の部屋で懐かしいもんを俺は見つけた。
中学ん時のアルバムや。
でも、そのアルバム捲って行ったら・・・さらに懐かしいもんが
ページの間に挟まっとった。
中学2年の時の、集合写真。
がクラスに転校してくる前の日に、それは撮られて
偶然にも俺の横にが立っとった。
思い返せば・・・あのお嬢様、好きになったんは・・・此処からやろうなぁとか自分で思た。
まぁの事好きになったんは此処からかもしれんし
もうちょっと後やったかもな。
結局好きになっていくのには変わらんかったんやから。
でもあの時担任の先生が連れてきた、名前も知らん、顔の綺麗な女の子。
それがやった。
身長は標準的、せやから写真の位置的には真ん中写って当然の場所やった。
そして、其処が偶然にも俺の隣っちゅうのが・・・驚いた。
横目で見たの表情に、俺は心を奪われた。
「あぁ、綺麗な子やなぁ。お人形さんみたいやなぁ〜」って心の中で呟いてたのは覚えてるわ。
せやけど――――――。
「蓋開けたらこない毒舌ツンデレ娘とは思いもせんかったけどな」
「何か言ったか毒草健康オタク?」
「空耳やって」
思わず口から零れた言葉に、が反応したのか
目を光らせ俺を睨みつけた。
俺は「空耳や」とか何とか難を逃れた。
あんまり思ったこと口にしたら、確実に毒舌で叩きのめされるわ。
俺は口を閉じて、ページを捲る。
ページ捲っていったら、色んなへの気持ちが蘇ってきた。
「何や、えらいくだらん事で喧嘩しとったこともあったな」
「そうね。謙也たちから”お前らまた喧嘩したんか“って」
「何で喧嘩したんやっけ?」
「お好み焼きの種?」
「せや!それやそれ!!食文化の違いに、カルチャーショック受けたであの時は」
「それはこっちのセリフよ」
ほんま、くだらん事で喧嘩した日もあったわ。
でも、本気で喧嘩した時もあった。
の事で
彼女にはあまり触れて欲しくない嫌いな過去があったりして
進路の事で
一緒の学校に行けるかどうか分からん、不安な未来もあったりして
全部想いをぶちまけたら・・・・・・頷いて、泣いとったわ。
全部を吐き出して、全部を受け入れるっちゅうのはにとっては
とても勇気のいることやったろうし・・・・怖かったんやなぁって、をあの頃抱きしめながらそう思ってた。
「の嫌いな過去も、進路とかで悩んだ不安な未来さえも・・・・えぇ思い出なんやって俺、今そう思うわ」
「同じだね、って私が言ったら・・・蔵、笑う?」
は少し笑みを浮かべながら俺にそう言う。
可笑しなことかもしれん。
辛かった事や、嫌なことやったのに・・・そのたびに、いくつも、と心が重ねていっとった。
俺はベッドに置かれたの手に、自分の手を重ねた。
「どうしたの?」
「んー・・・愛を運ぶ言葉やったら、多分距離とか時間も越えていけるんやなぁって思ったんや。
自分と関わっとったことで、離れたりもしたし、話す時間かて、違うときもあった。せやけど
俺が自分に伝える言葉は、離れている距離も、話す時間とか・・・ぜーんぶ、越えて、の所にいけるんやなぁって思た」
「蔵」
でも、伝えたい気持ちはその中にある・・・ずっと、色褪せない気持ちなんやけどな。
って、言うたら確実にから「うわっ、クサッ・・・どっからそんなクサいセリフ浮かんでくるの?」とか
完全無表情で言うてきそうやから言わんとこ。
でも50個しかない言葉から
俺が言うても、が言うても、あったかい色が生まれてんねんなぁ。
「あ」
「どうしたの、蔵?」
ふと、思った。
「俺、大発見や」
「は?何が?」
「50音の最初に並ぶのが・・・・『あ』『い』やって、俺今見つけた」
「え?・・・あぁ、そうね。言われてみたらたしかにそうかもしれない」
「せやろ」
最初に並ぶのが『あ』『い』だった意味。
確かに今さっき気ぃついたことやった。
でも、その意味は・・・に、出逢って・・・分かったんやで。
多分、に出逢わんかったら・・・この意味も分からんかったかもしれへんわ。
「、『あ』『い』してんで」
「あのねぇ〜・・・さっき意味分かって言って、なんか虚しくない?」
「自分に伝える『あ』『い』の言葉があればえぇねん。にぎょうさん伝えたいんやから」
「はいはい」
「耳、真っ赤やで」
「うっさい。出入り禁止にするわよ」
「それはいやや〜」
たくさんの愛を集めたら
言葉に乗せて、自分に届けるんや。
いつだってが手にしたときに・・・が優しい気持ちになれるように。
俺はたくさんの愛を集めて、言葉に乗せて・・・届けたい。
「ホンマ、俺に出逢えてよかったわ。ホンマ・・・よかったで」
「今更なんかそれ蔵の口から言われるとくすぐったいわね」
「えぇやん。ホンマのことなんやから。自分かてさっき言うてたやんか」
「・・・・・・否定出来ん」
「せやろ?」
俺が笑うと、も釣られて笑ってくれた。
あぁ、この笑顔・・・俺これからもずっと見れるんやなぁって思うとホンマによかった。
どんな未来になろうとも、俺の贈る言葉で
が笑顔になれるように。
愛を乗せて・・・・・・に届くよう目指す言葉をこれからも。
(君に届くように。これからも愛をあつめて、君に贈るよ)