「ったく・・・迎えに来るって言ったじゃん・・・・」










!!」






数十時間という長旅で、私はヘトヘトになり
ウォーキングバックを引きずりながら歩いていると
数m先から私を呼ぶ声がした。
















「沙依兄!佳兄!」
「よく来たな我が妹」
久しぶり」







此処はアメリカ。



そう、もう戻れない道を私は歩み始めた。






















「それにしても、まさかまでアメリカに来るなんて・・・・」
「俺や佳兄とまた暮らせるんだぞ、嬉しいだろう〜」





車に乗って私はアメリカの実家へと連れられる。






運転しているのが、長兄の佳兎(よしと)兄さん。
アメリカの有名な美大で油絵専攻。とても頼りがいのある兄貴。
家事全般をそつなくこなすまさに完璧な兄。






「佳兄だけならまだしも、沙依兄も一緒か・・・・不安だな」
「えぇ!?」
「嘘よ」







佳兄の隣、助手席に座っているのが次兄の沙依(さい)兄さん。
売れっ子のウエディングプランナーで若手のプランナーとしては才能誉れ高いんだが
どうも大雑把なのが・・・・ある種、ビョーキだ。














「大抵の事情は秀一郎くんの叔父さんから聞いているし・・・叔父さんの言ってる若手外科医は俺も知ってる」
「ホント、佳兄!?」
「あぁ・・・お前も知ってる奴さ。さぁ、家に着いたぞ」








アメリカには兄2人と母さんの3人で暮らしている。
ちょっとした事情でアメリカに移り住む羽目になったのだが
私は青学の陸上部から声をかけられアメリカには私は行かず
日本で知り合いのアパートで一人で暮らしていた。










「荷物はもう着いて、お前の部屋に置いてあるからな」
「え!?既に部屋ありですか!?」
「当たり前だろ、俺たちと母さんが住むように設計されてんだから」
「ちなみに、お前の部屋は希望通り屋根裏で窓からアメリカの町が見える部屋だぞ」
「マジ!!!うわぁ〜嬉しい!!!」










家のドアを開けると、其処には・・・・・・・・・。


















「あ、お帰り〜ちゃん!!」
「・・・・と、常葉さん!?」















其処に居たのは、佳兄の恋人の駿河常葉さんだった。
でも・・・・・。













「何で、常葉さんが此処に?」
「だって、私が貴女の担当医になるのよ?久々に会うんだし居ても経ってもいられないじゃない!!」









はい・・・・?




担当医って・・・・?














「叔父さんが言っていた若手外科医って・・・・」
「常葉なんだよ。俺も、秀一郎くんの叔父さんから名前聞くまで誰だろうと思ったら、常葉だったんだ」
「ということ・・・これから長い付き合いになるけどヨロシクねちゃん」










まさか、兄貴の恋人に診てもらうなんて・・・・。

ましてや、その人に手術をしてもらうなんて・・・思いもしなかった。































数日後、常葉さんが働いている外科病院に
佳兄と一緒に訪れた。
アメリカの病院はどれも規模がでかく、患者数も多い。
私と佳兄は病院の廊下を歩いていた。










「あれ?沙依兄は?」
「沙依なら仕事。デカイ挙式があるって言うのに、お前の診療に付いて来るって聞かないから一発殴って仕事に行かせたよ」
「さ・・・流石、佳兄」
「当たり前だ。あんなバカ、病院に連れてきた時点で患者さんたちに迷惑がかかるだろ?
老若男女問わずアイツはモテるからな。寄られたら、俺ならともかくお前に一番に迷惑がかかる・・・正直ウザったい」
「(同じ兄弟なのに、なんとも酷い扱い・・・)」








