「はぁ〜・・・ホンマ何やねん。俺に部誌押し付けて、小春とユウジの奴何処行きよった」
14日。
さっさと帰りたかったが
何やら部誌当番の小春とユウジが
「ネタ考えなアカンねん。でもすぐ戻ってくるわ」とか
言って、それ以降連絡なし。
俺は二人の変わりに、部誌を付ける事にした。
こうなったらあいつ等戻ってきたら
シメたろ・・・とか思っていた。
誕生日やから、家帰ったら
お母ちゃんや姉ちゃんに友香里が
「ご馳走作って待ってるわ」とか朝、出際にそう言われ
俺はそれを糧に、本日一日頑張ってました。
の顔も見んと。
ペンが止まる。
「あー・・・最悪な誕生日や」
ホンマなら、から恥じらいながら「誕生日、おめでとう」とか
言われるのを待ってたのに、5日前・・・アイツとケンカした。
いや、俺の態度が悪かったんや。
が怒って当然やった・・・せやから、神さんが怒って
「お前はから祝いの言葉、貰う資格ないわボケ!!」
ってバチ当たったんや。
今日も、は俺と顔すら合わせてくれんかった。
完璧に怒ってるし、祝ってくれる気分でもないんやろ。
明日ちゃんと謝ろ・・・と俺はそう心の中でそう思いながら
あと少しで終わる部誌と格闘を始める。
ガチャッ!
「ようやっと来たな。小春!ユウジ!・・・お前ら俺に部誌押し付けて」
部室の扉が開いたと同時に
俺は椅子から立ち上がり、扉のほうを見る。
が、やってきたのは小春でもなければユウジでもなかった。
此処にやってきたのは。
「」
「・・・・・・」
やった。
無言のままは部室の扉を締めた。
一方の俺は驚きのあまり、立ち尽くして彼女を見る。
アカン・・・言葉出てけぇへん。
「小春ちゃんとユウジなら帰ったわよ」
「え?・・・あいつ等、部誌書くのサボりよったな。明日シメたる」
「あ、あのさ」
「な、なんや?」
ヤバイ、俺今めっちゃ緊張してる。
ちゅうかも何や緊張しとるように見えるわ。
手も後ろに隠して・・・。
「・・・・・・コ、コレ・・・・・・」
「え?」
すると、後ろに隠してあったの手が俺の前に出てくる。
その手に持たれていたのは・・・綺麗に包装された紙袋。
え?もしかして・・・コレって・・・・・・。
「蔵、今日誕生日でしょ。・・・・・・誕生日プレゼント」
誕生日、プレゼントやった。
でも、あれだけ5日前ケンカして(いや俺が一方的にを怒らせたんやけど)
それまで喋ることもしてくれんかったのに
驚きのあまり、俺は目を見開かせる。
「お、俺に?」
「アンタ以外誰が居るのよ。ホラ、早く受け取りなさいよ」
「あ、は・・はい」
あれ?俺、誕生日なのになんでこないな風に
命令的な感じで言われなアカンの?
まぁ、えぇわ。
の手から俺はそれを受け取った。
プレゼントを自分の手に持った瞬間、何やら凄い重みを感じた。
そうや・・・この重み、持ったことあるで。
俺はすぐさま紙袋の中を開ける。
「・・・・・おい、コレ・・・・・」
「大切にしなさいよ。汚したら承知しないんだから」
紙袋の中に入ってたのは、のプチ図書館にあり
俺が欲しいと言って、5日前のケンカの原因を作った・・・植物図鑑。
そうめっちゃレアモンで、のプチ図書館にしかない代物や。
は貴重やからやれんっちゅうので、俺に言っとったはずなのに。
「何で?コレ、・・・手離したくないって、言うてたやんか。そんなもの、俺貰えんわ」
「いいから貰いなさいよ。もう、コレしかなかったんだから」
「え?」
「アンタ、全身サイズの鏡が欲しいって・・・メンバーから聞いたんだけど。誕生日ぎりぎりに
それ知っちゃったから・・・其処から取り寄せても、最悪今日アンタの家に届くか分かんなかったし
届けてる最中に割れたら嫌でしょ。在庫もないとかそういうのもあるし・・・だから・・・だから」
「」
「貴重なんだから、大切にしなさいよ。貸すんじゃないの、本気であげるって言ってんだから」
そうぶっきらぼうには言い放ち俺に背を向けた。
俺はプレゼントされた植物図鑑を見る。
ふと、本に少し滲みが出来てた。
本を大切にしてるがこんなミス見落とすはずない。
汚れ・・・ってわけないな。
この前、コレ手にしたときこんな滲みなかったし。
もしかして・・・コレ・・・・・・。
「ゴメンな、」
「謝らないで。謝られる筋合い、ない。むしろ謝るのは私のほうよ」
「ちゃう。俺が謝らなアカンねん。俺のワガママで・・・、泣かしてもうて」
この滲み・・・多分、が泣いた跡や。
多分、めっちゃ悩んだんやろうな・・・コレ手離すの。
あのプチ図書館の本・・・は全部好き言うてたくらいやし
一冊一冊、大切にしてる・・・傷入ってるヤツとかは綺麗に透明のビニールで
