「どうだった、この授業?」


「うーん・・・イマイチ?何か、微妙」


「えーっ。結構オススメなんだけどなぁ〜」






ある程度の荷物を、借りている部屋に置いて大分片付いた。


私はと共に色んな講義を受けていた。
は「私、ある程度の単位取り終わってるから付き合うよ」と言って
私に色んな授業を勧めてくれた。



3ヶ月、私は日本の大学に体験入学して
アメリカの大学に進むかそれとも、日本の大学に進むかを決めなければならない。



のオススメの講義を受けて
廊下に出て、会話をする。


女子学生らしい、会話が弾んでいた。







「ねぇ、


「ん?」




私は、次何の講義を受けようかと
履修科目の紙を見ていると、が呼ぶ。
















「手塚くんとさ・・・・・・ヨリ、戻さないの?」













の言葉に足が止まった。












?」



「終わった事だから・・・・手塚とは。もう、終わったの」









私は苦い表情を浮かべ、振り返りに言う。

きっと、私の表情見ては分かるはず・・・・・・私が、まだ手塚の事、好きなことくらい。








・・・まだ、手塚くんのこと・・・何で?」




「好きだよ。でも・・・もう、私・・・手塚の側にいれない。手塚は、こんな私なんか・・・愛してくれない」










愛してくれるはずない。


たとえ戻ったとしても、彼が私を愛してくれるはずない。


手塚が・・・手塚が愛してるのは―――――。
















幼 い 日 の あ の 頃 の 私 だ け 。














「今更、こんな私を手塚が愛してくれるわけないよ」






そう言って私は止めていた足を進めた。


ふと、窓の外に目をやる。
彼女の目に飛び込んで来たのはテニスコート。

其処には、中学時代の懐かしいメンツが揃っていた。
その中に一際目立つオーラを放つ・・・手塚の姿あった。


窓越し、小さく映る彼に触れる。






「それに・・・私、無理だよ。手塚を愛するなんて。手塚だって・・・私のこと愛してくれるわけないよ」



「そんなことないって」



「あるよ。だって、手塚には・・・・・・」
















『 国光 』










私の中で蘇ってきた、数日前の記憶。


手塚に嬉しそうに近づく少し年上の女性。
自分よりもずっと綺麗で、優しそうな・・・女性。


もう彼の側には、自分よりもずっと相応しい人が居る。



そう思うと、私の胸は・・・強く、酷く、締め付けられてしまった。










「もう・・・いいの。手塚も新しい道、進んでるんだから・・・私も、彼と違った道を進まなきゃ」









私はそうに言った。



これで、いい・・・これでいいんだよ
誰にも、好きだった人にでさえも、迷惑をかけずに済む。




もし、日本の大学に進む事になったとしても・・・青大に来なければいいんだ。




その方が・・・その方が・・・・・・―――――。










「手塚にとって幸せだから」








私が彼の幸せを邪魔しちゃいけない・・・邪魔しちゃ・・・いけないんだ。



そう心の中、自分に言い聞かせ
窓からそっと手を離し、足を進める。












「今度は何?」






またもや、が私の足を止めた。
私は辛い表情を見せないように、振り返り彼女を見る。







「手塚くん・・・先月、ドイツから帰ってきたばかりなの・・・」



「ドイツ?・・・何で、ドイツなの?・・・・・・も、もしかして、腕、また・・・悪くなったの!?」






の言葉に、私の心臓は早く鼓動する。

嫌な予感が過ぎる。



また彼は無茶をして、腕を痛めたのか・・・それとも負担をかけすぎて・・・。
なんて、最悪な状況が脳内を延々と回り続けていた。


やだ・・・そんなの、やだよ・・・。







「違うよ。中学のとき、ドイツに海外留学してから・・・それから日本とドイツを行ったりきたりして。
手塚くん、ドイツの大会での賞状とか写真とかも見せてくれるの。
今はオフシーズンらしいから、こっちに帰ってきてるって秀一郎くんが言ってたんだ」


