「ライアンさんど、どうしましょ・・・バニー、怒らせちゃった」
「いや、言い出したの俺の方だし。つか、ジュニア君に冗談通じねぇっての忘れてたわ」
ジュニア君が居なくなった部屋で
俺と嬢ちゃんは互いに反省していた。
いや、一番反省しなきゃいけねぇのは俺の方だ。
エイプリルフールだし嘘ついて、ジュニア君を騙してみようと言い出したのは俺。
ジュニア君を騙して俺的にはちょっと恥をかかせる予定が
思いもよらぬ展開になり挙句、大変なことになってしまった。
ふと気がつけば、あの男には冗談が通じない。
短期間ではあるがコンビを組んでいたし、それとなりに分かる。
分かっていたのに、二人の仲をこじらせてしまった。
「悪ぃな嬢ちゃん。俺のせいで」
「え?いえ、いいんですよライアンさん。それに私も悪ノリが過ぎましたよね。
バニーがあんなに怒って当然かもしれません」
俺のせいだというのに、嬢ちゃんは自分も悪いと苦笑を浮かべながら言ってきた。
しかし、嬢ちゃんのこの様子だと
100%傷ついたに違いない。
2人の絆がどれぐらい深いものなんて知らねぇし、むしろ知りたくもない。
目を塞いでいたいくらいだ。
初めて来たこの街で、初めて出逢った女の子。
愛らしく健気な姿に惹かれて一時の間ではあるが、街に腰を下ろしていた。
離れるのも少し、躊躇った。
この−という−子がこの街に居たから。
「今追いかけて、エイプリルフールって言っても信じてもらえませんよね」
「難しいなぁ〜・・・ジュニア君、相当怒り狂ってたし」
「ですよね」
俺の答えにやっぱりか、という表情を浮かべた彼女。
そんな子の顔を横で見ていた俺は―――――。
「ならさ、もういっそ俺と結婚しねぇ?」
「え?」
大それたことを言ってみた。
今なら奪える。
今なら手に入れれる。求めていた子を。
手を握り、腕の中に抱きしめる事が出来る。
叶わなかった事が、叶いそうな気がしている。
「ライアンさん。それエイプリルフールですか」
「え?・・・あ・・・ああ」
でも、肩を並べ横にいる女の子はあっさりと俺の気持ちを砕いた。
今日言っても「冗談」扱い。
焦って言った自分が凄まじくカッコ悪く思えてきてしまった。
いや、むしろ・・・彼女のほうが俺の気持ちに気づいていないだけ。
そして彼女はアイツに一途なだけ。
「嬢ちゃんってさ・・・一途だけど天然だよな」
「え?」
「悪ぃ何でもねぇわ」
一途だけれど、裏を返せばこの子は天然だ。
きっと彼女自身気づいてないのだろうけど、多分あながち間違いではない。
「ライアンさん。バニー、どうやったら機嫌直してくれるでしょうか?」
「そーいうのはオッサンに頼むべきじゃね?俺に聞いても」
「あ、そ、そうですよね。すいません」
普通に答えたはずが、今の態度じゃ悪印象。
俺はどうにか脳みそをフル回転させて――――――。
「あ、そういえばさぁ・・・俺、地方で仕事してる時いい話聞いたことあるんだわ」
「え?」
「コレだったらジュニア君と仲直り出来るかも」
「どんな話ですか?」
「それはな」
多分。
きっと、ずっと、俺は彼女の隣に立つことは出来ないだろう。
手を握るどころか、この腕に収めることも叶わない。
だからといって嘘を付いて手に入れたところで、俺が彼女を苦しめるだけだ。
ならば俺が望むのは唯一つ。
幸せそうな笑顔を、近くで見ていられたら・・・俺はそれだけで、幸せな気がする。
The jay is unmeet for a fiddle.
(”鵜の真似をする烏“真似たところで失敗するだけだから、安全策を俺は選んだ)