!」



「あ、結城さん」





4月、私は氷帝学園に居た。

そう私は本日から中学一年生。
しかも都内の私立校で有名な氷帝学園中等部に入学です。


私は氷帝学園の校門の前で立っていると、後ろから学園指定の制服を着た
銀髪で前髪に赤いメッシュを入れた結城真音(ゆうきまおと)さん。





、お前ネクタイ曲がってるぞ」


「え?あぁホントだ」


「ジッとしてろ、俺が直してやるから」


「わっ・・・だ、大丈夫ですよ!結城さん・・・っ」


「こういうのは自分でするよりも、誰かにしてもらったほうがいいんだよ。せっかくの入学式
なんだから、ビシッとしないとな」


「は、はい。ありがとう・・・ございます」




結城さんはこの学校の3年生で、最上級学年。
そんな人と私が何故仲が良いのかというと・・・――――。






「お前は昔からそそっかしいからなぁ」


「ち、違います。結城さんがそう思ってるだけです」


「そうか?よく忘れ物して、俺がおばさんから頼まれたりしてたぞ」


「うっ?!」


「学年がもう違うからな、あんまり俺に頼るなよ


「もう、結城さん!」








結城さんは、ウチの近所に住む人で
私が小学校のときから、何かと気にかけてくれてとっても優しい人。

氷帝学園に入る事を決めたのも、結城さんを追っかけて・・・なんて、恥ずかしくて言えない。

好きというわけではない、結城さんは私の憧れだ。


カッコよくて、頼りがいのあるしっかりした人。


そして―――――。







「まぁ、あれだな」





そう言いながら結城さんは私の歪んだネクタイを正して
手を離す。







「本当に困った事があったら俺に言え。俺はいつでもお前の味方だからな」


「結城さん」







結城さんはそう言いながら、私の頭を優しく叩き微笑んだ。



結城さんは、とっても優しい。
まぁ私に優しくするのは、きっと妹みたいとか思ってるに違いないだろう。





「そうそう。俺さ、今年からテニス部の部長になったんだ!部員結構多いからまとめるの大変でよ」


「結城さん、テニス上手いですし大丈夫ですよ!部員ちゃんとまとめられますって」


「そ、そうか?何かに言われると照れるな」




私がそう言うと結城さんは頭を、照れくさそうに掻く。
思わずそんな結城さんを見て私は小さく笑った。





「お前・・・今笑ったな!?」


「え?・・・だ、だって結城さん。普段照れたりしないですから・・・つい可愛くて」


「お、男に可愛いとか・・・、普通それ言わないだろ」


「そうですか?結城さんは時々男の子っぽくて可愛いところありますよ」


「俺、性別男だけど」


「小さな子供って意味です」







「女の子の考える事は、男には理解できないよ」なんて、結城さんはそう言った。


男の人も、見方を変えればふと可愛いなんて
思ってしまう仕草の一つや二つ必ずあると思うんだけどなぁ〜・・・と、そんな事、結城さんに言っても
きっと信じてはくれないから、口を閉ざしておこう。





