3月14日。

それは男の子が
恋する乙女に気持ちを返す日。

俗に言う・・・ホワイトデー。








「・・・・・・」

「何してん、早ようおいで」

その綺麗な顔一発殴ってやろうか?





大阪府立四天宝寺中学校3年
目の前にいる恋人で同じく3年生、そしてテニス部部長の白石蔵ノ介に対して
罵詈雑言を言い放った。

彼女が何故それを言ったのかというと。


本日黒塗りベンツお迎えデーのはずが
ベンツの運転手、魁からの連絡で
「迎えにこれない」というのを受け、彼女はため息を零しながら
白石と自転車で二人乗りして帰るかと思って部室に足を運んだ。

顔見知りの多いテニス部で、普段からも
練習風景などを見ているは監督である渡邉オサム公認の出入り人であった。

そして、部室の扉を開けた瞬間彼女の見た風景が―――。









『今日はホワイトデーや!愛は3倍にして返すで!!ってわけなポッキーゲーム!!』








と、かなりノリノリで
両手を広げ彼女を待ち構えていた白石の表情を見てのことだった。

もちろん他のテニス部メンバーも其処に鎮座していた。






「蔵、頭大丈夫?」

「いたって真面目や」

「絶対悪い毒草かなんか食べておかしく・・・あ、元からおかしいか」

何やのそれ!ホワイトデーやで、。女の子にお返しするんは男の義務や!」



白石の言葉に、はふと思い出した。







「あー・・・そんな日でもあったね」

「え?忘れてたん?」

「はい、すっかりぽっきり」

「ポッキーだけに?」

「一緒に帰ろうと思ったけど、気が変わった。電車で帰るじゃあね」




漫才のようなやりとりにはあきれ返り
思わず踵を返して、部室を出ようとしたが白石に腕を掴まれた。





「待ってぇーな。嘘やん、嘘。あ、でもポッキーゲームはマジな」

「年頃の男の子がポッキーゲームで何盛り上がってんのよ。ていうかあんた達何でこの馬鹿止めないのよ」





未だ口にポッキーを咥えている白石に対し
はロッカーの周りで色々しているレギュラーメンバーに言い放った。






「いやな、金ちゃんがどーしてもポッキーゲームっちゅうのを知りたがっててな」

「は?」




すると口を開いたのは忍足謙也、彼だった。
彼の言葉にはポカーンとした表情を浮かべた。






「いや、あの・・・何処でどう発想したらポッキーゲームが出てくるの?」

「ユウジが遊び半分で小春とやろうしたところ、金ちゃんが―――」

「なー、ねーちゃん。ポッキーゲームって何なん?皆ちっとも教えてくれへんねんで」

「き、金ちゃん」






遠山金太郎がに教えて欲しいと言わんばかりの目をして
彼女に尋ねに行った。

知らなくて当然か?いや、本当に知らないだけなのか?
は未だ野生児金太郎の性格が分からない。






「せやから見本、見せたろ思もて」

「だからって、何で私と蔵なワケ?小春ちゃんとユウジでもいいでしょ?」

「小春が嫌やー言うて聞かへんねん」

「小春ちゃ〜ん」

「堪忍なぁ〜。ウチもキッスだけは取っておきたいねん」






小春に助けを求めようとしただったが
逆に上手く交わされてしまい、重いため息を零した。





「せやから、俺らがお手本や」

「ちょっ!?」





すると、白石が口に咥えていたポッキーを食べ終わると
今度はポッキーの箱を持って
を後ろから抱きしめ、自分の方に体を向けた。
あまりに突然の事では焦る。







「誰かの見本になるんはえぇこっちゃで」

