「おー、!こっちや、こっち!」

「あ、謙也。悪い、ちょっと迷った」

「えぇて」



3月17日。

本日、かなりいつもとは不自然な光景になっていた。


忍足謙也の横に、何故か白石蔵ノ介の彼女である
が其処に居たのだった。

を見つけると、謙也は手招きをして彼女を呼ぶ。
呼ばれたはすぐさま謙也の元へと走っていく。




「うわ、フリルのミニスカや。足、ほっそいなぁ〜自分」

「その言い方、侑士そっくりだぞお前」

「やめーや。あの足フェチと一緒にせんといてくれ。それよりも、お前と2人っきりとか
マジで有り得へんわ」

「つーか私はともかく、よく蔵許したね。今日の事」

「おう、何とか説得した。まぁ歩きながら話そうや」




謙也がそう言うと、も謙也の後ろを付いて歩く。




「んで、あのアホをどうやって説得したの?・・・アイツの事だから絶対行かせるはずないって思ってたんだけど」

「怖かったでぇ〜。ホンマ、鬼見てるみたいやったわ」



2人は歩きながら、此処までのことを話始めた。




遡る事、3日前。
謙也は白石にある頼み事をしていた。







「なぁ」

「何や?」

「17日、貸してくれへん?」

は?



謙也の突然の言葉に、白石は目を見開かせ
素っ頓狂な声を上げた。




「えぇ男の顔が台無しやぞ、お前」

「謙也。俺の聞き違いか?・・・最近耳遠くてなぁ」

さんを17日貸せぇ言うてるんですわ」

「アカン。ちゅうか、敬語とタメ語がごちゃ混ぜやぞお前」





謙也が一文字一文字丁寧に言い直すと、白石はすぐさまそれを返した。
「思もた通りの答えや」と謙也は心の中で思いながらも、白石に言う。





「えぇやろ別に。減るもんとちゃうんやし」

「減るわアホォ。アカンぞ」

「せやけど、はえぇ言うたぞ」

はぁあ!?




彼の言葉に、白石は机を叩きながら立ち上がり
謙也に噛み付く。



「アホ抜かせ!嘘やろお前!!」

「ホンマやって。本人に17日、ちょぉ付き合え言うたら”いいよ”っていつもの無表情で返って来たわ。
何やったら、本人に聞いてみ。ちゅーわけやから、17日借りるで」

















「半ば無理矢理だな、謙也」

「あぁでもせな、白石聞かんやろ。無理にでも押さな、こっちがアイツに丸め込まれるわ」

「確かに。まぁアンタが無理に押し込んだおかげでとばっちりが来たんだけどね」





はそう言いながら目線を明後日の方向に飛ばしていた。
謙也はあえて何も聞かないようにした。白石が彼女に対して何をしたのかを分かってしまったからだ。






「ほな、何処行こか?」

「私に聞かないでよ。付き合え言ったの謙也でしょ?」

「堅い事気にすんなって。それに自分、あんま大阪の町知らんやろ・・・案内するで」

「じゃ、じゃあ・・・適当に」

「ほな、適当にブラブラしよか。俺歩くの早いから、手ぇ繋ぐぞ」

「え?・・・あ、あぁ」


そう言って謙也はの手を握り、大阪の町を歩くのだった。















のアホ・・・謙也に押されてどないすんねん」
「うわっ、謙也・・・アイツ、と手ぇ繋ぎよったぞ」
「ホンマ、謙ちゃん大胆やね。まぁ歩くの早いからしゃーないかな?」
「なーなんで隠れるん?謙也とねーちゃんおんねんから行こうや」



とある物陰?
二人の動きが気になるのか、やはり白石は当然の行動に出た。
しかも、それを面白がるように
小春やユウジ、そして何故か金太郎まで付いてきた。



「金太郎さん。これはな〜尾行やねん」

「ビコウ?後付けることなん?」

「白石がと謙也がめっちゃ気になってしゃーないから後付けてるんや」

「何でなん?別にえぇやん、ねーちゃんと謙也が一緒に居っても」




金太郎の言葉に、白石の肩がビクッと動き
まるで浮遊霊のようにユラリと振り返る。




「き、金ちゃっ!?」
「アカン、もう遅いわ」

「は?何がなん?」

「そうか・・・金ちゃん、俺の毒手で今すぐ死にたいんか」





そう言いながら、白石はゆっくりと左腕の包帯を解きにかかる。




「え!?・・・ちょっ、イヤや!!まだ死にとぉない!!何で!?ワイ、何か言うた!?」


「思いっきり言っとるわこの小猿が!!!」


ぎゃぁぁああああああ!!!!


