彼女の姿はどこにもなく・・・捕まえ損ねた。
あと少しだったのに・・・・、そうため息を零して地面を見る。
ふと、赤い液体のようなものが斑点になって零れていた。
指でそれを拭う、ぬるぬるとした感触・・・まだ新しい感じ。
自分が怪我した?と思いながら手を見るも、そういった形跡はない。
じゃあ、まさか・・・――――――。
「あの子が・・・怪我をした?でも、一体いつ?」
疑問に思っていると、空が暗く曇りだした。
まるでその雲は・・・僕の気持ちのように思えてしまった。
数分後、雲はついに雨を呼び起こし
僕は雨に打たれながら、トレーニングルームの休憩室に戻った。
扉の前に立つと、自動で開き
其処にはヒーローの皆とアニエスさんが揃っていた。
「バーナビー、お手柄よ。警察が助かったって言ってたわ」
部屋に入るとアニエスさんが笑顔で出迎えてくれた。
僕はただ「いえ、当然の事をしたまでです」とだけ、力なく答えた。
「ねぇ、バーナビー・・・は?」
「さん・・・戻ってないんですか?」
「はぁ?連れて行ったのアンタでしょ?の場所、知るわけ無いじゃない」
戻ってきてるとばかり思っていた。
じゃあ、何処へ?
「ちょっと、バーナビー・・・は?」
「さっきまで・・・話してたんですけど、あの火事騒ぎで」
「まさか・・・居なくなったとか言うんじゃないでしょうね」
「・・・・・・・・」
僕が黙り込むと、ソファーに座っていた虎徹さんが
勢いよく立ち上がり、立ち尽くす僕の横を通り過ぎていく。
「俺探してくる」
「どうして探しに行くんですか!!」
探しに行こうとする虎徹さんの動きを止めた。
「心配してんだ。探しに行くのが当たり前だろ」
「だからって・・・」
「じゃあ何でお前、戻ってきたんだよ。なんでを探しに行かなかったんだよ!」
虎徹さんが僕の胸倉を掴んで、怒気を強めて僕に言う。
何も、言い返せない。
「は・・・は・・・・・・・」
虎徹さんは苦し紛れな声でさんの事を言う。
彼女がなんだというんだ?
「あーもう!!・・・・俺、探してくる」
「タイガー!!」
「おい虎徹っ!!」
僕の胸倉から手を離し、部屋から飛び出して行った。
他の人が虎徹さんの名前を呼び止めたが、一度走り出したら止まらない人だから
多分呼び止めた声すら聞こえていないのだろう。
力が抜けて・・・僕は考えることをやめていた。
「アニエスさん、何でタイガー・・・・あんなにさんのこと心配してるの?」
すると、ドラゴンキッドがアニエスさんに問いかける。
その声にアニエスさんはため息を零し、僕の肩を叩いた。
「話してあげるからアンタも座りなさい。何でタイガーがのことを気にしてるのか」
「え?」
「みんな、聞いてちょうだい。大切な話があるの」
降りしきる雨の中、僕は知らされた事実に・・・・胸を酷く痛めてしまったのだった。
あぁ・・・この雨は貴女の涙なんですか・・・さん。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・怖いよ・・・怖いよぉ・・・助けて、助けてタイガーさんっ」
Truth is stranger than fiction.
(”事実は小説より奇なり“現実は僕が考えていた事より、もっと残酷なモノだった)