君と歩んだ軌跡。
それは、いずれ
【証-あかし-】となって
僕らを、導いてくれるだろう。
遙か、遠い未来まで・・・・・・・・。
中学1年の春・・・私は彼と言う存在を知りました。
「手塚国光?・・・・誰、それ?」
「やだ、知らないの?!テニス部の手塚君!!」
「さぁ?」
友達のにその名前を聞かれると私は
首をかしげた。
入学早々のスポーツテストに私は気だるさを感じながらも
50m走の順番待ちをしていた。
「同じスポーツ特待で入学したのに、何よその反応!?」
「いや、だから知らないものは知らないんだって。」
「でも、まぁ・・・流石にアンタの幼馴染の大石君は知ってるでしょうけど・・・」
「あ、そういえば秀一郎はテニス部だったね」
「、それすら分かんないの?」
確かに幼馴染の大石秀一郎がテニス部に所属したのは覚えてる。
何か私に自慢しに来た記憶があったようなそんな感じがするからだ。
「で、その手塚なんちゃら君がどうしたの?」
「手塚国光君!・・・ワザとしてるでしょ?」
「別に。さっさと言って・・・次私とアンタが走る番なんだから」
「その手塚君、今のテニス部のの先輩たちに一人勝ちしたんだって」
「へぇ〜そいつは凄いね」
「ちょっと、棒読み止めてくれない?一応、青学って言ったら関東じゃ指折りのテニスの名門校なのよ?」
「知ってるよ、名前くらい」
【青春学園】
関東じゃ指折りの名門私立学園。
小・中・大といったエスカレーター方式で並ぶ学校。
特にテニス部は全国でも名を轟かせるほど、強いとか・・・。
私もその学園の中等部から御声がかかりスポーツ特待生として入学した。
「次、と長谷部」
「ホラ、来た。行くよ」
「ちょっと、まだ話は終わってない!!」
「走り終わったらゆっくり聞いてやるから、並べ」
「私が陸上でに勝てるわけないじゃん・・・小学校最後の50mの記録会、アンタ自分のタイム知ってる?」
「さぁ〜ね」
私はニヤリと笑みを浮かべて、スタートラインに立った。
の話を聞いて正直なところ、誰にも興味がなかった。
もちろん、その手塚とか言う男の子も・・・あまり、関心も持ってなかった。
恋も何も私の中では知ったことかってこと。
「、これに私に勝てたら今日ジュース一本奢ってあげる」
「マジ!?じゃあ、頑張ろう」
「ま、アンタが勝てるワケないけどね」
「ひっど〜い!!」
「位置について・・・よーい・・・・」
向けられた視線と、ピストルの銃声。
スタートラインに立つワクワク感。
いつにも増してたまらなかった・・・・。
パーン!!
銃声とともに、私は風のように駆けた・・・・・・全てを、切り裂くみたいに。
「あ、女子が走ってるぜ。おい、あの子早くないか?」
「え?・・・あ、ホントだ。すげぇ早ぇ〜!!」
「あ、とちゃんだ・・・」
「・・・大石君、次君の番だよ」
「あ、そうだね手塚君」
大石君が測量中、僕は女子の50mのほうに目を向ける。
さっきの男子たちが話していた女子がゴールラインにたどり着く。
確かに・・・早い。
「ふぅ」
「大石君」
「どうしたの、手塚君?」
「あの・・・さっき走ってた女子、大石君の知り合い?」
「え?あぁ〜ね。って言って僕の幼馴染。確か陸上のスポーツ特待で入学したんだ」
「そうなんだ」
・・・か
「どうしたの?」
「・・・いや、別になんでもない。次行こう」
「あ、待ってよ手塚君!!」
それが彼らの出逢いだった。
目線を合わせることもなく、ただ互いを知っただけ。
軽くお互いをあしらい、興味もなく過ごした・・・そんな春先、彼らの出逢いだった。
中学1年の夏・・・俺は彼女の存在を知り、好意を抱いた。
「手塚君、今日は練習来れる?」
「大石君・・・うん、大丈夫だよ」
僕はそれから、テニス部の先輩たちといざこざがあり
左肘を酷く痛めた。
その事件があって、一時期部活を辞めようと思ったが
部長の大和先輩に止められ、今ではどうにか練習に参加できている。
「次、授業なんだっけ?」
「化学だよ。」
「あ、そっか・・・じゃあ移動しょう」
「あぁ」
左をなるべく使わないように、痛みが引くまでは
右手での生活を余儀なくされた。
まんざら、右手も悪くない・・・自分に言い聞かせた。
「それで、今度の月間テニスがね・・・」
スパーン!