「・・・そう・・・よかった」





の話を聞いて私は安心した。





「安心、した?」


「・・・・ぅん」


「やっぱり、好きなんだね手塚くんのこと」


「・・・・・・ぅん」






でも、好きになっちゃいけない。



だけど、心の中で密かに想い、願う事は出来る。













例 え も う 二 度 と 結 ば れ な く て も。
















ふと、ポケットから携帯のバイブレーションで私に何かを知らせる。

私はポケットから携帯を取り出す・・・着信、電話だった。

すぐさま携帯を開き、私は出る。






「もしもし?」



か?』



「沙依兄」






電話の相手は沙依兄だった。
珍しい・・・沙依兄から電話とか・・・しかも明るいうち、夕方に電話とか。

明日は雨でも降るかしら?とか思わず心の中で思った。








「どうしたの?」


『仕事が早く片付いたから、メシでも食いに行こうと思ってな』


「うん。じゃああと少ししたら」


『俺もう校門のトコ居るんだけど?』


「沙依兄、行動早すぎ」






相変わらず、この行動の早さ。
ホント・・・こういうところの速さは見習うべきか、否かって思う。





『何だ?お前まだ授業か?』



「うぅん、今終わったところ」



『じゃあ兄ちゃんがメシ連れていくんだから、早く来いよ』



「分かったよ」



『おう。校門んトコで待ってるからな。早く来いよ?あ、でも走ってこなくていいからな?』



「沙依兄、言ってること大分矛盾してる」



『だよな。まぁお前のペースで来いよ。待ってるから』



「分かった。じゃあ今行くね」





私は通話を切断し、携帯をポケットに入れた。







「お兄さん?」



「うん。ご飯食べに行こうって。校門で待ってるみたいだから、私行くね」



「うん。じゃあ、明日ね」



「明日ね」







そう言って私はと別れ、自分のペースで・・・ゆっくりと沙依兄の居る校門へと向かう。



もう、走る事に疲れた私の足は
地を踏みしめ、歩む事しか出来なくなった。

走れない・・・走れるのに、走れない。




手塚が好きだったのは・・・・風を切って、走っていた私。



こんな、もう・・・風を感じれない私なんか・・・・・・見てくれない。































「・・・・・・?」


「どうした、手塚?・・・あ、じゃないか」






テニスコートで、昔の仲間と戯れていたら
少し離れた場所を小走りをしていくの姿を俺は見つけた。


目の錯覚?と思ったが、大石が気づいたから間違いない。






「ちょっとすまない」


「あ、おい手塚っ!?」








俺は、すぐさまテニスコートを出てを追った。

向こうは小走りだ、頑張れば近づける。
なんて思ったが、は陸上競技をやっていたんだ・・・小走りでも流石に早い。


でも、俺が此処で力を抜いてしまえば、確実に逃がしてしまう。


この前は話す事ができなかった。
だけど、今度こそ・・・と、はっきり話をするべきだ。





だから・・・だから、ドイツと日本を何度も往復した。





いつかは、とまた・・・巡り逢えると・・・・・・信じていたから。







が角を曲がり、俺は「見失ってしまう」と思い、走った。

彼女が曲がった角を曲がり・・・―――――止まった。














俺の知らない、人物と・・・が、楽しそうに話していた光景が目に飛び込んできたからだ。













「手塚、急にどうしたって・・・」


「大石・・・アレは・・・一体・・・っ」







テニスコートを急に飛び出し、追いかけてきた大石に俺は問いかけた。
大石が俺の見ている視線の先を見て、口を開く。









「あぁ・・・アレはの――」












「彼氏よ」









すると、大石の言葉を遮るように長谷部さん()が声を出す。








「新崎沙依さんって言って、の彼氏なんだって。こっちでウェディングプランナーの
仕事してるんだってさ」


「・・・の、彼氏・・・」









頭が、酷く痛い。


目の前の現実が、酷く痛い。



俺の、知らない男とが・・・笑いあっている。





男は、にバイクのヘルメットを渡し
もそれを嬉しそうな顔で受け取り、被ってバイクの後ろに乗る。







違う・・・こんなの・・・・・・違う。







俺は握りこぶしを作り、グッと何かに耐えるように・・・テニスコートへと戻るのだった。





ウソだと・・・ウソだと言ってくれ・・・




























ちゃん・・・何で、あんな事」



「この方がいいと思ったの。・・・にも、手塚くんにも・・・」



ちゃん」



「秀一郎くん。私たちがいくら仲をとりもっても・・・・2人の空いた時間は、もう、埋まらないよ」













彼女の拒絶。

それとは裏腹になっている彼を想う気持ち。


彼の一途。

彼女を想い続けるあまりに想いがうまくいかない気持ち。





長く空いてしまった時間や温度は
互いが空回る気持ちによって・・・・・・遠ざけていくのだった。






-あかし- 〜君とんだ跡〜

(気持ちが上手く伝わらない。どうすれば、本当の想いが伝えられるの?)
inserted by FC2 system

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル