「私の聞き間違いかしらねバーナビー」



「いえ、聞き間違えでも何でもありません」





アポロンメディアのとある一室。

其処に不穏な空気が流れていた。室内の人々は
おどおどとしながら、僕とそしてアニエスさんを見ていた。






「何の根拠があって言ってるのかしら?」



「100%守りきる自信があるからこそ言ってるんです」






すると、アニエスさんは机を激しく叩き立ち上がる。
その音で室内の人々は驚き、また怯えていた。

一方の僕はと言うとその行動を目の前で見ているが微動だにせずアニエスさんを見る。






「ふざけないで!あの時は偶然助かったまでの事、だからって何も其処までしなくてもいいわ」



「いえ、僕は徹底したいんです。お願いします」



「ダメよ。絶対に私は許さないし認めないわ」



「アニエスさん」





アニエスさんはそう言い残して、部屋を出て行った。
僕は深いため息を零し、肩を落とし会社内にある事業部のデスクに戻るのだった。


戻ると虎徹さんが「どうだった?」と出迎えてくれたが
僕は首を横に振りダメだったと無言で返すと、かの人はため息を零しながら椅子に座った。






「ま、アニエスが反対するのも無理はねぇか」



「分かりきってた反応でしたけど・・・・実際言われると、結構響きます」



「だろうな」







アニエスさんに何を話しに言ったのかと言うと。

数日前、僕がに言ったこと・・・・「一緒に住まないか」ということだった。


順序は間違っていない。
先にには伝えているから。






「そういえば、はなんて?」



「少し考えさせてほしいと。急なことで頭が混乱しているから、考えさせてほしいって言ってました」



「まぁ考えたら大分急だよな。も驚けばアニエスも怒ることだ」






確かに2人の反応は当たり前だ。




は驚くし、アニエスさんは怒って当然。



でも、僕にはもうこの方法しか見つからなかった。
色々考えた末・・・と一緒に暮らすことが最良の手段だと、僕自身思っている。







「もう、繰り返したくないんです」



「バニー」



「大切な人を目の前で失うことを」









幼い日に味わったあの思いを・・・二度と繰り返したくない。


目の前で大切な人を失うのを防ぎたい。

幼い日の僕にはそれが出来なかった。
でも、今は違う。

誰かを守る、誰かを助ける力がある。



その力を・・・・もう一度、大切な人を守るためだけにも使いたい。




遠くじゃなく、ずっと近くで、ずっと側で。









の側に、僕は居たいんです。側に居て、守ってあげたいんです。
あの子の悲しい涙を、僕はもう見たくない」



「そうか」




「許してもらえるまで、認めてもらえるまで・・・・アニエスさんの説得を僕は続けます」




「じゃあ、俺も」



「いえ、虎徹さん・・・これは僕のやるべきことなんです。貴方の気持ちは嬉しいですけど
これは僕がやらなきゃいけないことなんです。僕一人の力で、アニエスさんを説得しなければいけないことですから」



「バニー」





誰かの力を借りてまで、成し遂げようとしているんじゃ意味がない。

これは僕一人の力でやらなきゃいけないことだから。










会社を出て、僕はがまだ入院している病院にやってきた。
本人は至って健康なのだが、腕の怪我がまだ癒えない為もう少し入院生活を送っている。











「あ、バーナビーさん」






病室に入るとが窓の外を眺めていた。
僕はすぐさまそちらに近づき、彼女の隣に立つ。






「どうかしましたか?」



「え?あぁ・・・いえ。何ていうか」



「はい」



「羨ましいなって思ってて」






羨ましい?

ふと、窓の外の病院の庭先に視線を落すと
子供が親と一緒に遊んでいる風景が目に入った。

楽しそうに、無邪気に遊んでいる。

目線を横に移すと、はとても寂しそうにそれを見ていた。





?」




「小さい頃私が、怪我をしたとき・・・病院にすぐ、パパやママが駆けつけてくれました。
あの時は凄く怒られたけど、その後はちゃんと優しく側に居てくれたんです。でも、パパが死んで
ママが私を育てるために出張ばかりで家を空ける様になってから・・・・毎日、寂しくて」










窓に触れているの手が微かに震え始める。







「平気なフリして・・・気丈に振舞って。でも、本当は・・・本当は、とても寂しくて・・・・・辛くて・・・っ」










寂しさのあまり泣き出したを僕はそっと引き寄せ
抱きしめた。

腕の中に入れた彼女は小さく震えている。

その震えを治めるように僕は強くを抱きしめた。







「今だって・・・本当は寂しいんです。でも、自分でもどうすることも出来ないし
毎日、毎日穴は広まっていくばかりで・・・それでも・・・堪えるしか、私には出来なくて・・・ッ」



「堪えるくらいなら・・・辛い思いをするくらいなら・・・・・僕に預けてください」



「え?」






僕の言葉には顔を上げる。

目から涙が溢れ、頬を流れていた。
そんな頬を伝う雫を僕は指で拭い、優しくの頬を撫でた。






「何のために、僕が居るんですか?」




「バーナビーさん」




「君がそんな思いをしないために、僕が居るんです。、君にずっと笑っていてほしいんです。
飾らない、見せ掛けの笑顔じゃなく・・・心から幸せと思う笑顔で居てほしい」




「でも・・・貴方の、迷惑には」




「そんな事思わないでください。の迷惑は大歓迎ですし・・・そんな小さな体で
もうこれ以上傷つかないでください」



「バーナビーさん・・・・・ッ」







もう傷ついてほしくない。


もう寂しい思いをしてほしくない。


悲しい涙も、辛い傷も・・・・。


だから・・・だから、僕は――――。







「君の側に、居たいんです。遠くから見守るのじゃなく、すぐ側で、すぐ近くで。
だから・・・あの・・・僕は・・・」






一緒に、住みたい。



一緒に居て、共有したい。



楽しい事も、嬉しいことも・・・何もかも。







「バーナビーさん・・・あの、私・・・」





言葉をくぐもらせていると、が僕の名前を呼んで
何か言おうとしていた。






?」



「あの・・・・・・あの、私っ!」








が何かを言いかけようとしたとき――――。









、入るわよ』










病室の外から聞きなれた・・・そう、アニエスさんの声が聞こえた。

抱きしめていた光景を見られてしまえば
彼女の怒りはさらに激しさを増すことだろう。何せ、数時間前まで
僕はあの人を怒らせてしまったのだから。


僕はそっとから離れ、また彼女も目から零れていた涙を手で拭い
「どうぞ」と声を掛けアニエスさんを中に入れた。







「話があるって言うから来たけど、一体・・・・・・・バーナビー」







僕の顔を見るなりアニエスさんの表情が険悪そうなモノになった。


しかし、僕を無視してアニエスさんはの方を見る。
要するに完全に僕を眼中に入れていない証拠だ。








「どうしたの、一体?」



「あの・・・あの、私・・・」



「何かあるならはっきり言いなさい」






アニエスさんの言葉には戸惑いながらも何かを言おうとしている。
そして彼女は僕を少し見たがすぐさま視線を戻す。

何だ・・・今の視線は?





「私・・・わたし・・・っ」




「何なの?」






















「私・・・・・バーナビーさんと一緒に住みたい!」




「え?」

「なっ!?」







の口から出てきた言葉に、僕はただ驚いていた。

答えを聞く前に・・・彼女の口から答えを聞いてしまったからだ。






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