ミサンガ。
他にもプロミスリングっちゅう名前があったな。

それは願掛けに要するもので
切れたら願いが叶うっちゅうアイテム。



俺はそれをから貰ろた。



は「テニス全国制覇」というのを
俺に言って、俺も「せやったな」とか言いながら
携帯のストラップとして結んだ。


せやけど、自分の思てる願いとは・・・全然ちゃう。


俺の願いは唯一つ。












「んっ・・・はぁ・・・あっ、ん」

・・・キツく、ないか?」

「平、気」




ベッドに2人で沈んで、体を重ねた。


甘い吐息が混ざり合って、下で俺の愛を受け止めるを見た。
彼女の目から零れる涙を俺はそっと拭う。




「蔵?」

「ホンマ、全国にが来られへんのは残念や。の応援やったら・・・俺、めっちゃ頑張れるんに」

「ゴメン、ね」




素直に謝られると、ホンマ調子狂うんやけど。

どうして、彼女が全国大会に来られへんのか分からん。
きっと何か思い出しそうなんやろうか?

俺はそう思ってあえて深く突っ込みはせんかった。




「まぁ、が俺にくれたミサンガ・・・自分の代わり思て、頑張るわ」

「・・・ぅん」





俺がそう言うと、優しく彼女は微笑んだ。


それがホンマもんか、偽もんかなんか分からへん。
せやけど、もうは俺以外・・・頼るヤツなんか居らんような気ぃする。


そらぁ、ケンカして他のヤツに泣きつかれたりされたら腹は立つねんけどな。



他愛もない話して、手ぇ繋いで、ケンカして、嫉妬して

チャリニケツして、キスして、体重ねて―――。


誰も恋人のフリしてるなんて、思わへん。



もう、普通の恋人がするようなこととなんら変わらん。



そやけど・・・・・・全部、それはフリ。

ただの【恋人ごっこ】。



俺の気持ちは、一方通行・・・ただ、を想うだけ。

心の中、「ホンマはめっちゃ好きや」って言いたい。
でも、は俺との関係になんとも思ってない。

ただの、恋人のフリ。

自分の忘れたいものを忘れさせてくれる人としか
は俺のこと、見てないんや。






「なぁ」

「ん?」

「全国制覇したら・・・また俺の願い、聞いてくれるか?」

「え?・・・まぁ、いいけど。無理難題じゃないでしょうね?」

「そんな難しい事とちゃう。なぁ、ええか?」




俺がそう問いかけると、は―――。








「いいよ。私の出来る範囲でしかないけど、叶えてあげる」







優しく言うてくれた。







「おおきに。・・・・・・、好きや」


「うん・・・って、やぁあっ・・・あっ、バカッ・・・いきなりっ、動いちゃ・・・んんっ!」


「えぇやん。俺の喜び、たっぷり受け取ってや」


「あっ・・・あぁっ、・・・バカァ・・・あぁ!」







そう言うて、俺は再び彼女にヒドイまでの愛を注いだ。


ホンマはな、あのミサンガに・・・俺、こう願ったんや。










『自分と離れんと、ずーっと一緒に居れますように』





ってな。




重い願いかもしれへん。

でも、願いが大きければ大きいほど
早く切れるんかなぁ〜って思た。


