、どうした?」

「え?・・・あぁ、ゴメン。ちょっと考え事」




夜。

私は結局跡部との誘いを断り
マンションに戻ってきて、夕飯を作って沙依兄と一緒に食べていた。

私の箸の進みの遅さに
沙依兄が心配したのか声を掛けてきた。

でも私は「考え事」と言葉を濁す。



言えるわけない。


居ないと思っていたのに・・・・・どうして――――。





























「てづ、か」


、なのか」





跡部との電話の最中、私は自分の席をウロウロと
していたときだった。後ろを向いた瞬間、目の前に
数年前に別れた手塚が立っていた。

私も驚いているが、手塚本人も驚いている。


言葉が、出てこない。

心臓がすごい速さで脈打っていた。






「ゃ、やだ。・・・・手塚、青大に居たの?てっきり、別の大学行ってるのかと思っちゃった」


「・・・・・・」





私は何とか笑顔を取り繕って
手塚に話しかけた。だが、彼は何も喋らない。





「頭良いんだから、青大じゃなくてもいいのに。あ、別に変な意味で言ってるわけじゃないから」


「そう、か」


「そうだよ」



返って来た言葉に私は、笑顔で返した。


平常心・・・平常心だよ。
こんなところで焦ってたら、余計ツライ。

せっかく、居ないと思って選んだはずなのに
結局・・・私、手塚とまた一緒になっちゃった。






、その・・・・・っ」




















「国光、どうしたの?・・・・・・あら?」










すると、手塚の背後から
綺麗な女の人が顔を覗かせた。

私は彼女の突然の登場に心臓が一気に跳ね上がった。




この人・・・もしかして・・・。









手塚の新しい
恋人か。







そうよね。
私みたいなのと居るよりも
手塚はこういう清楚な人と居るのが一番良いんだ。

私なんかよりもずーっと、この人と居るほうが重荷にならないもんね。











「静(しずか)。すまない、先に」


「あ、いいよ!私、今日もう帰るから!!」










私は急いでその場を去るように、座っていた椅子に置いた
荷物を掴み、手塚を見る。








「ホラ。私、来たばっかりだし・・・荷物の整理しなきゃ。帰国子女はね、意外に忙しいの。
じゃあ、・・・私しばらくこっち居るからまた連絡ちょうだいね」


「え?ちょっ、!?」


「じゃあね手塚」











そう言って、私はそそくさとその場を去った。




胸の中がモヤモヤする。


新しい恋人が出来てよかったじゃない。

私なんかといるよりもずっといいじゃない。


でも・・・なんで・・・・・・なんで・・・・・・。








「あっ、電話。繋ぎっぱなし」









ふと、手に握ったままの繋ぎっぱなしの跡部との電話に気づく。
表示画面を見るといまだ繋がったまま。

私はすぐさま耳に当てる。










「もしもし、ゴメン。急に邪魔入った」


『お前・・・バカか?』






繋いだまま、戻したら言う言葉はそれ?なんて思った。
でも、私は顔を俯かせ彼の電話に答える。








「他に言うことないの?」


『バカっていう言葉しか見つからねぇな。手塚が青大に居ないって言う考えを張り巡らせる時点で間違いだなバーカ』


「うっさいわね。だって、居ないって思ったんだもん・・・居るはずないって」







そうよ、分からなかったわ。


青大に手塚が居ようが、そして――――。





















「恋人居るなんて・・・・・分かるわけないじゃない、そんなのっ」











私は涙をポロポロ零しながら、跡部に訴えた。



美人で、綺麗で、優しそうな・・・私とはまったく違う性格をした
新しい恋人が居るなんて、分かるわけない。






『このバーカ。・・・ったく、話聞いてやるから待ってろ』


「ゴメン・・・ゴメン、跡部」









ホント、友達で終わってたら
こんな気持ちにならずにも済んだのに。





どうして友達で終わらなかったの?


どうして友達で終われなかったの?


