「え!?居らんの?!何で!!」
「保健室に行ったで・・・アイツ腹痛いって言うて、出て行ったで。なぁ小春」
「せや。蔵リン保健室行ってきたら」
「・・・保健室、居らんかったぞ」
『へ!?』
休み時間、3年8組教室前。
先ほどの時間白石はくしゃみをして
「コレはが俺のこと考えてるんや!」という
あほな勘違い?で白石は8組の教室にやって来た。
が、そこで事件発生。
どうやらがサボったと分かってしまったらしい。
「アイツ・・・・サボりよったんか?」
「ちゃん、うま〜く逃げたな」
「白石、お前何や至らん事したんとちゃうんか?」
「アホォ!んなことするか!・・・とにかくに電話や」
「ほな、ウチがしてみるね」
そう言って小春が自分の携帯を出し
の携帯に電話を掛ける。
------------PRRRR・・・ガチャッ!
「あ、ちゃん。小春やけど〜」
『おぉ、小春。どぎゃんしたと』
「あれ?千歳はん?・・・コレ、ちゃんの携帯とちゃうん?」
「ち、千歳っ!?」
「え、何での携帯に千歳が出るん!?」
すると、の携帯には本人が出るはずが
何故か出たのは千歳。
電話を掛けた小春はおろか、白石やユウジも驚く。
『あぁ、のポケットから出したと。疲れて寝とるけんが』
「は?・・・え、ち、千歳はん・・・今、何処に?」
『学校の裏山たい。俺、が寝とるけん動けんとよ・・・すまんがば迎えに来てくれんね?』
「え・・・えぇ」
『あ、それから―――』
しばらく小春と電話元の千歳は会話をして
小春は通話を切断した。
「こ、小春・・・何で、の携帯に千歳が出てんねん」
「蔵リン、えぇ男の顔が台無しでっせ。怖いわ」
素敵過ぎる(?)白石の顔が台無しなほど
黒々しいオーラが彼の背後に漂っていた。
「ん〜・・・何でも、ちゃん疲れて寝てもうて、それで千歳はんがちゃんの携帯出たとか」
「は!?」
「おいおい、小春それホンマなんか?」
「千歳はんがそう言うてたで。学校の裏山に居るから迎えにきてく」
「小春、白石が居らんぞ」
「え?・・・もぅ〜〜人の話は最後まで聞いてや、蔵リン!」
話を最後まで聞くことなく、白石はその場から消えた。
「でも、聞く限り怪しいな・・・、浮気か?」
「ちゃうちゃう。丁度2人で鞠つきして遊んでたんやって・・・ホンマ可愛らしいわぁ〜」
「ならえぇけど。俺ら、行った方がえぇんのとちゃう?千歳危ないで・・・最悪、が白石のあの恐怖面見なアカンぞ」
「アラ!そらぁ大変やわ!!お嬢様だけでも助けにいかなアカンやん!」
「千歳はえぇんかい」
「あー千歳はん、こうも言うてたな」
『それから、頼むから白石だけには内緒にしてもらってよかね?知られたら何かおとろしか(怖い)』
「小春!それ重要っ!!!」
「せやなったなぁ〜」
「ホンマお前、後でどつくぞ!」
「いやぁ〜ん、ユウくん勘弁してぇなぁ〜」
そう言って何とか白石よりも先に学校の裏山に向かうのだった。
「寝るのはよか。・・・ばってん、膝の上で寝られると・・・動きにっかね」
そうとも知らない千歳はの携帯を
彼女の側において頭を掻く。
鞠つきをたくさんして疲れたのか、しばらく2人で眠っていた。
ふと千歳は授業の終了チャイムで目が覚める。
動こうとしたら、膝元にの頭が転がり、彼女が横になって寝ていた。
「無防備が一番危なかとに・・・ほんなこつ、こんお嬢様は」
自身、千歳の事は友達意識なのだが
千歳自身は彼女を好きと意識しているが、如何せん
彼女には彼氏が居る・・・しかも同じ部活仲間で部の長。
彼女関連で白石を怒らせたら確実に血祭りに上げられると、謙也から聞いた事がある。
その関係と恐怖を知っているため、千歳は何とか己を律していた。
「ー・・・起きんね。白石が来っばい」
「・・・・・・」