ゴメンな・・・せっかく「全国制覇」っちゅう願いで俺にくれたんに。
俺の勝手な願いのほうがなんや、大きいわ。


でも、ミサンガには俺の想いを願いとして詰め込んで
全国制覇したら・・・俺の本当の願い、叶えてくれ。



俺の本当の願いは――――――。

























「別にえぇで、無理せんでも」

「いぃ、行く」



ある程度、の家で時間を潰した。
もちろん疲れて少し寝たけどな。

気ぃついたら、終電終わってるし。

すると、のお父ちゃんが
「車を出すから、乗って帰りなさい」と言うので
俺はその好意を受け取った。

帰ろうとしたら、まで何故か付いてきた。
本人疲れてめっちゃ眠そうなんに。

後部座席に2人で座って、運転手さんに「窓開けてください」と
頼むと、後部座席の窓が開く。

車を見送りにのお父ちゃんとお母ちゃんの姿を見る。




「ホンマすんません。ご馳走してもらっただけでもえぇのに」

「いいのよ。お祝いは皆でしたほうが楽しいですからね」

「白石君、全国大会も頑張って!」

「はい、今日はどうもおおきに。おやすみなさい」

『おやすみ』




そうのお父ちゃんとお母ちゃんに挨拶をし終えると
車が発進する。

ホンマ、えぇ両親やなぁ。






「・・・、大丈夫か?」

「平気・・・ちょっと、眠いだけ」




黒塗りのベンツが大阪の町を走りながら
俺の家へと向かう。

俺は肩に頭を預けてるを見る。

ちょっと眠いやのぅて、めっちゃ眠いの間違いやろ。と思わずツッコミいれたくなった。






「ホンマ、ゴメンな。無理、させやろ?」

「・・・・・・多少」

「其処はうぅんとか言うてぇな。ちゃっかり正直に答えるんかい」






半分眠り被っていても、相変わらずの毒舌。

まぁ其処もの魅力的な部分やな。


ふと、目線を下に落とす。
無造作に置かれた彼女の手に自分の左手を上から重ね、握る。

それに気づいたのか、が顔を上げる。





「蔵・・・どうしたの?」


「ん?・・・あぁ、まだ家着かんし・・・着くまでこうしてようかなぁ〜思て。イヤか?」


「・・・うぅん。いいよ」


「おおきに」






そう言って、も俺の手を握り返してくれた。

小さくて、あったかいの手。


俺が握ったら、潰してしまうんやないか?とか思ってしまう。

体かてそうや。

抱きしめたら折れそうなくらい・・・小さい。
腕ん中収めても、腕のスペース余るほど・・・小さい。

恋人のフリ始めた頃は・・・もっと、小さかったなぁ。


なんて、思わず思い出して笑う。








「・・・何笑ってんの?」


「ん?何でもないわ」


「知ってた?」


「何がや?」


「思い出し笑いをする人って」


「おう」


「エロいって」


「はぁ!?何やのそれ!?・・・誰が言うてたん!?」


「謙也。ん?ユウジだったかな?・・・アレ?小春ちゃん?・・・光、だったかなぁ?健二郎っぽかったよーな。
銀さんは100%ありえないとして・・・・・多分メンバーの誰かだった。教えてくれたよ」







