「やぁ、さん」


「あ、幸村くん」




入学式から、大分日が経った。



何も知らん土地で、右も左も分からん状態の私に
幸村くんは優しくしてくれたし、同じクラスになった柳くんも
色々と言うてくれたおかげで、不便なく立海高校生ライフを楽しんどった。







「どう?学校には、慣れた?」


「うん・・・まぁ、ぼちぼちやな」


「あれ?まだ、どっか不便な事とかある?」


「え!?い、いやそういう意味とちゃうねん!」





逆に快適すぎて、困ってたり・・・なんて、言えへんよなぁ。
特にこうやって幸村くんと話すだけで、何や、えらいジロジロ見られてるし・・・。

やっぱり、私の喋り口調がアカンのかなぁ〜って思う。







「どうかした?」


「え?・・・あぁ、うぅん何でもないねん」


「そう。俺、クラス離れてるから上手くフォローできないけど柳が居るし。
何かあったら柳に言うといいよ。それか空いた時間だったら、俺に聞くのもいいから」


「う・・・うん、ありがとう幸村くん」


「じゃあ、俺行くね」





そう言うて、幸村くんは自分のクラスに戻って行った。
私は小さく手を振って彼を見送った。


幸村クンの姿がなくなると、私は小さくため息を零した。




「どうした


「気合が入っておらんぞ」



「うわっ!?や、柳くん、真田くんビックリするやんか」




すると、突然後ろから声が聞こえてきた。
其処に立っとったのは、同じクラスの柳くんと、彼の友人であり幸村くんの友人でもある真田くんやった。


まぁ幸村くん、真田くん、柳くんの3人は・・・エライ仲えぇからよく3人で居るとこが多い。




「どうした?」


「いや、さっき幸村くんと喋ってただけや」


「その割りに沈んだ顔をしているな。何かあったのか?」


「俺達でよければ話に乗るぞ」





真田くんのその表情で「話に乗るぞ」って・・・言われてもなぁ。


でも、言わんと分からんことやし・・・言うてみて
少し私がスッキリするかもしれへん・・・2人には悪いけど、ちょっと吐き出してみる。






「あ・・・あんな」


「うむ。どうした」


「弦一郎。怖い顔をしたら、が喋りにくいだろう」


「むっ、すまない」






柳くんの言葉で真田くんが黙りこんだ。


さすが柳くん・・・よぉ分かってる。


ようやく空気が落ち着いたんか、私は恐る恐る口を開く。





「何で・・・幸村くん。こんな、ヘンな喋り方する私のこと気にかけてくれるん?
正直、私とかと話したりするより・・・中学ん時から一緒に居る、柳くんや真田くんと居った方がえぇような気ぃすんねん」








時々、視線がえらい気になってた。


幸村くんと話すだけで、周囲からの視線が少し冷たいと思てた。


今更喋り方変えよう思ても
生まれも育ちも関西、天下の台所大阪。

ちっちゃい頃から染み付いた、関西弁はそう簡単に変えられるもんとちゃう。


せやけど、怖い。



関東に来て怖いと思てんのは、視線。


あれほど冷たさに帯びた視線は味わった事なかった。




幸村くんの前では何とか笑顔作ってたけど
話し終わった後、どっと疲れとった。







「良くしてもろてるのは、嬉しいねんけど・・・正直、私とかと、居るんはやっぱり・・・」



「何だ、。・・・気づいていないのか?」



「え?」





すると柳くんが少し考え込みながら私を見てる。


柳くんの隣に居る真田くんも「ど、どうした蓮ニ」と少々困惑気味で彼を見とった。






「そうか・・・そうなんだな」


「え?や、柳くん・・・何が?何がなん?」


「いや、何でもない。こっちの事だ」





柳くんはクスクスと笑うばかりで、私や真田くんは何のこっちゃさっぱりや。





「分かった。じゃあ・・・幸村に」


「あっ!幸村くんには言わんといて!」


「何故だ?」


「いや・・・だって・・・それこそ、幸村くんに迷惑やんか。せやから幸村くんにだけは言わんといて、頼むわ!」





そう言うて、私は2人にお願いした。


こんなん・・・幸村くんに知られたら・・・めっちゃ迷惑がられる。
今まで優しくしてもろてんねんから、余計迷惑や。


せやから、私がちょっと我慢すればえぇねん。




誰かに、嫌われるんは・・・ゴメンやからな。






























「あ、柳くん。どないしたん?」




あれから二日後。
柳くんが私を呼び止めた。





「実は、中庭で珍しい花が咲いたらしい。だが、品種などが分からないと生物の先生が困っていた。
お前は実家が確か、花屋だろ?」



「そ・・そやけど・・・」




待って。

何で、柳くん私の実家が花屋って知ってんねん。
私一言も彼の前で「大阪の実家が花屋」とか言うた覚えないで。

何で知ってんねん。








「あ、う、うん。何?」





柳くんに心を悟られんよう、私は平然を装う。






「お前なら、花の品種分かるだろ。行ってくれないか?」


「え、えぇけど」


「助かる。中庭の場所は分かるな」


「この前教えてもろたし・・・大丈夫や。生物の先生も其処に居るんやろ?」


「あぁ、よろしく頼む」


「分かったわ」







そう言われ、私は中庭へと向かう。



































「おい、蓮ニ。良いのか?」


「少々やり方が卑怯じゃありませんか?」


「幸村にバレたら、流石の柳もヤバイんじゃねぇの?」


「大丈夫だ」





―あの幸村だ。これくらいでは怒りはしないさ―































柳くんに言われて中庭に来た。

ホンマ、柳くんって何で私が花屋の娘って知ってんねん。
まぁ・・・そない事はまた後で聞くとして、とりあえず行くのが先やと思いながら
中庭へと駆ける。





「!!」





中庭に着いた途端、足が止まった。







花壇の前に幸村くんが居る。



えっ・・・何で・・・幸村くん、おんの!?






