ーっ」

ちゅわ〜ん」



「ユウジ、小春ちゃん・・・図書室に行ったんじゃなかったの?」




ある日のこと。

私は教室で本を読んで休み時間を過ごしていると
先ほど図書室にネタを探しに行くと言って
出て行ったユウジと小春ちゃんが教室に戻ってきた。





「行ったんやけどー」


「何よ?」


「蔵リンが居ってな」





蔵が図書室に居るぐらいで何故戻ってきたのかしら?と
思いながら、私は目線を本に戻して、普通に対応する。





「だから?」


「アイツ、めっちゃ珍しいところのジャンルの本棚の前に居ったんやで」


「何処?」




珍しいジャンルの本棚?

それを聞いた瞬間、本に向けていた顔を2人に向けた。
いつもなら植物の所にいるはずなのに、何処に居た言うのだろうか?






「何処やと思う?」


「だから、何処よ?」


「ムフフフフ〜・・・音楽や」


「音楽ぅ?蔵が?」





小春ちゃんの言葉に、私は思わず目を見開かせ驚いた。

いや、四天宝寺テニス部のメンバーと私、蔵を知っている人間は
大抵「毒草バカ」で「健康オタク」という定着が染み付いてる。


蔵が図書室に行ったとしても
彼が見るジャンルは大好きな「植物図鑑」。

思ってもみないジャンルの所に彼が居た事に、私もそれだけは驚いた。






「そうやねん!白石のヤツ、音楽の本棚んトコに居ったんや」


「何読んでたの?」


「知らんけど〜何や、蔵リン・・・眉間にしわ寄せながら本読んでたで」






小春ちゃんは悩ましげにそう答えた。

音楽の本棚で、眉間にしわ寄せながらね〜・・・不思議な事があるものだ。


しかし、何で今頃になって音楽の本?
それに・・・どの本を読んでいたのか気になる。


そんなに本の内容に蔵が気に入らなかったのか。

それともまた別に理由があってそういう表情をしていたのか。






気になる。







「ユウジ、本当に覚えてないの本の名前とか?」


「俺は知らん」


「小春ちゃんは?」


「ん〜私も覚えてないわ〜ゴメンなぁちゃん」






一体、何の本を読んでたのかしら蔵のヤツ。

本人に聞いても絶対「何でもないねん」とかはぐらかされるだろう。



植物図鑑から、いきなり音楽の本か。


珍しい事が起こったから、明日は空から雪かもしくは、槍でも降ってくるんじゃないかと
私はバカらしい事を思わず考えてしまったのだった。



だが、珍しい事はそれだけに留まらなかった。





















「あ、謙也」






蔵が図書室で音楽の本を読んでいたのを目撃された数日後。

廊下を歩いていると謙也が声をかけてきた。






「どうしたの?教科書忘れたから貸してとか言うんじゃないでしょうね?」


「ちゃう。・・・お前、白石と何かあったんか?」


「はぁ?」







謙也の口から放たれた言葉に
私は思わず素っ頓狂な声が口から出てきた。








「何言い出すのいきなり?」


「いや、何や昨日白石のヤツ、授業中ボーーッとしとってな。窓の外見て急にニヤニヤしてん」


「うわっ、キモチワルっ」


「ニヤニヤしてた原因は、自分昨日外で体育やったやろ?」


「あー・・・うん、5時間目って・・・アイツ、まさか私のこと見つけてニヤニヤしてたの?」


「ご名答」








謙也の話に私は言葉を失った。

アイツ・・・授業に何してんの?ていうか、本気で彼女やめたくなったわよ。





「まぁその話は置いといてやな」


「(置いとかれたし)はぁ・・・・そのうち鼻血とか出したらマジで警察突き出していいから」


「お、おん。まぁ本題はこっからや」







今までのは本題じゃなく何だったの?と思うくらいだったが
とにかく私は、「本題」と呼ばれる話に耳を傾ける事にした。







「アイツ、何やその時間むっちゃため息ばっかりでな・・・・お前の姿見つけてニヤニヤしたかと思たら
急にため息つき始めて、机に突っ伏したり、でも窓の外のお前見たりの繰り返しやったで」


