「何や、自分・・・まだ残ってたんか?」


「あ、蔵」




本日テニス部オフデー。

俺は新聞部の連載小説の執筆で教室に残ってて
ようやっと家でも仕上げられるところまで進めた。

「帰ろ」と思て、席を立ちカバンを持ち上げ
教室を出ると・・・普段点いていない8組の教室の電気が点いとった。


「小春とユウジがネタでも考えてんねやろ」と思いながら
半分、ちょっと脅かしに行ったろという気持ちで教室に向かうと
其処に居ったのは・・・俺の恋人、やった。


しかも、教室には一人。


俺はカバンを教室の扉の近くに置いて、中に入る。






、帰ったんのとちゃうんか?」

「うん。そのつもりだったんだけど、迎えが少し遅くなるからって連絡があってね。
教室で時間潰してたら、小春ちゃんに生徒会の会計の計算が終わらないから手伝ってくれって言われて」



机を見ると、確かに数字の並んだ書類に電卓。

上には文化部の名前が記載されとった。




「ほぉーん。手伝い賃は?自分、タダ働きっちゅわけないやろ?」

「もちろん。今度小春ちゃんとデート」

「は!?それはアカン!!彼氏の俺としては絶対許さへん」

「嘘よ。私が欲しい本を小春ちゃんが持ってたから、それを譲ってくれる条件。どうしても小春ちゃんが
持ってる本が欲しかったの〜・・・あの書斎に入れておきたい貴重な1冊だったからね」


び、ビックリした。

ホンマに小春とデートとかになったら
俺もそうやけど、ユウジがの事目の敵にするから危険や。




「迎えももう少し時間かかるし・・・暇つぶしにはいいかと思って」

「暇潰して学校会計なんかしてるとか、有り得へんけどな」

「まぁいいじゃない。あ、帰るの・・・じゃあね」

「おーい。其処は引き止めたりせぇへんのかい」

「帰るんだったら勝手に帰ればいいじゃん。私どうせ迎えなんだから二人乗りして帰れないもん」




正論を言われて、俺は何も言えんくなった。


まぁ確かにな・・・、迎えの車が来るんやったら、俺此処に居る意味ないし。
せやけどもうちょっと引っ張って駄々こねてくれたかてえぇやん。


何やちょっと寂しいわ。





「あ、俺・・・明日、数学当たるんやった。課題してもえぇ?」


「は?・・・ま、まぁいいけど」



構ってくれへんのなら、それを待つ!

いやいや、ホンマは一人にしてたら誰が
コイツに声かけてきよるか分からんしな。

此処は彼氏として彼女を守ったらなあかんやんか!


んんーっ、我ながら完璧(パーフェクト)やな。





「おっしゃ。ほな隣座るな・・・の隣、誰?」


「ユウジ。この前席替えして横がユウジで、前が小春ちゃんなの」


「うっざいやろ隣ユウジとか」


「2年のときの蔵が隣のことと考えたら別に」


「酷っ!・・・蔵ノ介クンの繊細すぎる心が傷つくわ」


「勝手に傷つけば」





アカン、の毒舌に心挫けそうや。


まぁ、えぇわ・・・コレも愛やで愛!



俺は教室の扉近くに置いてたカバンを持ってきて
明日、自分が当てられる数学の課題を始めた。









10分。
俺は机の上に広げた課題と睨めっこ・・・してるフリをしつつ
隣に居るを横目で見とった。

は集中してんのか、軽快に電卓を叩いていく。
ホンマ何でも出来んねんなこの子。


ふと、思い出す。




「何や、思い出すなぁ」

「え?」




俺の言葉に、が電卓を叩く手を止めて俺のほうを見た。




「去年。自分と俺、こうやって席隣同士やったやん」

「あー・・・そうね。私が転校してきてからホント、2年終わるまでずっと」

「それだけ神さんが俺たちに離れたらアカンって言うてたんやで、きっと」

「うわー、神様残酷」

「おーい」



は無表情でそれを言い放った。


ちょっとは喜んでくれ・・・ちゅうか、そこ照れるところやろ、普通は!