「金ちゃん・・・次なんか言うてみぃ?この舌引っこ抜くど」


いややぁああ!!



白石、笑顔で金太郎に鉄拳制裁?を加える。
それを見て、小春とユウジはため息を零し・・・再び謙也との動きを
笑いながら、後を付けるのだった。



















「でも、大阪も東京と変わらないね」

「そうか?まぁ大阪は天下の台所言われてたくらいやし・・・今でも東京には負けてへんぞ。
東京タワーなんて、通天閣の足元にも及ばんわ!」

「そうだね。・・・フフフフ」


出歯亀隊を他所に
謙也とは大阪の町を話しながらふらつく。

謙也の話に、は微笑を浮かべる。
その表情を見て、謙也は彼女の顔を見つめた。





「何?」

「いや・・・何や、そういう風に笑うんやなぁ〜・・・思もて。自分の笑うトコあんま見たことないから」

「あぁ。前よりかは笑うようになったよ・・・前はほとんど感情殺してた感じだったし。
こっちに来て、笑うようになったね」

「関西パワーっちゅうわけか?」

「かも」

「お笑いやったら日本一や!毒舌娘も笑かすほど、凄いパワー持ってんねんで」

「流石にたまーにだけど呆れるときあるけどね」







そう言いながら、再びは笑う。
謙也は表向き、そうは言ってみたが実際のところ
彼女が笑うようにしたのは何を隠そう、の彼氏である白石本人。

四天宝寺に来たときよりも、表情は今は随分と穏やかになり
毒舌のパワーは増しているが、喜怒哀楽がはっきりと目に見えるようになっていた。

彼女を此処まで変えたのは白石。
謙也はただ、彼女の愚痴を聞いたり相談に乗ってあげたりと
ちっぽけな事しかしていない。
そう、手助け程度の事しか謙也はしていない・・・だから、彼自身余計―――。





「ホンマ、白石が羨ましいで」

「ん?何か言った」

「何でもないわ。お、あっちにオモロイもんあるで行こうや」

「う、うん」





ボソッと呟いた言葉に、は反応するも
謙也は言葉を濁して、すぐさま話題を別の方向に逸らし
の手を握り、そちらへと早足で向かう。





「(誕生日くらい・・・・・・大目に見れや、アホ白石)」





の手を握りながら、謙也はそう心の中で呟くのだった。








「・・・・・・なぁ」

「どうしたの?」



人ごみの中を歩いていると
突然、謙也がに声を掛けた。




「俺ら・・・何か、付けられてないか?」

「え?・・・あーー何か、たまーに痛い視線感じる時がある」

「せやろ?・・・視線がえろぉ突き刺さってきてな、俺・・・後頭部が痛いねん」



ふと、謙也が歩きながら後ろを振り返ると―――。



「!?」





数十メートル離れたところから、自分達を付けている
白石、小春、ユウジ、金太郎の姿をバッチリ見つけてしまった。

謙也は思わず顔を正面に戻す。





「どうしたの、謙也?」

「いや・・・俺、見たらアカンようなものを見てしまった気になったわ」

「へ?後ろになんかあるの?」



謙也の言葉が気になったのか
が首を後ろに向けようとした。



「見たらアカンぞ」

「え?」



すると、その動きを謙也が一言で止めた。



「何で?」

「見たら、多分・・・・・自分、ガッカリするで」

「は?」

「ったく・・・ホンマ、諦めの悪いヤツやで。此処までするかフツー」

「謙也?何言ってるの?」




謙也の言葉が理解できないのかは困惑し始める。




「諦めの悪いヤツは嫌われるでって言ってやりたい気分やわ」

「誰に?」

「まぁ誰にでも。ホンマ、人の大事な一日無駄にされてたまるかっちゅーねん。ちゅうわけやから、

「へ?ちょっ!?」



途端、謙也はを抱きかかえた――俗に言うお姫様抱っこである。
あまりに突然すぎる事では顔を赤らめるし
周りの人たちは2人に注目する。





「ちょっ、け、謙也!?何す」

「えぇから黙っとき。恥ずかしいんやったら目ぇ塞いどけ・・・一気に抜けるで」

「は?何、えっ?」

「浪速のスピードスター舐めんなや、アホ共!」




瞬間、謙也はを抱きかかえたまま
凄まじい速さでその場を駆け抜ける。
休日で、パワーアンクルを付けていないため
スピードは通常の倍で駆け抜けることが出来る。






「(それにしても・・・コイツ、軽っ。女って・・・こないに軽いもんなんか?それに、何や・・・えぇ匂いするわ)」





ふと、を抱きかかえて走る謙也は
彼女の体重や、体から香ってくる匂いに思わず心臓が鼓動していた。

初めて触れるその体に「今日くらいえぇ気分させてくれ」と願うのだった。









「うわっ!?めっちゃ早っ!!」
「ちょっ、謙也。スピード出しよったぞ!」
「チッ、気づかれたか。追いかけるで」
「蔵リン無理やって。どんなにやっても謙ちゃんのスピードに追いつくんはうち等には無理や」


