―――ピンポーン。



『はい?』


「こんにちわ、白石です」


『白石様。少々お待ちください』




相変わらず、学校休みで部活がオフになると
俺っての家に行く事決まりきってんねんなぁ。


いつものように、の家のインターフォンを押して
運転手さんが出てきた。



俺はいつもと変わらん感じで、かの人に挨拶をした。






「こんにちわ」


「いらっしゃいませ、白石様」


、部屋ですか?」


「いえ、本日はピアノのお部屋にいらっしゃいます」


「あら?そうですか」


「とにかく中にどうぞ」





運転手さんに中に入るよう促され、俺は中に入る。

扉を閉め、横を通り前を行く運転手さんを見て、俺は口を開いた。






「あのー・・・」


「いかがなさいましたか白石様?」


「あ、いえ。ピアノの、レッスンかなんかですか?それやったら俺お邪魔やし、帰りますわ」





ピアノの部屋に居るとか、滅多にない。
たまに気まぐれで自分で「弾きたくなる」とか言う。

せやけど、何や俺の勘・・・今日はそういう感じやなさそうな気ぃすんねん。





「あぁ、大丈夫ですよ。お嬢様からは白石様がいらっしゃったら通して良いと言われておりますので」


「いや、でも気が引けますわ。何や、お客さん来てそうな気配するんですけど」


「おや、お分かりになられましたか?お嬢様が以前ピアノを習っていた先生がいらっしゃってるんです」







運転手さんの話で、俺は不安が一気に晴れた。
どうやら、その先生とピアノの部屋に居るらしい。



俺は足を動かし、の居るピアノの部屋に向かう。










『ピアノの、先生?』


『はい。今はピアノの講師を辞めて、プロのピアニストとして活躍されてるらしく。
丁度大阪でクラシックコンサートがあるから、お嬢様にお逢いにいらっしゃってるんです』


『あ、なる・・・ほど』


『お嬢様も先生もピアノのお部屋にいらっしゃいますから、どうぞ』





運転手さんにそう言われ、俺はピアノの部屋の前に来た。

中からは何や、楽しそうなピアノの音が聞こえてきた。
多分ノックしても、気ぃつかん。

俺はドアノブを握り、ゆっくりと捻りそっと扉を開ける。





覗くと、2台のピアノに・・・一台は、もちろんが弾いて
もう一台に座って、ピアノを弾く・・・・・・男。




しかも、何やたまに目線合わせて笑顔になる2人。




ちょっと、その光景見た俺は気分がよくない。
せやはっきり言うてヤキモチやで。




演奏が止むと、2人は少し呼吸を整えてまた笑い合う。





何や、腹立つわ。
胸ん中モヤモヤして、もう「あー!!」とか叫びたい勢いや。







「あれ?・・・ちゃん、お客さん?」


「え?・・・あぁ、蔵。来てたの?」




すると、男の方が俺の存在に気づいたのかに話しかける。
男の声には、扉の所に居る俺に目線を移すと、何事もなかったかの
そういつものような半ば無表情で俺を見た。


ていうか、「来てたの?」って言葉・・・めっちゃ傷つくんやけど。




「じゃあ、ちゃん・・・俺もう行くね。打ち合わせとかあるし」


「あ、はい。いつでもいらしてください」


「うん、じゃあ元気でね」


「はい、ありがとうございました。わざわざ」




男の方がピアノの椅子から立ち上がって、に挨拶をして
部屋を去ろうとする。はも同じように椅子から立ち上がり
男の後ろを歩く。


男が俺の横を会釈して横切る。
その後ろに、・・・俺のほうをチラッと見た。





「ゴメン、此処で待ってて。先生見送りに行くから」



「え?・・・お、おう」




そう言っては俺に言うて、男の所に向かう。
肩を並べて、男と話すを見て更に俺は気分がよくない。



笑いながら、楽しそうに・・・話すんやから。



他の男と、話してる彼女見て気分えぇ彼氏なんておらんで。
むしろ腹立つっちゅうねん!

