サマンサおばさんから突然電話を貰い
僕はため息を零した。
これからまだ取材だというのに。
「どうしたバニー?」
「虎徹さん」
ため息を零したのが分かったのか、虎徹さんが心配して
僕の元にやってきた。
「じ、実は知り合いが」
「何だ?病気か?」
「いえ。その・・・僕に、お見合いをさせようとしてるんですよ」
「へぇ・・・・・・・・えぇぇぇぇえええ!?!?!?」
「虎徹さん、声が大きいです!!」
僕がサマンサおばさんの企み?を話すと、虎徹さんは大声を上げて驚いていた。
あまりにも大きな声だったので周りに居た人たちがこちらを見る。
しかし僕は「何でもないですよ」と笑みを浮かべ、ため息をまた零した。
「わ、悪い。何だよ、見合いならしてやれよ・・・早いうちからそういうのはだな」
「虎徹さん。僕にはという女性が居ることをお忘れではないですか?」
「あ・・・そう、だよな。お前にはが居たな、悪かったって」
これ以上この人に苛立ちをぶつけても意味がない。
「だったら、断れよ」
「じゃあ今から会えと言われているのに、貴方は会えますか?しかも僕の了解もなしに
相手の女性を引き止めているんですよ」
「あー・・・・そ、それはなぁ・・・」
「それに、僕は今日大事なことがあるんです・・・今日こそはやると決めたんです」
「バニー?」
今、サマンサおばさんの引き止めている女性に会う暇はない。
別に行っても構わないんだが、やはり此処は2人で話をしなければならない。
のこと、今日という今日は話さなければならないからだ。
朝だってに約束をしてまで、出てきたし
あの子に「頑張ってね」と励まされたりしているんだ・・・応えないわけにはいかない。
ましてやおめおめと帰るなんて、出来ない。
「電話で断ったほうが良いんですかね?」
「いや、もう行った方がいいって。向こう呼び止めてるわけだしさ・・・あんまり待たせちゃ悪いだろ?」
やはり行くしかないのか。
「分かりました・・・じゃあ取材を済ませてから」
「いや、俺がロイズさんに事情付けて言っとく。だからバニー行けよ」
「虎徹さん、でもそれじゃあ悪いです。与えられた仕事はきっちりやらなきゃ」
「知り合い、相手の女性引き止めてんだろ?それに」
「お前、のことその人に話すつもりなんだろ?」
小さく虎徹さんは僕にそう言ってきた。
やっぱり僕の行動は、分かってしまうのか?
いや、のことに関したら僕の行動なんて虎徹さんには分かってしまうんだろう。
「あと2年は待たなきゃいけませんけどね」
「は?」
「そのときは、とバージンロード歩いてあげてくださいね虎徹さん」
「ちょっ!?おまっ、バニーッ!!」
「じゃあ後よろしくお願いします」
そう言ってその場を虎徹さんに預けた。
しかし僕の言いたいことが分かったのか虎徹さんは慌てて
僕の名前を呼んで動きを止めようとしたが、生憎と僕は声が届く前に取材現場から離れ
乗ってきた車へと向かう。
駐車場に着いて、車の中に入り
僕はポケットの中に入れていた携帯を取り出し、サマンサおばさんに連絡を入れる。
『はい?』
「おばさん。僕です、バーナビーです」
『あぁ、坊ちゃん。それで、今から来られますか?』
僕の事を呼ぶと、すぐにサマンサおばさんは声を小さくして言ってきた。
どうやらそんなに待たせているのか?