謙也がスピードを出し、その場を駆け抜けていく。
白石が追いかけようと声を掛けるも
謙也のスピードについていけるものは其処には居らず
2人は何処かへと行ってしまった。






「あっ・・・・・・あぁあ。完璧に見失ったやんか。あのスピードバカ、俺の返せっちゅうねん」

「蔵リン、今日だけ大目に見てやりまひょ。謙ちゃん、誕生日なんやねんから」

「・・・・・・」




小春の言葉に、白石は黙り込んだ。




「せやで、白石。謙也、誕生日なんやから・・・一日そこそこで、の気が変わるわけないやろう。お前、心配しすぎやって」

「せやけど・・・・・・」

「まぁ、今日は蔵リンの毒草話に付き合ってあげまひょ。な、ユウくん、金太郎さん」

「おう!ワイ、今日は聞くで」

「たまにはちゃんと聞いといたるわ、お前の毒草話」



金太郎とユウジの言葉に、白石はため息を零し
「今日のところは」と心の中で呟き、3人を連れて何処かへと去っていった。























「さすが、浪速のスピードスター・・・速さだけは折り紙付だね」

「何や目ぇ開けてたんか」




人ごみを抜け、何とか白石たちを巻いた謙也は
適当な場所でを降ろした。

海風が体に辺り、謙也は走った体を冷やすには充分な温度だった。




「途中から。蔵と二人乗りして、アイツがすっごい漕ぐよりも速かった」

「俺のスピードは、チャリも抜けるで。あんなん遅すぎて、すぐ追い抜けるわ」

「さすがだね〜」





は笑いながら謙也に言う。

風が彼女の髪をなびかせ、日の光が髪の艶を際立たせていた。
それを見た謙也はまた心臓が鼓動する。
しかも、先ほどよりも少し速いスピードで。

風で髪がなびき、は右手で髪の毛を防いだ。




「あ、そのブレス」

「え?」



途端、謙也がの腕に付けているブレスレットに目がいく。





「それ、白石からホワイトデーに貰ろたヤツやろ?」

「え?何で知ってるの?」

「アイツがめっちゃニヤニヤしながら、それ見てたわ。キモかったでぇ、あの時のアイツの顔」

「写メってくれればよかったのに」





白石の話題をすると、の表情が明るくなった。

その表情を見て、謙也は少し胸が軋む。
「アホや俺」と自分に言うけれど、時既に遅し。
やはり、自分だと思うように上手くいかない。謙也は歯がゆい気持ちでもあった。





「あ、そうだ。・・・コレ、忘れる前に渡しておくね」

「おん?何なん?」






すると、は思い出したかのように
バックの中から、何かを取り出した。

バック自体は小さいのに、出てきた物はバックよりも大きい袋。
相変わらず彼女の手にかかれば、どんなバックでさえも
四次元ポケットと化してしまう。






「はい、誕生日プレゼント」

「え?・・・お、俺に?」

「アンタ以外誰がいるのよ」

「何で、今日誕生日って・・・・・・」





あまりに突然の事で、謙也は焦る。
今日が誕生日という事を明かさずに、をデートに誘い
何もプレゼントが貰えなくても、彼女さえ側にいてくれれば
それが謙也自身にとってのプレゼントだとばかり思っていたのだ。





「小春ちゃんから聞いたの。謙也と17日出掛けるんだって話したら『17日は謙ちゃんの誕生日やでー』って教えてもらったの」

「あ、なる・・・ほど。開けてもえぇか?」

「どうぞ」





この時謙也は心の中で「小春、でかした!」とガッツポーズをした。
そして彼はから貰った袋を開ける。





「うお!ベルトや!!しかも、赤とか・・・めっちゃかっこえぇ」





袋の中に入っていたのは深い赤色をしたベルト。
それを手に取るなり、謙也は子供のようにはしゃぐ。






「あんまり男の子にプレゼントとかした事ないし、謙也何が良いかなぁ?って小春ちゃんに聞いたら
『今新しいベルトが欲しい言うてたよ。彼赤色と白が好きやからえぇんとちゃう?』って」

