「・・・・が、いない?どういうことだ、大石」









全国大会の抽選会の帰り、俺は思いがけないことを知らされた。










「え?・・・・から、聞いてないのか?」
「何も、アイツは一言も・・・・居なくなるなんて・・・・」








知らされていない現実に酷く頭が痛かった。


















「どういうことだ、大石!・・・・頼む、話してくれ!!」
「・・・・手塚」
「手塚君、落ち着いて」







俺は大石の制服の襟首を掴みあげる。

帰ってきて早々、何も知らずに・・・・ただ、アイツが俺の帰りを待っているとばかり
思っていたのに・・・・蓋を開けてみたら・・・。








が居ないって・・・・どういうことだ!」
「俺も分からないよ!!俺だって、俺だって・・・・お前に教えているとばかり思っていたんだ!」
「手塚君も秀一郎君も落ち着いてよ・・・!!」






長谷部さんの声で俺たちは一旦引き離された。







どうしても、今は冷静になれない。

いつもならどうって事ないのに・・・何故?








当たり前だ、が・・・俺に何も言わずアメリカに渡った。

それだけで苛立った・・・・。









「こうなりゃ・・・本人に、直接聞くしかないだろ」
「どうやってだ?俺は電話番号も知らないんだぞ・・・・」
「だと思った。俺しか知らない番号あるから・・・かけて、問い詰めてやる」











大石は携帯を取り出し、電話をかける。

が、数秒で大石の表情が氷のように冷めていく。










「大石・・・どうした?」
「どういうことだ・・・?何で、どうして・・・・」










俺は大石から携帯電話を取り、自分の耳にあてる。

すると、聞こえたのは・・・・。















『お掛けになった電話番号は、現在使われていません。番号をお確かめになって再度お電話ください・・・・』
















「・・・・これは」
「・・・・・俺は、にまんまと罠に嵌められた。」





かからない電話番号。

通じない機械音にしか聞こえない、ただの声。

繋ぎようのない・・・・番号。


もう、知らない・・・彼女の所在。













「・・・・嘘だ」

「手塚!?」

「手塚君!?」












俺は急いである場所へと駆け出した。





信じたくない、コレは夢だ。

きっとアイツはあそこで、笑って待ってる。

コレは何かの夢なんだ・・・アイツはいつも俺をからかってるから・・・そうだ、これもアイツの遊びなんだ。

















-----バァン・・・・!!













ッ!!」









そう、俺が来たのは・・・・アイツが一人で住んでいた、アパート。
俺もちょくちょく此処に通っていた。


俺は勢いよく、の部屋の扉を開けた。










「・・・・っ!!」








見た瞬間俺は驚愕した。



少なくなっている家具類、あるはずの食器がない。

殺風景な部屋に・・・居るはずのが・・・・。














居 な い 。

















・・・・・・・・」








俺はフラフラしながら居間へと上がる。
すると、机の上にぽつんと置かれた手紙を開ける。










「コレは・・・・の字・・・・」







封筒を開けると、見覚えのある字体・・・・間違えなくのモノだ。










『手塚へ。

この手紙を読む頃は、私は日本には居ないでしょう。
本当は貴方にちゃんと話をしてアメリカに旅立つべきでした。
でも、貴方の腕の心配をしてそれどころじゃなかった・・・・私は何よりも貴方が心配だったの』







「何故・・・何故、俺の心配ばかり・・・」






『色々話すべきだった・・・アメリカに行くことも、そして・・・足の病気のことも。
昔痛めた古傷が酷い具合に再発して・・・・秀一郎の叔父さんと話し合った結果でアメリカでの治療を決めたの』








