「アニエスさんとケンカした」





トレーニングルームの休憩室。
僕らヒーロー全員が居る前で、さんが怒りながらそう告げてきた。




?・・・ど、どうしちゃったの?」


「アニエスさんとケンカしたの。もう、知らないもんアニエスさんなんか」





どうやら相当アニエスさんと言い争ってきたらしい。
さんの機嫌を見れば一目瞭然だ。

というかあの、アニエスさんにモノを言う人物は僕らの中では絶対に居ない。
そのアニエスさんに噛み付いていくとは。・・・と誰もが思っていた。






「もう今日帰りたくないの。アニエスさんの顔も見たくない」


「これ相当よ?」





ブルーローズさんがさんを宥めるも、気持ちは治まらずにいた。
確かに見るからに、コレは相当だ。






「虎徹さん、アニエスさんの説得を。僕がさんを説得させます」


「お、おう」





虎徹さんにアニエスさんの説得に向かわせ、僕はさんの説得を試みる。
もちろん、2人を仲直りさせるつもりでの説得だ。






さん、何があったんですか?」


「アニエスさんが悪いんです。別に私、悪いことしてません」


「理由を言ってくれないと、僕やブルーローズさんも困ります。何があったか聞かせてもらえませんか?」





それでもさんは喋ろうとしなかった。







「ちょっと!!いつまで駄々こねてんのよ、いい加減にしなさい!」


「お、おいアニエス落ち着けって」







すると休憩室にアニエスさんが凄まじい勢いで入ってきた。
その後ろに猛烈に入ってきた彼女を宥める虎徹さんも続く。

アニエスさんの出現にさんが僕の後ろに隠れた。



僕を挟んでアニエスさんがさんに怒気を強めて言う。





「アンタ・・・ヒーローの皆を味方につけようたってそうは行かないわよ。いい加減にしなさい」


「別に味方につけてないです!元はアニエスさんが悪いんです!!私は悪くありません!」


「いい加減にして。アンタのケンカに付き合ってる暇無いのよ!」


「じゃあ相手にしなくても良いじゃないですか!暇がないならさっさと仕事に行けば良いじゃないですか!!」


「何ですってぇ!?」




「2人とも落ち着いて下さい!!僕を挟んで言い合うのはやめてください!!」







板ばさみになった僕はさんとアニエスさんの言い争いを止めた。






「ご、ごめんなさいバーナビーさんっ!」


「何でアンタが間に居るのよ」


「今更僕の存在に気づかないでくださいアニエスさん」






ようやく2人の言い争いを止めることができた。
僕はため息を零し、アニエスさんを見る。





「何があったとか細かいことは聞きません。ただ冷静に話し合ってください。
アニエスさん、子供相手に大人気ないですよ」


「コレは私との問題。他人のアンタが口出ししないで」



「それを言えばアニエスさんだって、さんとは他人のはずです」



「揚げ足を取るな。、出てきなさい」






アニエスさんの声に僕はさんを見る。
だが、一向に僕の後ろに隠れたさんはアニエスさんを睨みつけて出てこようとしない。

本当に相当、さん本人がご立腹だ。













「今日お家に帰りません。私・・・今日、バーナビーさんのお家に泊まります!」



「え?」

『はぁぁあ?!』






さんの発言に僕はおろか誰もが驚いた。






「何バカなこと言うの!!ダメに決まってるでしょ!!」


「アニエスさんの顔も見たくないんです!だったら私、今日バーナビーさんのお家に泊まります!」


。性別考えなさい、バーナビーは男!貴女は女の子なのよ!!」


「バーナビーさんは大丈夫なんです!アニエスさんに心配されるほどじゃないです!」





どこで大丈夫なんて・・・本当に勘弁して欲しい。


女の子を泊めるなんて、まぁ・・・ドラゴンキッドを前泊めた事はあるが
あれは仕事での話であって
さすがに年頃の女の子を泊めるとなると、僕自身だけじゃ心配だ。








「わーった、わーった。俺もバニーの家に泊まるから」


「虎徹さん」






すると、事態を収拾するような声が上がった。
虎徹さんも僕の家に泊まると言い出してくれたのだ。






「俺もバニーの家に泊まるから、それでいいだろアニエス」



「で、でも・・・っ」



「嫌がってる子を無理やり連れ戻すのは教育上よろしくないんだぜ?」



「・・・・・・」







やはり、経験者の言葉は重く来るのか
アニエスさんが黙り込んだ。

しばらくアニエスさんは沈黙をして僕を睨みつける。








「とりあえず、今日一日だけを預けるわ」


「虎徹さんも居るんで大丈夫です」


「そうね、でも・・・」






するとアニエスさんは僕の胸倉を掴んで下から見上げるような感じで睨む。







になんかしてみなさい・・・・ただじゃおかないんだから」




「わ、分かってます」




。言うこと聞くのよ」




「言われなくてもそうします」






どうやらさんは本当にアニエスさんと顔を合わせたくないらしい。
いつもは彼女に従順なさんも今回ばかりは反抗的な態度だ。






「まぁ俺も居るから大丈夫だろ」



「すいません虎徹さん」






2人の冷たい空気を見ながら、虎徹さんが僕の肩を叩いてきた。
ホント・・・この人の声が無かったら僕は多分今頃どうなっていたことか。

想像もしたくないが・・・助かった、の一言に尽きる。








