自分の気持ちにもう嘘はつきたくなくて。
だから、全部ぜんぶ話そうと心に決め・・・彼女の居る病院へ赴いた。
色々と邪魔が入ってしまったが、自分の思いを告げた途端
目の前のが涙を流していたことに僕は驚いた。
「ぁ、あの・・・ご、ごめんなさい・・・その私・・・っ」
彼女は必死で自分の溢れる涙を拭いながら
僕に謝る。
自分自身で告げたことだけど、彼女が困ってしまうことは目に見えている。
「あの・・・やっぱり、迷惑でしたよね。君の言うとおり、ヒーローの僕が一般人である君に
その・・・好意を寄せるなんて・・・君に、重荷になりますよね・・・」
だから告白するのを躊躇った。
だから側に居ることだけを考えた。
だけど・・・それらの事で留めておけなかった。
迷惑になる、重荷になると、分かっていながらも・・・できなかった。
が、好きだから。
「あの、今の話は・・・な、なかったことにしてください」
僕は椅子から立ち上がり、部屋を去ろうとした。
だが突然歩みが止まる。振り返ると・・・が僕の服の裾を握っていた。
「ぁ、あの・・・」
「わ、私・・・怖かったんです」
「え?」
は顔を伏せながら僕に話しかけてきた。
「傷つくのが・・・怖かったんです。誰かに恋をして、傷つかないって・・・そんなの
ドラマだけの世界なんだって・・・自分の中で思ってたんです。でも・・・凄く、痛くて、痛くて」
「」
「何も言わずに・・・側に居ることだけを、考えたんです。これ以上傷つきたくなくて」
僕は傷つくことは恐れていなかった。
失うものは何もない。だから傷つくことも痛みも感じはしなかった。
でも目の前の彼女は傷つくことを恐れていた。
僕は、そんな彼女を守ってあげたいと思ったし・・・好きになった。
「だから・・・貴方の迷惑にだけは、なりたくなかった」
「僕の、迷惑?」
「貴方は皆の憧れるヒーロー・・・そんな人の側に居て、自分がいいのかって。
私・・・今でも自分の能力が怖いって思うし、上手く制御できないし・・・だから、貴方を傷つけてしまいそうで」
「皆、最初の頃はそうです。僕だって虎徹さんだって、もちろんブルーローズさんだって」
「でも・・・私、きっと自分の知らないところで貴方を、傷つけていたんじゃないかって考えたら」
確かに、彼女の言うとおり。
僕は・・・知らないところで傷ついた。虎徹さんの身代わりかもしれないって。
でも、それでもいいと望んでいた自分がいる。
が、笑ってくれるなら・・・身代わりでも、なんでもいい・・・。
側に居て・・・笑っていてくれるなら。
「だから・・・あの、私・・・」
「はい」
「貴方を好きになる資格があっていいのか・・・分からないんです。貴方を好きだという気持ちは
自分でも分かっているはずなのに・・・好きになっていいのか、本当に貴方の側に居ていいのか・・・私、ゎたし・・・っ」
「え?」
今、なんて?
が・・・僕を?
「君は、虎徹さんが・・・好きなんじゃ」
「確かに、私・・・タイガーさんのこと、好きでした。好きだったけど、あの人は今でも想い続けている人が居る」
虎徹さんの今でも想い続けている人。
多分、亡くなった奥さんのことだろう。
「そんな人が居るなんて、知らなくて。私・・・最低ですよね」
「え?」
「まるで、バーナビーさんを身代わりにしてるみたいで・・・・・・最低です」
「」
「だから悩んでるんです。はっきりとした答えが出ないから・・・貴方を好きになったことも
タイガーさんの身代わりって想われてしまうんじゃないかって・・・・でも、でも・・・・」
は未だ顔を伏せたまま、涙を流して僕に言う。
白いシーツには、灰色の斑点が滲んでできていた。
「私の傷ついた気持ちを全部、貴方が癒してくれた。貴方が側に居てくれるだけで、私の傷は癒えていった。
身代わりとか、そんなんじゃなくて・・・純粋に、私・・・貴方を好きになって・・・」
「」
「ごめんなさい。・・・ごめんなさい、バーナビーさん・・・私、わた、し」
「もういいですよ」
僕はの泣いている姿を見るのが辛くなり
彼女を抱きしめた。
腕に収まった彼女の体は、本当に小さくて・・・抱きしめる力が思わず強くなりそうだった。
