---------ザーーーー・・・。
「・・・んっ」
雨の音で目が覚めた。
「一体何時?」というので私は目を開けて
置時計を見ると、まだ真夜中を針は刺していた。
時計から目線を戻すと、横には蔵が眠っていた。
雨で濡れて帰って来て
お風呂で二人で体を重ね続け
挙句部屋に戻ってくると、またしても重ねて。
私は数え切れないほどの彼の激しい愛を受け止め
多分気絶した。
そして蔵も疲れて眠ってしまった。
外で降り続く雨は、夕方よりも強さを増して
激しく降っていた。
「(・・・お腹すいた・・・)」
ふと、自分が空腹な事に気づいた。
いつから自分のサイクルが【性欲>食欲】になったんだ?と思うほど
恥ずかしかった。
今頃になってお腹が空くのもありえない話だが
空いてしまったものはしょうがない。
真夜中・・・流石に皆寝静まっているが
こっそり部屋を抜け出して、何か小腹を満たしてこようと思い
ベッドを抜け出す。
「・・・って、え?」
「何処行くん?」
「く、蔵?!」
ベッドを抜け出そうとした瞬間
手を掴まれた。
横に目をやると、蔵が目をぱっちりと開かせ
手を掴んで私を見上げていた。
「お、起きてたの?」
「なぁ何処行くんや、?」
「ど、何処って・・・キッチン。お腹空いちゃったから」
「アカン。此処に居れ」
「は?」
コイツは私を飢え死にさせるつもりか?と思う。
私はお腹がぺこぺこなのだから
流石にそれが満たされないと寝るにも寝れない。
「い、イヤよ・・・お腹空いてるの。手を離して、蔵」
「アカン、寝るぞ・・・こっちおいで」
「ヤダ」
「、おいで」
「ヤーダー」
「来なさい」
「・・・・・・もう」
言い争っててはキリがない。
私は空腹を堪え、渋々蔵の隣に自分の体を潜らせた。
瞬間蔵は私を抱きしめ、背中を優しく叩く。
「ん、これでえぇねん」
「蔵、起きてるなら起きてよ。私お腹空いちゃった」
「俺の顔でも見とき。空腹が満たされるで」
「それで満たされたらどれだけ人間ラクにできてるのよ。ねぇ、蔵起き」
「スゥー・・・スゥー・・・スゥー・・・」
「はい?」
蔵に起きて、食事をしようと説得をしようとした途端
彼の規則正しい寝息が私の耳に入って来た。
え?・・・あのー・・・すいません。
「もしかして、蔵・・・・・・寝ぼけてた?」
あそこまではっきりと目を開けて、私を呼び戻したのは全部寝ぼけ?
ていうか、どんだけコイツ器用な寝ぼけ方してるの?
「蔵・・・蔵〜・・・蔵ノ介くん〜?・・・・・・クーちゃん?」
可愛い愛称で呼んでも、一向に目を覚まさない蔵。
コイツははっきりと寝ぼけてた証拠だ。
私は盛大なため息を零した。
「お腹すいた」
ボソッと呟くけれど、蔵は起きない。
お生憎な事にしっかりと
蔵の腕の中に収まってて、それから抜け出すにも抜け出させない。
私は大人しく、もう一度寝る事にした。
蔵の体に体をふっ付ける。
すると、耳に響いてくる彼の心臓の音。
安心しきったような、優しい音色。
その音を聴くだけで、何故だろう・・・私まで安心して目がゆっくりと閉じていく。
お腹空いてるはずなのに・・・鼓動音が私をまた
眠りへと誘ってくる。
「もう・・・・・・蔵の・・・バ、カ」
寝ている蔵にその言葉をぶつけ、私も再び眠りの世界へと向かった。
外は雨。
降り続く雨粒は、草木を濡らし、土を潤す。
外は雨。
真っ暗な部屋で、身を寄せ合って眠る、私と彼。
外は雨。
雨の音が聞こえないほど、私の耳には、彼の胸の優しい鼓動が聞こえてくる。
愛しい雨は、私を癒し
彼との距離をもっと縮めてくれる存在なのだ。
(雨は私と彼の距離を縮めてくれる存在)