私はゆっくりと、彼に近づく。






「あ。・・・やぁ、さん」


「ゆ、幸村くん・・・何で、此処におんのん?」


「あぁ。俺、こうみえてガーデニングが趣味なんだ。少しでも花壇の手入れはしてあげなきゃね。
あ・・・男で、ガーデニングとか・・・ヘン、だよね」




幸村くんは、少し戸惑った表情をした。


私はそんな彼の表情に気づき―――。








「え・・・・い、いや・・・えぇんとちゃう。花に興味があるって男も女関係ないし・・・えぇと思うわ」


「本当?・・・よかった」







私の言葉に、幸村くんは笑みを浮かべた。







「それより、どうしたの急に?」


「え?!・・・あー・・・あー・・・」






幸村くんに話しかけられ、ドキッとする。

ふと、思い出す。



もしかして・・・柳くん、私のことハメた?


あんの、糸目・・・っ、やる事卑怯やんか!!







さん・・・どうかした?」


「い、いや・・・何でも、ないわ」








私は何事もなかったかのように、幸村くんの隣に座る。


幸村くんは、楽しそうに雑草を抜いたり、土をいじったりしている。



でも、幸村くん優しそうやからガーデニングが趣味とか
何や許せてしまうわ。



横目で見る幸村くんは、土いじりをしながら、花をそれは愛おしく、そして優しい目で見ている。



それだけで「あぁこの人、ホンマに花とか好きなんやなぁ」って思う。








「・・・さん」


「えっ・・・な、何?」





突然、幸村くんが私に話しかけてきた。
あまりに唐突で心臓がドキッと動いた。





「何か・・・すまない」



「え?」




な、何が?



私は目を丸くして見ていると、幸村くんは花壇から手を離し私を見る。








「俺と一緒に居ると、君に変な気を遣わせてしまって。君が色々と”ありがとう“って言ってくれるだけで
俺、何か・・・もっと君に喜んで欲しいって思っちゃって・・・本当に、すまない」



「幸村くん」







彼は彼なりに、色々としてくれてるって分かってんのに。



周りの目とか、今更そんなん気にして・・・・・・私、アホやんか。












「これからは蓮ニに頼ると」



「幸村くん、ゴメンな」



「え?」



「私・・・アホや。幸村くん、私のために色々してくれてんのに、周りの目ばっかり気にして
幸村くんにこない風に思わせてしまうなんて・・・・私、アホやでホンマ」



さん」




「迷惑やなんて思てへんよ。柳くんに頼むよりも私、幸村くんに頼んだ方がやっぱりえぇわ」



「で、でも・・・それじゃあ君が・・・」



「気にせんといて!それに、柳くん・・・何や、頭の回転良すぎて、話しが少し・・・いや、あれはかなりやな。
私、付いて行かれへんもん。せやから、これからも幸村くんに頼んでも、えぇ?
幸村くんが・・・迷惑やなかったらやけど・・・」






ムシが良すぎるかもしれへん。



でも、この人が辛そうな顔とか何や・・・見たないわ。

幸村くんが辛そうな表情するだけで
彼が大事にしてる花も・・・枯れてしまいそうや・・・まるで、彼の心に反応するかのように。



それだけは、絶対・・・やったらアカン。












「ご、ゴメンな・・・結構、わがまま言うて」









私は慌てて、彼を見ると・・・彼は・・・優しく、そしてかすかに嬉しそうに私を見とった。



その表情を見るだけで私の心臓が脈打つ。
胸が・・・熱いわ。







「俺で、よければ。君の、力にもっとなれるのなら喜んで」




「ありがとう、幸村くん!」








胸の奥にひっかかってた、つっかえ棒みたいなモンが取れた。

肩の荷がスッと降りて体が軽くなった気分や。








「あ、あのさ・・・さん・・・あの・・・」



「ん?何、幸村くん」






すると、幸村くんが何や照れながら私を呼ぶ。

え?何を照れてんの?










「その・・・今度で、いいんだけど・・・・・・あの、さ」




「うん・・・何?」




「その・・・えーっと・・・」




「何や、早よ言うてや幸村くん。男なんやから言いたい事はビシッと言わなアカンで」




「そう。そうだよね」








私がそう言うと、彼は咳払いをし――――――。

















「あの、今度――――――」


























「精市さん」







すると、少し高い声が聞こえた。

振り返ると、私と同い年くらいの女の子が居った。




誰?












「精市さん、こんな所にいたの?探したじゃん」






すると、2人は私の知らんやりとりを始めた。








――チクン――






胸が、痛なった。




モヤモヤすんねんけど・・・・・・何なん、コレ?






花壇に植わったヒヤシンス。


黄色の花弁が咲きかけてる隣で、赤色の花弁が咲き誇っていた。


まるで、何かに嫉妬しているみたいに。






黄色赤色に変わるヒヤシンス
(花言葉は黄色はアナタと居れば幸せ、赤は嫉妬。嫉妬の花弁が幸せの邪魔をする)


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