「景吾。自分で言ってる事、分かっているのか?!」

「景吾、考え直しなさい」

「景吾坊ちゃま・・・」



「うるさい。・・・俺は、俺は決めたんだ・・・」



















「婚約破棄をする。俺は・・・俺はもう・・・そう、決めた」






「景吾!」

「景吾待ちなさい!!」









そう、決めた。


もう、待ってるだけの愛なんていらない。
望み続ける愛なんて、いらない。


俺は・・・決めたんだ。









『・・・跡部くん・・・おはよう』






俺に何気なく微笑みかける表情。


あの笑顔の隣に、ずっと居たいって。


























「景吾坊ちゃま、いかがでしたか?入学初日は?」


「あぁ、最高の入学式に俺様がしてやったんだ。これからこの学校は俺様が変えてやるんだ」


「さすがは景吾坊ちゃまです」



入学式、帰りの車の中で執事のミカエルに俺はそう話した。

氷帝学園中等部。

俺は今日、この学校に入学する事になった。
都内では一応規模のデカイ学校といわれていたが・・・・・・。







「しけてんなぁ・・・俺様がやっぱりこの学校変えてやらねぇとな・・・有意義な学校生活送れやしねぇ。
まぁ色々と準備が必要だがな」


「それでしたら色々手配いたしますので、何なりとお申し付けください」


「分かった。頼むぞミカエル」


「はい、景吾坊ちゃま」








そう言って俺は後部座席に深くもたれた。


くだらない生活を変えたくて、ヨーロッパの学校を飛び出し日本に戻ってきた。
少しでも楽しくなれば良いと思って、自分から変えてやろうと試みた。









だけど、変わったのは周りだけで・・・俺はちっとも楽しくなかった。









環境さえ変われば、自分も楽しめるだろうと考えた。

だから変えた・・・氷帝学園の全て、何もかも。


だけど・・・楽しんでるのは周りだけで、俺はちっとも楽しくなかった。











「何してんの、跡部」











色素の薄いロングヘアーに、体に纏った氷帝学園の制服。


現れたのは俺の婚約者のだった。
いつ頃から婚約関係を結んだのか俺は覚えていない、だが気づいたらが近くに居た。







「勝手に部屋に入ってくんな・・・ノックくらいしろ」


「したけど、アンタ返事した?」


「・・・・・・」





にそう言われ俺は黙り込む。

相当俺は、考え込んでいたらしい・・・いつもなら、ちゃんと分かるのに。









「き、聞こえてねーし」


「そう。じゃあ今度からドアガンガン叩いてやるわ。そしたら気づくでしょ」


「やめろ。人様の家のドアなんだと思ってんだ」


「アンタがノック聞こえないって言うから」


「別に言ってねーし」


「じゃあ思いっきり叩くね」


「人の話聞けよ、!!」









立ち去ろうとしたを俺は大声で止めた。

俺の声には反応して、振り返る。

振り返ったときのの表情は・・・・・・。













「嘘よ、バーカ。今度からちゃんと聞いてなさいよ」












少し、笑ってるように見えた。



それだけを言い残し、は去っていった。



はあんまり笑わない・・・無表情が多い、時々何を考えているか分からないヤツだ。

それでいて、頭がいい・・・入学試験だって・・・俺が総代として
壇上に上がったが、下手すれば・・・があそこに上がっていた可能性だってあった。


付き合いが長いというわけではないが・・・が側に居ると
多少安心する・・・アイツは何も言わない・・・何も言ってこない・・・。




言い寄ってくる大人や女たちとは違うから。




だけど、俺とは・・・何処か似ている。







俺達は”何か“に・・・飢えている・・・小鳥だったんだ。



















相変わらずと言っていいほど、楽しくない。


学校の不便なところ、全て変えた。

皆喜んで、楽しんでいた。


だけど、当の俺はというとちっとも楽しくなかった。



学校生活を変えた事によって・・・毎日、見知らぬ女子からのアプローチ。
婚約者のは見てみぬ振り。

むしろ、アイツの事だ「助けるのが面倒」とか思ってるに違いない。




楽しいのはテニス・・・だけ。



俺の寂しさを和らげてくれるのは、テニスだけ。






「そういえば、テニス部にまだ顔出ししてなかったな・・・今日辺りにでも行ってやるか」




ふと、まだ肝心のテニス部に行ってない事を思い出し
少しだけ、楽しみが増えそうな気がした。

自然と口元が緩む。



ふと、目の前を女子が1人止まった。


俺は思わずそいつを見上げる。



口元が緩んだのを見られたと思い、俺は目を閉じてちょっとそいつを睨みつけるように見る。





「何だよ」


「え?・・・うぅん、別に」




すると、そいつは俺の隣に座る。
コイツ俺の隣だったのか・・・とか、俺はどれだけクラスの人間把握してないんだって話だ。







「あ、忘れてた」









隣のヤツが、何やら思い出したような声を出し
ふと横に座っている俺を見る。そして・・・―――――。















「跡部くん、おはよう」









優しく俺に微笑んだ。


その時からだった・・・俺の胸の中に、小さな”何か“が芽生え始めた。



その”何か“が、俺にはよく・・・分からなかった。




から生まれた名も知らぬ種
(だけど、その種がまだ何なのか俺には分からない)


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