「それを授業に延々繰り返してて、注意しない担当教師をまずは辞めさせるべきね」


「お前のツッコミどころは其処かいな」


「他に何があるって言うのよ?蔵がそういう行動するのって日常茶飯事じゃないの?」








3年に上がってクラスが離れてしまったから
彼がこのような行動を起こすのは日常茶飯事であるものだと思っている。
(言っておきますけど、一応!彼の事は好きですから!!恥ずかしくて絶対大っぴらに言えないけど)。









「まぁそうかもしれへんけど」


「(やっぱりか)」


「あの落ち込みようとかは、お前とケンカしたときとかしかせぇへんような感じやねん。
せやから、お前に聞いてんねん。白石とケンカでもしたんか?」








謙也の問いに、私は軽くため息を零した。








「今現在清々しく過ごさせていただいてます」


「やっぱりケンカしたんかお前ら」


「違うわよ!ケンカなんかしてない、日本語ちゃんと理解しなさいよ」


「お前が清々しく過ごすとか、白石とケンカしたときにしか言わんような言葉やから。紛らわしいねん」


「うっさいわね。答えてやったんだからありがたいと思いなさい」





「上目線かいな」とか謙也は渋そうな顔をして私に言った。
当たり前よ。私の貴重な時間割いて答えたんだから、ありがたく思え。





「はいはい。ほんならケンカしてへんねんな」


「当たり前よ!むしろどうして蔵がそういう態度なのかこっちが聞きたいわ」


「知らん。まぁえぇわ・・・ほなな」





そう言って、謙也が去って行った。


アイツ、何?私と蔵がケンカしたかどうかを知りたかっただけ?
むしろケンカしてたら何?冷やかすつもりだったの(主に蔵を)?

いや、冷やかすなら別に、私に危害さえなければいいんだけど。









「・・・・しまった。私、一方的に喋って聞きそびれた」






ふと、思い出す。

謙也に声をかけられたから、丁度聞きたい事があったんだと
思っていたのだが、逆に謙也が私に質問?があって一方的に喋ってしまい
挙句、謙也に逃げられた。







「蔵・・・ホント、最近不審行動起こしすぎ」






数日前は、図書室でのジャンル替えでもしたのかと思うくらいの読書。


昨日は、ため息と綻ぶ表情の連続。


そして、私が気になっていたこと。






最近、蔵からのメールや電話がぷっつりとなくなった。

俗に言う音信不通である。
まぁ、学校には来てるみたいだし・・・部活にも出なきゃ行けない立場の人間だし。


ただ、私の携帯が・・・何も言わなくなったのが気がかりで仕方なかった。



確かに、ケンカはしていない。それだけははっきり言える。



でも、ケンカもしていないのに・・・どうして音信不通なのだろうと悩んでいる。
別に気に病む事じゃないとは思っているのだけど







何か・・・・・・・・・寂しい。





今まで、学校でも会って、家でもメールとか電話とかしてくれる。


下手したらウチに上がり込んだりだって。




でも、突然なくなったりすると―――――。









「(寂しく感じるものなんだなぁ〜)」







身に染みて、実感。


当たり前の生活に訪れた、わずかな空白。


居るはずの彼が、側に居ない。




時々「私冷たいかな?」とか思うけど、正直なところどう接して良いのか分からなかったりする。



分からないから、思わず人を突き放したような言い方になってしまう。
大分昔の性格から変わり始めてるのかもしれないけれど
何となく、そう思ってしまうときがある。









「(蔵、優しいからなぁ・・・あんまり言わないし)」









蔵の性格を分かっているから、余計不安。



彼は優しい・・・でも、関西人・・・嫌と思えばはっきり言う。
だけど、彼は決して好きになった相手を傷つけたりはしない。

冷たい言葉で突き放したりしない。

でも、私はどうしていいのか分からないから突き放してしまう。
蔵の事は好きだけど・・・上手く、それを表現できない自分が時々腹立たしい。







「あんまり悩むと落ち込むからやめよ。蔵とケンカしたわけでもないし・・・そのうち猫みたいに
自分からやってくるだろうし・・・・って、人頼りにしてる・・・ダメじゃん」






思わず自分にツッコミ。


蔵がそのうちやってくるだろう・・・なんて考えてたらダメだ。
私からも行動を起こすべき!という気持ちに何とか切り替えて
「今度蔵と話す機会があったら洗いざらい聞いてやる」とか自分に向けて強く言い続けるのだった。





(不審行動多すぎる彼。一体何があったと言うのだろうか?)


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