「マジで?・・・うわぁ、ありがとう。ちゅうか、コレ・・・ブランド物?」

「え?・・・結構有名なメーカーだったような?私自分で直接見たわけじゃないけど、家のお手伝いさんで
こういうデザインとかのを集めてる人が居てね、その人から本借りて頼んでもらった」

「選んだのは、自分ってことか?」

「当たり前でしょ?でも男の子の趣味も分からないから、その人に聞きながら一緒に考えてもらったの。
大事に使いなさい。粗末に扱ったら呪い殺してあげる」

「笑顔で言うなや、怖いわ。・・・・・・・・・でも、ありがとう」

「どーいたしまして」






謙也が照れた感じでそう言うと、は優しく微笑んだ。
その姿に彼の心臓は再び鼓動し、貰ったベルトを再び袋に入れ
に近づく。







「ん?どうしたの」

「今日だけ」

「え?」

「・・・今日だけ、堪忍してくれ。白石にも内緒やぞ」

「は?」








そう言って謙也は自分の唇と、彼女の唇を軽く重ねた。

触れてすぐに離れると、は目を見開かせ謙也を見ていた。
一方の謙也は、頬を少し赤らめから視線を逸らす。







「え?・・・・・え??」

「マジで言うなや。ホンマ、今日だけ・・・・・・えぇ気分で居らせてくれ」

「・・・・・・ぅ、ぅん」





「今日一日だけ」と謙也は心の中で願った。

自分が生まれた特別な日を・・・・・・心密かに思う、好きな人と共に。




「謙也」

「な、何や?」

「誕生日・・・おめでとう」

「・・・・・・お、おおきに」




は未だにキスの余韻を引きずるように
ぎこちなく彼に「誕生日おめでとう」と言葉を投げる。
また謙也も、同じように答えたのだった。














−次の日−





「けーんーや」

「何や、白石・・・顔怖いで」


次の日、白石はすぐさま謙也を見つけ
素敵過ぎる(?)美形顔が台無しな怖い表情で
謙也に詰め寄る。

理由は分かっている、どうせ昨日の事だろうと
謙也は心の中で思っていた。






「昨日、俺のに何もしてへんやろうな」

「アホォ。するわけないやろあんな毒舌ツンデレ娘。相変わらずの毒舌で切り捨てられてたわ」





「我ながら天晴れな嘘や」と謙也は心の中で思っていた。
本当は、キスしたぞーと大声で言ってやりたいが
流石に白石の手前・・・言ってしまった日には、血祭り決定である。





「ホンマやな?」

「おぉ、ホンマのホンマや。なーんにもなかったで」

「うん、分かったわ」





謙也が手をヒラヒラさせて言うと
白石は少し疑ったが、すぐさま疑いを払い去った。





「あ、や。おーい!」
「小春とユウジもおるやん」



「あ、蔵」
「あら〜おはようさん。蔵リン、謙ちゃん」
「はよさん」




すると、2人は前に見慣れた姿を見つけ
白石はすぐさま愛しき彼女の名前を呼び
謙也はの側に居る2人の名前を呼ぶ。

瞬間、謙也とは目が合う。



「っ!!」


途端、の顔が真っ赤になる。


「え、?」
「な、何や?」
ちゃん?」
「どないした、?」




正面に居た白石と謙也ばかりではなく
彼女の両脇に居た小春とユウジも驚いた。





「あ・・・ああ・・・わ、私・・・・・・先に行くね!!じゃ、じゃあ!!」

「え?ちゃん?!」
「ちょっ、どないした!?」





小春とユウジの声を振り切り、は顔を真っ赤にさせながら
そのまま自分の教室へ直行していった。

の姿を見送った小春とユウジは、白石と謙也の方を見て
主に、謙也のほうを見て二人は妖しい笑みを浮かべていた。




「(アイツ・・・・・・分かりやすいわ!)」




が顔を赤らめてそそくさと退散していったのをみて
謙也は「昨日の事を多分思い出したんやアイツ」と思っていた。








「けーんちゃん」

「ん?・・・
げっ!?





すると、隣に居た白石がそれはもう末恐ろしい笑みを浮かべていた。








「昨日、何もなかったんやろ?」

「な、無いで」

「じゃあ、今さっきのは何や?」

「さ、さぁ。ね、熱でもあるんのとちゃうん?」

「ちょっと後で俺とゆっくり話そうか。それとも今がえぇか?んん?」

「(結局血祭りオチかいな!)」






その後、謙也が見事白石の手によって
血祭りに上げられたのは言うまでもない。






一日限定!流星恋人になりました
(でも、その後・・・聖書様の血祭りが待ってます)

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