と言いたかったが毒舌の倍返しが目に見えているので
俺は言葉を止めた。





「ホンマ、そないな口調やとお嫁さんの貰い手ないで」

「無理矢理見合いさせられる事も考えたらそうでもないわよ」

「・・・・・・」

「他に何か言い分は?」

「いえ、ないですわ」





俺、未だにの毒舌勝たれへん。

ホンマ、コイツの毒舌に勝つ奴おったら、顔見てみたいわ。


でももうちょっと恋人らしい事したい。
いや、結構してんねんけど・・・人の居ないところで。

でも!学校でもやっぱりこう・・・何や恋人みたいな事してみたいやんか!

それは彼氏としての願望でもあるし、男としての願望でもあるわ!



さて、どうやってこの毒舌娘とイチャイチャするか・・・と俺は必死で頭を捻り―――。





「あー・・・ーっ」

「今度は何?」

「詰まった・・・分からん。教えてくれ」

「はぁ〜・・・ったく」





分からないとワザと言うて、接近作戦や。
んんーっ、我ながら完璧(パーフェクト)な作戦やな。

はため息を零しながら席を立ち、俺の隣にやってきた。





「何処?」

「此処やねんけど」

「あぁ、此処はね。ちょっと捻ってあるんだけど」

「おう」





俺が分からんと指した問題はどうやら、難しいところやった。
おぉ、偶然・・・指した場所がよかったみたいやな。

は教科書に指を置いて、分かりやすく俺に教えてくれた。


教えてもろてる間、俺はの言葉に耳を傾けつつ
ペンを走らせつつ・・・・・・彼女の顔を見る。



思わず俺の心臓が、酷く高鳴った。



髪からも甘いシャンプーのえぇ匂いがするわ。
それに、教科書をなぞる指のラインとか・・・綺麗やし
唇も・・・リップ付けてんのか、みずみずしい。

睫毛もパチもん(付け睫毛)付けてるか思うほど、長いし
時々耳に髪を掛ける仕草とか・・・・・・心臓がうるさく鳴る。



アカン、ホンマうるさい。

に聞こえてないやろな?・・・なんて思た。






「何?」


「え?!・・・あぁ、いや」




ふと、俺の視線気づいたのかが俺に目線を向ける。

突然の事でビックリして、心臓飛んだわ。
ちゅうか、今でも横目で見つめられるだけで鼓動音がうるさい。




「ちゃんと聞いてる?」


「おー、聞いとるわ。けど、何でこうなるん?」


「それはね・・・此処が」





我ながら、ナイス!


せやけど、マジで心臓がやかましい。

時々こうやっての大人っぽい表情とか見てると
ホンマ・・・警告音みたいに心臓が鳴る。


しかも延々とや。


「治まれ!」って自分に言い聞かせるが
思い出したり、の事考えたりするだけで・・・心臓はヒドイ鼓動をやめようとはせぇへん。


側に居る時も・・・チャリニケツしてるときも

俺の心臓のヒドイ鼓動音・・・・・・聞かれてるんとちゃうんか?なんて思たり・・・。








「・・・・・・さっきの話、戻すけど」


「え?・・・何の?」




すると突然
勉強とは違う言葉を零す。






「ホラ・・・嫁の貰い手だのどうとかっていう」


「あぁ、アレな」




ビックリした。

いきなり「さっきの話」言うから、何処の時点の話や?とか思た。
せやけど、何でいきなり?