「起きらんよね、こんだけじゃ」
千歳は何とか起こそうとするも、起きる気配ゼロ。
お日様が気持ちよく降り注ぎ、木の影が程よくその温度を和らげている。
ふと、千歳は彼女の髪に触る。
艶がかった黒の色素が抜けた髪。
少し灰色っぽく、肩まで伸びた髪を優しく撫でる。
手触りがよく、延々撫でていたくなる。
「キレか(綺麗な)髪ばして・・・ほんなこつ、こん子はむぞらしかよりも美しかね。神(か)ん様は罪作りたい」
千歳はの髪を撫でながら、上を見上げる。
太陽の優しい日差しが、木の葉で邪魔して暖かくそして温度ほどよく彼等に降り注ぐ。
千歳はふっと目を閉じ・・・ゆっくりと開ける。
「!!!」
「おはようさん」
「お、おお」
目を開けた途端、千歳固まる。
彼の視線に飛び込んできたのは、極上の恐怖スマイルを浮かべた白石が居た。
「何してん、此処で?」
「えっ!?あ・・・い、いやぁ〜その、な・・・白石」
「小春!白石には言わん約束・・・っ」と千歳は心の中でそう言う。
「俺のに、何したん?」
「な、何もしとらんよ!」
「ほぉーん。ほな、その自分のお膝の上にあるの・・・何や?」
「こ、これな白石」
鞠つきして遊んでた・・・なんて言っても
暴走を始めた白石に果たしてそれが通じるかどうか。
「いつまでの髪に手ぇ置いてるん・・・千歳ぇ」
「へ!?・・・あっ、あぁあ・・・す、すまん」
あまりにも怖すぎる白石に千歳、もう脅えるしかない。
「で・・・理由は?・・・俺のに何したん?」
「何もしとらんって!ホントよ、白石」
「嘘やな!俺のたぶらかすなや!」
「たぶらかしてないって・・・とちょっと遊んで」
「はぁあ!?遊ぶぅ?!・・・お前、シバくぞ」
「ちょっ!?!?」
完璧に暴走モードのスイッチが入った白石を唯一止めれるのは
千歳の膝元で寝ているただ一人。
しかし彼女は今現在夢の世界。
無理に起こしてしまえば、何が起こるか分からない。
だが、目の前の恐怖を千歳は何とか鎮めたい。
「ちょっとと仲えぇから、大目に見てたが・・・もう勘弁ならんわ」
白石は恐怖の笑みを浮かべながら、両手関節を
凄まじい音を鳴らし、千歳を脅す。
「タンマ!・・・白石っ!!落ち着きなっせ!!」
「この状況見て、どう落ち着けっちゅうねんどアホ!!」
「やけん・・・あ〜、何て言えばよかとね・・・ん〜〜」
「言い訳は聞かへん。楽に逝ける様努力したるわ」
「ちょっ!?!?」
殺る気満々の白石に対し、それだけは避けたい千歳。
双方の気持ちは当たり前のように食い違う。
暴走した白石をどう止めたら・・・と千歳は何とか焦る脳内で考えるも
良い答えがなかなか出てこない。
「ツラ貸しぃ」
「し、白石落ち着きなっせ!な!」
「せやな。自分片したら落ち着くと思うで」
「えぇえ!?!?」
「そーいえば、此処・・・・・・アレがよぉ居るって話やな」
「アレ?・・・な、何ね」
千歳の胸倉を掴み、白石は笑みを浮かべる。
だが、背後に漂うのは黒々しいオーラ。
「自分の大好きな・・・・・・・・・・・クモや」
「いかん!!!!そればっかは、頼む!!!ていうか、だっ(誰)から俺がクモば好かんって聞いたとね!!」
「あら〜・・・おかしいなぁ、俺は千歳がクモ好きやぁ〜って聞いたで」
「嘘たいそれ!!!」
自分の大嫌いなクモの名前を出され
千歳は更に慌てる。
ていうか、白石がその情報をどこから手に入れたのか千歳には不思議でならなかった。
「ほな、クモと仲よぉしてもらおうか」
「ちょっ・・・えぇえ!?!?」
すると、白石は千歳の胸倉を掴み
無理に立ち上がらせる。
千歳は「え?!どっからこぎゃん力出っとね!?」と思っていた。
何せ千歳は白石よりも身長が高く
そして重いのに、その力は何処から来るのだ!?と千歳は思った。
ゴチッ!
