------------ピンポーン!
『はい?』
「あ、おはようございます。白石です」
『あぁ、白石様。少々お待ちください』
次の日。
青学さんとの練習試合もオフで
俺はとデートというので、彼女の家に迎えに来た。
相変わらずインターフォンを押せば
運転手さんが出て、にと繋がる。
------ガチャッ!
数秒して、扉が開く。
「おはよう、蔵」
「おう、おはようさん」
出てきたは相変わらず可愛らしい格好やな。
ホンマ、それ見るだけでドキドキしてならんで。
「何ジッと見てんのよ」
「え!?・・・あぁ、いや・・・今日も可愛えぇなぁ〜って」
「はいはい」
「ちょっ、其処は照れるか何かしてくれや」
「はいはい」
「〜」
そして、相変わらずのツンデレっぷり。
まぁこれもの魅力やし、もうそれが当たり前すぎて痛くもないわな。
(始めの頃はホンマにこの対応が痛すぎて・・・)。
「白石君、おはよう」
「あ、お、おはようございます」
すると、の後ろからのお母ちゃんがにっこりと笑みを浮かべ
姿を現した。
あれ?今日平日?
「今日はどこに行くの?」
「いえ、まだ其処まで決めてないんですが・・・とりあえず、2人でブラブラしようとは」
「そう。楽しんでいらっしゃい」
「どうも」
のお母ちゃんは笑顔で俺と話すけど
何や俺の目の前に居るは少しつらそうな顔してる。
、お母ちゃんとケンカでもしたんかなぁ?
「じゃあ、ちゃん」
「え?・・・あ、はい」
「気をつけてね。遅くなるようだったら電話するのよ」
「う、うん。・・・行ってきます」
のお母ちゃんはにそう言う。だが、肝心の本人が
何やらぎこちなくそれに答えた。
ホンマ、何かあったんかな?
「蔵、行こう」
「お、おう。ほな、お借りします」
「えぇどうぞ」
に腕を掴まれ、とりあえずの家を離れる事にした。
「お嬢様。白石様にお話になるでしょうか?」
「何とも言えないけれど・・・あの子なら真っ先に白石君に話すわ。後は二人に任せます」
「何も、なければ良いのですが」
「そうね」
「さて、何処ふらつこか?」
「どこでもいいよ。あ、ねぇねぇたこ焼き食べたい」
しばらく2人でブラブラ歩きながらそない話をしてると
突然がたこ焼きを食べたいと言い出した。
「何や、急に?」
「いや、お好み焼きは食べた事あるし・・・アンタ達が作ったたこ焼きしか食べた事無いから
ちゃんとしたお店の食べたい。おいしいお店とかあるの?」
「まぁ俺の知ってる店なら。・・・行くか?」
「行く」
そう言うと、はすぐさま返事を返した。
珍しい事もあるもんやな・・・が自分からたこ焼き食べたいとか
部室でたこ焼きパーティしてても絶対最初は食べへん言うくせに。
(結局はソースの匂いに負けて食べてしまうんやけど)。
しばらく、電車を乗り継いで俺の知ってるたこ焼き屋に来た。
すると、たこ焼き屋の前に赤毛で豹柄のタンクトップに短パン。
見慣れた格好のヤツが居る。
「金ちゃん、何してん」
「あ、白石・・・それにねーちゃん!」
俺が声を掛けると、振り向いたのは金ちゃん。
ホンマコイツ食い意地張り過ぎや。
「たこ焼き・・・食べたいんやけど、お金足りひんねん」
「食べたいの金ちゃん?」
「、甘やかしたらアカン。甘やかしたらコイツは」
「はい、少しだけど」
「ホンマ!?ねーちゃんおおきに!!おっちゃーん、たこ焼き10個ぉお!!」
「、言うてる側から・・・お前は」
俺が言うた側から、は財布からお金を出して
金ちゃんに渡した。
しかもコイツ・・・千円渡したで。
何でたこ焼きに千円も出すねん・・・お嬢様はホンマに・・・っ。
ブランドモンの財布の口を閉めてるの隣で俺は肩を落とす。
「何?どうしたの蔵?」
「いや・・・お前・・・俺の話聞いとったか?」
「金ちゃんを甘やかすなって話でしょ?聞いてたわよ。いいじゃない別に。
金ちゃんには来年、再来年頑張ってもらわなかきゃいけないんだし」
「?」
がふと、笑う。
あれ?・・・何や・・・どないしたんやろコイツ?