傷入らんよう工夫してあるのもあった。
この本かて・・・、見つけるの大変やったって言うてた。
俺は手に入らんからすぐに諦めたんやけど
は、コレ手に入れるまで2年っちゅう長い月日かけて手に入れたんや。
それを経った5日で手離す言うんは・・・相当の覚悟が必要やったに違いない。
俺のワガママと言葉1つで・・・の苦労、踏みにじったんやから。
「ホンマ・・・ゴメン。ゴメンな、」
「うっ、うるさい!アンタ、自分の誕生日なんだから・・・何、謝ってんのよ、バカじゃない!」
「バカ言われてもえぇ。ホンマゴメン・・・ゴメンな、」
「・・・・・・っ」
俺は貰った本を机の上に置き、彼女を後ろから抱きしめた。
横から見たの顔は、めっちゃ泣いてる顔。
「大切にするわ。が見つけてくれた年月、無駄にせんようにする」
「あ、当たり前よ!傷一つ付けてみなさい!そのときは無条件で返してもらうんだから!!」
「分かってる。ホンマゴメン・・・ありがとう」
「・・・ど、どういたしまして・・・それと、怒ったりしてゴメン」
「えぇて」
は少し泣き止みながら、俺にそう言うてくれた。
「あ・・・コレ」
「ん?何や?」
するとが声をあげる。
俺はから離れると、彼女はこちらに向く。
手には可愛らしい・・・箱。
「お父さんとお母さんから」
「んトコの親父さんとおふくろさんから?」
「ケーキ。今日、蔵の誕生日って言ったら・・・急いで取り寄せてくれた。苺のタルトとか色々入ってる。
帰って、家族みんなで食べてだって」
俺はその箱を貰い、机に置いて開けた。
うわっ、ホンマや。
苺のタルトに限らず、ショートケーキとかロールケーキとか
めっちゃ美味そうなもんばっかり入ってた。
しかも・・・此処のケーキ、高いけどめっちゃ美味いっていう店のケーキや。
(何や姉ちゃんがテレビ観ながらそないなこと言うてた気がする)。
家の方々は此処御用達か?と思ってしもた。
「なぁ、今食べたい」
「え?」
「部活終わりで腹減ってんねん。今食べてもえぇ?」
「いいけど。フォーク入ってるでしょ?」
「おぉ、あったわ。も食べよ」
「え?・・・いいよ私は。蔵の誕生日だもん・・・アンタが全部食べても良いようにしてもあるし」
「俺一人で食うても何や寂しいわ。な、食べよ」
俺がそう言うとはため息を零して
「じゃ、じゃあ」と言うて、椅子に座る。
俺は部誌を退かして、の隣に座り箱を広げる。
こらぁ姉ちゃん達目ぇキラキラさせながら選ぶな。
その前に俺が全部食うたろ・・・なんて思た。
「ほな、俺コレ食うわ」
「お。お兄さん、お目が高いね・・・さすが健康主体を考えてるだけありますな」
「え?そうなん?普通のロールケーキやろ?」
俺が取り出したロールケーキには
無表情ではあるが感嘆の声をあげていた。
「それ、セロリを使ったロールケーキ。私もこの前食べたけど美味しかったよ」
「へぇ〜そうなん。凄いなぁ」
「東京に野菜をメインにしたケーキ屋さんがあるの。そこから取り寄せた。
まぁ色々入ってるから、じっくり味わってね」
「おう!・・・何や、は苺のタルトか?」
「私はコレが好きなの・・・悪い?」
「いいや。次のデートの参考・・・は苺のタルトが好きなんやな。覚えとくわ」
「ワンホールなら苺ぎっしり詰め込んだのよろしく」
「豪勢に言うたな自分」
「好きだもん」
そう言っては透明のフォークを指して、苺を食べる。
俺はそっと彼女の頬に触れ、ゆっくりと近づき――――。
唇を重ねた。
甘酸っぱい、苺の味がするな。
数秒で唇から離れると・・・は頬を少し赤く染め。
「蔵」
「ん?」
「お誕生日、おめでとう」
「・・・おおきに・・・」
そう言うと、今度は彼女からキスのプレゼント。
あまりに突然のことで俺は数秒固まったけど
何や、本とかケーキよりもこっちのほうが嬉しいわ。
とか思ってしまった。
(この日、生まれてきてくれてありがとう)
−オマケ−
「ん?何やこの写真」
「あぁ、メンバーでカウントダウンしながら撮ったの」
「あ。どーりで部活前、1日1日あいつ等来るの遅かったんやな」
「そうだよ」
「んで?あるんやろ?デジカメ」
「は?」
「俺の分がないのは寂しい。ちゅうか、これだけ貰っても嬉しくないわ。
俺とのツーショット撮って無事完成なんのとちゃうん?」
「え、と、撮るの?」
「当たり前やん。ホラ、こっちおいで・・・写真撮ろ」
「へ、変なことしたらただじゃおかないから」
「大丈夫やって。ちょぉ〜としてみたいことあるけどな」
「な、何すんのよ」
「やってからのお楽しみ。ホラおいで」
「は、はぃ」
(リボンを結んで、さぁ、君が僕の本当の誕生日プレゼント)