『え?』
瞬間、何やら鈍い音が聞こえてきた。
言い争っていた(?)白石と千歳が音のほうを見る。
音のほうを見ると、先ほどまで千歳の膝の上で寝ていた
が頭を擦(さす)りながら
顔を伏せて起きていた。
「?」
「起きたとね?」
「・・・・・・っひっく・・・」
『え?』
途端、何やらすすり泣く感じの声が聞こえてきた。
2人の血の気が一気に引く。
「・・・っぅう・・・・・い・・・いったぁ〜い・・・痛いよ〜・・・ひっく、うぅ〜」
「っ!」
瞬間、白石が千歳の胸倉から手を離し
頭を擦りながら泣き出したの元へと凄まじい速さで駆け寄り抱きしめた。
その速さ・・・浪速のスピードスターを誇る、謙也並・・・いやそれを超える速さだった。
「何処、何処ぶつけたん?・・・ん?」
「頭・・・痛いっ」
「頭の何処ぶつけたん?・・・何処や?」
「ここぉ」
「此処か?よしよし、痛かったなぁ・・・もう大丈夫やで。ホラ、痛ない痛ない」
「(何ねこの温度差の違いは)」
先ほどまで阿修羅の如く、千歳に食って掛かっていた白石だが
ひとたびのことになると別人のように優しくなった。
しかも、その場の温度ですら・・・何やらホワホワとしたものに変わる。
「ん〜・・・いたぁ〜い。もう、痛い・・・痛いってばぁ」
「あぁ、堪忍堪忍」
すると、は痛む頭を必要以上に擦られるので
白石の胸をバシバシと叩く。
言っておくが普段の彼女がこんな風ではない。
完璧に半分以上まだ夢の世界なのだ。
普段のとは大違いで甘えたがりになり、白石本人はご満悦。
胸を叩かれようが、自分にこれほどまで甘えてくれると
彼氏としては喜ばしい事はない。
「他に痛いトコないか?」
「ん〜頭だけぇ」
「たんこぶできたのとちゃう?見してみぃ」
「痛〜い・・・やだぁ〜」
「コラ、大人しくしぃ(アカン、鼻血出そうや)」
「千歳は〜ん」
「千歳ぇ〜無事かぁ〜?」
「小春、ユウジ」
すると遅れて小春とユウジが裏山にやってきた。
「おお、無事みたいやな」
「が起きたと言うか」
「あんらぁ〜・・・あれ、ちゃん完璧寝ぼけてるで」
「ウザイぐらいに白石がデレとるな、キモ」
遅れてやってきた二人は、起きたというか寝ぼけているに
デレデレし始めている白石の姿を見て
何とか千歳は一命を取りとめたことを確認できた。
「あー・・・ちっちゃいたんこぶ出来てるな、コレ」
「んぅ〜・・・・・・蔵ぁ?」
「そうやで。、誰やと思ってたん?」
「千歳ぇ?」
瞬間、白石の鬼の顔が千歳のほうに向く。
あまりの恐怖に千歳だけでなく、小春とユウジも視線を逸らした。
「千歳やのぅて、俺や。自分の彼氏さんの白石蔵ノ介クンや」
「知ってるって。んぅー・・・蔵、抱っこぉ」
「抱っこか?はいはい、かしこまりましたお嬢様」
そう言って白石はを軽々と抱き上げた。
寝ぼけて甘えるに白石は表情真面目なのだが
内心は相当喜んでいるのだろうと、千歳たちは思っていた。