いつもなら普通に笑うってあんまりせぇへんし、この笑顔
何や違和感感じるで・・・いつものの顔とちゃうような・・・・。
「何?」
「え?・・・、お前・・・」
「ねーちゃん!白石ぃー!こっちで一緒にたこ焼き食べようやー!!」
俺がに違和感の原因を尋ねようとすると
金ちゃんが席にぎょうさんのたこ焼きを置いて、俺らに手を振って呼ぶ。
「はいはい、今行くから」
「あ、っ!」
すると、は俺の会話をスルーした感じで金ちゃんの元へと駆ける。
何や・・・アイツ、ホンマに・・・どないしたんや?
とにかくこれは聞きださなアカンと思いながら
の後ろを走り、金ちゃんの確保した席へと向かうのだった。
「んぐ・・・んぐ・・・うまっ・・・美味いな!めっちゃ美味い!!」
「金ちゃん、そんなに焦って食べると喉に詰まらせちゃうよ」
「平気や!あ、ねーちゃんも白石も食べてや!」
「お前、誰のお金で食ってんねん。お金出したのやぞ・・・感謝しぃ」
「ねーちゃんおおきに!」
「どういたしまして」
金ちゃんがたこ焼きをバカ食い始め
俺はそれを呆れた表情で見るも、は笑みを浮かべてそれを見ていた。
呆れた表情で金ちゃんを見とったが
目線はちょこちょこに移しとった。
さっきからニコニコして、何やちょっと違和感がする。
普段は俺と同じくらい呆れた感じで金ちゃんを見とるけど
今日のはやたら、金ちゃんに優しい表情を向けとる。
別に嫉妬はせぇへんけど・・・その笑顔に、何や・・・違和感を感じる。
「まだ食べてもえぇ?」
「お前、まだ食う気か?」
「どうぞ」
「甘やかさんといて」
「いいじゃん別に。いいよ金ちゃん」
「わーい!」
そう言って金ちゃんは追加でたこ焼きを頼みに行った。
はやっぱり笑みを絶やすことなく
その場に居る。
今は俺と2人っきり・・・今なら・・・・・・。
「な、なぁ」
「ねぇ、蔵」
途端、俺が話そうとしたらの方から
俺の名前を呼んだ。
俺は思わず自分の言いたかった事を喉の奥へと閉まった。
「な、何や?」
「あのね」
「私、転校するかもしれない」
「は?」
て、転校?
の口から出てきた言葉に、俺の心臓が跳ね上がった。
「て、転校とか・・・何で?」
「お父さんの仕事でね、大阪のほうも大分会社自体も回ってきたから。
そろそろ、東京の本社に戻ってこないかって・・・呼び出されたの」
「もしかして、引っ越すんか?」
「・・・・・・・・・」
俺の言葉にが黙り込んだ。
転校やったら、引っ越すとか当たり前やろ?
ちょっと待って・・・それってが、俺から・・・離れるっちゅうこと?
