「ただいま」


「おかえりなさいバニー」






マンションに帰り着くと
が玄関にやってきて僕を迎えた。


出動で疲れたが、の顔を見たらそんな疲れも一気に吹っ飛ぶ。








「お勤めご苦労様でした。テレビ見てたよ」


「ありがとうございます」


「疲れたでしょ?お風呂にする?ご飯にする?」






の口から零れた言葉に僕はリビングに進める足を止め
振り返り彼女を引き寄せ、顎を持ち上げた。








「じゃあで」


「なっ!?」








お決まりな言葉の羅列に、「それとも・・・」が抜けている。

多分的には無意識でその言葉を放ったのだろうが
僕としての解釈がこうなってしまった。
むしろ、さっき邪魔が入ってお預けを食らったんだ・・・という選択肢しか僕の中にはない。







「ふざけないの!」



「ふざけてないですよ。僕は本気です」



「ふざけてないでお風呂かご飯かにしなさい」



「いいじゃないですか。さっきお預け食らったんですからという選択肢を設けても」





僕の言葉には顔を赤らめながら抵抗をする。

ダメだなぁ・・・こうも抵抗されると可愛くて仕方がない。






「どっちかにして」



「じゃあで」



「お風呂かご飯」



が一緒にお風呂入ってくれるなら構いませんし、が僕にご飯を食べさせてくれるというならいいですよ」



「いい加減にしないと顎に一発パンチお見舞いするわよ」






ついに、が怒った。

握り拳を構えて、本気で僕の顎にパンチを一発お見舞いする準備をしている。
これはいけない。

僕は大人しくを解放した。






「お風呂に行きます」


「よろしい」


「最近・・・僕に対して反抗期ですか?」


「違います。貴方のおふざけがすぎるだけ」


「ふざけてるつもりないんですけど」





いたって全部大真面目なんだが。






「いいから早くお風呂入ってきて。ご飯準備して待ってるから」



「分かりました」





とりあえずこれ以上の機嫌を損ねるのはやめよう。
僕はそう思い浴室に向かうのだった。






















「というわけで、行儀が悪いと分かっていながらも食事をしながら
今後の作戦を決めたいと思います」


「お風呂上がって早々、ご飯食べながら何言い出すかと思ったらその話ね」


「虎徹さんに言われるまで僕も忘れてました」


「バニーに言われるまで忘れてたよ私も」





お風呂から上がり、二人で食事を始めた途端
サマンサおばさんのことについて話し合うことを切り出した。

僕も虎徹さんに言われるまで忘れていたが、も僕が言うまで忘れていたらしい。






「で、どうするの?」



「とりあえず、おばさんの前では迂闊に恋人同士で居ることはできないでしょう」



「だよねー」






おばさんも僕達の本当の関係を知らないし
ましてや出逢ってすぐに「付き合うことになりました」なんて
事を言い出せば何かあるとしか思えないと、怪しまれてしまう。






「やっぱり他人のフリする?」



「そうするしかないですね。しばらくの間、おばさんの前では他人のフリをするしか
方法が思いつきません。こればっかりはどう考えても答えが見つからない」



「私も考えたけど、今はそうした方がいいのよね」






現状を考えれば
僕とが他人のフリをするしかないという結論にたどり着いた。

おばさんを傷つけるわけには行かない。

せっかく自分で(多分)セッティングしたことを
「実は恋人同士です」なんてことを暴露してしまえば、それこそ
おばさんがショックを受けることになる。


それだけはなるべく、避けたい。






「とにかく、しばらくの間は恋人同士ということを隠して赤の他人で振舞うしかないですね」


「うん。でも、なんか・・・懐かしいね」


「え?」







するとが頬を赤らめながら僕を見る。


懐かしい?・・・一体、何がだ?







「だって、私とバニー・・・昔、お互いのことさん付けで呼んでたじゃない。
それを考えたら、何だか懐かしくって」







「あ、私もうお腹いっぱい。片付けるから食べ終わったら食器持ってきてね」








はそう言いながら、そそくさとその場を去って行った。


確かに、僕達がこうなる前は
互いの事を「さん付け」で、呼んでいたしも今は僕の事を
虎徹さん同様「バニー」と言うが、出逢った頃は「バーナビーさん」と呼んで
僕も彼女のことは「さん」と呼んでいた。


そう考えたら、確かに懐かしいかもしれない。


それに照れては頬を赤らめていたのか?