は眠気眼で俺にそう言ってきた。

誰や・・・俺のに、そんな至らん事教えたんは。





「とりあえず、明日全員に尋問する」

「死人は出すなよー」

「せやな。程ほどにシメとくわ」






俺がそう言うと、突然隣に居るが笑う。






「何?何やの?」


「嘘よ」


「へ?」


「メンバーから聞いたんじゃないの。元々知ってたの」


「なっ!?・・・自分、騙すの上手いな。見事に騙されたわ」






どうやら俺は見事にに騙されたらしい。
はクツクツと目を閉じ笑っている。

ホンマ侮れんな、このお嬢様。





「あ、此処でえぇですわ」






大分家が近くなり、俺は運転手さんに止めるよう言う。

すると、車が止まり
が俺の肩から頭を退かす。

彼女と目線が合う、その目はいつものように俺を見つめる眼差しの大きさと同じ。


でも、未だ手は握ったまま。






「家の前まで送るよ」

「えぇて。もうすぐ近くやし・・・こっからでも歩いて帰れる。すぐそこやもん」

「そ、そう」

「あぁ。ほな、今日はありがとうな」

「うぅん。何か無理に、ご馳走させたみたいで・・・ゴメン」

「そんな事ないで、楽しかったし。今度はメンバー全員連れて来ても、えぇか?」

「うん。その方がお父さんとお母さんも喜ぶし、いつでも」

「そうか。おおきに」







楽しく会話を弾ませて、何とか握った手を離したいのに・・・・・・離せない。



また明日も会えるのに・・・・・離したくない。






「アカン・・・何や、手ぇ・・・離されへんわ」


「・・・・・・ぅん」






離したいのに、離れなアカンのに・・・・・・離されへん。

もっと、ずっと・・・側に居たい。







「分かったわ」


「え?」


「キスしたら離す。せやから、キスさせてくれ」


「えっ!?・・・あっ・・・そ、そのっ!?」







俺がそう言うと、は急に顔を真っ赤にした。
すると、運転手さんが―――。



「私、外に出ておりますね」



と言うて、運転席の扉を開け外へと出た。
あ、せやった・・・この人、居ったんやった。




「空気読みなさいよ」

「す、スマン。でも、もう邪魔ないで。・・・キス、したら・・・離す。せやから、も離してくれ」

「う・・・うん」




そう言って、手を繋いだまま
徐々に唇を近づける。

甘い吐息が顔にかかる。


















---------PRRRRRR・・・!!!!




うわぁっ!?




瞬間、俺の携帯の甲高い電子音で手が離れた。

ム、ムード台無しや。
あと数ミリっちゅう距離やったのに。

俺は急いで携帯を出して電話に出る。




「もしもし?」



ホンマ誰や、俺の大切な時間邪魔するヤツは!





『蔵ノ介ぇ〜・・・アンタ、何処ほっつき歩いてるん!えぇ加減戻ってきぃ!!』

「姉ちゃん」





電話は俺の姉貴。
しかもかなり酔っ払っている。
俺の祝杯なんに、自分が酔っ払ってどないすんねん。





「もう家近いから、すぐ行く」

『おう。ほな待ってるでぇ〜』





それだけを済ませて、姉貴は電話を切った。
とりあえず・・・帰ったら一発どついたろ。





「お、お姉さん?」

「あ・・・あぁ。何や、ムード台無しになったな・・・スマン」

「いいよ。丁度手も離れた事だし」

「せ、せやな。ほな、俺行くわ」






手・・・ホンマならもうちょっと繋いでて欲しかったし、キスもしたかった

クソ、やっぱあのアホ姉、一発どつくだけじゃ済まされへんぞ。


と、心の中で悪態を付きつつ
俺は後部座席の扉を開け、外に出た。

運転手さんに「もうえぇです」と言うと、その人は
笑顔で運転席に引っ込んだ。

そして、後部座席の窓が開く。





「ほな、明日な」

「うん。・・・おやすみ」

「あぁ、おやすみ」






そう別れの挨拶をして、を乗せた車は彼女の家へと戻っていった。

俺はそれを居なくなるまで見送ると、自分の家へと足を運ぶ。
ふと、ポケットから出した携帯を見る。

そこにぶら下がったがくれたミサンガ。





「全国制覇」という願いを込めた裏に
「ずっと一緒に居れるように」と願いを込めた。

コレが切れたとき、俺の願い・・・叶うんかな?


そうか、せやから俺・・・全国制覇したときの願いを言うたんやったな。


ミサンガに込めたのは、秘めたる想い。

でも、全国制覇したときは・・・俺の本当の願い、聞いてくれ。















『俺と、ちゃんと付き合うてくれ』










恋人のフリはもう、さよならしたいんや。


とちゃんと、向き合いたいんや・・・フリやのぅて、ちゃんと恋人として。






それが、俺の願いや。

無理難題とちゃうぞ・・・お前の返事一つで、変わることや。


フリを続けるか、それとも・・・俺とホンマモンの恋人になるか。


全国制覇したら、聞かせてくれ・・・、お前の口から・・・それが聞きたい。






Wish
(ミサンガに込めた想いと、決めた願い。きっとどちらか叶うはず)

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