なぁ自分はどっちがえぇ?
雨がえぇ?それとも晴れがえぇ?
俺はもちろん―――。
ピンポーン!
『はい』
「あぁ、白石です」
『白石様。すぐ参ります』
とある日の休日。
俺はと遊ぼうと、どうせ彼女も
暇してるやろと思い彼女の家に足を運んだ。
インターフォンを押すと、いつものように
ん家の運転手さんの声が聞こえ、鍵の開く音がした。
そして、数秒して扉が開く。
「こんにちわ」
「ようこそ。今日はお嬢様とお約束でも?」
「あぁ、いえ。丁度俺暇してて・・・・・・、居りますか?」
「えぇ・・・さぁ、中へどうぞ」
「お邪魔します」
中に案内されて、俺は運転手さんの後ろ歩く。
「、部屋ですか?」
「えぇ。ご案内しましょうか?」
「いや、えぇですわ。自分で行って、驚かしてきます」
「そうですか。では、何かありましたらいつでもお申し付けください」
「失礼します」と一礼され、運転手さんは奥へと引っ込み
俺はの部屋へと向かう。
部屋の前に立ち、ノックをする。
「ー・・・入るで〜」
いつもなら「どうぞ」と言う声が聞こえてくるのだが
返ってこない。俺は気になり、とりあえずドアを開ける。
「〜・・・愛しのダーリン白石蔵ノ介クンが来たで〜・・・・・・っておらんやん」
部屋のドアを開けて、中を覗く。
だが、其処には人っ子一人・・・の姿すらない。
おかしい・・・・・・運転手さんは居ると答えたのに、彼女が居ないのはおかしい。
俺は扉を閉め、屋敷の奥の引っ込んだ運転手さんのところに行く。
「あのぉ〜」
「はい。あ、白石様・・・どうかなさいましたか?」
奥の部屋に向かうと、運転手さんは他のお手伝いさんと何やら話していた。
「、部屋に居らんのですけど」
「え?・・・・・・あぁ、もしかしたら書斎かもしれませんね。ご案内します」
「すんません、お忙しいのに」
「いいえ。お嬢様の大切なお方ですから、お気になさらずに」
運転手さんはサラッと笑顔で言いのけた。
その笑顔は本当に優しい表情。
うわぁ〜俺もこういう老け方したいわぁ・・・とかアホみたいな事を思ってしまった。
それにしても俺はもうこの家の人たちから
【の大切な人】扱いらしい。
嬉しいような、恥ずかしいような・・・俺はそんな気分やった。
「こちらが書斎になります。お部屋にいらっしゃらないときは、大抵此処に篭っておられるかと」
「へぇ」
「では、失礼いたします」
「あ、どうもおおきに」
運転手さんの後ろを付いて歩き、書斎という場所の扉の前。
書斎って言うくらいやから、のお父ちゃんの仕事部屋なんやろうなぁ〜と思いながら
俺はドアノブを握り、開き中を覗く。
「〜・・・・・・って、何や此処」
開けてビックリ。
書斎なんやけど・・・・・・書斎という言葉は似合わへん。
しぃて言うなら・・・・・・図書館。
本棚が部屋いっぱいにあり、その中に本がぎっしり敷き詰められてる。
その本だらけの中に大きな机と椅子が鎮座している。
マンガにでも出てきそうな場所みたいや。
俺は中に入り、ドアを閉めを探す。
「〜・・・、何処や〜?」
声を出して彼女の名前を呼ぶと
部屋の広さで、自分の声が反響してくる。
ホンマ、一個人の家にあるもんとちゃうぞ。
書斎規模通り越して、もう此処プチ図書館や。
学校の図書室よりもめっちゃ多い・・・何処からこないな本集めてくるんや?
俺の知らん植物図鑑とか置いてあるんかなぁ?
