「お、懐かしいもんはっけーん!」
「何見つけたの?」
高校生に上がって、大分その生活にも慣れた頃。
蔵が相変わらずウチにやってきて、私の部屋の本棚を漁り始め
何やら見つけたらしい。
「じゃっじゃーん!どや、四天宝寺んときのアルバムやで」
「あぁ、そういえば本棚に直してたわそれ」
蔵が見つけたのは、四天宝寺中学の時のアルバム。
また珍しいものを見つけたわねこの男、と思いながら彼を見ていた。
そんな私の心の声が分かるわけなく、蔵はそれをベッドに広げ見始めた。
「ん?・・・何か挟まってんで?」
「え?」
すると、蔵がアルバムをめくっていると何か挟まっていると言ってきた。
私はすぐさま近づく。
蔵が持っていたのは、写真のサイズにしては少し大きい・・・白い紙。
しかし、紙の材質からして・・・写真っぽい材質の紙だった。
つまり、これはオモテじゃない。
蔵がそれをひっくり返す・・・・・・。
「何や、集合写真やんか」
「あ、ホントだ」
それをひっくり返したら、やはり写真だった。
しかし、普通の写真じゃなかった・・・紙のサイズが違ったのはわけがあった。
それがクラス全員で撮られる集合写真だったのが伺えた。
「でも、コレ3年の時とちゃうな」
「え?何で?」
「せやかて・・・ホレ、此処」
蔵が指を差すと・・・・・・写真の真ん中、私と蔵が隣り合わせに写っていた。
私と蔵が一緒に居るという事は・・・・・・これは中学2年のときの写真。
この時だけ、私は彼と同じクラスだった。
そして、この写真のように・・・席も、隣同士だった。
「何や、この時から俺と隣同士やったんやなぁ」
「みたいだね」
「あれ?覚えてへんの?」
「蔵は覚えてるの?」
「当たり前やろ。ちゅうか、自分写真撮影のとき来て、すぐ帰ったからなぁ・・・大分皆の印象残ってたで」
蔵の言葉に、私は記憶を遡らせる。
あぁ、そういえば・・・確か、クラスに転校する前だった。
担任が「今日はクラス写真撮影があるんで、それだけでも参加してもらえませんかね?」って言われて
私は渋々参加したんだった。
あの頃の私は、何に対してもやる気の欠片もなかった。
だって、傷ついた心を背負ったまま・・・大阪にやってきたのだから。
「ちゅうことは、次の日か・・・がクラスに来たんは?」
「そうなるわね」
クラス写真の次の日、私はようやくクラスに顔を出す事になった。
まさか蔵とは、クラスで顔を合わせる・・・その、前の日に逢っていたなんて。
「私、こんな顔してたのね・・・あの頃」
「せやなぁ。ホンマ、笑顔の欠片もないわな、コレ」
「うっさいわね」
中学2年の時に、撮影したクラス写真を見て私は呟いた。
しかし、懐かしい。
あの時は、傷ついた心を背負ってて
何とか婚約者だった跡部の事を忘れたくて、何とか変わりたくて
焦ってばかりで・・・・・・人と話すのなんて、苦手だった。
だって、私・・・言い方きついし。
心にもない事で、人を傷つけそうで・・・怖かった。
「アレから3年か・・・コレなかったら、俺ら・・・多分お互い理解する事もなかったんやろうな」
「え?」
ふと、蔵が私の右手を上げ、小指の辺りを見つめていた。
私も最初は分からなかったが、彼の目線の先のものに気づき同じように目線を向ける。
「コレ」というのは、小指についたピンキーリング。
リングは元々、私があの頃首からさげていた星のネックレスだった。
あのネックレスが、あの頃の私と蔵を繋げていた。
婚約者だった跡部とは「お前等は似てる」とまで、氷帝時代クラスメイトだった
忍足侑士から言われていた。その声を今でも覚えているが
今思い返せば、笑ってしまうほどだった。
不思議な関係で、蔵とは繋がっていたけれど
彼と一緒に居れば、明日も輝いて見えていた。
氷帝の時は、曇っていた視界が・・・蔵と居る事で、1日1日が輝いて
次の日、彼に会うたびに・・・全ての景色が少しずつ輝いてみえていた。
「何か、貰いっぱなしかもしれないね私」
「え?何で?」
ふと、私は呟き笑った。
その言葉に蔵が不思議そうに言葉を返した。
「蔵から、いっぱい愛する気持ち貰ってたから」
「」
不器用な私は
たくさんの愛を彼から貰って、それを余すことなく集めた。
その貰った愛の分、言葉で何とかして届けたかった。
大好きな彼を傷つけないように、優しく・・・やさしく、包み込んで・・・届けたかった。
見えない気持ちを「形」にしたら、きっと蔵の心の中まで届くかなって。
「私ね、蔵に出逢えて・・・・よかったよ。本当に、よかった」
私、相変わらず言葉足らずだけど
どんな未来になっても、私が彼に贈る言葉で―――――。
「」
「ん?」
「おおきに。俺も、自分と出逢えてホンマ、よかったわ」
「うん」
彼が少しでも笑顔になれるように。
貴方に、あの時出逢えてよかった。
貴方と、出逢えて本当によかった。
この先、どんな未来も、貴方に贈る言葉で
貴方が笑顔になれるように。
私のたくさんの愛をあつめて
その愛を乗せて、貴方の心を目指せる言葉をこれからも贈り続けたい。
(貴方に届けたい。これから先の未来もずっと)