「勉強やスポーツならまだしも、何故にポッキーゲームごときに見本にならなきゃいけないのよ」

「えぇやん。俺らのラブラブっぷり見せ付けたろうや」

「ふざけろ。ていうかホワイトデーと何の関係もないし」

「バレンタイン愛の3倍返しや。ポッキーと俺の唇込み、後はその他諸々」

「うわ〜・・・
凄くイヤ

「恥ずかしがり屋さんやな、。まぁ其処が可愛ぇえねんけど」

「恥ずかしいんじゃなくて、マジで嫌がってんの!其処の区別もつかなくなったかこの単細胞」







の暴言に相変わらず白石は普通に交わしていく。
体を引き離そうとするも
力の差で、白石の腕がだけの力では振り解けない。





「えぇやん。な、しよ・・・ポッキーゲーム」

「丁重にお断りさせていただきます」

「金ちゃん知りたがってねん」

「嫌なものはイーヤ!・・・どうせなら」





すると、は目線を泳がせ金太郎を見る。
フッと白石の腕の力が抜け、は白石が持っていたポッキーの箱を奪い
金太郎の側に駆け寄る。




「身をもって体験させたほうがいいでしょ」

「ねーちゃん?何なん?」


『ちょっ!?』



「金ちゃん、私とポッキーゲームしようか」

「なー、せやからポッキーゲームって何なん?」

「今から私とすること。ちょっと金ちゃんには大人の階段を」



「アカン!子供には刺激が強すぎる!!」




が金太郎にポッキーゲームとは何なのかを
身をもって体験させようとしたら、すぐさま白石が保護者モードで止めに入る。





「アンタとするよりも、金ちゃんとしたほうがマシ」

「それはアカン!」

「今日くらい大目に見なさいよ。ちょっとするだけなんだから」

「アカン!絶対アカンねん!!」






の手に持たれたポッキーの箱を取り上げ
自分の頭の上に持ち上げた。だが、どうしても白石と
ポッキーゲームをしたくないはそれをジャンプして取ろうとするも
白石との身長差があまりにもかけ離れすぎて、届くに届かない。







「あー、もうええわ」





白石とがポッキーの箱を取り合っていると、謙也が呆れた声を出す。
二人の動きがピタリと止まる。






が嫌がってるし、やる気配ないな」

「オモロイもんが見れると思たんやけど」

「謙也、ユウジ・・・私は見世物じゃないわよ」




2人の言葉には握りこぶしを作る。






「金ちゃん、諦めぇ。白石とはやりそうにないわ」

「えー、分からんままで終わるのいやや〜」

「金太郎さん、しゃあないねん。蔵リンがやる気でもちゃんがそうとちゃうから。
2人の意思が一つになって出来るものやからポッキーゲームは。だから・・・この2人の場合やと」

「無理ですね、完璧に。主に先輩が嫌がってますけどね」



「やかましいっちゅうねん」
「ようやく理解する奴等がいてくれた」





ユウジ、小春、光は何とか金太郎を説得する。
ようやく理解者が現れたのか、はホッと肩を撫で下ろす。







「あー何やオモロないわ。たこ焼きでも食うて帰ろうや」

「たこ焼き!・・・ワイも食う!!」

「俺お好み焼き食いたいわ」

「あ、僕もお好み焼きがえぇですわ」

「ほな、銀さんと健ちゃん誘ってお好み焼きでも食べに行きまひょか」



白石とを放ったらかしにして
謙也をはじめ他のメンバーは帰りに何かを食べて帰ろうかと話しながら
スポーツバックを持ち、部室を出て行く。
「完璧に見世物扱いか」とは心の中で呟きながら集団を見送った。