「えぇ、今から行きます。相手の女性をあんまり待たせちゃ悪いので」
『ありがとうございます坊ちゃん。では、すぐ・・・今すぐお越しください!!事故等にお気をつけて』
「はい。ではまた後で」
そう言って通話を切断し、ため息を零す。
本当になんでまた、こうもタイミングが悪いときに電話が掛かってきたんだが。
今日こその事をおばさんに話さなければならないと思っていた矢先
おばさんが気に入った女性を連れてきたというじゃないか。しかも引き止めている。
出来たらおばさんと2人で話がしたかったのに
その人が居るんじゃ、僕もの事を話せない・・・むしろ、相手の女性に申し訳ない。
でも、今はそんなこと・・・言っている場合じゃない。
おばさんがに会うようにすればいい。
もし、僕の話だけで悪い印象を与えたとしても・・・本人を
おばさんの前に連れて来れば問題なくスムーズに事が進むはずだ。
僕は車のエンジンをつけて、発信をさせる前に
携帯を再び開き、画像フォルダに入れているの写真を見る。
「。僕、頑張ってきます・・・どうか、力を貸してくださいね」
そう呟いて携帯を閉じ
車を急いで発進させ、おばさんの家へと向かうのだった。
しばらく車を走らせ、物静かな町並みが佇む所へやってきた。
目的地であるサマンサおばさんの家の前で止めて
僕は車から降りた。
扉の前に立ち、目を閉じて一旦深呼吸。
「僕なら出来る・・・必ず出来る」
まるで暗示のように言い聞かせ、閉じていた目を開き
インターフォンを押した。
数秒して、扉が開く。
「あぁ!坊ちゃん、よく来てくださいました」
扉が開くや否や、サマンサおばさんが大きな声を上げて僕を出迎えた。
先程の電話ではあんなに小さな声だったのに
何だかその出迎え方がわざとらしい。
「坊ちゃん、早かったですね」
「いえ。あの、おばさん・・・僕も実は話があって来た」
「ちょっとお待ちくださいね、今すぐお嬢さんをご紹介しますわ」
はい?
僕の話をスルー。
おばさんは嬉々として、僕の側を離れリビングへと戻って行った。
既にこの時点で僕はおばさんのペースに巻き込まれているが
ダメだ・・・このままじゃ、ペースに巻き込まれっぱなしだ。
こちらから話の主導権を握らなくては・・・・・!
次、おばさんがその女性を連れて来た時にでも
話をしなければならない。
「(僕なら出来る、必ず出来るぞ)」
心の中で、再び言い聞かせ・・・気持ちを切り替えた。
『坊ちゃんがいらしたので、一目お会いになってください』
『え?・・・あ、いや、私そんな・・・っ』
すると、リビングからサマンサおばさんと女性の声が聞こえた。
しかし・・・・・何だか、女性の声のほうが聞き慣れた声がしている。
女性、というより・・・・女の子?
『一目会うだけですから・・・さぁ、どうぞ』
『は・・・はぁ』
おばさんから引き止めたってことは、相手の人は乗り気じゃない?
むしろ僕に会う予定ではなかったような会話に思える。
数分しておばさんがリビングから出てくる。
「じゃあ坊ちゃん紹介しますね」
「あの、その前におばさん。紹介した後でいいんですが僕の話も聞いてくれますか?」
「え?・・・えぇいいですよ」
「ありがとうございます」
こうやって前もって約束さえしておけば、後々話すには好都合だ。
とにかく早く紹介してもらって
自分の話に持ち込まないと・・・このままズルズルとおばさんのペースに巻き込まれるばかりだ。
「じゃあ、まずご紹介しますね・・・・こちらへどうぞ」
おばさんがリビングのほうに声をかけると、誰かゆっくり出てくる。
コレさえ終われば、僕はの話を・・・・・・・。
と、思っていた矢先――――――。
「紹介しますね坊ちゃん。・さんです」
サマンサおばさんが連れてきたのはだった。
僕はおろか、目の前の彼女も僕を見て驚いていた。
「さん、こちら・・・私が以前勤めていたお家のご子息。バーナビー・ブルックスJrさんです。
ご存知ですよね、あのキング・オブ・ヒーローなんですよバーナビー坊ちゃんは」
目の前のは、サマンサおばさんから紹介され
「あ、はぁ」とだけ答えた。
表情はまだ驚いたまま・・・無論、僕も同じだろう。
おばさんが紹介したかったのは、だったのかと思うと
これから彼女の話をしようとした僕はどうすればいいのか、頭が真っ白になっていた。
look like a pigeon in a thunderstorm.
(意味は”鳩に豆鉄砲“。あまりのことで驚きすぎてお互いきょとんとしてしまった)