約束します。

来年は、2人で行こうと―――――。














ー・・・今年のクリスマスなんだけどさぁ」


「カリーナ。あのね、今年は」


「僕と予定が入っていますので、のパーティ参加はお断りさせていただきます」


「バ、バニーッ」









とブルーローズさんの話に割り込んだ僕。



彼女が断りの言葉を入れる前に
僕から直にブルーローズさんへ断りの言葉を投げ込んだ。





「ちょっと、何の権限があるのよそれ。にそういう権限持たせて上げなさいよ。
何でもかんでも自分の思い通りにしないで」


「別に僕はそういうつもりで言ったわけじゃ」


「ち、違うのカリーナ。去年から約束してたことだから」






僕の言葉がブルーローズさん的には印象として
良くなかったのか、彼女は眉を歪めに僕を睨みつけている。

すると、がすかさず助け舟を出した。







「きょ、去年からね・・・バニーと約束してたから。来年は一緒に過ごそうって」



「そういう事ですよブルーローズさん」



「何よ。それならそうと早く言いなさいよ。ならせいぜいお楽しみくださいな」





の言葉に納得したのか
ブルーローズさんは嫌味な言葉を零しながらその場を立ち去った。







「やけに、言葉に刺が感じられたのですが」


「まぁ私の事考えたら、カリーナは一番知ってるからね。
去年みたいな事があるんじゃないかって心配してたんだと思うよ」






は苦笑しながら、僕の言葉に答えた。


ふと、思い出す。


去年はお互いぎくしゃくしながら迎えたクリスマス。

しかし其処で明らかになったの聖夜での事。




彼女にとっての「聖夜」は待ち続ける人を思い描きながら泣き続ける苦しい日だった。

もちろん僕にとっても「聖夜」というものは忘れたくても忘れられない日だということは変わらない。



だけど、の事を知った時・・・僕は計り知れない後悔と、愛おしさを感じた。




だからこそ、今年は・・・――――――。









「君と一緒に両親の墓参りに行きたいんです」


「バニー」









の手を握り、彼女を見つめる。


そんな日にしたい。

寂しかった日も、君がいれば大丈夫だと・・・天国で僕を見守る2人に伝えたい。








「おーい。クリスマス予定なんだがな」


「タイガーさん、クリスマスは」


は僕とクリスマスを過ごすんで邪魔しないでください虎徹さん」


「あ、あ・・・わ、悪ぃ」


























「此処がバニーのパパとママの」


「はい、お墓になります」






次の日。

街はクリスマス一色に彩られ賑わっている傍ら。
僕はを車に乗せ、町外れの両親の墓までやってきた。


車から降りたを誘導するように、墓の前まで連れて行く。


彼女の抱えた大きな花束が潮風で優しく揺れる。
まるで、僕ら2人を迎えるかのように。



は抱えていた花束を墓前に添えて、両手を合わせ祈りを捧げる。

僕はその後ろで彼女と、そして両親の埋まっている墓を見つめていた。








「・・・24日は」


「はい?」







すると、突然が言葉を発する。







「24日は・・・私も辛かったけど、バニーも辛かったんだね」



「辛くなかった、と言えば嘘になります。毎年この日が来るのがいつも辛くて苦しかったのが事実です」








思い出したくもない、あの日の事。


時々脳裏を過る幼い日の、瞬間。


平和だった日に訪れた、悪魔の日。


全てが夢であってほしいとどれだけ望んで、願ったことか。





いつも目を開けたら、大切なモノを失った虚無感と復讐に身を費やす現実だけが広がっていた。









「でもに出逢ってから、晴れた空に太陽が出てきたようで清々しく。
僕自身、また少しずつ変わっていってるように思えるんです」


「え?」







僕の言葉に、と視線がぶつかる。
そんな彼女の表情に愛おしさを感じ
優しく手を握り持ち上げ慈しみを込めて、指に唇を落とした。






「復讐に身を費やしてた日々が晴れて、僕の頭の中に清々しい空が広がりました。
そして・・・君に出逢って、僕の空に眩しい太陽が現れました。
人を好きになること、人を愛すること、人を慈しむこと・・・今までに無かった感情を君から教わった」