「私もまだ中学生だし、高校こっちに決めても・・・寮とか1人暮らしとか
ダメだって・・・・お父さんもお母さんも、心配してるの」
「それで・・・引っ越すんか?」
「・・・跡部からも、電話・・・掛かってきた」
「跡部クンから?」
の口から、跡部クンの名前が出てきた。
もう大分慣れたようなもんやけど、今でもちょっと心配ではある。
昔関係持ってたからな・・・俺としてはまだ心配や。
「アイツ、私にこう言ったのよ」
『お前の成績なら、氷帝の高等部でも十分にやっていける。他の進学校に進むのなら
俺からも推薦書なりなんなり書く。それにだ』
『何よ?』
『俺の知り合いヤツの高校が、お前を欲しいと言ってきた。かなり有名な進学校でな。偏差値もそれなりにある。
まぁお前の成績なら其処の入試なんて赤子の手も捻るほどだと思うがな。推薦試験を受けたいのであれば
願書はこちらで手配するとまで言ってきた。勉強する環境は十分に与えるとな。そっちでもう決めたのか?』
『決めてる』
『そうか。だがこっちにもし、戻ってくるのならそいつに話はつける。高等部に入るのであればそれでもいい』
『少し考えろ。どうするかはお前が決めろ』
「そうか、跡部クン・・・そないなこと」
「高校の入試も優遇するとか・・・中学生が出来るわけないんだけどさ。まぁ跡部の事だし
私が一言”うん“って言えば、きっとそれは叶えられると思う。私が駄々こねたところで・・・お父さんやお母さんを
困らせちゃうだけだし・・・でも・・・でもね・・・っ」
「たこ焼き追加持ってきたでー!」
すると、肝心な所に金ちゃんが
またしてもたこ焼きをぎょうさん持って戻ってきた。
俺もも思わず、ため息を零し互いに顔を逸らした。
「ねーちゃん?白石?・・・どないしたん?」
「う、うぅん。何でもないよ金ちゃん・・・ほら、どんどん食べて。今日は私がたくさん奢ってあげる」
「ホンマ!?わーーい!!おおきにねーちゃん!!」
戻ってきた金ちゃんを不安にさせんと、は
笑顔を取り繕って金ちゃんにそう言う。
そうか、道理でがえらい気前がえぇわけや。
こういう状況やから・・・こういう状況になってしもたから・・・・・・。
それやったら・・・何?
がこない気前がえぇって・・・もしかして、離れるのが近いっちゅうこと?
ちゃう。
近いんやのぅて・・・もうすぐ其処まできてるっちゅうこと?
それやから、・・・俺を誘ったん?
それやから、・・・金ちゃんにたこ焼き奢ってるん?
もう、逢えんくなるから?
「白石やんか」
「もおっとね」
「謙也、千歳」
すると、謙也と千歳がやってきた。
はすぐさま2人の名前を呼ぶ。
「何や、デートかお前ら?」
「デートにしては・・・何で金ちゃん、居っとね?」
「たまたま此処で遭遇したの。それで今日は私が金ちゃんにたこ焼き奢ってるのよ」
「うわ、金持ちの本領発揮や」
「よかったねぇ〜金ちゃん。たらふく食べなっせ」
「うん!」
和気あいあいとは謙也や千歳と話をする。
アカン、これじゃあはぐらかされて
話も出来んわ。
俺は席を立ち上がる。
「謙也、千歳・・・すまんが、金ちゃん頼んでもえぇか?」
「は?どないしたんや、白石?」
「えぇから、頼むわ。・・・行くで」
「え?・・・あ、で、でもっ」
「えぇから」
あんまり強ぉ言わず、の手を握り俺は彼女を連れて
その場を、金ちゃんを謙也と千歳に任せた。
「何や、白石のヤツ?俺らに邪魔されて機嫌悪くなったんか?」
「やばってん、そぎゃん感じじゃなかような」
「多分、ねーちゃんの事で白石・・・機嫌悪いねん」
「は?何でやねん」
「どういうことね、金ちゃん?」
「ねーちゃん・・・引っ越すって・・・さっき白石と話してた。
ねーちゃんのお父ちゃんとお母ちゃんの仕事で・・・引っ越すって・・・」
「なるほどな」
「だけん・・・白石が俺らに金ちゃんば押し付けたワケか」
「なぁ!ねーちゃん・・・ねーちゃん、大阪離れるん?引っ越してしまうん?」
「俺らは何とも言えんが・・・多分離れられんやろあの2人の事やから」
「たいね。・・・の心の氷ば溶かしたとは白石だけんが」
「白石本人も、早々簡単にの事離すわけないやろうし」
「やばってん。親の都合上・・そぎゃんこつは言ってられんけんね」
「俺らは、見守るしかないねん金ちゃん」
「ねーちゃん」
違った未来のカタチ
(同じ未来かと思ったら、現実はそうじゃなかった)