私への扱いと沙依兄への扱いの違いに、”自分が女でよかった“と
渋々思ってしまったことは内緒にしておこう。















ちゃん、佳兎さん、お待たせ〜」
「常葉さん」













すると、白衣を着た常葉さんがやって来た。
私と佳兄はゆっくり近づく。












「予定より5分遅刻だな、また寝坊か?」
「佳兎さん、酷いですね・・・まぁ当たらずとも遠からずってやつです」
「結局寝坊か。進歩のない奴だな」









恋人にも容赦ねぇ・・・コノ人。



まぁ、コレも佳兄の愛として見ておこう。


















「も〜酷いですね、佳兎さん・・・・あ、忘れるところだった。じゃ、 ちゃん検査しようか」
「(忘れられたら困るんだが・・・)はい」












そう常葉さんに言われ、私は検査へと向かった。

























----1時間後





















検査の結果が出たらしく、私と佳兄は常葉さんの居る診察室へと呼ばれた。
数枚のレントゲンを見ながらカルテを書いていく。













「で・・・・ の足の容態は?」
「良いとも悪いとも言える状況かしら?でも、しぃて言うなら・・・若干悪いほうに進行しているわ」
「!?」








常葉さんは自分が持っているペンを銜え考える。








「ホント、珍しいわ。原因不明ってやっぱり世の中に存在するのね」
「治せないのか・・・・?」
「今の私の口からじゃなんとも・・・・教授と話し合ってみるわ。確実に治してみせる、でも・・・・・」
「でも・・・何ですか、常葉さん?」













すると、常葉さんが言葉が口篭る。













「もしかしたら・・・・歩けはするけど、走りは出来ないかもしれない・・・・」
「・・・・!?」
「走れ・・・なくなるのか?」
「走れるけど、走るのにも限界が生じてくるだけ・・・・限界が早いんです」







覚悟はしてた・・・・でも、でも・・・・。











「いいんです。この足で地を踏めて・・・歩めるのであれば・・・・それで充分です」
「まぁ、これはもしもの話だから。リハビリ次第で走れる可能性が大幅に広くなるから。頑張りましょう」
「はい」









私が笑顔で答えると、常葉さんも微笑んでくれた。












「で、手術の日取りは・・・?」









佳兄が常葉さんに聞くと、彼女はカルテを書きながら・・・・。














「そうね・・・大体見積もって・・・半年後かしら?」
「「は?」」










は・・・・半年後・・・・・?






あまりの発言で私と佳兄は唖然とする。
すると常葉さんはカルテを更に書き進めながら答える。












「これでも、早いほうなんです・・・・。一般患者なら1年は待たせてくだらないんですから」
「その間、はどうなる?」
「手術までは薬で抑えるしかないでしょう。週2で通院して点滴打って・・・・月1に検査してもらいます。
コレでも本当に早いんです。ごめんなさいね、 ちゃん。」








確かに常葉さんは若手天才外科医だから、順番待ちは当たり前か・・・・。












「とりあえず、手術予定日は半年後・・・大丈夫、絶対延期にはさせませんから」
「それだけは避けてくれよ・・・頼むから」
「ありがとうございます、常葉さん」












私はお礼を言うと、立ち上がり佳兄と診察室を出た。























〜〜〜!!!」
「?・・・・・あ、沙依兄」










待合室には、多くの看護婦さんから囲まれている沙依兄が居た。
そんな沙依兄は私を見つけるなり、抱きしめた。










「沙依、お前仕事じゃ・・・・」
が心配で、部下に任せてきた。大丈夫だったか〜〜」
「「(うわぁ〜嫌だな、こんな上司)」」












そうだ、私にはもう家族しかいないんだ。

明るい兄貴2人と、母さん













忘れよう・・・もう、あの人は側にいない・・・・此処には居ない。















あの人・・・・・?















誰だってけ・・・・あの人って・・・・?



















「佳兎さん」
「常葉・・・悪いな」
「いいえ、いいんですよ・・・・それにしても、 ちゃん、よっぽどこの病気を治したいみたいですよ」
「陸上に響くからだろ?アイツにとっては陸上は命だからな」
「それもありますけど・・・・多分、別にあるんじゃないんですか?」
「何だよ、それ?」
「さぁ〜?」





































-----数ヵ月後、日本。















ゴオォォオオォオ・・・・














「すいません、立海大付属中学校までお願いします」
「・・・・はい。おや、お兄さん・・・青春学園の人ですか?」
「えぇ。大至急・・・立海までお願いします」










ようやく、戻ってこれた・・・。



長いようで、短かった・・・そんな月日。






俺はまた、戻ってきた・・・・。















、お前の口から、一番に聞きたい・・・・。

























『 お か え り 』 の 言 葉 を。


















でも、数時間で

その思いは打ち砕かれた。

もう、此処には彼女が居ないという現実に・・・。






-あかし- 〜君とんだ軌跡〜
(アメリカに居る彼女、元の場所に戻ってきた彼。戻ってきた彼が待っていたのは残酷な現実だった)




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