と、俺は思わず私情を挟んでしまった。
とにかくこのプチ図書館(書斎)に居る事は間違いない。
何や、人の気配はする・・・・・けど、動いてる気配はしてへん。
俺は本棚の間あいだを首を動かしながらを探した。
すると――。
「・・・おった」
窓側近くの本棚。
ちょこんと座る人影・・・見間違えるはずない、や。
俺はすぐさまの元へ向かう。
「〜・・・って、あらら」
「・・・すぅー・・・すぅー・・・」
寝てるってどないやねん。
人が散々このプチ図書館(書斎)探し回って
お目当ての彼女を見つけた思たら、当の本人熟睡。
俺の苦労、何?と思い
膝を曲げ彼女の顔を見る。
「ー・・・ちゃーん。・・・・・・はぁ〜起きる気配ナシかいな」
声を掛けるも、起きる気配ゼロ。
まぁ分からなくもないな、この状況。
「お天道さん、気持ちえぇからなぁ。お昼寝には絶好といえば絶好やな」
窓から差し込んでくる柔らかい陽差し。
ようやく冬の雪解けが終わり、春がやってきた。
俗に言う「春眠暁を覚えず」ってやつや。
「ホンマ・・・可愛ぇえ顔で寝て」
俺はが起きないように、そっと頬に触れる。
本を開いたまま、首を少し横に傾けて
まるでお人形さんのようにすやすやと眠ってる。
「んぅ」
「お。起きるか?」
俺が頬に触れていると、気づいたのか
がくぐもった声をあげ、少し眉間に皺が寄る。
「んぅう〜」
「あぁ、触るなって意味かいな。ハイハイ」
くぐもった声がなんだか嫌がっているように聞こえた。
俺はすぐさま手を離し、を見る。
ちゅうか、何やのさっきの声・・・・・・可愛ぇえ。
ホンマ、ちっちゃい子供みたいに嫌がる声を出した彼女の姿に
思わず胸がときめく。
普段のもこないに素直に可愛かったら・・・って言うたら、皆惚れてまうから今のままでえぇわ。
「んっ・・・んんぅ〜」
「お、今度こそ起きるか?」
可愛えぇくぐもった声と共に
目を擦りながら、は本棚に預けていた体を少し前に起こした。
そして、眠気眼(ねむけまなこ)で俺を見る。
「・・・・・・」
「おはようさん」
アカン・・・可愛い。
まだ目が夢の世界行ってて、薄っすらとしか開いてない。
しかも、俺が「おはようさん」と声を掛けると
何も言わずただ頷いた。
ヤバイ・・・・・・ホンマ、コレは可愛過ぎる。
「んー・・・」
「まだ眠いか?」
「んー」
起きた?ばかりでは目を擦る。
俺が「眠いか?」と尋ねると、彼女は目を擦りながら頷いた。
「ほな、寝ててもえぇで。自分起きるまで、適当にするし・・・あ、植物図鑑とか此処あるか?」
「うぅ」
俺が問いかけると、は俺の言葉を理解したのか
二言で頷いた。
あぁ、もうマジで可愛い。
今なら連れて帰ってもえぇかな?・・・って此処の家やん!
とまぁノリツッコミは置いといて・・・・・・俺はとりあえず咳払いをする。
「何処にあるん?此処の本、多くてかなわんわ」
「・・・右、曲がって・・・・・・後ろから、6番目の左の・・・・・・ぉく」
首をカクカクしながら、はようやく言葉らしい言葉を発した。
ちゅうか場所覚えてる時点で凄いで・・・このプチ図書館(書斎)・・・本の数は膨大や。
まぁ、それを器用に寝ぼけながら言えるっちゅうのが素晴らしい。
ホンマある種の特技やな・・・多分、大阪のオバちゃんもビックリもんや。
「そうか、ありがとう」
俺はそう言うと彼女は首を横に振った。
起きてるんか、まだ寝ぼけてるんか分からんぞ。
ふと、顔が上がり
眠気眼の彼女と視線が合う。
普段とはまったく違う彼女の表情に俺の心臓は思わず高鳴った。
「・・・く、ら?」
「ぉ、おお。俺やで」
ようやく俺だと認識できたのか、彼女が俺の名前を呼ぶ。
アカン・・・声も可愛い。
もう、今日の・・・全てにおいて完璧(パーフェクト)や。
いつも隙がないちゅうか、無表情やし・・・頭えぇし、毒舌やし、ツンデレやし
俺と2人っきりのときだけしか素直になれへんのに
今日に限って、素直かつ可愛いドコロ満載・・・・・・あぁ、マジで惚れてまうやろ(いや元から惚れてるけど)。
「・・・・・・」
「どないしたん?」
すると、は体を起こし四つんばで俺に歩み寄り――――。
唇が触れた。
だが、触れたのはほんの数秒。
すぐさま離れ、はぜんまいが切れたおもちゃみたいに
今度は床へと倒れ、再び夢の世界へと入っていきよった。
一方の俺はというと
数秒触れあった自分の唇を指で触れ――――。
「お天道さんパワー・・・恐るべしやな」
そう、呟く。
から滅多にキスされた事ない。
しかも頬はたまーにあっても、唇なんて稀にないわ。
お天道さんパワーのおかげで、稀にないことが起こってしまった。
更に言うなら、お天道さんのえぇ匂いと
の髪の毛から匂ってくるシャンプーの匂いが俺の嗅覚をくすぐっていった。
俺は床に倒れたを見る。
相変わらず夢の世界・・・正しい寝息を立てて眠っている。
クソ・・・何や、今日負けっぱなしや。
このままじゃ男が廃るで。
「やられっぱなしはイヤやから・・・・・・仕返し、させてもらうで」
そう言って、俺は眠っている彼女の唇に触れ
熱烈なキスの雨で、夢の世界に居る愛しい彼女を連れ戻すのだった。
触れたとき
やっぱり同じように、春のお天道さんの匂いと
の髪から香るシャンプーの匂いが、俺の嗅覚を刺激して
唇はもちろん・・・・・温かく、柔らかで・・・そして甘やかなものやった。
毎日、晴れ・・・続けばえぇな。
そしたら毎日、自分のこういう姿とか見れるから
俺としては・・・めっちゃ嬉しいんやけどな。
なぁ、自分はどっちがえぇ?
雨が好きか?
それとも
俺と同じで、晴れが好きか?
願わくば、日々陽当り良好!
(あぁお天道さん。毎日、陽当り良好でありますよーに)
(03/22 【私の彼は左利き】提出作品)