玄関先ではまだ、があのピアノの先生(20後半くらいの男)と談笑しとる。
俺はため息を零しピアノの部屋に入り
が今まで座ってたピアノの椅子に座る。

さっきまでが座ってたからまだ温いわ。


ふと、視界に鍵盤が入ってきた。
白いほう押したら「ポーン」って鳴って、何や部屋に虚しく響いた。







「俺、から愛されてんのかなぁ」






ふと、呟いた。


いや、別に不安とちゃう・・・って言うたら嘘になるけど
不安かと聞かれれば、間違いやない。


毎日のように「好きや」とか「大好きや」とか
「愛してんで」とか・・・正直、俺の世界に居るだけで幸せや。


せやけど、俺がこう・・・両手広げて「自分のこと、こんだけ愛してんねん!分かるか?」とか
そんな風に言うても、あの秀才お嬢様のことやから
「そんなんじゃ分からない。もう少し分かるように説明しなさいよ」って言うて
毒舌攻撃かましてくるに違いないねん。



何が苦しいかって。










俺の<愛のカタチ>がちゃんと、に伝わってんのか?っちゅうこっちゃ。









時々、それが不安でたまらん時がある。





別にな、こう巷のカップルみたいにイチャイチャしたいとは言わん!
それ言うたら、むっちゃ恥ずかしがる(いやむしろ構ってくる見てみたい気もする)。

理想はそれや。
せやけど、そんなん俺らほど遠いっちゅうか・・・普通に
側に居れば十分って思てる。


でも、でもや!


・・・俺の言葉や態度に関して、なんちゅうか・・・無関心ってわけやないけど
時々分からんときがある。












「(アカン・・・俺、に好かれてる自信なくなりそうや)」










そう心の中で呟きながら俺は、鍵盤の上に突っ伏した。
そしたら色んな音混じって不協和音を奏でる・・・まるで今の俺とみたいな感じや。
(いや、俺がそう思てるだけかもしれん・・・・・・・・・・・・・・・・・多分)






「ピアノに突っ伏すのやめなさい、音がおかしくなるじゃない」


〜っ」


「何へこんでんのよ、蔵」





すると、見送りから部屋に戻ってきた
俺はその声に、ピアノに突っ伏した顔を彼女のほうへと向ける。

だが、どうやら俺の声からしてへこんでる事が分かったみたいや。





「ほら、起きなさい」


〜・・・構ってぇ〜な」


「わけ分かんない事言ってんじゃないわよ。ほら、ピアノ片付けるんだから退いてってば」


「うー・・・」




の言葉に、俺は顔をあげピアノから身を退かす。
俺の体が退くと、は鍵盤の上にカバーを敷き、閉じた。






〜」


「今度は何?」


「今のヤツ、誰なん?運転手さんからは、ピアノの先生聞いたけど」


「そうよ。昔習ってたピアノの先生。今はプロのピアニスト。大阪にコンサートで来たから
私の家に寄っただけよ」


「さっき、2人で何楽しそうに弾いてたん?」


「モーツァルトの2台ピアノのためのソナタ」


「・・・・・・ほんなら、俺も弾けるようになる」


は?





俺がそういうとは、素っ頓狂な声をあげた。
しかも、目がめっちゃ点になってる。







「く、蔵・・・アンタ、ピアノ弾けるの?」


「弾けん!」


「威張って言うな」


「せやから、練習すんねん!!俺もそれ弾けるようになって・・・と一緒に演奏すんねん!!」








いや、俺がもし・・・ピアノ、弾けるようになったら
の気持ち、きっと分かるはずや・・・絶対に、今以上それ以上に分かると思うねん!!




の真似事みたいなことになるけど、それでもえぇ。
この世界中探しても、俺の愛のカタチをちゃんと見つけ出して・・・・・ありのまま伝えたい。


俺の胸ん中が、透明だったら・・・ホンマはえぇくらいなんやけどな。







「待っときや!」


「はいはい」




と・に・か・く!

俺の愛のカタチ・・・の胸に届けてやりたいねん。
どんな形になっても、えぇ・・・の胸にちゃんと、届けられたら・・・俺、それだけできっと幸せなんやと思う。




(愛のカタチをみつける、旅に出よう。僕の気持ち、キミに触れて欲しい)


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