タイガーさんとアントニオさんのクリスマスプレゼント選びに
付いていった。

2人は何を買うか決まったようだけれど
当の私はというと、バニーに何を送るか・・・其処からすでに何も決まっていなかった。






「はぁ〜・・・どうしよう」





何も決まらないまま、私はマンションへと戻り
リビングに座り込んだ。


今更彼に何がほしい?と尋ねても、きっと笑いながら
クリスマスプレゼントですか?と返されてしまい、計画がバレてしまいそうになる。

だからといって、食事だけ準備をして
何も送らないのは何だか非常に申し訳なく思えて仕方がない。







「バニー・・・何か欲しいものとか、あるかなぁ」







此処最近の彼の動きについて考えてみる。

でも、考えはすぐに辿り着いた。



なぜなら、彼の口から出てくる言葉は
自分の欲しいもの・・・ではなく、私の欲しいもの・・・になっているから。



事あるごとに「は何か欲しい物はありますか?」という言葉。

バニー自身が自分から「アレが欲しいんですよね」って言葉を聞いたことがない。
むしろ、彼が欲しがるものなんて私には到底ムリなモノで
値段が高いに違いない。


多分、物欲が薄いのかも・・・なんて、そんな考えすらしてきた。






「困ったなぁ」



「何に困っているんですか?」



「うわぁあ!?バ、バニー!?」





突然後ろから聞き慣れた声に振り返り驚いた。

珍しいことにバニーが其処に居た。





「そんなに驚かなくてもいいじゃないですか


「だ、だって。・・・あれ?お仕事は?」


「早く終わったので帰ってきたんです。君の方こそ虎徹さん達との買い物は終わったんですか?」


「う、うん」





彼はジャケットを脱ぎながら私にタイガーさん達との買い物の事を尋ねてくる。

タイガーさん達は決まっていたようだけど
私は何も収穫なしのまま帰ってきた・・・とは、口が裂けても言えない。






「本当なら、僕も付いて行くつもりだったんですけど」


「だからもう言わなくていいってば」


「虎徹さんやロックバイソンさんが羨ましいです。僕だってと買い物したいのに」





彼はどうやら、私と買い物したかったらしい。


しかし自分の仕事の都合上
それが出来ず悔しく、かつタイガーさんやアントニオさん・・・という
見知った相手でも”異性“だから放っておけなかった模様。


今朝もそれで少し愚図られ、帰ってきてからもこの様子・・・。

相当これは根に持っている。






「分かった、分かったから。こ、今度一緒に行こうねお買い物」


「じゃあ、いつ行きましょうか?」






今度一緒に行こう、と誘った瞬間
彼は嬉しそうな表情を浮かべ、私の目の前に座る。







「バニーのスケジュールが空いた日でいいよ。私がそれに合わせるから」


「ありがとうございます





そう言うと彼は私を抱きしめる。

ようやく愚図るのをやめてくれて、ほっと一安心したし
彼がそれで嬉しいのならそれでいいか、と思った。


ふと、頭を過るクリスマスプレゼント。


此処は一か八か。





「ねぇ、バニー」


「はい?」


「欲しいモノとか、ある?」


「え?」





抱きしめる体が離れ、彼は私を見る。

私はというと心臓が酷いまでに脈打っていた。
此処でそれがクリスマスプレゼントということで勘付かれたら終わりだが
一か八かの賭けに出てみた。

すると、彼はうーん・・・と唸りながら何やら悩み始める。
もしかしてこれは脈ありか?・・・と期待に胸を躍らせていた。







「欲しいもの・・・ですか?」



「そう。欲しいもの、ある?」



・・・それは愚問というものです」



「え?・・・きゃっ!?」






すると、離れていた体を凄い勢いで引き寄せられ
再び私の体はバニーの腕の中に戻っていった。

欲しいものという質問が、どうやら彼には愚問らしいが
何だか彼の口から出てくる答えが何となく、頭の中で予想された。


いや、この状況になっているから・・・多分、出てくる言葉は・・・‥―――――。















「僕はが居れば何もいりません。欲しいものなんて、もう僕の腕の中にあるんですから」












予感的中。

何となく分かりきっていた彼の答えに
そうじゃなくて・・・!と言いたかったが、確実に「以外特に何も欲しいものとか無いです」と
真顔かつ真剣な声で返されそうだから反論するのをやめ、ため息を零し
再び私の頭の中は、彼に贈るプレゼントの事で悩み始めるのだった。


