「バニー」




「クリスマスは嫌な日だって、今まで思ってました。でも、が居てくれるならもう怖くありません。
君が僕に教えてくれた。この世界には限りなく美しいものがありふれていることを」






そして、僕はポケットの中からあるものを取り出し
の目の前にと出した。







「バニー・・・それ」



「去年、君が僕に贈ってくれたスノードームです。本当に嬉しかった」






そう言って片膝を地面につけ、手に持っていたスノードームを
墓前に添えられた花の横に置く。

少し振られて、雪の結晶が中で美しく舞い上がる。







「父さん、母さん。今まではぐらかしていてすいませんでした。
彼女が・・・です。2人が命をかけて僕を愛してくれたように
僕も命をかけて彼女を愛します。だから・・・どうか」







地面に付けていた膝を直し、立ち上がりを見る。










「コレを、受け取って下さい」




「え?・・・あっ」








を見ると同時に、僕は手のひらに乗せていたモノを彼女に見せた。





シルバーリング。


でも、それは所々焼け焦げておりクリスマスプレゼントとしては
全く見合わないものだった。


普通ならこういうものは、僕としては絶対に渡すわけない。

だけど「このリングでなきゃダメ」な理由がある。







「母のものです」


「え?」


「小さい頃、現場で見つけたのを持っていたんです」








両親を亡くした幼いあの日。

ブリキのおもちゃや写真立てと一緒に見つけた、母親の指輪。


焼けた死体の指からすり抜けたんだ、と少し成長した僕はそれを推測し泣いた。








「バニー。そんな大事なもの・・・私、受け取れない」



「いいえ、受け取って下さい。大事なものだからこそ、君に受け取って欲しいんです。
サイズは母のものなので・・・君は大きすぎるかもしれませんが」









リングを持って、そっとの左の薬指に嵌めた。
やはりサイズが成人女性のモノなのか、の指にはまだまだ嵌まりきれない。

は嵌められたリングを見て、そっと指で撫でていたら
目から涙を零し始める。


その泣き顔が愛おしく思い、頬を包んでおでこをつけた。











「私・・・こんな大切なモノ貰う資格、ないのに。バニーに・・・迷惑ばっかりかけて」



「迷惑だなんてそんな事言わないで下さい。母もきっと喜んでいます・・・もちろん、父も同じだと思います。
もう、僕も君も・・・寂しい思いはしなくていいんです。共に歩む道が僕らにはあるんですから。
たとえ、お互いの居る世界が離れていても・・・手を繋ぎ合って、歩む道は同じです。住んでいる世界は、同じなんですよ」



「バニーッ」



「大切に持っていてください。愛する君に持っていてほしんです。
いずれ、型に嵌まるモノを渡したとしても・・・それだけは必ず持っていて下さい。
僕らを繋げる・・・唯一の見える証として」




「あり、がとう。ありがとう・・・バニーッ、ずっとずっと大切にします」








泣きながら笑顔を浮かべた彼女に、また来た時と同じように優しい風が吹いた。


まるで、僕達を祝福するようなそんな風。










「さぁ、行きましょうか。クリスマスはまだまだこれからですよ」


「うん」







の肩を抱き、墓地を後にする。

ふと後ろを見たら2人が優しく僕を見守っている姿が見えた。


そして、聞こえた。




『幸せになりなさい』と『ありがとう』という言葉を。








「はい」


「え?バニー・・・何か言った?」


「いいえ。じゃあ今日はまずクリスマスツリーの材料を買いに行きましょうか。
去年よりも大きなツリーに2人で飾り付けをしましょう。明日は明日でまたじっくり計画を立てて」


「2日間楽しみ倒しちゃうの?」


「もちろんです。去年できなかったことをこれからはずっとやっていくつもりですよ。君と二人でね」


「もうバニーったら」






これからはずっと、左手の薬指に嵌めた指輪に願いを込めながら
共に歩むべき道を進んでいこう。


君となら、寂しかった日も、いつの日か楽しい日に変わっていけると思うから。





願いはリングと共に。
(君リングが僕らを結ぶ証となり、導-しるべ-となる) inserted by FC2 system

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