「・・んっ」
目が覚めた。ココは・・・何処?
「・・・、私が分かる?」
聞きなれた声に、見慣れた姿・・・。
薄っすらと見えたその姿に私の唇が今ある力で動く。
「カ、カリーナ?」
「よかった。・・・ドラゴンキッド、外に居る皆に知らせて。が目を覚ましたわ」
「ホント!?わ、分かった!!」
カリーナの姿が理解できたのか、私は首を横に動かす。
点滴の袋が見えた、それに白いベッド。
「此処は・・・?」
「病院よ。、デパートの事故に巻き込まれたのよ。覚えてる?」
そう言われて思い出した。
そうだ。私はデパートの火災事故に巻き込まれて、手を怪我して、男の子を助けて
それから―――――。
「!?」
「目を覚ましたのか?!」
ドラゴンキッドが外で待っていた皆に声を掛けたのか
ゾロゾロと病室に入ってきた。
先頭に居たのはアニエスさんで、すぐさまベッドに来て点滴の刺さっている手を握った。
「アニ、エス・・・さん」
「私が分かる?」
1つ頷く。
「良かった。貴女が無事で・・・本当に良かったわ」
「ごめん、なさい。迷惑かけて・・・」
「何言ってるの。が無事なら、私はそれでいいのよ」
アニエスさんは優しく私の頭を撫でてくれた。
「」
「タイガー・・・さん」
今度はタイガーさんがアニエスさんの横に立ち、私を見ていた。
「目が覚めてよかったよ。皆、お前が心配だったんだぞ」
「ごめんなさい」
「いや、別に謝んなよ。バニーが駆けつけるまで良く頑張ったな」
タイガーさんの言葉に私は首だけを動かす。
そういえば、バーナビーさんの姿が無い。
「・・・バーナビーさん、は?」
「バニー?・・・ん、おまっ、何隠れてんだよ」
私が言うと、タイガーさんは辺りを見渡す。
すると、皆の影に隠れていたバーナビーさんを見つけ私の元へ連れてくる。
『あ、あの・・・いいですから・・・っ』
『バカッ!よくねぇよ・・・ホラ、来いって』
『ちょっ、虎徹さん!?』
タイガーさんがそう言いながらバーナビーさんを私の前に連れてきた。
目を見ると、彼は何だか目を泳がせていた。
「あっ・・・あの・・・っ」
言葉にしたいのか、バーナビーさんは上手く喋れていない。
私は手が動く範囲で動かし、彼の手を握った。
「えっ?」
「ありがとう、ございます。助けに・・・来てくれて」
あの時、もう死んだかと思った。
だけどバーナビーさんの顔が頭を過ぎった瞬間、もう一度だけあの人に逢いたいと心の中で願った。
「私・・・嬉しかったです・・・・バーナビーさんが、助けに・・・来てくれて」
「・・・・・・・・・さん」
「本当に、ありがとうございます」
今出せる力で精一杯彼の手を握ると、彼も私の手を握り返し
目線を合わせてくれた。
「僕は・・・君が無事なら、それでいいです」
その言葉に私はホッとした。
そして「もう一度、この人に会えてよかった」と心の中で思っていた。
それから数日して、ベッドから起き上がれるようになり
私は窓の外を見ていた。
『、さん・・・僕です、バーナビーです』
「あ、どうぞ」
外からバーナビーさんの声が聞こえ私はすぐに彼を招きいれた。
「あ、今日も僕が一番乗りですか?」
「いいえ。今日はバーナビーさんは二番です。前にアニエスさんが来ましたから」
相変わらずと言っていいほど、バーナビーさんはお見舞いに来てくれた。
それこそ、毎日・・・朝晩と欠かさず。
「これでも早いほうなんですけどね」
「お仕事があるんですから、私のお見舞いなんて二の次にしてください」
私のことは二の次にして、ヒーローの仕事などに専念して欲しい。
少し怪我した程度で入院をしているのだから、私みたいな普通の子に時間を割いて欲しくない。
この人は、皆の憧れなのだから
私なんかの側に居ちゃ、いけない。
「僕、迷惑・・・・でしたか?」
「え?・・・あ、いえ、そういうわけじゃ、ないです」
私の言い方がよくなかったのか、バーナビーさんに不安そうな表情をさせてしまった。
慌てて私は訂正に入る。
「あの、バーナビーさんは・・・その、皆さんのヒーローで憧れですから。