どうして、どうして――――。















私とアナタは
恋人同士になっちゃったの?









結局、跡部が豪勢なリムジンを連れて
私を迎えに来て、私はリムジンの中、跡部の前で泣いた。

跡部はただ、黙って私の話を聞いてくれた。
ただずっと私を見下すみたいに「バカだろお前」しか言わなかったけど
多分彼なりに元気付けているのだろうと
私は解釈し、腫れぼったい目を冷やしてもらい、家に帰ったのだった。













「明日書類を郵送して、明後日届くとして、明々後日には授業に参加できるな」


「え?・・・あ、あぁうん。そうだね」





沙依兄にそう言われ私は急いで返事した。

言えるわけないよね、今更学校変えたいなんて。
体験入学するだけでもお金、いるんだし。




「俺、明日から本格的に忙しくなるから・・・この家好きに使え。極力戻っては来るけどさ」

「うん。あんまりムリしないでね」

「おう!お前もしっかり勉強して考えろよ。3ヶ月はあっという間だからな」






あっという間・・・・・か。




そうよね、3ヶ月なんてすぐ。

3ヶ月、友達みたいに付き合えばいいのよ。
好きになる前に戻れば良いの、ただそれだけの話。

だって、もうアイツには恋人いるもん。





「でも、たまには戻ってきての手料理食べたいから作ってくれよ」

「だったら毎日戻ってくればいいじゃん。何のために借りた部屋なの?」

「それ言われたら俺もお仕舞いだな」






3ヶ月・・・・・きっと、すぐよね。

































「そっか。だからこっちに帰ってきたんだ」

「うん」



夜。
大石や長谷部さん、不二といったテニス部のメンバーで
食事をしていた。
その中で、もちろん話題の種になったのはだった。

が帰ってきたことに俺は驚いていた。

いや、此処に居る誰もが驚いた。


帰ってきた理由は、アメリカの大学への編入を悩んでいると
アイツのお兄さんが「日本の大学に体験入学をして、どっちに編入をすれば良いのか考えろ」というので
は日本に戻ってきた。


分かっている。

それ相応の理由がなければ、アイツは・・・・・・日本になんか戻ってこない。





「でも、3ヶ月しか時間ないんだ。寂しいにゃ〜」

「仕方ないよ。それだけは病気の治療に専念してたんだし・・・早く決めないといけないし」

「だから3ヶ月は妥当というわけか。なぁ、青大の良さをアピールするのはどうだ?そうすれば、だって日本に」








「決めるのはだ」






「手塚」

「手塚くん」





大石の言葉に俺はすぐさま言葉を挟んだ。
全員が俺のほうを見る。





「授業を受けたりして、それを決めるのはだ。アピールをしてどうする」


「手塚」


「決めるのは本人だ。俺たちは迷ったときのアイツを手助けをするだけだ・・・無理に残らせようとしないほうがいい」





そう言葉を残して、荷物を持って席を立つ。






「おい、手塚。何処に行くんだよ」


「明日も早いから、俺は先に帰る。すまないな」





その言葉を言い放ち、俺は店を出た。





街を一人歩きながら、ふと思った。





数年前、もう無理だと言われ俺はアイツと別れた。

でも、それでも俺はどうしても諦めきれなかった。



心の何処かで、のことを俺は想い続けた。
もうきっと逢えないと、そう思っていた。

だけど、今日・・・数年ぶりに彼女に会って
思わず想いが弾け飛びそうになった。

しかし、は・・・俺を拒絶するように、その場を去った。





3ヶ月・・・3ヶ月しかないのか。



俺がお前の側に居れるのは、こんなに短い期間なのか。



この短い期間で、俺はもう一度――――。




お前に想いを告げることはできるのだろうか?







『 
 し て る 』






その言葉を、お前に告げれるのだろうか?





-あかし- 〜君とんだ跡〜
(戻らない時間の歯車。少ない間に彼等が出来るのは、離れることと隙間を埋めること)

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