「はぁ?・・・バーナビーの欲しいもの?」


「アニエスさんなら、何か良いヒントもらえるかと思って」



次の日。


私はアポロンメディアの一室、そうアニエスさんのデスクの前に居た。
関係者以外立ち入り禁止だが前もって連絡を入れていたから
難なく此処に私は入れた。

そして開口一番に尋ねた、バニーの欲しいものを。

だが私の質問にアニエスさんは口端引き攣らせながらこちらを見る。
その視線に蛇に睨まれた蛙・・・と言ったところ。






「それ、私に聞く?」


「失礼を承知で・・・・お尋ねしてます」


「全く」





アニエスさんはため息を零しながら
椅子に深くもたれ掛かる。

何だかかの人を怒らせたように思え申し訳なく肩身が狭い。




「すいません、こんな事でアポとったりして」


「何かと思って蓋開けたらコレか。言っておくけど、私に聞かれても知らないわよ。
バーナビーのプライベートなんて・・・貴女が一番よく知ってるじゃない」


「だって、バニー・・・欲しいもの、私以外に何もないって言うんです」


「惚気全開の発言ねそれ。今度それ言ったらもう殴っていいから」




バニーの言いそうな言葉を言うと、アニエスさんは呆れた顔をした。






「タイガーには聞いたの?」


「タイガーさんもよく、分からないって」


「まぁコンビとはいえ、プライバシーはあるからね。手助け出来なくて悪いわね」


「いいえ、いいんです」





私は苦笑しながらアニエスさんの言葉を返した。


タイガーさんにも聞いたけれど「バニーの欲しいもの、なぁ」と10分ほど悩んだが
結局答えは出ずじまい。


私がバニーと知り合う前からタイガーさんとはコンビとして
活動していたわけだし、一番身近な人ではある。だからこそ、頼ってはみたものの
彼の欲しいものなんて・・・誰一人として分からない。







「何かお困りかな?」


「え?」

「社長?!」





すると、背後から声が聞こえた。

振り返ると眼鏡を掛けた少し年老いた人が立っていた。
アニエスさんの声で確実にこの人が会社のトップであることは分かった。





「しゃ、社長この子は、その私の親戚で・・・っ」


「ああ、いいんだよアニエス。バーナビーから事情は聞いている。君が君かな?」


「え?・・・あ、はい」







アニエスさんが椅子から立ち上がり、事情を取り繕うとしたが
どうやら目の前の人は事情を知っているらしい・・・しかも、バニーから聞いていて
私の名前を知っている・・・と言うことは。






「マーベリック、さん」



「おや、私の名前を知っていたのかい?」



「バニーが‥‥話してくれたので」



「それは良かった」






アルバート・マーベリックさん。

バニーの両親が亡くなってから、彼がヒーロー活動をするまで
支援し続けた人、そして・・・このアポロンメディアの社長でもある人。

何度か彼からこの人の事を話を聞いていたし
彼も「マーベリックさんには君の事は話しておきましたから」とだけ言っていた。


そして、初めて会えた人はとても優しい人だった。







「此処で話すのもなんだし、私の部屋に行こう。アニエス、しばらくこの子を借りるよ」


「あ、は、はい」


「じゃあ行こうか」


「はい」




優しく促され、私は戸惑うことなくマーベリックさんの後を付いていった。













「バーナビーの欲しいもの?」



「何かご存知ではないですか?彼の欲しいもの、マーベリックさんの覚えている限りで」



「そうだねぇ」





”私の部屋“というから、確実に此処は社長室。

そんな場所に通され、紅茶を振舞われながら
バニーの欲しいものについて尋ねる。

タイガーさんより、以前を知っているのはもうこの人しか居ない。





「特に、何かを欲しがる子ではなかったね」


「そうですか」


「本人には聞いてみたかな?」


「えっ・・・あー・・・聞いたには聞いたんですが・・・」






マーベリックさんには流石に答えづらい。


いくら公になっていない関係を知っているからといって
バニーが私以外の何も欲しがらない・・・とは言いづらい。

頭の中で良い答えを探し目を泳がせていると、目の前の人は笑っていた。





「え?あ・・・あのぉ・・・」


「いや、すまんすまん。何となく、バーナビーが言いそうな言葉を想像してね」


「へ?」


「君に相当惚れ込んでいるからねバーナビーは。だから、何となく想像できたよ」


「あ・・・は、はぁ」






何処まで彼は惚気を撒き散らせば気が済むのだろうか、と思うと恥ずかしくてたまらない。

タイガーさんやアニエスさんだけならまだしも
マーベリックさんにまで、思考を読まれているのか、と思うと
恥ずかしくなり顔を伏せた。






「まぁ・・・それはそれで、いいんじゃないかと私は思うよ」


「え?」






マーベリックさんの言葉に伏せていた顔を上げる。






「クリスマスはあの子にとって苦い日でしかないんだ。だから君が側に居てあげたほうが
プレゼントよりも、バーナビーにとっては十分価値あるものだと思う。気持ちはお金には、変えられないからね」



「気持ちは、お金には変えられない」







その言葉に胸を打たれた。


確かに人の気持ちは・・・お金には変えられない程のモノが詰まっている。


何百、何万、何千、何億とお金を積まれても
気持ちの大きさは量(はか)りを超えてしまうほどのモノで・・・一生残り続ける、モノだ。






「だから、君。バーナビーに素敵なクリスマスをしてあげてくれ」



「マーベリックさん」



「それから。これからも、バーナビーをよろしく頼むよ」



「はい」





マーベリックさんの優しい言葉に、私は明るく返事を返したのだった。



良い話をしてもらったけれど
やっぱり何か贈りたい気持ちが頭の片隅にあり
もう少しだけ、プレゼントを模索してみようと思った。



プレゼントを求め彷徨い惑う子羊
(捧げるモノに迷う哀れな子羊にどうか、知恵を授けください) inserted by FC2 system

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