僕は何だかそれがたまらなく嬉しくて、そしての行動が
あまりにも可愛すぎて食事を放り出し席から立ち上がり
キッチンへと逃げたを追った。



キッチンに居るは料理をしていた道具を洗っている。
こちらに背を向けて僕の存在に気づいていない。

僕はゆっくりとに近づき―――――――。









さん」


「っ!?バ、バニーッ」







後ろから抱きしめる。

さっきので動揺しているのか、抱きしめたときの声が少し裏返った。







「ダメですよ、バニーって呼んじゃ。これから他人のフリをしなきゃいけないんですから
僕のことはバーナビーさんって呼ばなきゃダメじゃないですか」


「い、今ぁ!?べ、別にそんな・・・だ、大丈夫だよ練習なんていらないってば!」


「いいえ。思いがけないときに君が僕の事を”バニー“って呼んでしまえばサマンサおばさんが不思議がります。
さぁ・・・・ちゃんと呼んでください、さん」


「・・・っ!?」





僕はの耳元で、敢えてさん付けをして彼女を呼んだ。

その声を耳に入れた途端、の耳は赤くなる。
おかげで僕の悪戯心に火がついた。






さん・・・どうしたんです?耳、真っ赤ですよ?」



「やっ・・・バ、バニーッ・・・やめてってば・・・っ!」



「バニーじゃなくて、バーナビーです。ほら、ちゃんと呼んでください」



「ふ、ふざけないでよぉ」



「ふざけてませんよ。僕は至って真面目にやってます・・・此処は徹底してやらないと」







真面目にやってるのか、わざとやってるのか・・・正直僕自身も分からない。


でもただ分かることはある。
多分、さっきのお預けがやっぱり悔しいのかを苛めないと気が済まないし
彼女が僕を満足させてくれるまでやめるつもりはない、ということだ。






「ちゃんと呼べたら、ご褒美あげますから」



「い、いらないっ」



「体は欲しがってるくせに。ホント、そういうところが可愛いですよさん」







そう言いながら僕はの服の中に手を入れる。

今度はブラジャー越しではなく
そのまま・・・直にの胸に触れ、そのまま揉み扱く。






「バ、バニーッ・・・や、ぁ・・・ん」



「バーナビーです、さん。バニーって呼ばないでください」



「今じゃなくても・・・んぅ・・・いいのにぃ・・・っ」



「いいから。ほら、ちゃんと呼んでくださいさん」







胸を揉むたびには甘い声を上げる。
足が震えて、快楽に徐々に流されていくのが目で見て分かる。

僕は笑みを浮かべながらそんなを後ろから見ていた。






さん」



「・・・っ、バ・・・バーナビー・・・さ、ん」



「ちゃんと続けて呼んでください」



「・・・バーナビーさん・・・」



「よくできました。さんはやれば出来る子だって、僕分かってましたから。
じゃあさんが大好きなご褒美あげましょうか・・・今すぐ、此処で」





そう言って僕はの履いているスカートを捲り
下着を無理やり下ろした。もちろん、僕もズボンの中から昂ぶったモノを出して
のナカへと続く入り口にそれを付ける。





「やっ、バ、バーナビーさん・・・ま、待ってっ!」



「ホラ、ちゃんと言えるじゃないですか。さすがはさん、物覚えの良い子です。
物覚えの良い子は大好きですよ・・・えぇ、特に君なら尚更ですけどね」






そして息をする間もなく、僕はのナカへと入り込む。





「ひっあぁあ・・・あっ・・・ぁん!!」


「やっと、君と繋がれましたね・・・さん」


「やめっ・・・もう、いいよぉ!!ぁん、ぁあっ」


「さん付けで呼び合う練習ですから。我慢してくださいさん」




僕はに対してさん付けで呼ぶと
彼女のナカが僕の昂ぶったモノを興奮してキツク締め付けた。







さんって呼ばれると・・・君はダメなんですか?」






そう問いかけるとは頷く。






「嘘はよくないですよ。体は正直に、イイって答えてます・・・僕のを締め付けてくるのが証拠です」



「ち、違っ・・・それは、貴方が・・・ぁん!・・・動くからぁ・・・あっ、あぁっ!!」



「ちょっと揺らしてるだけでしょう、こんな風に」






