キスを一日一回と決めて、はや数週間。
それでも思わずに軽くしてしまいそうになるも
動きを何とか止めて、体を離すを何度となく繰り返している。
正直、もどかしい気持ちが増える一方なのだが
そんな自分勝手な事を彼女に押し付けるような真似だけはしたくない。
たくさんキスをしたい、なんて言ってしまえばそれこそ
嫌われてしまいそうで怖いからだ。
でも、の唇を見る度。
キスをしたい衝動とあの唇に噛み付いてしまいたい衝動が重なり合って
正直悪循環極まりない。
「(駄目だ･･･死にたい)」
「ねぇ、バニー」
「あ、は、はい。何ですか？」
そんな、鬱々とした気持ちでいるとが後ろから声をかけてきた。
返事をし振り返り彼女を見ると、何だか悲しそうな表情を浮かべていた。
「、どうしたんですか？何か、あったんですか？」
「バニー･･･我慢、してる？」
「え？」
の言葉に心臓が大きく跳ねた。
「キス･･･一日一回って決めてから、いつもバニー･･･何か我慢してるように見えて」
「･･････」
僕自身、何とか隠していたつもりだったが
どうやら彼女には見透かされていた。
そもそも、僕がそういう素振りを見せていたのかもしれない。
自分では隠していたつもりでも、には分かっていたんだろう。
僕はため息を零し、前髪を掻き上げる。
「正直、自分でそれを決めたのは間違いだったと反省するべきとは思います。
ですけど･･･僕は、君に嫌われたくないんです」
「え？」
ゆっくりと、僕は隠していた気持ちを吐露し始める。
「僕達の距離というのは、以前より物凄く近くなりました。
一緒にいる時間だって、側に居る時間だって。でも、近すぎるとかえって
を怖がらせてしまうんじゃないかって思ったんです」
「バニー」
「僕はに嫌われたくないし、怖がらせたくもないんです。それが僕は一番･･･怖くて」
今となっては過去の事のように思えるが
僕は酷いまでに彼女を傷つけた事を時々思い出してしまう。
あの時のように、怖がらせて挙句の果て拒絶されてしまったら、と考えたら
自分の愛情を彼女にと向けすぎるのが怖かった。
「だから、僕は自分の、君に対する愛情を抑えこむためにあんな事を言ったんです。
これ以上･･･あんな風に嫌われたくなくて、だから、あの」
「もういいよ」
「っ！？」
すると言葉を遮るように、が僕を抱きしめてくれた。
あまりに突然過ぎることで心臓が痛いくらいに鼓動している。
「もういいよバニー。無理しないでいいよ」
「で、ですが･･･僕は」
「私、ホントはね･･･もっと、いっぱい、バニーとキスしたいの」
「え？･･･あ、あの、それって」
彼女の言葉に僕は動揺を隠せずにいた。
抱きしめられていた体が離れ、彼女と目線が合う。
「ゴメンね。私が何もかも初めてだから、バニーは遠慮してるんだよね。
でも、遠慮とかそういうのしないでいいよ。私、バニーに大切にされてて･･･とっても嬉しいんだよ。
それに･･･我慢とかしてるバニーの事見てると･･･私、苦しくて」
「苦しい？何故ですか？」
「だって･･･私のせいで、って思ったら苦しいよ。いっぱい、いっぱい、愛して欲しいのに
どうして我慢しちゃうんだろうって、私が悪いのかなって･･･考えたら」
すると、は目から涙を零しながら僕に訴える。
その姿に僕は彼女を引き寄せ、唇を重ね合わせた。
数秒触れ合い、離れおでこを合わせる。
僕の突然過ぎる行動に、は目を見開き驚いていた。
「バ、バニー？」
「君がまさか、そんな事を思っていたなんて。
僕は本当に馬鹿なことをしていたんだと、反省すべきですね」
「いいよ、反省とかしなくて。私も、ちゃんと言わなかったのが悪いから」
「じゃあ、おあいこってことですね」
「ウフフ、そうだね」
おでこを重ね合わせながら、僕らはお互い笑い合う。
軽く笑い、視線がぶつかる。
「これからは、もう、一日一回じゃ済まないですよ？それでも、いいですか？」
「いいよ。もっと･･･いっぱい、バニーとキスしたい」
「じゃあ、これからはもっと、たくさん･･･キス、しますね」
そう言って、僕と彼女は何度も愛を確かめ合うように唇を重ね合わせるのだった。
キス・アンリミテッド
(これからはもう待ったなし、ですよ)