「もし」



「おう」



「もし、お見合いしても私の貰い手がいなかったら」



「何や?」



「ア・・・・・・アンタのお嫁さんになってあげてもいいわよ」



「え?」







途端、それまでにないくらい心臓が跳ね上がった。

跳ね上がったのを終えると
すぐさまうるさいくらいに心臓が警告音を発する。



それは逃げろっちゅうサインやない。


そう、俺の心臓が響かせて、鳴り止まない警告音は――――。











「まぁアンタに私以上の良い人が見つかったら諦めるけど」


「居るわけないやん。以上のヤツなんて」


「バ、バカね。居るに決まって」


「居らへん。・・・俺はがえぇねん」


「く、蔵」












お前 を 
逃がすな っちゅう 音 や。










俺はそっと彼女の頬に触れる。
触れた途端、赤く染めた頬の体温が手に伝わってくる。







「なぁ、今さっきの言葉・・・ホンマなん?」


「蔵・・・私、あのっ」


「なぁ、・・・言うてや。・・・もう一回」


「やっ・・・あのっ・・・」






そう言いながら、俺はの頬に手を添えたまま
ゆっくりとそのまま引き寄せ――――。










「俺、やったら・・・お嫁さんとして大歓迎やで」


「蔵」







唇を重ね―――――。





















「ゴメンな〜ちゃぁ〜ん。こっちようやく終わったから、そっちの分・・・・・・・・・あら?」




「あ、小春」

「あぁぁあああ!!!ゴ、ゴメン小春ちゃんっ!!!」

ゴフッ!




あと数ミリと唇重なる寸前。

小春のヤツが教室にやってきた。
しかももろ・・・見られてた。

それを目撃されは恥ずかしさのあまり
俺を思いっきり突き飛ばし一方の俺は、後ろに椅子ごと倒れた。
(まぁ幸い、後ろ何にもなかったからえぇねんけど・・・机あったら俺頭ぶつけたの問題とちゃうぞ)。





「あ、ウチ・・・お邪魔やった?」


「う、うぅん全然!」




おぉ、かなり邪魔やな。
俺は椅子ごと倒され、床で一人心の中で呟いた。

ホンマ、あとちょっとやったのに・・・なんちゅうタイミングで現れんねん、小春!!!






「あ、計算・・・半分まで終わってるよ」

「ホンマ?ありがとう、ちゃん」

「うぅん。あ、じゃ・・・じゃあ私、帰るね!多分迎えも来る頃だし」

「そうか。気ぃ付けて帰りな」

「じゃ、じゃあね!小春ちゃん」





そう言ってはいそいそとその場を去って行きよった。


え?俺に挨拶なし?

酷いわ、・・・アレだけ恥らいながらキスさせてくれそうなムードやったのに。






「いつまで倒れてんねん、蔵リン」

「・・・・・・・・・やかましいわ小春」






倒れている俺を見下ろすように小春の顔が現れた。

俺はふて腐れそうな顔をして、ヤツに言い放った。


俺は床にぶつけた頭を押さえながら
椅子から離れ、自分の体を起こし、同じように倒れた椅子も戻す。





「ホンマ、俺の邪魔しよって」

「タイミング重なっただけやって。ホンマごめんな〜」

「それで”狙とる“とか言うたら俺、お前のことシバいてたわ」

「ちょっ、堪忍してや蔵リン」




ったく。
後ちょっとでの答え、聞けそうやったのに。











『アンタのお嫁さんになってあげてもいいわよ』








ふと、さっきのの言葉を思い出す。

思い出した途端、アカン・・・心臓また動き出した。
うるさい警告音鳴ってるわ。



俺のお嫁さん、か。






「んんーっ、えぇなそれも」


「は?何がやの?」


「お前には関係あらへん。俺との事や・・・俺らの将来のことや」


「まーた、蔵リン変なこと考えてんのとちゃうん?」


「アホォ。将来の事やで、変なこととちゃうわ」








そう、きっとこの警告音は鳴り止まへん。




永遠に、お前を、手に入れるまで。





そう、ずっとや――。





お前が、俺のお嫁さんになってくれるまで。





(それは永遠に君を逃がすなという心臓からの警告音(サイン)。)


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