「バニー、私ライアンさんと結婚するね」
「そーいうことだぜ、ジュニア君」
「は?」
突然が突拍子もない事を言い出した。
あまりの発言に僕は目を見開かせ驚き、聞き入れた言葉に耳を疑った。
「どういうことですか。ライアンと結婚するなんて」
「俺達やっぱり相性良いみたいでさぁ〜・・・ジュニア君には悪いけど」
「貴方は黙っててください。僕は今と話をしているんです」
の隣に立つライアンを睨みつけ、黙らせた。
ライアンは「お〜怖っ」と言いながら口から言葉を放つのをやめる。
そして僕は目線を再びにと向ける。
「、本気で彼と結婚するなんて事言ってるんですか?」
「え?・・・バ、バニー、本気っていうかコレは」
「じゃあ君は僕との生活に飽きた、と言うことなんですね」
「ち、違うよバニー・・・そうじゃなくて、コレは」
「じゃあ何が違うって言うんだ!」
僕は大声を張り上げ、に言葉を言い放つ。
僕以外の男を選ぶということは、そういう事になる。
人間いつだって『飽き』というものは必ずしもやってくる。
だけど僕とは違うと思っていた。
一緒に過ごしてきた時間も、乗り越えてきた苦難も、支えあってきた。
もちろん心から愛し合った時でさえも・・・。
他の誰かに邪魔されようが、何されようが、は僕だけを想ってくれている。
だから僕も全身全霊で彼女を愛した。愛していた。
なのに――――――。
「僕がどれだけ君を愛していたか分かりますか?どれだけ君に愛を注いでいたか分かりますか?
君にどれだけの時間を費やしたか分かりますか?分からないくせに、あっさりと捨てるのは不愉快だ」
「バニー、話を聞いて・・・だからコレはね」
「うるさい!」
「きゃっ?!」
が僕の腕を掴んで、自分の声に耳を傾けてほしいという言葉を言うも
今は何を言われたって耳に入れたくもなかった僕は
彼女の手を振り払う。
すると、力を出しすぎたのかが後ろにと倒れようとする。
しかし間一髪でそれをライアンが受け止めた。
「おい、ジュニア君何してんだよ!?ったく・・・大丈夫か嬢ちゃん」
「は、はい」
「っ!?」
支えあうライアンとそれに答えるの姿に、胸の中に痛みが過る。
の隣に居たのは僕なのに。
僕の、はずなのに。
どうして・・・どうして?
「・・・・・・結婚するなら勝手にしてください。僕はもう二度と君たち2人に干渉しません」
「バニー、待って!」
の声をかき消すようにその場を立ち去る。
モヤモヤと胸の中に苛立ちや不安のわだかまりが出来て
何処でこの気持ちを晴らせばいいのか分からない。
好きだったのはやっぱり僕だけ?
愛していたのはやっぱり僕だけ?
これからもずっと一緒にいたいと思っていたのはやっぱり僕だけ?
僕の気持ちはやっぱり、には重荷だったのか?
「おぉ、バニーどうした?」
「虎徹さん」
すると、前方から虎徹さんがやってくる。
「なぁなぁ聞いてくれよバニー。ウチのおふくろがさぁ、再婚するとか言ってんだよ」
「良かったですね、おめでとうございます」
「って、其処は有り得ないとか言ってツッコミしろよ。ほっんとお前、冗談が通じねぇなぁ」
「は?」
もう再婚だの結婚だの、好きにすればいいじゃないかという
100%投げやりな答えを返した途端、虎徹さんはため息を零した。
「お前、今日何の日か知らねぇの?」
「え?」
「エイプリルフール。軽い冗談とか嘘なら付いていい日。お前、それも知らねぇの?」
「エイプリル、フール・・・・・・・まさか!!あー・・・僕は何てことを」
「え?な、何!?ど、どうした急に!?」
虎徹さんの言葉に、ハッとした苛立つ気持ちはサッと消えてなくなり
逆にやって来たのは後悔と落胆だった。
思わず床に膝と手をついて、顔を伏せた。
今日がエイプリルフール、ということは
先ほどのとライアンは僕を騙すための「嘘」をついていたことになる。
ふと、思い出すとしきりにが「コレは」と言っていた。
もしかして「コレはエイプリルフールだよ」って言いたかったに違いない。
仮にそうだとしたら完全に僕のミス。
を思いっきり傷つけたことになる。
「最悪だ」
「おい、何で落ち込んでるか知らねぇけどどうした?」
「が僕を裏切るはず無い。考えたらそうじゃないか。
は僕だけを見てるし、僕だけを愛してくれている。色々考えてもが僕以外の男と所帯を持つなんてしない。
僕も許さないし、ましてやアニエスさんだって許さないだろう」
「おーいバニー?人の話聞けー?」
「あー最悪だ。もう僕はなんて事をしてしまったんだろう。
今謝った所での傷ついた気持ちを癒すことなんて出来ないだろうけど。
でも今行かなきゃライアンに確実に取られてしまう。待て、でも、アレは嘘ってことだから
100%そうなる可能性はないから・・・やっぱり今行くべきなんだろうか?いや、でもやっぱり時間を置いて」
「駄目だ。無限ループしちまってる」
Better the feet slip than the toungue.
(”足を滑らすとも口を滑らすな“うっかりと口を滑らせてしまいとんでもない事になってしまった)