数日後。

アニエスさんからの返事が来た。
僕との同棲を認める、という良い知らせだった。

そしてアニエスさんの部屋から
の荷物を運んで、僕の部屋に持って来てもらっていた。

に部屋の鍵を渡しているから
僕がマンションに戻ってきた頃には荷物の運びは当に終わっていた。




エントランスでアニエスさんを見かけた僕は、すぐさま近づき話しかける。






「荷物はもう運び終わったんですか?」


「えぇ、そんな量じゃなかったし。他のヒーロー達に手伝ってもらったわ、業者呼ぶとお金掛かるでしょ?」


「少なければ皆さんで運んだほうが良いですからね。僕も手伝いたかったのですが、すいません・・・取材で」


「いいのよ別に。アンタはアンタの仕事をしなさい」


「はい」





本来なら、僕もの引越しの手伝いをする予定だった。

しかし今日に限って取材の仕事が入ってて
終わった頃には手伝えるだろうと思っていたのだが、どうやら僕の出番はなかったみたいだ。






は?」


「あの子ならアンタの部屋。多分荷物の整理でもしてるんじゃない」


「そうですか。なら僕も部屋に戻るとします」





が部屋に居るなら、そこから彼女の手伝いをすればいい。
僕は意気揚々として部屋に向かうエレベーターに乗り込もうとした・・・が。







「ちょっと待ちなさい」



「え?」




足をエレベーターに向かわせようとした途中、アニエスさんに止められた。
アニエスさんは僕の方へとゆっくりと歩く。高いヒール音がエントランスに響き渡る。

そして、僕の目の前で立ち止まった。






「一緒に住むことは認めたけど・・・コレだけは覚えておきなさい」





瞬間、胸倉を掴まれ下から僕を睨み上げる。
その目はまさに血走っていて、今にも足がすくんでしまいそうになる。






に何かしたら、ただじゃおかないからね」



「き、肝に銘じておきます」







血走ったその目からは、何やら殺意を感じた。

それが言いたかったのかアニエスさんは「仕事があるから」と言ってその場を去って行った。
僕は緊張していた糸を緩め、盛大なため息を零した。


別に早くにどうこうしようとは思わない。

ましてや、はまだ10代で・・・僕なんかが手を出したりしたら犯罪紛いだ。

お互い・・・もう少し距離を縮めてからじゃないと、いきなり展開を早めてしまえば
それこそが戸惑ってしまう。


唯でさえ、一緒に住もうと持ちかけた時点で・・・彼女自身を戸惑わせているのに。






「はぁ・・・部屋に行こう」




とにかく、部屋に運ばれた荷物と格闘しているであろうの元へ僕はエレベーターに乗り込み
自分の部屋へと向かうのだった。


部屋に入ると、いろいろゴタゴタしているのか思っていた。
しかし荷物で溢れかえっているわけでもなく、いつも通りの部屋の風景。

リビングに足を進めると、が窓の外を眺めていた。
後姿の彼女に話しかける前、ふと部屋の隅に目線が行った・・・其処にはダンボールが3つ、積み上げられていた。






「荷物はコレだけですか?」



「え?・・・あ、バーナビーさん」





に「片付けお疲れ様です」と声をかける前、その言葉が出た。

あまりの荷物の少なさに驚いているのだ。


僕の声には振り返り、僕を見て言う。







「大体火事で燃えちゃって。教科書は学校からまた支給されたんですが
衣服はアニエスさんのお家にいるときに揃えた分でそれくらいしかないんです」





彼女の言葉に僕自身納得した。


だったらダンボール3つで納得がいく。





「それに、私入退院が多かったのであんまり洋服も買う時間なかったんです。
だから引越し・・・大分楽でした。ダンボール3つで済みましたし」



「じゃあ、これから少しずつ増やしていきましょう」



「え?」





僕の言葉には目を見開かせ驚いていた。
ゆっくりと彼女に近づき、そして目の前に立つ。






「女の子は色々と大変ですし。何より僕はいつもには笑顔で居て欲しいので
必要とあらば言ってください、僕も出来る限りお手伝いします。買い物にも・・・一緒に行きたいですし」



「あ・・・は、はぃ」






最後の一言は、ようするに「デートをしてください」という誘い文句だ。
その言葉の意味を捉えたのかは顔を赤らめながら返事をしてくれた。

せっかく恋人同士になったというのに
デートの一つもできないんじゃ、の恋人として失格だ。



僕はゆっくりとを引き寄せ自分の腕の中に収めた。







「バ、バーナビー・・・さん」



「何かあった時は言ってください。もう1人で抱え込まなくていいんです、君はもう1人ではないんですから」






こんな小さな体で、大きな物事にぶつかり耐えてしまえば
次は入院だけで済む問題じゃなくなりそうな気がしている。

が居なくなってしまうことだって、無いとは言い切れない話だ。







苦しいなら、頼って欲しい。




泣きたいなら、寄り添っていたい。




笑いたいなら、共有していたい。









「悲しいことも、嬉しいことも、君の事なら何でも・・・僕は受け止めてみせます。
だから、・・・もう、1人で抱え込むことだけはしないでください」








もう二度と大切な人を、目の前から失わないように。










「約束、してください。僕も約束します」



「・・・・はぃ」







の返事を耳に入れ、僕は体を離し
彼女のおでこにキスを落とした。

まるで、それを誓うかのように。


キスを終えると、突然体が宙に浮き勢いよく壁に吹っ飛ばされた。





な、何故?




もしかして、と思いを見ると
彼女の体を青い光が包んでいる・・・そして目の色はNEXT特有のブルーアイズ。

しかし、それはものの数秒で消えいつもどおりのに戻る。


あぁ、ようするに・・・が能力を発動させたというわけか。







「あっ、や、やだ・・・私っ、ご、ごめんなさいバーナビーさん!」






能力が切れたは慌てて僕の元へと駆け寄る。






「あの、あの・・・ご、ごめんなさい・・・私、また・・・っ」



「大丈夫ですよ。最初のうちはみんなこういうことありますから」





そう言いながら、のおでこと自分のおでこを付け
慌てふためく彼女の心を鎮める。






「少しずつ、能力の制御もしていきましょうね」



「え・・あ・・・は、は・・・」







と、言った側からまたが能力を発動させまた壁に逆戻り。




どうやらこういう馴れ合いは、まだまだみたいだ。
きっと彼女自身緊張しているせいなのかもしれない。







「(これはこれで・・・前途多難かもしれない)」






恋人らしいことをしよう、という僕の思惑はどうやら当分先になりそうだ。






Love is love's reward.
("愛は愛の報い"。思えばきっとその報いは叶う、はず)
inserted by FC2 system

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル