翌朝。
バニーの携帯に急な連絡が入り
私と彼は急いで、病院へと向かった。
「アニエスさん!!」
「大丈夫ですか?!」
「、バーナビー」
病室の扉を勢い良く開けると
ベッドに横たわっているアニエスさんの姿を目にした。
その近くにはタイガーさんが立っていて、私達を出迎える。
私はすぐさま駆け寄り、声を掛ける。
「虎徹さん、一体何があったんです?」
「昨日の夜、誰かに襲われたんだと。幸い頭を打って意識を失ってたが
命には別状ないし、夜中の内に目を覚ましたから問題はないそうだ」
バニーの声にタイガーさんが説明の説明を聞きホッとして
頭に包帯を巻かれ、横たわっているアニエスさんを見た。
その姿に私は涙を流していると
かの人は苦笑を浮かべ「何て顔してるの」と言って
ベッドの中から手を出して私の頬を撫でてくれた。
「アニエスさん・・・っ」
「ちょっと頭を強く打たれただけよ、そんなに泣くこと無いでしょ」
「でも・・・」
「とにかく犯人を捜しましょう」
「ああ。たっぷり灸を据えてやんねぇとな」
「は此処に居て下さい」とバニーに言われ
2人は犯人を捜しにと病室を後にしていった。
そして其処に残った私と、ベッドに横たわっているアニエスさん。
私はアニエスさんを見ていると彼女は溜息を零し
真剣な眼差しで見てきた。
あまりにも安堵とは程遠い視線に体が自然と強張る。
「アニエス、さん?」
「実はね、私を襲ったのは・・・貴女のお母さんなの」
「え?」
突然言われたその言葉に心臓が痛いくらい締め付けられる。
そして何度も大きな音を立てて脈打つ。
「な、何で・・・ママが、アニエスさんを」
「貴女の母親代わりっていうので・・・文句を言いに来たのよ」
『娘を返して頂戴。アニエス・ジュベールさん』
『貴女がの母親ね?今まで娘を放ったらかしにしておきながら
今更何だって言うのよ。冗談じゃない』
『返してはくれないと?』
『当然よ。そんなものこっちから願い下げだわ』
『そう。だったら、痛い目見ないと・・・分からないようね』
「そう言って頭部を殴られたんだけど、手で殴られたのに妙に痛かったのよね。
アレはNEXT能力と思ってもおかしくはないわ」
「ママが・・・そんな・・・っ」
愕然とした。
まさかアニエスさんを酷い目に遭わせたのが
通り魔や、見ず知らずの犯行ではなく
私の母親だというのに胸に痛みが走った。
また私の大切な人が傷つけられた。
大好きだと思っていた家族に。
これ以上、もう誰にも傷ついてほしくない。
私はそっとアニエスさんの側を離れた。
「?」
「ごめんなさいアニエスさん。私、用事を思い出したので」
「ま、待ちなさい!!・・・痛っ」
「大丈夫です。私の事は心配しないで」
「待ちなさ・・・待ちなさい・・・ッ!!」
私を引き止める声を振り切り、病室を飛び出した。
何処に行くわけでもなく
ただ、私は心当たりの場所へと歩きまわった。
小さいころよく遊んだ公園。
小さいころよく行ったスーパー。
小さいころよく向かった海辺。
そして―――――小さいころからずっと住んでいた今は更地になった私のお家。
お家に向かうと、更地の前に人の姿。
見覚えのあるその姿の近くにと私は向かった。
更地を見続ける――――。
「ママ」
自分の母親の姿を目に映した。
声を掛けると此方の声に気付いたのか
ママは振り向き、驚いた表情を見せた。
「」
「ずっと、私を探してたんだよね」
「当たり前じゃない。急に居なくなるから心配したのよ」
「アニエスさんを傷つけてまで、私を探してたの?」
そう言うとママの言葉が止まった。
私は言葉の刃を止めること無く、ママにと突き刺していく。
「何でこんな事するの?」
「貴女が心配だからじゃない。元々ワイルドタイガーもアニエスさんも赤の他人よ?
それに面倒見てるバーナビー君だって」
「だからって皆を傷つけなくてもいいじゃない!どうしてそんな事、平気でできるの?
ママおかしいよ」
「ママから言わせてみれば、の方がおかしいわ。どうしてあの人達を庇うの?
どうしてママの元に帰ってきてくれないの?家族でしょ?」
「私の大切な人を傷つける人は・・・私の家族なんかじゃない」
「なんですって?」
寂しく怯えた私に手を差し伸べてくれたタイガーさん。
孤独に震え宥めてくれたアニエスさん。
そして―――私を心の底から愛してくれるバニー。
それだけじゃない。
カリーナもネイサンもパオリンも、キースさんも、アントニオさんも、イワンさんも。
皆が私の側に居て、笑顔をくれた。
家族じゃないのに、家族のように接してくれていた。
時に叱り、時に喜び、時に愛情をくれた。
「ママはもう私の知ってるママじゃない。寂しい時、苦しい時、ママは側に居てくれなかった。
居てくれたのは皆だった。これ以上、私の大切な人達を傷つけないで」
「しばらく見ない間にあの人達に感化されたのね。仕方ないわ」
するとママの体が青白く光り始め、目も青色にと染まる。
ママ自身のNEXT能力を発動させようとしていた。
でも何の能力なんて私には分からない。
無論対抗していたバニー達にも分かっていないのだから
自分の限界なんて知れている。
だけど何もしないでただ、されるがままはもう嫌。
うまく使いこなせる自信はないけれど。
「・・・!?、貴女、まさか」
「これ以上誰も傷つけさせない」
自らの能力で対抗していくしか無い。
自分の出来る限りの力で大切な人を守ってみせる。
誰も泣かずに済むのなら。
それで、自分がどれだけ傷ついたって構わない。
Protect
(守ってみせる。もう私以外の人が傷つく姿は見たくない)