「ほな、俺と保健室行こうなー。ちっちゃいたんこぶさんの治療せな」
「んぅ〜・・・眠い」
「寝ててもえぇで、保健室着いたら勝手にするし」
「(何する気やアイツ)」
「(ユウくん、それ触れたらアカンネタやで)」
「(下手に触れたら、血祭りに上げらるっばい)」
「何か言うたか、其処?」
『いいえ、何も』
を抱えたまま、黒々しいオーラを放出させた白石が笑顔で3人を見る。
そして、白石はを抱え
学校へと向かう・・・ふと、千歳の横を通り――――。
「千歳」
「な、何ね白石?」
「逃げんなや」
ドスの利いた声で白石は千歳にそう告げ、を連れ裏山を降りた。
「・・・・・・今すぐにでも逃げたかっだけど」
「逃げてみぃ・・・白石の事や。自分の気ぃ済むまでやるで」
白石が行った後、千歳はそう呟くと
ユウジがすぐさま答えた。
「ホンマ、災難やねぇ千歳はん」
「今からほんなこつ、逃げてもよかね?」
「アカンやろ流石に。分かったやろ白石の恐ろしさ・・・アイツ、俺らの嫌いなもの何でか知ってんねんで」
ユウジの言葉に、千歳は言葉を失う。
確かにどうして彼が自分の嫌いなクモの存在を知っていたのか。
自分の苦手なものを一度たりとも彼の前で
話した事はないのに、どうして白石がそれを知っていたのか不思議でならなかった。
「千歳だけとちゃうぞ」
「へ?」
「ウチらも握られてるんよねぇ、弱味みたいなもん」
「・・・・・・こ、怖かね白石は」
「せやからあんまりの事に関しては俺ら触れんようしてんねんけど」
「ちゃんがおてんば過ぎるちゅうか、自分から無意識に他に近づいていくから・・・こっちがヒヤヒヤすんねん」
「まぁメンバーに危害がないときはえぇねんけどな」と小春は
笑いながら千歳にそう言う。
千歳は頭を掻きながらため息を零す。
「やばってん・・・ば独り占めは、いかんたい」
「へ?」
「千歳はん・・・も、もしや」
「あ?・・・あぁ、何でんなか。気にせんで」
ボソッと呟かれた言葉に、ユウジと小春は驚く。
だが、千歳は何でもないと言って先ほど呟いた言葉を濁した。
すると、ユウジは千歳の腕を叩き―――。
「骨は拾ったるわ」
「は?・・・ユウジ、何ば言いよっとね?」
「千歳はん・・・頑張りや。蔵リンはある意味最強やで・・・聖書(バイブル)の名前はテニスだけやないで」
「小春、字がちゃうぞ。強いやのぅて、恐いのほうや」
「ああ!せやなぁ〜」
ユウジと小春は面白がりながら千歳にそう言う。
そんな2人を見ながら、千歳は苦笑いをする。
「まぁ、これん結末は・・・俺も予測できんね」
はてさて、千歳は四天宝寺最強・・・・・・もとい、最恐の聖書(バイブル)を打ち砕く事ができるのか?
とにかく・・・今はあの恐怖から如何にして
逃げるかを考えるべきだ・・・と千歳は思っていた。
千歳とお嬢様と暴走聖書(バイブル)
(四天宝寺最恐聖書(バイブル)登場で、才気煥発でも予測不能な恋愛バトル勃発・・・・・・か?)