「僕は、虎徹さんの身代わりでもいいと思ったんです。君が笑ってくれているのなら、それでもいいと
自分自身でその道を望んだんです。例え、辛いと分かっていても・・・君が笑って幸せなら」
「バーナビー・・・さ」
「でも・・・君が僕を本当に、好いてくれるなんて・・・思ってもみなかった。
君が、僕を好きになることなんて1%の可能性も・・・僕自身見出せていなかったから」
「ぇ、あの・・・私」
「答えはYESと受け取っていいんですか?君が僕を好きだという答えでいいんですか?」
100点満点の答えじゃなくてもいい。
99点の答えでも、僕はいいんだ。
「僕を好き」だと、君が想っていてくれるのなら
確信的な答えじゃなくてもいい、曖昧な答えでも聞けたら十分だから。
「私が、貴方を好きになってもいいんですか?」
「僕は君が好きです。人を好きになるのに、ヒーローも一般人も関係ありませんから。
君が僕を好きだというのなら・・・その気持ちに正直になってください」
「私は・・・・」
すると、の手が僕の背中に絡みつき・・・抱き返してきた。
「・・・・き」
「聞こえるように言って下さい。僕しか聞いてませんから」
「私は・・・貴方が、好きです」
「僕も君が好きですよ」
「バーナビーさん・・・ッ」
「もう離したりしません、側に・・・ずっと側にいてください。必ず僕が守りますから」
「・・・・・・はい」
震える声で耳に届いたの返事。
それを聞いただけで、胸が熱くなり・・・思わず顔が綻ぶ。
僕は彼女の背中を優しく叩き宥めた。
「お、おいブルーローズ待てって!」
「ちょっと、バーナビー!いつまでを一人じ」
「あ」
「カ、カリーナ!?」
すると、ブルーローズさんが突然部屋に入ってきた。
そして僕がを抱きしめているのをばっちり目撃し、目が点になっている。
彼女の背後で虎徹さんが盛大なため息を零していた。
「ちょっと!!アンタ、怪我してるに何してんのよ!!離れなさいよ!!」
「カ、カリーナッ!?わ、私は大丈夫だからっ」
「良くない!!離れてってば!!」
ブルーローズさんに強く言われ、虎徹さんを見ると「バニー、離してやれ」と
言わんばかりの顔をされ僕はを離した。
離した途端凄まじい速さで彼女はの元へ駆け寄り、抱きしめ僕を睨み付ける。
「に触んないで」
「カリーナ」
「分かりました、もう触りませんから。でも、次からは、普通に抱きしめていいんですよね?」
「え?・・・あ、バーナビーさん・・・あの、名前、呼び捨て」
「お互い好きだと分かったんですから・・・さん付けする必要はないでしょ?ね、」
微笑むとが顔を真っ赤にして伏せた。
あ、こういう反応もするんだ・・・可愛い。
「え?・・・なっ、あんた達・・・お互い好きって・・・ちょっと、どういうことよ!!」
「だ、だから・・・あの、あのねカリーナ」
「ちゃんと言わないと分からないわよ!!説明して!!」
「だ、だから・・・っ」
するとは助けを求めるように僕を見る。
僕は笑みを浮かべ。
「僕はが好きで、も僕が好きだということですよブルーローズさん」
「ちょっと、何それ!?、本気?本気で言ってるの!?」
「本当だよ。私・・・バーナビーさんのこと・・・・・・好きなの」
「そういうことですブルーローズさん」
「お!ならおめでたいなぁ〜よかったじゃねぇか」
虎徹さんは喜んでくれた、が。
「認めない」
「カ、カリーナ?」
「タイガーもだけど、バーナビーならなおの事認めたくない!!コイツの恋応援してたけど
やっぱり認めたくない!!、あんな男やめなさい」
「え〜!?」
「応援してたのに酷いです。というか人の恋路を邪魔しないでください」
「上手くいったのが何か腹立たしいのよ!!あー!!応援するんじゃなかった。別れて、を好きだというの諦めて!!」
「カリーナ酷いよぉ〜」
「無理言わないでください」
「おい、誰かブルーローズ止めろ」
病室で楽しい会話がされる。
がとても嬉しそうに幸せに笑っている。
君を好きになったこと後悔はしない。
いや、僕を好きになったこと絶対に後悔はさせない。
だからどうか、僕の側で笑っていて。
ずっと、ずっと・・・僕が君の笑顔、守るから。
Protect
(君を、君の笑顔を僕は守っていきたい)