の腰を掴んで、僕は昂ぶりをナカへと打ち付けた。
その度に彼女のナカは熱く、混ざり合った僕の体液と彼女の愛液が
太股から床へと滴り落ちていく。









「ひっ、あ・・・ああっ・・・バ、バーナビーさっ・・・ぁん、ぁああっ!!」



「そうですよ、その調子ですさん」






の甘く啼く声に僕の性欲は徐々に満たされていく。

でもそれでもやっぱり足りなくて
僕はに激しく愛を打ち付けた。

まるで・・・・初めて会った日に戻った気分だ(まぁ初めて会った日の印象は違っていたけど)。






「あっ・・・ぁあん・・・ん、も・・・・もぅ・・・バーナビーさんッ!!」


「イキそう、ですか?」







するとは首を縦に振る。

あぁ可愛い。無言で何も答えず首だけを振るなんて。






「じゃあイキましょうか。君のナカに出しちゃいますけど、後でちゃんと処理してあげますから
安心してくださいさん」






耳元で低くそう囁くと、彼女のナカは僕をまた締めつけた。


酷い男だ僕は。
でもそんなの・・・百も承知だ。を前にしたら、僕はただの獣にしかならない。

こんなんだから、いつまで経ってもサマンサおばさんに
本当のことが言えず嘘をつき続けなきゃいけないのかもしれない。


互いに気持ちや体の感覚を最高潮に向かわせるため
僕はラストスパートをかけるように、激しく腰を動かした。

絡み合う体液が卑猥な水音を奏でる。








さん・・・・・・あっ・・・可愛い、僕のさん・・・ッ」



「あっ・・・バ、バーナビーさ・・・も、イッ・・・ああぁっ・・・んぅ」



さん・・・・、さ・・・・っぁ!」



「あっ・・・ふぅ、あっ・・・―――――あぁぁあぁあ!!!!」








のナカに欲望を吐き出し、僕は果て
また同様にそれを受け止めたも甘く甲高い声を上げて果てた。

僕は呼吸を整えながら、の耳にキスをする。





「こういう時でも言い合えば、まぁ大丈夫でしょう」



「ほ・・・他の、方法・・・考えてよぉ」



「何が起こるか分かりませんから、こういうときでもさん付けで呼び合うのがいいんです」



「バ、バニーのへりくつぅ〜」





が泣きそうな声で僕にそう言葉を投げた。
考えたら・・・まぁ確かにへりくつかも。

僕は笑みを浮かべながら、のナカから昂ぶりを抜き
それを収めを抱きあげた。




「お風呂、行きましょうか」



「でも、洗い物が」



「お風呂が先です。早く処理してあげないといけません、の体が第一です」



「バニー」




は照れながら僕の体に自分の体を密着させる。
僕は彼女を抱きかかえながら、浴室に向かう。











---------ピンポーン!





すると、突然インターフォンが鳴り響いた。
生憎と取りに行く時間はないが、丁度玄関の目の前を通り過ぎようとしていたから
そのままそこで声を上げることにした。







「どなたですか?」



『あー俺俺!虎徹だ』



「虎徹さん?」






どうやらドアの外に居るのは虎徹さんらしい。
僕とは顔を見合わせ、ドアを見る。







「どうしたんですか?」



『いやお前にさぁ斎藤さんからの言伝頼まれてきたんだけど』



「はい」



『途中で一緒になった人が此処に用事があるって言うから』



「え?」





此処に用事?

誰だ?








『坊ちゃん、聞こえますか?私でございます、ちょっと御用があってこちらにお伺いしました』








「っ!?」


「バ、バニー」





思わぬことになった。

外に居るのは虎徹さんだけかと思ったが
どうやら虎徹さんと一緒にやってきたのは、サマンサおばさん。


今、情事を済ませたこの状況。


僕との心拍数は多分、凄まじい速さで鼓動しているに違いないと思った。




There's no pleasure without pain.
(意味は”楽あれば苦あり“楽しいひと時の後に苦しい状況はやってくる) inserted by FC2 system

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