わ、私みたいなその・・・一般人と関わってたら・・・いけないと思って・・・・」
なるべくバーナビーさんを傷つけないような言葉を探したけど
何だか余計悪く聞こえたような気がした。
私は申し訳なく顔を伏せているが、バーナビーさんは何も言わない。
顔を上げると、ただその人は立って私を見ていた。
「バーナビー・・・さん?」
「僕が・・・ヒーローだから、君はそう言うんですか?」
「え?」
「僕がもし、君と同じだったら・・・君は、そうは言わないんですか?」
「ぁ、あの・・・別に、そういうんじゃ。ご、ごめんなさい・・・気に触るようなこと言って。
バーナビーさん、心配してお見舞いに来てくださってるのに・・・私、ごめんなさい」
やっぱり言葉を間違えてた。
当たり障りなく言うつもりが、逆効果だった。
余計な言葉を私が言ってしまいバーナビーさんを傷つけてしまった。
せっかく、お見舞いに来てる人に私・・・最低だ。
私は自分の言ってしまった言葉に憤りを感じながら
目の前のかの人に謝った。
しかし、いつもなら「いえ、気にしないで下さい」と
返ってきそうな言葉が返ってこない。
やっぱり怒らせてしまったと思っていた。
「僕は、別に・・・自分がヒーローだからとか、君が一般人だからとか・・・そういうの
関係なく、君のところに来ています」
「ぇ」
すると、バーナビーさんが突然話し始めた。
「ぁ、あの・・・その、僕・・・そういう間柄で、君と接してるつもりでは・・・・・ないです」
「じゃあ・・・あの、どういう」
「その・・・その、僕・・・僕は・・・」
心臓が何だか徐々に鼓動するペースが速まっていった。
コップに注いでいる水が、溢れそうな・・・そういう、気持ちになりそう。
「僕は、その・・・君の、君の事が・・・・・・ぁ、あの・・・・・・・・す」
「おーい、。元気にして・・・ん、何だバニー?居たのかお前」
肝心なところでやってきたタイガーさん。
すると、バーナビーさんはメガネを光らせすぐさまタイガーさんのところに行き
背中を押して無理矢理外に出す。
「え!?おまっ、何すんだよバニーッ!?」
「貴方という人は本当に空気の読めない人ですね!出て行ってください!!」
「んだよ!?俺の見舞いに来たんだぞっ!」
「今彼女に大事な話をしてるんです!!いいから出て行ってください!!」
そう言ってバーナビーさんはタイガーさんを外に出して、扉を閉めため息を零した。
「ぁ・・・あのぉ」
「あっ。す、すいません・・・その」
「大事なお話、なんですよね・・・一応」
「え?・・・あ、は、はい」
さっき話そうとしていたのは、大事な話らしい。
どういう話なのかとりあえず気にはなっている私。
本題に戻すとバーナビーさんは再び私の横に戻ってきて、一呼吸置く。
「その・・・僕は、今まで君の事は・・・一切ヒーローと一般人という間柄で見ていたつもりはありません」
「はい」
「ましてや・・・君を妹みたいとか、家族とかそういう目線でも見ていたこともありません」
「はい」
「だから、その・・・率直に言えば」
「はい」
「君が好きなんです」
「え?」
心臓が跳ね上がった。
バーナビーさんが・・・私を?
「最初は・・・君を傷つけてばかりでした。でも、君の事を段々と知るたびに
傷つけた罪の意識で接していた思いが・・・そういうのじゃなくなってきて。
もう、君が泣く姿とか見ていたくなくて・・・・側に居てあげたい、側に居てあげなきゃダメだって・・・思って」
もしかして・・・私にあんな風に接してきてくれていたのは
傷つけた罪の意識じゃなくて、私を・・・好きだから・・・?
私のことが、好きだから・・・バーナビーさんは、私の側に・・・?
「あの・・・・こんなこと言って、信用してくれなんて出来すぎた話ですけど・・・その、本当に僕は」
バーナビーさんの顔が驚いていた。
無理もない。
だって、私は―――――。
「」
「ゎ、私・・・ぁの・・・」
涙を流していたのだから。
気持ちがコップから溢れ出して、私は涙を流していた。
Flood
(本当の気持ちを伝えられたとき、気持ちが溢れて涙に変わった)