「あれだ・・・ドラゴンキッドの面倒を見てたときの感覚でやりゃいいんだって」



「虎徹さん。さすがにドラゴンキッドとさんの歳は離れてます。体格も違うし・・・考えてください」



「・・・・すいません」





さすがに前の感覚でやると大変だ。
むしろドラゴンキッドとさんの歳は違いすぎるし、彼女は年頃の女の子だから
扱いには繊細にならないといけない。

僕は頭を掻きながら「今日は大変になりそうだ」と思っていた。


だが、その反面・・・どこか自分自身、嬉しさを感じていた。

























「ホラよ。鏑木虎徹特製チャーハン、召し上がれ」


「わぁー!ありがとうございます、いただきます!」




夜。

さんと虎徹さんをつれて僕のマンションに来た。
相変わらず此処にきても虎徹さんは自分の得意料理であるチャーハンをさんや僕に振舞う。

チャーハンの入ったお皿を受け取ったさんは
嬉しそうにそれを口に運ぶ。





「どうだ、?上手いか?」



「・・・はい!とっても美味しいです!!」



「そうか。お前に喜んでもらって嬉しいよ」





喜ぶさんに虎徹さんは頭を撫でた。
その姿を見て、僕の胸がまた・・・痛み出した。

また、この痛み・・・あの日、さんと海を見に行ったときの事。
彼女が虎徹さんからの電話を受け取ったときだった。

あの時も・・・そう、こんな感じの痛みが僕の心に来ていた。


そして、今も僕の心に突き刺さっている。






「おい、バニーも食えよ」


「え?」


「美味しいですよバーナビーさん」






考えていると、虎徹さんがお皿を差し出しさんが笑顔で僕を見ている。

僕は「い、いただきます」と言いながらお皿を受け取り
チャーハンを口にする。

いつも食べる虎徹さんのチャーハン。
分かる味なのに、どうしてだろう・・・今日は何だか味気がしない。










夜も更けて、僕と虎徹さんはリビングで。
さんを寝室で寝せることにした。

こうすれば、大丈夫。と思って僕らは眠りに就いていた。


ふと、僕は目を覚ました。









------------ガタンッ!








「何の音だ?」




突然物音がした。
「泥棒か?」と思っていたが、このマンションのセキュリティは厳重だ。
そう簡単に泥棒どころかネズミ一匹すら入り込む隙はない。

僕は起き上がり、リビングを出る。



リビングを出ると、さっき大きかった音はカタカタと小さな音になった。







「どこから聞こえてるんだ?」






首を動かし、とりあえず部屋の一つ一つくまなく音の元を探す。
キッチン、浴室、トイレ・・・あと残るは・・・・・・さんの居る寝室。

寝室の扉の前に立つと、声が聞こえる。
もしかして、さっきの音の先は此処から?そうなるとさんは?

僕は心配になり寝室のドアを開ける。









さん、どうかしましたか?」








ドアを開けて中を覗き込みながら入る。
すると、ベッドに丸い人影が1つ。

間接照明の電源をつけると、僕は目を見開かせ驚いた。








「っ・・・バ、バーナビー・・・さっ・・・」






彼女が、さんが涙を流して泣いていた。

僕はすぐさまベッドへと足を進める。






「どうしました?何か、何かあったんですか?」






そう言いながら足を進め
ベッドの彼女の居る隣に着いた瞬間―――――さんが僕に抱き付いてきた。


あまりに突然の事過ぎて、僕は驚きを隠せない。





「ぁ・・・、さ」



「・・・ぃ」



「え?」



「怖い・・・あの日が、あの日が・・・私、ゎ、たし・・・っ」



さん」






どうやら夢を見ていたんだろう。

多分、事件の日の夢。
何か思い出したくない記憶を思い出したに違いない。

僕はさんの頭を撫でようと、手を頭に伸ばしたが
あまりにも小さく泣いて恐怖に怯えている彼女を見ていたらそれだけじゃ、ダメと思い・・・・・・。









「大丈夫ですよさん」






僕はさんを抱きしめた。

腕に収めた彼女の体は、僕の腕のスペースじゃ有り余るほど。
この子は・・・こんな小さな体で事件の傷を背負っていたのかと思うと、力が入りそうになる。







「大丈夫ですよさん。僕が・・・僕が側にいてあげますから」






落ち着くまで、泣き止むまで側に居てあげよう。
僕は心にそう思っていた。




そして、僕は確信した。





どうして、彼女のことでこんなに僕は尽くしていたのだろうかと。

どうして、彼女が虎徹さんと喋ったりすると胸を痛めていたのだろうかと。


罪の意識や、虎徹さんに敵わない歯がゆさじゃない。





そう・・・僕はさんが好きなんだ。



好きだからこそ、何かしてあげたい尽くしてあげたいと思い

好きだからこそ、嫉妬をしていたに違いない。




自覚した今なら分かる。


この子を守りたい、この子を愛してあげたい。
僕にそんな資格・・・あるのかどうかすら分からないけれど――――。









さん、大丈夫ですよ・・・大丈夫、眠れるまで僕が側に居てあげますからね」








僕は、さんが・・・好きだ。







Consciousness
(僕は彼女が好きだと自覚したときだった) inserted by FC2 system

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