とある日の事。



俺とはデートしとった。


お嬢様、誘ったらんとすぐプチ図書館に引き篭もって
本読んでまうから、俺が外に出して新鮮な空気を吸わせたらな思て
街に連れ出した。

手ぇ繋いで、離れんよう歩く。





「人ごみ嫌いなのよ」


「ごちゃごちゃ言わんと、ええやん。あんまり部屋引き篭もっとくと体に悪いで」


「程よく庭で運動してるからいいの」


「庭に出てお散歩・・・ホンマお嬢様やなぁ、


「帰るわよ?」


「あー、分かった分かった。とりあえずどっかブラッとしよ」





別に何処に行くとか決めてるわけちゃう。


あてもなく、ただブラーッとしてみようと思てる。
あれや・・・ウィンドウショッピングっちゅやつやで。


まぁでも、が欲しい思たもんがあれば買うたるつもりではおるけどな。
高価なもん以外やけど。



俺の横をが歩く。

はというと何や物珍しそうな目で色んなモンみてる。
おっ、早速可愛らしい行動してるやん。





「そない大阪の町が珍しいんか?」


「へ?・・・何か、お店いっぱいだから・・・特に飲食店多いなぁって」


「そらぁ食い倒れの町やし、天下の台所っちゅうたら大阪に決まっとるやんか」


「そっか」


「なんか食べたいもんでもあるか?」


「蔵がオススメしたいのとか、食べてみたい」


「えぇで」





せやせや。こういう反応待っててん。

、たまぁ〜にこういう可愛らしい反応するから
俺としてはホンマ、嬉しいことこの上ないわ。

今日はが甘える日やな。と思いながら彼女の顔を見る。






「何?」


「今日は、甘えん坊さんの日やなぁって」


「私にだってそういう日があるのよ。四六時中私にべったりで甘えるあんたに比べたら、私のそんな日なんて
珍しいとも思わないわ。むしろ私にべったり甘えるのどうにかしなさいよ、男なんだからしっかりして」


「・・・・・・・・・」


「言い分ある?」


「無いですわ」







相変わらずこの毒舌が飛んできた。

反論しよう思たけど、反論する部分が見当たらん。
むしろ、俺はホンマにのこの毒舌の刃にだけは今んとこ勝てん。


全戦全敗・・・の毒舌には、俺は一度も勝ったことが無い。

ホンマ・・・の毒舌に勝てるやつとかおるんか?






「自分の毒舌に勝てるヤツとかおるん?」


「さぁ居るんじゃない?どっかに。私、今のところあんた達全員言葉でだったら叩きのめす自信あるわよ?」


「お嬢様恐ろしいわ」


「フッ。ただ無表情で過ごしてきたワケじゃないんだから」


「そない感じやと、ぬいぐるみとかあんまり好きとちゃうんやろうな。
自分の部屋、結構シンプルにしてあるし」


「ぬいぐるみって、女の子が持つものでしょ?」


「いや、自分女の子やんか」






俺の鋭いツッコミには笑った。


ホンマ、出会う前はこない笑う姿もなかったのに
今ではちゃんと喜怒哀楽出てるから、安心できるし・・・そういう表情見てるだけで落ち着くなぁ。

それにこういう顔・・・俺しか知らんし。


ホンマ、幸せモンやで俺。





「蔵、手をあんまり振らないで」


「えぇやん。ラブラブ見せつけたろうやないか」


「公共の場でそういうの恥ずかしいからやめてよ」


「はいはい」




幸せやから、手も思わず握ったまま振りたくなる。

神様に感謝感謝、と思いながらと歩くのだった。






しばらく歩いていると、が首を止めて見ていた。
声も掛けず俺もそちらのほうに目線を移すと、可愛いくまのぬいぐるみ。

目線をのほうへ落すと、目をキラキラと輝かせて見ていた。







・・・あのぬいぐるみ、欲しいんか?」



「え?・・・あっ、ちがっ、別に欲しくない」






声をかけると慌てた表情と焦った声で「欲しくない」と言う。

いや、自分・・・えらいガン見してたやんか。
と、言いたかったがの事やから、絶対否定文を返してくるに違いない。


此処はちょっと様子見でもしとこ、と思い
俺は「ほな、行くで」との手を引っ張り先に進む。
もし欲しい言うなら買うたるつもりで、先に進むもは何も言ってこない。

しかし、が思いのほか後ろを何度も見る。
どうやらホンマにあのぬいぐるみが気になっているご様子。





「はぁ・・・此処でちょぉ待っとけ」


「え?」


「えぇな動くなよ?」


「う、うん」




俺はをその場で待たせ、逆走。

そして数分して、の元へと戻ってきた・・・腕に抱えたアレを持って―――――。






「ほい」


「え?・・・・・・あ」


「欲しかったんやろ、くまのぬいぐるみ」






くまのぬいぐるみを連れて俺は戻ってきた。

そしてすぐさまの目の前に差し出す。せやけど・・・・・・・。






「わ、私別に・・・欲しいなんて言ってない!」





まぁ、は当たり前すぎる言葉で返ってくると思た。






「言わんでも、何度も後ろ見てたやないか」


「あ、アレは・・・そ、のぉ」


「いらんのやったら、店返してくるで?」


「せ、せっかく買ったんだったら返すなんて勿体無いことすんじゃないわよ!」





そういうとは俺の腕からくまのぬいぐるみを奪い取り
自分の腕の中へと収めて俺を睨みつける。





「なら持っとき」


「し、仕方ないわね。あんまりこういうの、好きじゃないのよ」






はそう言いながら俺の前を歩き始めた。
俺もそれに遅れを取らないよう、彼女の横を歩く。



ふと、視線を落としてを見ると・・・大事そうにぬいぐるみ抱えて―――――笑ろてた。



ホンマは好きなクセに。


こういうところが・・・まだオモテに出されへんの女の子らしい部分やなぁって思た。


せやけど・・・何やぬいぐるみばっかりえぇ感じに抱きしめられてると・・・・・・。








「なぁ、ぬいぐるみ・・・抱きしめるんやったら、俺抱きしめて欲しいわ。むしろお嬢様、俺にデレて?」



「イヤ」



「即答かいな」






Sugerless.ところによりSweet.
(「く、蔵」「何?」「あ、ありが、とう」「どういたしまして、のチューは?」「しない」) inserted by FC2 system

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