「早くに・・・話して欲しかった・・・・」





『腕は絶対良くなる。でも、私の足は・・・確実には治らないかもしれない。だから・・・私と貴方はこれでお別れです』








「嫌だ・・・嫌だ・・・・」






知らない間に・・・涙が零れてきた。










『貴方には必ず、私とは違う別のいい人が見つかる。だから、私のことは・・・忘れてください』









「嫌だ・・・俺は・・・以外の誰も・・・・好きになりたくない」







忘れたくない、忘れたくない・・・のこと、片時も忘れたくない。








『最後に。

嘘をついて偽物の番号とアドレスを教えていた秀一郎・・・こんな形で謝るのは本当に悪いと思ってる。
私が居ない分、しっかり手塚を支えてあげてください。
手塚・・・今まで、いい思い出をありがとう。そして、さようなら・・・・また、いつか何処かで。    』







・・・・ッ・・・・!」





俺は何て、不甲斐ないんだ。

たった一人愛した人さえも・・・こんな形で失うなんて。

もっと早く、彼女の苦しみに気づいてあげれば

こんな結末を迎えなくて済んだのに・・・・・。








「・・・・手塚!・・・・手塚、すまない」







大石が数分遅れて部屋に入ってきたが
俺は気づくことがなかった。

ただ、泣き崩れて手紙を握りつぶしていた。































「・・・・・、アンタは・・・こんな展開を望んでいたの?」





私は、アパートの外で中に居る手塚君と秀一郎君を見届け
右手に携帯電話を握り締めながら、ボソリと呟いた。










がアメリカに渡る前日。
全ての展開を知った神は私に告げた。








「え?秀一郎君に渡すアドと番号は偽物!?ちょっ・・・アンタ何てことしてんのよ!!」
「別に。私はただ、本物を教えたら必ず電話してくると思ってるだけ」





神は、にこっと微笑んだ。




「じゃあ、最初っから話しておけばよかったじゃない・・・どうして?」






私が問いかけると・・・神は・・・悲しげになった。






「もう、これ以上・・・誰にも悲しんでほしくない。秀一郎にも、手塚にも・・・」

「結末を知っての行為?」

「うん。そうすれば、手塚は私に呆れて・・・他のいい人を見つける。これで、いいんだよ・・・

「わかったわよ、・・・神の仰せのままに、私は予言者じゃなく傍観者としてこれを見届けるわ」

「私は神様か・・・・。まぁ、後は任せたよ・・・








神=は全てを知って・・・この行為を実行した。






今、アンタの好きな人がアンタの手紙読んで泣き崩れてるのに・・・・。










、アンタ・・・あの、手塚君にこんだけ愛されてたのに・・・・どうして、こんな別れ方しか・・・出来ないのよ・・・ばかぁ・・」







唯一の親友でも・・・辛いものを見た。
すべてを傍観する・・・何も言わない、真実も・・・。













「でもね、未練がましくいうと・・・・本当は国光のこと愛してたの」
「・・・・、手塚君のこと名前で」
「これ、伝えられないでアメリカに渡るの寂しいな・・・悲しいな・・・」













神様でも・・・・恋はしたんだ・・・・。





唯一愛した人が居たんだ。





・・・これがアンタが望んだ結末だよ。



私・・・ちゃんと見たからね。




目から涙を零しながら、私は心の中で遙か遠くに住む友へと投げかけた。


































「・・・・?」
ちゃん、どうかした?」




週2の通院で私は常葉さんの病院にいた。

何処かで私を呼ぶ声に振り返るが、誰も居ない。






「そーいえば、どうしてこの病気治したいと思ったの?」
「え?」




突然の常葉さんの質問に私は言葉を失くす。






「それは・・・・」
「それは?」






















「思い出せない・・・・んです」
「・・・・そう」









何のために私はアメリカに渡った?


その理由がドンドン消えてきた。


誰のため?


秀一郎のため?


のため?


それとも・・・・・・・・・・。

























「・・・・国光・・・・」




ちゃん?」





頬から熱いものが零れた。


ふと、思い出した最愛の人。



私は・・・・彼のために・・・離れたはずなのに



彼のために・・・・私は、治療をしていたんだ。




















涙は遙か遠い空を通じて

互いを思いあい

そして、すれ違う

まだ、”愛している“という気持ちだけを残して。




-あかし- 〜君とんだ跡〜
(愛してたんだよ・・・愛していたのに、どうして何も言わず去ったの?)


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