「イッテ!!!」
「!?」
すると、いきなり大石君の背後から何を凄い音がした。
多分教科書か何かで叩かれた音に近い。
大石君は頭をさすりながら勢いよく振り返る、僕も同時に振り返ると・・・・・・・・・。
僕 の 時 間 が 止 ま っ た
僕の目に映ったのは、女子が二人。
一人は肩に丸めたノートらしきものを持ってニヤリと笑みを浮かべ
もう一人は、隣で苦笑をしていた。
僕の目に真っ先に映ったのが、叩いた女子のほうだった。
「っ・・・・!何もいきなり叩かなくていいだろ!!」
「アラ、御免あそばせ。丁度叩きやすい頭があったもんだからつい、反応しちゃって」
「どんな反応だよ」
「毬栗頭が、いっそ首まで吹っ飛ばしてやろうか。と思って・・・可愛いお茶目じゃない?」
「何処がだよ!!」
まるで、漫才を見ているようだが・・・此処は制止に入ったほうがいいのか?
とりあえず、止めることを決めた。
「大石君・・・落ち着いて」
「あ、て・・・手塚君。ごめん・・・」
「いや、いいんだけど」
僕が声をかけると、大石君はどうやら平静を取り戻したらしい。
深呼吸をして大石君は僕を見る。
「手塚君、一応紹介するね。こっちが僕の幼馴染の。それでその隣が長谷部ちゃん」
「え!?あ・・・あの、手塚君!?スゴーイ、大石君もう手塚君と仲良くなったの!?」
「いや・・・まぁそうだね」
「じゃあ、私も今のうちから仲良くなろう。大石君の友達=私の友達だし」
「ちゃん。(思いっきり僕利用されてる)」
長谷部さんは明るい態度で、僕と握手をした。
僕は少したじろきながら、その手を握り返した・・・でも、僕が一番気になったのが・・・・・・・。
彼女・・・さんの存在。
長谷部さんは明るくしているのに、何故だろう・・・彼女に目線が行ってしまう。
すると、いきなりさんは長谷部さんの制服の後ろ襟を掴んだ。
「まったく、ごめんね手塚君。ウチのおてんば娘がうるさくて・・・ホラ、もういいだろ。」
「え〜・・・、手塚君に自己紹介は?」
「秀一郎がしたからいいじゃん。二度手間だろ?」
「またそうやって・・・ホラ、ちゃんとしないさい!」
さんは長谷部さんに言われ、前に押し出された。
あまりの近い距離に僕は、心臓が酷く動いた。
「まったく・・・。さっきも秀一郎から紹介されたけど、私。よろしくね、手塚君」
柔らかい笑みを浮かべ、彼女が手を差し出した。
その顔にも僕は惹かれた。
僕は内心ドキドキしながら、でもそれをオモテに出さず
彼女の手を握った。
「あぁ・・・こちらこそ」
キーンコーン、カーンコーン・・・・
「しまった!?手塚君チャイム鳴っちゃったよ!!」
「え。あ、急ごう」
「じゃあね、、ちゃん!!」
「頑張れよ、毬栗秀一郎〜」
「誰がだよ!!」
「手塚君も頑張って!」
「あ、ありがとう」
チャイムの音が校内に響き僕と大石君が走る。
後ろでその姿を微笑みながら僕らを見る彼女たち。
でも、さんが声をかけたのは大石君だけ。
少しだけ・・・大石君に嫉妬した。
「大石君が羨ましい・・・」
「え?手塚君、何か言った?」
「いや、なんでもないよ」
心の中に、彼へと向けた小さな嫉妬をしまいこんで
僕たちは化学室へと走った。
夏の日、僕は人知れず胸に熱い想いを抱いた。
証-あかし- 〜君と歩んだ軌跡〜
(春、僕と彼女の出会い・・・そして夏、僕はほのかな恋心を抱いた)