「あー・・・しんどかったわ」

「は?」



部室にと白石だけが残ると
白石が机の上にポッキーの箱を投げ、椅子に座り大きなため息を零した。
彼から放たれた言葉に、は目を開かせ驚いていた。







「し、しんどかった・・・って」

「ん?自分、俺がマジでポッキーゲームすると思たん?」

「いや、目が結構マジだったし」

「アホォ。そんな罰ゲームみたいなの誰がするかっちゅうねん!俺らは見せモンとちゃうねんぞ」





白石の真面目な声に、は「なら今までのコイツは」と心の中で思っていた。




「演技、してたの?」

「おう。あいつ等に合わせたっただけや。本気でしようなんてこれっぽっちも思てへんし、自分嫌がる分かってたし」




「俺と自分、いつから付き合うてるんよ?」と白石が尋ねると
は黙って彼を見ていたのだった。

すると白石が椅子から立ち上がり、の目の前に行く。





「ようやっと諦めよったから、ホッとしたわ」

「蔵・・・意外と考えてたんだ」

「そらそやろ?が嫌がる分かってたし、自分の嫌がることは俺はしとぉなかったんやけど
まぁあの場はどーしてもあぁせなあかんかったんや、堪忍な」




白石が優しい笑みを浮かべ、の頭を優しく叩いた。




「だ、だったらゴメン・・・大分、言い過ぎた」

「ん?あぁ、えぇて別に。そういう反応が来るって分かってたし、自分の棘のある言葉は俺への愛や思てるで」



がそう謝ると、白石は「いつもの事」と言わんばかりに
彼女を責めようとはしなかった。






「あ、せや。自分、手ぇ出してみ」

「は?」

「ホラえぇから。両手でお皿作って」





すると突然白石が奇怪なことを言い出した。
何なのかよく分からないが、は言われたとおり
両手で皿を作る。







「ホイ。俺からのホワイトデー」

「え?」





すると、手のお皿に落ちてきたのは
可愛らしいブレスレットだった。
あまりのことでは驚いて、目の前の白石を見上げる。







「え?あ、何・・・コレ」

「何って・・・ホワイトデー。お返しに決まってるやんか」

「で、でも・・・私、バレンタイン・・・あげてない」






チョコすら白石にあげていないは慌てて、彼にそう言う。
だが、白石は嫌な顔一つせず―――。





「ん?バレンタインやのぅても・・・俺、毎日から愛、貰ろとるし。それのお返し」

「く、蔵」




は白石の言葉に頬を赤らめると
彼はゆっくりと彼女を抱きしめた。




「刺々しい言葉も、ぶっきらぼうな言葉も、無表情も、たまーに笑う顔も、照れた顔も
ぜーんぶ、それはから俺への愛のプレゼントや。せやから、バレンタインとか関係なしに自分に何かあげたかったんや。
イヤ、やったか?ちゅうか、そんなんじゃの愛情分お返しにもなってへんけどな」

「そ、そんなことない・・・・・・嬉しい、ぁ・・・ありがと」




が微笑むと、白石はその表情を見て
ため息を零し、彼女のおでこに自分のおでこをつけた。





「ホンマ・・・素直になったらめっちゃ可愛えぇから困るわ」

「え?」

「素直な時ほど、の表情可愛えぇもんないで。いや、いつも可愛えぇねんけどな」

「は、恥ずかしい事言わないで!」

「もう2人っきりなんやからえぇやん」





白石はを抱きしめながら、笑う。
あまりにも恥ずかしい言葉なので、は顔を赤らめながら白石を見る。






「ねぇ」


「ん、何?」


「する?」


「何を?」


「ポ・・・ポッキーゲーム」


「へ?」






突如、の口からその言葉が出てきて白石はあまりの事で
素っ頓狂な声が出てきてしまった。
目の前の恋人の顔はもうリンゴ並、いやそれ以上に赤くなっていた。







「え?せやけど、自分イヤ言うて」


「い、今は・・・誰も、見てないし。バレンタイン、何も出来なかったから・・・・・・来年は、ちゃんとする。
貰ってるのは・・・・・・蔵、だけじゃないんだから」


。・・・・・・ホンマ、自分には敵わんわ」





そう言うと、白石は机に放り投げていたポッキーの箱を取り
中から1本取り出し、の目の前に持っていく。






「恥ずかしくて、途中で切るのはナシやで」


「ぅ、うん」


「折れたら意味無いからな。最悪、何べんでもやらなアカンかも」


「そ、それでも・・・・・・ぃ、い」


?」


「く、蔵だから。蔵とやるから・・・・・・いぃ」


「はぁ〜・・・俺もう幸せすぎて死にそうや。ほな、行くで」


「ぅん」







口に咥えられたポッキーを互いに食べ進め、たどり着く先は
甘く柔らかい、愛しい人の唇だった。

























「ホレ、アレがポッキーゲームや金ちゃん」

「ワイ、恥ずかしゅうて無理や」

「ホンマ最強のツンデレやな。俺ら居らんくなったらケロッと素直になりよる」

「それがツンデレやろ?蔵リンと2人っきりになったらちゃん、デレデレやもん」

「白石部長もホンマ、先輩には甘ちゃんですね」

「あ、でもワイ」

「どなんしたん、金太郎さん?」

「ねーちゃんとやったら、ポッキーゲームしてもえぇかも!」

「・・・金ちゃん」

「素で言うてんのか?それとも」

「計算で言てんのか・・・それとも」

「白石部長に対しての宣戦布告なんか、分かりませんね」





帰ったと見せかけて、部室の外では
2人の様子を見ていた出歯亀隊(謙也、ユウジ、小春、光、金太郎)。

思わぬ金太郎の爆弾?発言
来年のホワイトデー、大変だ。





Pokey Game/ホワイトデー3倍返し
(たどり着いた先は、君の唇と甘やかな貴方の愛情)

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