、今日昼飯一緒に食うか?どうせ入学式で部活も休みだし・・・帰りなんか食って帰るか」


「ホントですか?!」


「入学祝い。俺が奢ってやる」


「わーい!結城さん、ありがとうございます!」


「その代わり、来年の卒業式お前奢れよ?俺卒業するんだからな」


「え〜」


「え〜じゃないだろ。ほら、新入生、さっさと行ってこい」





そう結城さんに背中を押され、私は前に押し出された。
危なくこけそうになったけど何とかこける体勢は免れた。

ちょっと結城さんに文句を言おうと、後ろを振り返るとかの人は
ポケットに片手を入れながらも優しく私を見守っていた。



それは何かを愛おしく思うような・・・温かい、視線・・・。



文句を言おうとしたのに・・・結城さんのその表情を見ただけで
言いたい事が引っ込んでしまい・・・口元が緩み・・・――――。







「行ってきます」




「おう、行ってらっしゃい」






そう言って、私は体育館へと向かったのだった。

憧れのあの人に見送られながら。














入学式から少し時間が経った。




アレから学校全体が凄く豪華というか、華やかというか・・・・派手?になった。


それも全部、新入生総代を務めた跡部景吾くんがしたものらしい。



学食や、その他設備諸々が跡部くんのお家の財力?によって
まるで生まれ変わったように機能し始めていた。





「だからってな、ここまでする必要ないと思わないか?」


「そう思うのは個人の自由だと思いますよ、結城さん」




学食にお昼ご飯を食べに行こうとしたら
中庭でばったり結城さんと出くわし、近くの木陰で腰を降ろし二人で
お昼ご飯を食べる事に。





「ったく・・・あんなヤツ、テニス部に来ないでほしいな」


「まぁ何か跡部くんってテニスしなさそうなイメージですよね。何かこう紳士的な感じだし」





私がお弁当のおかずを頬張ると、目の前の結城さんが何やら嫌そうな顔をしていた。
何とかおかずを飲み込み、口を開く。





「ゆ・・・結城さん?」


「・・・お前、何であのガキのこと分かるんだよ?」


「跡部くんと同じクラスだからですよ」


「はぁ!?」


「しかも席が隣なんですよー、ホントびっくりしちゃいましたー」






私が口から零した言葉に、結城さんは驚いた。
しかも何かちょっと嫌そうな感じで驚いてる。



入学式が終わり、クラス分けの張り紙を見ると
跡部くんと同じクラスだということが分かった。

其処まではまぁ私も普通に驚いたが、教室に入って
自分の指定された座席に座ると、隣に座ったのは跡部くんだった。

そりゃあ出席番号1番ですから一番前であって・・・私もたまたま一番前に来てしまった。



まぁ全部、偶然としか思えないから私はあまり驚きもしなかった。





「アイツに何もされてないよな?」


「結城さん。変なこと言わないでください・・・跡部くんはクラスメイトですよ」


「クラスメイトでもだ!・・・あんなヤツと、お前がクラスメイトって・・・俺が・・・イヤ、っていうか・・・」


「何がイヤなんですか?別に結城さんが跡部くんとクラスメイトってわけじゃないですから」





私がそういうと、結城さんは私の顔を見て何だか
思いっきり肩を落とされた(しかもすっごいため息つかれて)。





・・・あのな、俺は・・・」


「はい、何ですか?結城さん」


「・・・・・・悪い、なんでもない。お前、天然だな」


「はい?」



結城さんは私に何を言いたかったのか、よく分からないままお昼休みが過ぎていった。


だけど、時々跡部くんを見ていて思う。




















どうして、あんなに寂しそうな顔をしてるんだろう?












あれだけ、大きな事を堂々とやっていた跡部くん。

総代の時も「俺がこの学校を変えてやる」とか、言ってた。
今では彼は学園中の憧れの的、「跡部様」って親しく呼んでる人たちだって居る。

彼の周りにはいつも人がたくさん居る。


だけど、何で寂しそうな顔をする必要があるのだろう。




堂々と、凛々しく、皆の先頭に立った跡部くん。



毅然とした態度で、手折られる事なく咲き誇る優雅で美しい一輪の薔薇のように
立っているはずなのに・・・どこかその薔薇は・・・寂しげに、ひっそりとたたずんでいるように思える。




跡部くんを見ていると、そんな感じだった。



水は十分に与えてもらった、肥料だって。
だけど、何かが足りない・・・何が足りないのかな?



薔薇のまわりにない・・・何か。

















次の日。


気づいたら、クラスの前だった。




最近よく考えるの。跡部くんになんて言って声を掛けてあげたら良いのかって。
クラスメイトなのに「跡部様」なんて、何か余所余所しい・・・同い年なのに。


結城さんは「あんなヤツに関わるな。お前がおかしくなるだけだ」って言って
何かすごい猛反対な空気出してるし・・・。






「(結城さんに相談しても・・・ダメだよねぇ・・・やっぱり)」





まだ学校に完全、馴染んだわけではない。

クラスメイトの名前もまだ十分に覚えられてないし
ましてや、私が覚えたのは跡部くん・・・だって総代だったし、あんな大きなこと言ってたし。


私を助けてくれるのは、今のところ結城さんだけだけど・・・跡部くんのこと話すと
結城さん、凄く嫌そうな顔しちゃうし・・・何だか、言いづらい。







「こうなりゃ・・・私から一歩踏み出さなきゃ!うん・・・よ、よし!」






そう、自分を奮い立たせ教室の扉を開けた。


そして、自分の席に向かう・・・隣にはもちろん、跡部くん。
私は跡部くんの隣を横切って行くと、彼の表情が少し明るい事に気づいた。





「(あ、ちょっと笑ってる)」





でもその微笑みは、いつも見ているあの堂々とした微笑ではなく
何故だか安心しきったというか、まるで何かを楽しみにしているかのような微笑だった。



すると、跡部くんが私を見上げた。

しかも何かちょっと睨みつけた感じで・・・こ、怖い。






「何だよ」



「え?・・・うぅん、別に」






私はそそくさと自分の席に向かう。

に、睨まなくてもいいじゃん・・・まぁ、人は誰しも見られたくない顔とかあるから
仕方ないのかもしれない。





私は自分の席に座り、カバンを机の上に置いた。


さて、まずどう話しかけよう・・・と、色々考えを張り巡らせた結果。






「あ、忘れてた」





忘れたフリをして、話しかけてみよう。

いや、話すというよりもまずは―――――。





















「跡部くん、おはよう」






「え?」








挨拶から、少しずつ話しかけてみよう。




私は「おはよう」の言葉と一緒に彼に笑いかけた。
きっと誰もまだ彼にその言葉を言っていないはずだから・・・まずは「おはよう」から。




少しずつ、彼と仲良くなれたらいいな。




堂々と振舞う「跡部様」ではなく、普通の男の子「跡部くん」として



私は貴方と、仲良くなりたい。







少女仲良し“という種を植える
(”仲良くなりたい“そう願う少女は彼の心に種を植えた)
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